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「いつか暮らしてみたいまちはありますか?」そう聞かれて、どんなまちを思い浮かべるだろう。
生まれ育った故郷、お気に入りのお店があるまち、祖父母のいる田舎。人それぞれに、思い起こすまちがあるかもしれません。
対して、ベッドタウンだから、田舎だから、何もないんだと劣等感を抱くまちもあったりする。
どんなまちにも魅力はある。その想いで斬新なまちづくりを手がけているのが、クオルという会社です。
対象地域の歴史や資源を読み解き、ビジネスとして成立する仕組みとして組み立てていく。
エリアマネジメントという新たなまちづくりの手法で、このまちが好き、まちに訪れてみたい・住んでみたいというファンを増やしています。
今回はここで、エリアマネジメントのコンサルティングまたは運営を手がけるディレクターとアシスタントを募集します。
表参道駅から原宿方面へ歩いて5分ほど。表参道ヒルズの道路向かいのところに、クオルのオフィスがある。
ここで最初に話を伺ったのは、代表の栗原さん。
クオルはエリアマネジメントを専門とするまちづくり会社。
エリアマネジメントとは、特定の地域をひとつの共同体と捉えてマネジメントしていく手法のこと。
まちの個性を高めるイベントを開催したり情報を発信するだけではなく、エリアを効率的に管理運営していく仕組みも一緒につくりあげることで、人を惹きつける地域ブランドを形成し、まちを持続的に活性化させる。
「たとえば、京都と札幌では歴史や景観が全然違うように、それぞれの地域には固有の価値や資源、特性があると思うんです。だけど地域によってはそれらが分かりにくいところもあります。いま我々が関わっている豊洲もそうです」
豊洲といえば、タワーマンションが立ち並ぶ新しいまちというイメージ。歴史も浅く、たしかにほかの開発地とあまり代わり映えがないように思えてしまう。
「開発によって新しいまちが次々と出現していくなかで、同じような街並みと機能が複写されて個性が埋没している。我々はそこに入って独自に調査して、その地域固有の価値を掘り起こすんですね。我々にしてみれば、実は豊洲には地域資源が山のようにあるんですよ」
山のように。
「たとえば、豊洲には運河や海に接する空間がたくさんあって、水辺環境が非常に充実しています。それから桜が多いんですよね。どの公園にもいっぱい植えられていて、開花時期になると素晴らしい景観が出現します」
「そして何よりも地元企業。日本を代表するようなグローバル企業が本社を構えていたり、いい会社がいっぱいあります」
会社も地域資源なんですね。
「そうなんですよ。会社やそこで働いている社員さんって、実はすごく大事。ただ、その方たちが地域に関わっていません。そういった地域資源に空間や人を掛け合わせて活動を興していく。すると、くすんでいたまちが輝いて見えてきます」
たとえば、クオルが開業前からエリアマネジメントで携わっている『品川シーズンテラス』。
品川シーズンテラスは2015年に開業したオフィスを中心とした複合施設で、この品川港南地域にもテクノロジー企業が多く集まる。
クオルはここでエリアマネジメント事務局として、年間約80もの大小さまざまなイベントの企画・運営、情報発信、PR等を総合的に行っている。
テクノロジー企業が多いという特性を活かして企画・開催した『品川テクノロジーマルシェ』では、品川エリアでものづくりをする企業が多く出店し、それぞれが誇る技術を地元住民に披露した。
この地域に住んでいる人がまちの良さを再認識したり、これまで接点のなかった人たちの間でコミュニケーションが生まれたり。
イベントによって地域の魅力を打ち出し、SNSもうまく使って情報発信することで、行きたい・住みたい・働きたいというリアルな声が徐々に増えていく。
「クオルではそれを“愛着”と言っています。地域に対する愛着が醸成され、住んでいる人もそうでない人もまちのファンになっていく。この流れをつくることによって、地域のブランド力を高めていくんです」
そうして地域のブランド力が高まると、クライアントであるオフィスオーナーの不動産会社のメリットにもつながる。住みたい、働きたいという人が増えることで複合施設内の商業施設の売上げやオフィスの価値も上昇していくからだ。
「我々のクライアントは不動産会社が多いので、最終的には不動産物件の収益化に寄与しないと続かないわけです。だからクオルは、まちづくりを経営としてやっている会社だと思っています」
地域のブランド力が高まり、成果として表れるまでには最低でも3年ほどを要するという。そのことをクライアントには必ず説明し、そんなに時間がかけられないとクライアントには、エリアマネジメントを実施することは難しいとはっきり伝えることもあるそうだ。
「短期的な集客とか販売促進のネタづくりを目的にしたような依頼は、きちんと理由をお伝えした上で、お断りしています。ゴールが異なるんですよね」
ゴール?
