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無駄のないものづくり

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「1人でも多くの“つくりたい”を形にしていきたいんです」

そう話すのは、光伸プランニング代表の原さん。

光伸プランニングは、独自のプリント技術で幅広いものづくりに取り組んできた会社です。

たとえば、屋外広告や店舗のサイン・ディスプレイなど、空間を構成する巨大なもの。そのほかにも、iPhoneケースやマグネットなどのミュージアムグッズ、さらには外部のデザイナーとともにユニークなオリジナル商品も企画・販売しています。

今回募集するのは、インクジェットプリンターによってさまざまな素材や形の製品にプリントを施す独自技術「D-print」事業部の企画営業スタッフと、制作スタッフ。ともに経験は問いません。
ものづくりが好きな人。とりわけ、ひとつのものだけでなく、いろんなものづくりに関わっていきたいという人には面白い仕事だと思います。


東京・渋谷。

地下鉄の明治神宮前駅から渋谷駅の方面に向けて、明治通りをまっすぐ歩く。

5分ほど歩き、右手に現れたビルの1階が光伸プランニングのオフィス。

見た目は普通のオフィスビル。なかに入って会議室のところまで来ると「ウィーン、ウィーン…」とかすかな機械音が反復して聞こえてくる。

「この壁の向こう側が制作現場なんですよ」

そう教えてくれたのは、代表の原さん。創業37年になる光伸プランニングの2代目で、先代のお父さんから代表を継いで6年目になる。

なかを案内してもらうと、屋外広告に使われる大きなシートが作業台の上に広げられていたり、見たこともない大きさのプリンターが何台も並んでいたり、とにかくスケールが大きい。

「わたしはこの場所を“都心工房”と呼んでいて」

都心工房?

「ここから40〜50分離れたところのほうが賃料も安いんです。それでも、都心にいるからこそ、新しいアイデアが入ってきたり、思ってもみない人との交流が生まれて、自分たちのレベルも上がっていくのだと思っています」

たとえば、光伸プランニングが2012年から取り組んできた「モノプリ」というプロジェクト。

社外のグラフィックデザイナーとプロダクトデザイナーによって考案された製品を、光伸プランニングの技術で形にするというものだ。

羽根ペンやメッシュのバッグ、金属製のカトラリーや凹凸のあるコンクリート素材など、さまざまな素材や形のものにプリントを施すことで、オリジナルプロダクトを生み出してきた。

プリントと聞いて思い浮かぶのは、パンフレットや名刺、Tシャツのような平らな布地ぐらいのものだったので、そのバリエーションの豊富さに驚いた。

「これらは、D-printという独自の技術を使ってプリントしているんです」
一体どんな印刷技術なのだろう。

「ポイントは、インクを定着させることです。ぼくらがいろいろ探してたどり着いた下地処理の方法があって、ある液体を塗布してからプリントすることで剥がれにくくしていたり。あるいは、プリントしたあとにコーティングしたり」

プリンター自体はほかの会社でも扱っているものだそう。だからこそ、下地処理とコーティングが肝心。どんな素材にプリントするかによっても処理の方法は異なるという。

それから、プリントする対象物の固定のしかたにも工夫がある。

「形の一つずつ異なる石にプリントしてほしい、という相談を受けたことがあって。石の平らな面にプリントできるよう、粘土を使って角度を調整したり。ほかにも特殊な形のものにプリントするときは、“ジグ”と呼ばれる固定器具を考えて自作したりもします」

対象物の形は毎回異なるため、すべてに当てはまる方法を用意することができない。袋状のものは印刷面が平たくなるように詰めものをしたり、インクが散りやすい形状なら、汚れてほしくない部分にマスキングテープを貼ったり、意外と地道な工程も多い。

その細かな気配りや工夫がプリントの美しさや保ちのよさにつながり、結果としてデザイナーや企業の信頼を得てきたのだそう。

ただ、モノプリは今年の3月で一旦クローズ。

一部の人気商品を継続販売しながら、新たな方向性を今まさに探っているところだという。

D-printという独自技術もあるし、築いてきた信頼やネットワークもある。
なぜ、このタイミングで舵をきろうと思ったのでしょうか。

「いろんなデザイナーさんと一緒に仕事をさせていただくなかで、高いレベルのものづくりを求められ、それに応える形でぼくらも技術を磨いてきました。1人でも多くの“つくりたい”を形に、という想いも変わってはいません」

「とはいえ、これまでは応えることで精いっぱいだったんですよ。つくったものを、どこへ、どうやって届けていくか。世の中の流れや時代の変化に合わせながら、つくった先まで考えることがこれから必要なんじゃないかと思っています」

その足がかりとして、取り組みはじめていることがある。

ミッフィーの作者として世界的に知られているディック・ブルーナさんのキャラクター「ブラック・ベア」のライセンスを取得。文房具や雑貨などのオリジナル商品を企画開発し、販売していく計画を立てている。

