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デリケートな日本人の肌にあう、本当に安全なオーガニックコスメをつくりたい。安全性と効果の両立にこだわり抜いた「OSAJI」の製品は、そんな思いから生まれました。
今回は、OSAJIの店舗で使うポップやラッピング、パッケージなどのデザインを担当する人を募集します。
「うちの製品は、長く使ってはじめてその良さを実感できる。まずは使ってみようというきっかけになるデザインがほしい」
代表の茂田さんは、そんなふうに考えています。
ブランドとしては、今年で2年目。まだ走り出したばかりです。
デザインにも、ルールや枠組みはまだありません。
OSAJIのアイデンティティを、これから一緒につくっていける人を探しています。
東京・東日本橋
年季の入った建物や昔からの問屋さん、それに新築の大きなマンションなどが混在する街。
一本路地を入ると、保育園児の列とすれ違う。
時々姿を見せるスカイツリーを横目に、駅から5分ほど歩いて事務所に到着。
入るとすぐに商談用のスペース。ちょうど工事用のブルーシートが建物を覆っていたけど、それでも窓の多い空間には光もよく入る。奥にカウンターがあるので、カフェのようにも見える。
パーテーションの奥に小さなワークスペース。ここがスタッフの仕事場になる。
OSAJIの母体となっているのは、1959年創業の日東電化工業株式会社。メッキ加工などを専門に扱うメーカーで、本社は群馬県にある。2004年に、化粧品を扱うヘルスケア事業部が発足して、東日本橋の営業所ができたのが2年前。
商談用のテーブルの奥、カウンターでは白衣姿の男性が何か作業をしている。
ビーカーに攪拌器。実際にここで化粧品がつくられているのだろうか。
営業所と聞いて想像するイメージとはちょっと違っていた。
この日、年賀会の準備のために代表の茂田さんは会場に行っているというので、事務所を出て目黒に向かう。
茂田さんが待っていてくれたのはカフェの二階。アトリエのようなスペース。
早速、営業所で疑問に思ったことを聞いてみる。
あそこでは商品開発などもしているんですか?
「そうなんです。工場は群馬にあるんですが、東京にはOEMの取引先もあるので、話をしながらその場で確認できるような環境をつくりたかったんです」
確かに、カウンター越しに対面するとバーテンダーのようで、話しやすそう。
製品開発って、もっと秘密裏なイメージだったので意外な感じもする。
「別に隠すこともないかな、と思って。見せられるものはなるべく隠さないようにしたほうがいいでしょ」
なんだかとても潔い。
その茂田さんの化粧品づくりも、自宅のキッチンからはじまった。
それまで、音楽業界にいた茂田さんが、化粧品の仕事をするようになったのは、身近な人の体験がきっかけだった。
「母親が交通事故をきっかけに肌トラブルを起こして、それまで好きだったオーガニックや植物由来の化粧品が使えなくなったことがあったんです」
食品にも使われるような植物原料が、肌に塗ると刺激になってしまう。
デリケートな状態だった肌の問題を最終的に解決したのは、植物だけでなくケミカルな原料も含まれた製品だった。
「当たり前だと思ったことと逆のことが起きて、化粧品って一体なんだろうという興味が湧いたんです」
そこから独学で化粧品をつくりはじめ、温泉旅館のプライベートブランドなどを手伝いながら、企画開発を進めてきた。
2年前、オーガニックコスメブランドとして、OSAJIがスタート。
ただ、オーガニックなら必ずしも安全だというわけではない。
そのことを、目の当たりにしてきただけに、オーガニックコスメの流行には、当初反発もあった。
ただオーガニックという言葉に抗うだけでは、植物が本当に安全だと信じている人を救えない。
そのためにはオーガニックの植物原料でありながら、ちゃんと安全な化粧品を提供したい。
人の肌にトラブルを起こす原因を追求するうえで、茂田さんが拠り所にしたのは、皮膚科学だった。
「たとえば、肌を守ろうとして外から化粧品を与えすぎると、肌の自浄作用は落ちていく。与えなければ、バリア機能が高くなって健康にはなるけど、それが高まりすぎると今度は美から離れていく」
「健康と美は、一直線上にはない。でも女性はどっちも譲れないわけでしょ」
健康で自立した、美しい肌。
それが両立できるわずかなポイントを探しながら、必要最低限のケアを提案する。お母さんの悩みからはじまった、化粧品づくりは今でもどこか、”なんとかしてあげたい”という思いがあるように見える。
「OSAJIのミッションは、化粧品を売ることではないんです。そもそも肌に起きるすべてのトラブルを化粧品で解決できるという発想が、僕はきらいだから」
茂田さんは、そう言い切る。
たしかに食生活やストレスのような生理的な要因でも、肌の調子は日々変わっていく。
「健康な肌であるために、心を豊かにする提案も、今後のOSAJIの方向性のひとつかもしれない。アーティストとデザインボトルをつくったり、ミュージシャンとコラボレーションしても楽しいかもしれない。やろうと思えば、色々考えられますよ」
そんな可能性もあるなんて。
となりに座っているスタッフも少しびっくりしているように思えた。
デザインを担当する人も、自由な提案がしやすいのかもしれない。
「自己表現したいと言う気持ちは大切にしたい。ただ、仕事としての楽しさは、思いつくことじゃなくて、それが形になること。きちんとプロセスまで考えられていれば、やってみればいいじゃん、って言えると思う」
OSAJIは、今いるスタッフが、それぞれの個性をパズルのように組み合わせて、ブランドそのものをつくっている時期。デザイナーは今回初めて募集する職種だし、縛られるルールはない代わりに、自分で何かしたいという強い意思がなければうまく仕事はできないかもしれない。
「今まで一人でできなかったことが、ここにいることで挑戦できる、この仕事を通じてそういう経験をして欲しい」
なるほど。どんな人と働きたいですか?