「地域の価値って目に見えないうえに、長い時間かけて工夫しながらコミュニケーションを重ねていく山登りのようなもの。ですから、エリアマネジメントの相談を受けたら、その担当者の方に『登る覚悟はありますか?』って問うんですよ(笑)」
地域の資源を見出し、地域の魅力を高めるイベントや情報発信によってまちへの愛着を醸成して、住みたい・働きたいという人を増やしていく。そのエリアマネジメントの手法は都心だけでなく、地方にも活かせると思う。
実際に地方自治体からの問い合わせがあって、相談に乗ることもあるという。
ただ、大手不動産会社のように潤沢な資金力があるところは限られているので、そのままのやり方では通用しない。
そこで栗原さんが考えたのは、エリアマネジメントを体系的・実践的に学べるスクールを開くことだった。
「我々のような専門家がべったりと地域に入るとコストが発生してしまうので、その地域の人自らがエリアマネジメントをできるようにしてしまおうと。不動産関係者だけではなく、地元を盛り上げたいという人や自治体に向けて、我々が手がけるエリアマネジメントの手法とノウハウを提供するんです」
「今年5月に開校予定のエリマネスクールに参加してみたい、協力したいという気持ちがある人にも興味を持ってもらいたいと思っています」
クオルでは、エリアマネジメントを『コンサルティング』と『運営』の両輪で実施している。
今回募集するディレクターとアシスタントディレクターは適性や本人の希望からどちらかをまずは担当し、ゆくゆくは両方を経験していくことになる。経験値を積めばいつかエリマネスクールで教鞭をとる可能性もあるかもしれない。
「クライアントの目的を達成するために、様々な外部会社と調整しながら、スケジュールの管理、リスクの想定、人員の配置を行い、当日に指揮をとる。ディレクターとは多種多様なひとたちと協力・調整しながら目指す方向に導いていく役割なんです。だから分野は違っても、プロジェクトマネジメント能力がある人は向いていると思います」
「人・モノ・金・時間を管理しながら、クライアント、地域、そしてクオルもみんながwin-winになる関係をつくっていく。そのゴールさえ見失わなければ大丈夫です」
実際にどんなふうに仕事をしているのだろう。
続いて話を伺ったのは、昨年4月に入社したアシスタントディレクターの柳瀬さん。主にイベント制作や運営を担当しながら、情報発信やPRも手掛けている。
柳瀬さんは以前、航空会社とイベント会社で働いていた。
その経験を元にクオルに入社し、いまは横浜の大規模マンションを中心とした交流やコミュニティづくりのためのイベント企画・運営を担当している。
そのなかでも印象深かったイベントは、住民たちと一緒につくりあげた夏祭りだという。
夏祭りは、盆踊りや子ども向けのイベント、いろいろな出店の調整、キッチンカーの誘致、管理組合との調整など多岐にわたる。
手間もお金もかかるイベントだが、予算はあまりない中で柳瀬さんが考えたことは、住民の中から運営スタッフをボランティアしてくれる人を募ることだった。
「まず皆さんに興味を持ってもらえるように、出店の内容は金魚すくいや射的とかわかりやすいものを意識しました。多くの人に馴染みがあって子どもも大人も楽しめるし、思い出が残りやすいと思ったんです」
「この内容で募集をしてみたら、思っていた以上に10人もの住民の方が手を挙げてくれたんです」
実は、夜の屋外イベントを開催すること自体がはじめての経験だった柳瀬さん。自分ひとりですべての企画をすることもはじめてで、不安を感じていたという。
「そんなときに住民の方々がボランティア参加してくれることに、大げさだけどすごく感動して。こうやって応えてくれる人がいるんだと思ったら、それまでプレッシャーだったものが一気にモチベーションに変わったんです」
マンション内のスーパーには焼き鳥やビールを販売する出店をしてもらったり、マンションと縁のある企業にはうちわをつくってもらったり、お菓子を提供してもらったり。
住民も企業も巻き込んで開催した夏祭りは、延べ1000人以上もの人たちが参加し大成功のイベントとなった。
「イベントっていうと、何か目新しいことをやりがちですけど、そういうのって続かないことが多くて。定番の夏祭りはみんなが参加しやすいイベントですし、住民の方々が主体となっても継続運営しやすいと思うんです」
「そういう将来的なところ、コミュニティ促進のための活動が持続できるかっていうことまで見据えてやらないと、エリアマネジメントの意味がなくなってしまうというか。根本にある、住むこと・暮らすことを自慢に思える、愛着を感じられるまちづくりが続かないと思うので、将来のことも意識して運営をしています」
柳瀬さんはどんな人に応募してほしいですか?
「まちっていろんな人が住んでいる。日本人もいれば外国人の方もいて、いろんな仕事をしていますよね。クオルもまちのようにいろんな人がいればアイデアも増えていくと思うので、好奇心旺盛でいろいろな経験を持っている人が来てくれるといいなと思います」
隣で話を聞いていたエリマネディレクターの西林さんも、柳瀬さんの話にうんうんと頷いている。
コンサルティングを主に担当している西林さん自身も、いろいろな業界経験の持ち主だ。
電機メーカーでSEとして働き、その後カード会社での営業を経て、昨年4月に日本仕事百貨での募集を通じてクオルに入社した。
移住やまちづくりに強い関心があり、30歳の節目で思い切って飛び込んだという。
現在は運営推進と共にコンサルティングも担当し、エリアマネジメントを導入を目指す不動産会社の依頼や相談に応えたり、そのエリアの調査・分析などを行っている。
将来的には、クオルでの経験を活かして地元の京都や地方地域で何かできないか、模索しているという。
「いま目標にしているのはスポーツ業界との仕事です。エリアマネジメントの手法って不動産業界以外でも絶対活かせると思っていて。僕が野球好きっていうこともあるんですけど、地域と密着したい球団がいたらそこに僕らの仕事が役立つと思うんですよね。いつか球団にアプローチして、一緒に仕事できたらいいなと思っています」
たしかに、スポーツ業界との相性もよさそう。エリアマネジメントとは、視野を広げればもっとたくさんの活躍の場があるのかもしれない。
さらに開発地も過疎地も増えていくこれからの時代、エリアマネジメントの需要はもっと増していくはず。そこで先陣を切っていくのがクオルという会社なのだと思う。
(2017/12/12 取材 森田曜光)