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のびやかに暮らす淡路島

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

兵庫・淡路島にcasa carina(カーサ・カリーナ)という宿泊施設があります。

大阪湾から朝日がのぼる絶好のロケーションに、3棟の貸別荘とコンテナハウス、グランピングエリアとカフェ&ショップが点在。

夏季はどの部屋もいっぱいになるほどの人気だそうです。

貸別荘はホテルや旅館と違い、対面でのおもてなしの機会はほとんどありません。滞在客はまるで自分の別荘を訪ねたように、自由に過ごす。部屋にはキッチンや洗濯機なども設置されているため、長期滞在も可能です。

運営側からすると、それは一見楽な仕事のようにも思えます。casa carinaも、はじまりは代表の辻本さんが持て余していた物件をWebに掲載したのがきっかけでした。

「基本はお客さんを迎える準備をし、滞在後に清掃するシンプルな仕事です。ただ、お客さんがどうしたら喜ぶかなと考えて準備するか、機械的にバーっとやるかでは、やっぱり違っていて。そういう気遣いって、必ずお客さんに伝わると思うんです」

直接顔を合わせる機会が少ないからこそ、お客さんに対する人一倍の思いやりが大切な仕事です。それは、いわゆる対人スキルのようなものとは少し性質が異なるんじゃないかな、とも思う。

そんなcasa carinaのスタッフとして、貸別荘の管理運営を中心に、事業戦略や新規企画の立案などにも携わる人を募集します。


東京駅から新神戸駅までは、新幹線で3時間弱。

そこからさらに1時間ほどバスに乗り、淡路島へ。

バスターミナルに到着すると、casa carinaのスタッフである仲田さんが迎えに来てくれていた。

「わたし、淡路島出身なんです。前は明石のほうに出ていたこともあったんですけど、電車が窮屈で、人酔いしちゃったりして。島には電車がないので、慣れないんですよね」

「高校は船で通ってました。神戸のほうまで片道12分ぐらいだし、500円で乗れるんですよ」

今でも出かけるときは、よく船を利用するそう。

個人的にはその感覚のほうが驚きだったけれど、地元の人にとっては当たり前のことらしい。

「淡路島はちょうどいい田舎で。ちょっと行けば神戸にも近いし、自然も豊かです。今の仕事も、家の近くで自然に触れながらマイペースに仕事したいなと思って探していたときに見つけました」

今働いているのは、淡路島出身のパート・アルバイトスタッフの方がほとんど。仲田さんもほかの仕事と掛け持ちで働いている。

冬はお客さんの数も少なく、週に1、2回の出勤だけれど、夏場には何日も連続してシフトに入ることも。季節によって働き方も変わってくる。

「夏は備品を抱えたまま階段を上り下りするのが大変です。汗もたくさんかきます。逆に冬は割と余裕があるので、このままここで寝転べたらいいなあなんて思いながら、のんびり清掃しています(笑)」

今回の募集は契約社員での雇用となる。こうした通常の業務に加え、普段なかなかできないメンテナンスや、通年でいかに集客するかという事業戦略、新規企画の立案などにも携わるという。


車は大きな通りから脇道に入り、上り坂をのぼっていく。小高い山の中腹まで上がると、視界の右側が一気に開けて、山の向こうに大阪湾が見えた。

この一帯がcasa carinaの敷地。地元の人でもなかなか上がってこない道だから、はじめて訪れる人には「こんなところがあったの!」と驚かれることも多いという。

眺めがきれいな一方で、仲田さんの話していた通り、斜面に設置されている階段を上り下りするのはなかなか大変そうだ。

カフェ&ショップ「lilla(リラ)」に向かうと、代表の辻本さんが迎えてくれた。
「もともとここは主人の経営する設計会社の保養所として使っていたんです。淡路が大好きで、毎週末に娘と家族3人で遊びに来ていて」

「ただ、ほかの社員は年に数回しか来ない。3棟もコテージがあるのに、2棟はほとんど活かされていなかったんですね。それで一回Webに貸別荘として出してみたら、ものすごい反響で。あれよあれよという間に、わたしたちの泊まる場所はなくなりました(笑)」

貸別荘として運営をはじめたのが8年前。

それから急いでコンテナハウスをつくり、お客さんの要望を受けてグランピングスペースをつくった。今はないけれどツリーハウスもつくったし、ちょっと空いた時間を過ごせる場所があったらいいなと思ってカフェ&ショップ「lilla」もつくった。
普段は兵庫・芦屋のアトリエでお花の仕事をしている辻本さん。週末だけこちらにやってきて、日々さまざまな課題に対応している。

「気持ちが開放的になったお子さんがベッドの上ではしゃいで、バキッ!とか(笑)。そしたら知り合いの大工さんに頼まなきゃいけなかったり、細々とあります。みなさんすごく喜んでくださるので、それはやりがいなんですけどね」

備品の補充や清掃はパート・アルバイトのスタッフでも対応できるけれど、ベッドの修理など大きな設備に関わる対応は難しい。

「きれいに使ってくださる方もいれば、これどうするのよって言いたくなるような状況もあります。お客さんによって毎回使われ方が違うので、マニュアルにないことが日々起こる仕事だと思います」

細かな対応や変更については、スタッフ同士のLINEグループでその都度共有。シフトが重ならない人とも話せるように、集まれるスタッフでミーティングを開くこともよくある。