誰かの“つくりたい”を形にする。今後はそれを自分たち発信で“届けたい”。

そう考えると、新しく入る人は営業やマーケティングの経験があったほうがいいんでしょうか。

「具体的なスキルはあとから学んで身につけていけると思うんです。けれども、興味関心って人から教わるものじゃない。もの自体だったり、ものづくりが好きかどうか。そこは一緒に働くうえで絶対に外せないポイントだと思います」


企画営業担当の稲川さんは、まさにものづくりが好きで光伸プランニングに入社した方。

ものづくりといっても、大学時代の専攻は服飾だった。

1年ほど制作のアルバイトスタッフとして現場を経験したあと、2年目以降は正社員として営業の仕事を任されるように。

「商品や技術については、実際に手を動かしたり、お客さんとやりとりするうちに興味が湧いてきたという感じですね。ものづくりは全般的に好きだけれど、この会社のこれが好き!というわけではありませんでした」

営業も制作も、どちらも特別なスキルが求められるわけではなく、実際に取り組みながら学んでいったという。

「Illustratorも何も使えないような状態で。ただ、コミュニケーション能力だけはあったと思います(笑)」
コミュニケーション能力。

「わたしの場合、好きなアーティストさんと一緒に仕事がしたいと思ったら、うちの技術をもって何かお手伝いできないか?とまずお声かけをしていきます。最近だと、あるイラストレーターの方の作品を一緒につくらせていただきました」

透明なアクリルの表と裏に別々の絵柄をプリントし、1枚で遠近感を感じさせる作品を制作。

光伸プランニングでは、以前から1個単位での制作も行っていたものの、アーティストの一点モノの作品として仕上げることはなかった。

D-printの新しい可能性がそこにあるんじゃないか、と稲川さんは話す。
「方向性として、うちはそこまで大きなメーカーではないですし、価格競争には乗れません。これからは、いかに付加価値をつけていけるかが大事だと思うんですよね」

たとえば、稲川さんの担当したアーティストの作品のように技術を応用して価値の高い一点モノをつくることもできるし、サイン・ディスプレイの技術と組み合わせれば、D-printによって空間全体をプロデュースすることができるかもしれない。
現状、全体の案件の8割は、美術館の企画展にあわせたグッズ制作など、既存のクライアントからの依頼や口コミによるものだそう。

そうしたつながりも丁寧に継承しながら、営業の興味関心と行動力次第で、さらに事業の幅を広げていけそうな気もする。

「何事も、まずやってみないとわからないことが多いんですよね。できるかどうかわからないグレーゾーンなら、まずやらせてくださいって」

端材やサンプルがあるならば、ひとまず持ち帰ってプリントしてみる。前例がなくても案外そこでできてしまうこともあるし、失敗してもそれは社内の貴重なノウハウとして蓄積されてゆく。


「お米にプリントを依頼されたこともありますよ」

そんなエピソードを紹介してくれたのは、制作担当の飯塚さん。

「世界一小さな広告をつくりたい、という依頼でした。お米でも、あの大きなプリンターを使うんです(笑)」

試行錯誤を重ね、一粒のお米の表面に4文字までプリントできるように。

それでも表示できる文字数が足りず、残念ながら正式な受注には至らなかったそう。

「単純に、“つくりたい”っていう気持ちに応えたかったんですね。最後までちゃんと仕事につなげたかったんですが…」

あれだけがんばったのに…!と思ってしまいませんか?

「ほかの会社でできなかったことについて、『あそこなら!』と依頼をいただけるのはうれしいですよね。それに、お米に4文字までプリントできるということがわかれば、別の機会に小さいものへのプリントを依頼されたとき、ここまでならできますよって示せる。無駄にはならないんです」

飯塚さんの言葉からは、前向きなものづくりの姿勢が伝わってくる。

10年前から制作を担当している飯塚さん。入った当初は、稲川さんと同じく経験やスキルはほとんどなかったという。

「会社に育ててもらったという感じはしますね。この10年間の蓄積で自信をつけさせてもらいましたし、新しいことに挑戦するのを拒まなくなってきたと思います」

大変に感じることはありませんか。

「納期が短いことも多いので、それは大変かもしれません。営業と制作の距離感はかなり近いので、密にコミュニケーションをとりながら進めていきます」

納期など事務的なことに限らず、加工の方法や制作の方向性など、意見を交わしながらものをつくっていく。

営業担当の人が制作の仕事を知るためにも、最初は制作現場に入って一緒に手を動かす時間も設ける予定だという。

「ものを売るというより、D-printの技術を、お客さんの課題解決のためにどう活かしていけるか。そこが本質なんですよね。営業の人にはものづくりの過程を知っていてほしいし、制作のスタッフもそれがどうやって人に届いていくか、考えないといけない」
「今は会社としても変化の時期だと思うんです。変わるのは大変なことでもあるんですけど、失敗したらダメ、ということはないですし。新しく入る人も一緒に、D-printの可能性を楽しみながら探っていけたらと思っています」
光伸プランニングのものづくりには、無駄がない。

それは常に成功してきたからではなく、失敗すらも糧にして、新しいことに挑戦し続けてきたからだと思います。

営業と制作、それぞれの立場からD-printの次なる一歩をともに踏み出す人を募集しています。
(2018/3/12 取材 中川晃輔)