「僕は、人とは違うところにエネルギーを注ぐような人が好きで、いつもちょっと変わり者を選んでしまうからな…」
茂田さんが「変わり者」と話しながら視線を向けている先にいるのが、「俺?」と笑っている遠藤さんだった。
茂田さんの誘いで入社したひとりで、OSAJIの営業責任者でもある。今回募集するデザイナーにとっては直属の上司になる人だ。
前職では、オーガニックコットンを扱う会社で営業をしていて、そのころから、茂田さんとは展示会などで顔をあわせることもあった。
和気あいあいとして楽しそうな会社。最初はそんな印象だったという。
「仕事、面白そうですねって言ったら、『俺んち、来ないか?』みたいな感じで誘ってもらって。悩んだんですが、茂田さんの魅力に惹かれて入社しました」
茂田さんの魅力とは?
「意見を言うと、ちゃんと聞いてくれるんです。もちろん、運営に関してはシビアな面もあるので、ダメなときはちゃんとダメだって言ってくれますし」
何か新しいことをはじめるとき、多少リスクがあっても、攻めるときには攻める。経営にメリハリがあって、営業として挑戦できる環境は、仕事が前に進んでいる実感を持てるという。
今回、新たにデザイン担当を募集するのも、その挑戦のひとつ。
「今はベーシックなものが多いんですが、今後はもっと期間限定のギフトセットやディスプレイモデルも考えたい。お客さんとつながる仕掛けが増やせるといいですね」
実際に手を動かしてつくっていくので、IllustratorやPhotoshopなどのソフトの基本操作は知っていたほうがいい。
それができれば、仕事としてのデザイン経験は必須ではないという。
OSAJIのデザインは今、外注のデザイナーに頼んだり、遠藤さんが営業の合間に自分でつくったりしているので、どうしてもニーズに追いつかない部分もある。
それでも日々、店舗のスタッフから色々な声が届く。
“二月になったら、そろそろお店に春らしさが欲しい”
“ポップが見えづらい”
お客さんと接する販売スタッフならではの視点。新しく入る人にも、その声をデザインのヒントにして欲しいという。
だから、デザイナーで働く人にも、はじめの2週間くらいは店頭に立って欲しいそう。
そのあとは店舗スタッフの言葉を頼りにデザインを進めていくことになる。
実際にどんな人が働いているのだろう?
11月にオープンした上野店で働く森さんは、もともと谷中にあるOSAJI一号店の常連さんだった方。甘酒を飲みに通ううち、スキンケアも使うようになり、”肌の健康”というブランドの理念に共感して、半年前にスタッフになった。
森さんだけでなく、実際にプライベートでも製品を愛用しているスタッフは多い。
実感がこもっているだけに、製品のこともディスプレイのことも、スタッフの意見は辛辣なこともあるという。
「みんな、結構思ったことを言いますよ。そういうやり取りも含めて、今まさに、ゼロからブランドをつくるために会社が動いているのを感じています」
動いている感じ。
販売のあり方もそうかもしれない。
販売スタッフは当初、ブランド名が示す「お匙」つまりお医者さんのように肌の悩みに寄り添うようアドバイザーのような役割ができたら、と考えられていた。
ただ、実際の店舗では、助言するというよりも話を聞く役割。
会話をしていると、お客さんは「まずは使ってみるわね」と買って帰って、何度か通ううちに、自分にあった使い方を見つけていくことも多いという。
「ボディ用のゲルでヘアケアをしている、というお客さんもいます。あくまでボディ用なので、効果は人それぞれだと思いますが、”どこにつけても安心”という実感を持ってくれるのはうれしいです」
スタッフになった今も、森さんはOSAJIの製品を愛用し続けている。
「どれも使いやすいですが、”ローソープ”はすごいですよ」
ローソープはペースト状の洗顔石鹸。瓶に入ったパッケージも、ヨーグルトのようで、どこかかわいらしい。
石鹸が完全に固形化する前の状態、いわば途中の状態で仕上げているので、”半熟石鹸”ともいう。そうすることで、通常捨ててしまう保湿成分を残すことができる。
「保湿力も高い。けど、さっぱりもしているんです。泡にすごい弾力があって、私も触りたいから、店頭でも、よく実演しています。本当に今、触らせたいくらい!泡がすごく気持ちいいんです」
使えばわかります!と、森さんはとても楽しそう。
使えばわかる。
品質にこだわった製品だからこそ、逆に言葉では伝えきれないこともある。
まず手に取ってもらうまでの距離をどうやって縮めるか。
OSAJIでの、最初のデザインの仕事は、そんなテーマかもしれません。
(2018/1/12 取材 高橋佑香子)