こうした日々の細かな提案や改善はもちろん、新しい提案も辻本さんは柔軟に取り入れてくれる人だと思う。

「自然が好きで、こうしたらいいんじゃないかな?っていうアイデアをたくさん持っている方だといいですね。わたしも新しいことをはじめるのは好きですし、一緒に話しながらどんどんよくしていきたいので」

たとえば、辻本さんはお花の仕事を活かして地元の人向けのリースづくりのワークショップを行ったり、お客さんとの縁でヨガのレッスンやコンサートを開いたりもしている。

ぶどうを育てて自家製ワインをつくる計画もあるし、目の前の海から浮かぶ月を眺めながらお酒を飲めるバーを開いてもいいかもしれない。

今は腰を据えて取り組めるフルタイムのスタッフがいないから実現していないことも多いけれど、入る人次第でいろいろなことができそうだ。

ただ気になるのは、冬季の仕事。

夏季は毎日のように予約が入る一方で、冬季は週末以外の集客が難しい現状だという。

冬の間は、パート・アルバイトスタッフと同じく副業も可能な形になるのでしょうか。

「いえ、できる限りここの仕事に専従していただきたいと思っています」

具体的にはどんなことを?

「夏の間に傷んだ床のワックスがけや修理もそうですし、冬の平日にどうやってお客さんを呼ぶかも一緒に考えたいです。ほかにもSNSを通じた情報発信だったり、スタッフの提案をまとめて春に向けた動き出しをしたり。いろいろとお願いしたいことはあります」

建物の補修や情報発信、新しい企画の立案にしても、愛着を持てないと続かない仕事だろうな。辻本さんやほかのスタッフと一緒に、このcasa carinaという場を育てていくような感覚が大切になりそう。

辻本さんは、どんなときにこの場所に愛着を感じているんだろう。

「ちっちゃいお子さん連れの家族が来て、『ここに住みたーい!』って声が聞こえてきたり。カップルのお客さんでも、テラスから海に向かって『好きだー!』って叫んでるのが聞こえたり。こっちが恥ずかしくなってくるんですけど(笑)、そんな声を聞くのは好きですね」

「それから、年に何回もいらっしゃるリピーターの方がすごく多いんです。近所のどのスーパーの食材がいいとか、地元の人のようにご存知だったり。ここを気に入って何度も訪ねてくださるのは、わたしにとってもうれしいことです」

旅館やホテルの接客と比べれば、直接お客さんと顔を合わせる機会は限られている。だからこそ、ちょっとした反応や些細な一言がうれしいだろうし、お客さんがそこで過ごす時間を想像して準備する楽しみもあると思う。

たとえ対面のコミュニケーションに苦手意識があっても、人を思って仕事したいという人には向いているのかもしれない。


お客さんが部屋に入る一歩目を心地よくしたい。そんな想いでオリジナルのルームスプレーをつくったのが、マネージャーの渡辺さん。

もともと飲食やマッサージ、アパレルなど、いろんな仕事を経験してきた渡辺さん。ルームスプレーに使うアロマオイルの知識は、その過程で身につけたものだそう。

現在はカフェ&ショップ「lilla」のマネージャーとして、軽食やマクロビのジェラートを提案したり、お客さんのチェックインなども担当している。
「ここに至る経緯は、自分でも不思議なんですよ。もともと生まれ育ちが大阪で、結婚したあと、京都の南のほうの茶畑に囲まれた田舎で暮らしていたんです」

「それで、3年前に旅行で淡路に来たときに、ちょっとすごいなと思ったんですね。この土地にすごいものを感じて。大きな木や、古い神社、昔からのものが残っているんですよ。時代をさかのぼれば、日本はこの島から生まれたという言い伝えもあるんです」

何かに引き寄せられるように淡路島にやってきた渡辺さんは、前職のアパレルの経験を活かし、在宅でパターンをつくる仕事をしていた。

次第に外の世界と関わりたいと思うようになり、カフェの手伝いやたまねぎの収穫の仕事などを手伝うなかで、casa carinaに出会ったそうだ。

「ここの眺めは最高ですよね。以前は山に囲まれたところに住んでいたので、開放感がありました。天気も晴れの日がほとんどで、12月までハイビスカスが咲いていたりします。わたしはとても過ごしやすいですね」

人の雰囲気はどうですか。

「みなさんノリがいいんです。一度地元のイベントに参加したら、すぐにどっから来たん?って声をかけてもらえて。知り合いがいなくても、ここから広げていけると思いますよ」

ここ1、2年は関西圏を中心に淡路島自体のメディア露出も多く、以前にも増して移住者が増えているという。

とくに夏場は大きなライブやマルシェがあったり、イベントが重なるほど賑やかになる。関西国際空港から直行の船も通るようになって、海外からもアクセスしやすくなった。

「淡路島は、これからもっと面白くなっていくんじゃないかと思うんですよね」と辻本さん。

ここには古くから続く文化や自然があり、元気な地元の方や移住者もいる。日々の仕事は、お客さんと顔を合わせる機会は限られているぶん、見えない相手を思いやって働く心地よさ、適度な距離感のある仕事だと思います。

自分で暮らし方、働き方も選べる余地がある場所なんじゃないかな。

今の時期は部屋によって空きもあるようだし、一度泊まってみるのもいいかもしれません。

(2017/12/14 取材 中川晃輔)

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