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この道に魅せられて

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何か1つのことを極めている人って、かっこいいなあと思います。

そういう人たちに話を聞いてみると、はじめたきっかけは曖昧だったり、意外にも単純だったりするもの。続けていくうちに魅力にはまって、その道のプロフェッショナルになっている。

今回紹介するのは、そんなふうにイタリア料理や飲食の仕事に魅せられた人たちが働く場所です。

日本橋にあるイタリアンレストラン、“プラナバルカ“。ホールとキッチンのスタッフをそれぞれ募集します。

未経験でも大丈夫。この記事がきっかけで、はじまる道もあると思います。

 
水天宮前駅から歩いて10分ほど。日本橋蛎殻町はオフィス街でありながら、マンションも多い住宅街としての顔もある。

通りを歩いていると、イタリアの国旗が下げられたお店が目に入った。

ここが、プラナバルカ。

サンスクリット語で「エネルギーの源」を意味するPuranaと、イタリア語で「帆船」を意味するBarca。このレストランという船での旅を最上のものにしてほしい、という思いで名付けられた。今年で開業11年目になる。

休憩中の店内にお邪魔して、マネージャーの近藤さんにまずお話を伺った。

「母と兄が飲食業をやっていた影響で、小さいころから飲食に興味がありました。小学校の卒業文集にレストランをやりたいって書いたくらい」

その思いはずっと変わらず、将来飲食店に関わるためにと商業高校へ進学。その後上京して働いた六本木のカフェバーで、はじめてイタリア料理を知った。

「そこで出す料理が本格的なイタリアンだったんです。伝票も、厨房にオーダーを通すのもイタリア語を使うところで。そこではじめて、イタリアンって面白いんだなあって知りましたね」

そこから勉強をはじめ、イタリアンレストランの店長も務めた。

その他にも、割烹やタイ料理店の店長、ホテルの責任者なども経験。このお店には3年ほど前から勤めている。

ピザやパスタの印象が強いイタリア料理。そもそもどんな特徴があるのだろう。

「イタリア料理は、和食と似ているんですよ」

意外な答えが返ってくる。

「タコとかイカとか米とか、日本で手に入る食材でつくれるんです。ソースも、フレンチみたいにこってりしたものじゃなくて、さらっと食べられる。素材の味を生かしているのも、和食と一緒なんです」

そういう考え方をするのははじめてだったけれど、言われてみればピザだって、具材をそのまま乗せて焼く、素材の味を存分に生かした料理。

イタリア料理の名前は複雑で、メニューは呪文のようなんだとか。お客さまにもよく質問をされるそう。

「たとえば、“アクアパッツァ”って何ですかってお客さまに聞かれたら、魚介を水とトマトとオリーブオイルで煮込んだものですって答えます。それ以外にも「アクア」は水で、「パッツァ」は暴れるっていう意味で、油に水を入れて料理するときに水が跳ねることに由来しているんですよって伝えたりね」

最初は誰でも覚えるのに苦労するけれど、それができることでお客さまとのコミュニケーションにつながる。

「バックストーリーとか、覚えていけばきっと面白いと思います。料理を好きになってワインも知りたくなったり、州の名前を覚えてそのうち旅行にも行きたくなったり」

「我々もまだまだなので、一緒に勉強していけたらいいですね」

いきなり完璧に覚える必要はないけれど、興味を持つことはとても大切。

近藤さんが若いときは、イタリア語を話せたらかっこいい、というのがモチベーションだったそう。

「かっこいいことって、興味を持つし覚えていくんです。他の人より知識があったらかっこいい、話せたらかっこいいとか。はじめる動機はなんでもいいんです。彼女に自慢したいとかでもね(笑)」

大切なのはきっかけではなくて、それを続けていけるかどうか。

「飲食店の仕事の良いところは、つくった商品が、エンドユーザーに直接届くことなんですよ」

「たとえば、買った車が壊れてもセールスマンはすぐ対処できないでしょう。でも僕らは何かあったらその場で対応できるし、お客さまの要望に沿ってカスタマイズできる。これほど面白いことはないですよ」

お店という1つの建物の中に、つくる人から売る人、食べる人まで。この仕組みは、飲食店だけのもの。

「たとえば最近だと、ステーキを食べていたご年配の女性から、『醤油出して』って要望がありました。あとはキッチンと連携して、40人規模の宴会でベジタリアンの方1人だけに対応したり。自分たちにとっても勉強になるんですよ」

よほどの無理難題でなければ対応する。それがきっかけでリピートにつながったときは、やって良かったと思える瞬間なんだそう。

 
次にお話を聞くのは、ホールスタッフの川端さん。ここに勤めて6年になる。

「はじめて就職したときから飲食ですね。最初のきっかけは…もう思い出せないなあ」

もともと、プラナバルカにはアルバイトとして入った。転職を考えたこともあったけれど、最終的にはここで続けていくと決断。自ら申し出て、昨年社員に登用された。

「せっかく残るって決めたので、だったら社員でお願いできますか、って。大きく変わったことはないですけど、売り上げのこととかはアルバイトのとき以上に考えるようになりましたね」

1日の仕事は、お店の掃除から始まる。その後に朝礼をして、ランチの準備。オフィス街なのでランチタイムはとても忙しく、1時間でお客さま70人ほどに対応するそう。

「それが終わって2、3時間休憩を取った後に、今度は夕礼をしてディナーになります。片付けと次の日の準備をして、仕事が終わるのは夜の11時くらい」

一見華やかな世界に見られがちだけど、時間も遅いし、裏では力仕事も汚れ仕事もある。

「なかなかハードですよ。自分でお店が持ちたいとか、ここで勉強したいとか、そういう強い意思があったほうがいいかもしれない」

日々働くなかで、常連のお客さまと会えることが、楽しみの1つ。

サラリーマンの方が多い平日と比べ、休日にはご近所さんもよく訪れる。

「印象に残っているお客さまはたくさんいます。ペットOKなエリアがあるので、日曜のランチにワンちゃん連れでいらっしゃる方や、来たら絶対同じピザとピクルスしか食べない方とか。だんだん顔も覚えていきます」

「昨年は10周年記念で、2000円で食べ飲み放題のイベントをやったんです。子どもから大人まで近所の方がたくさん来てくれて、すごく盛り上がりました。お客さまからも好評だったし、わたしたちスタッフも楽しくて。15周年、20周年もやりたいですね」

お客さんのことを話すときの川端さんはとても楽しそう。

「ずっと飲食で働いている1番の理由は、お客さまの喜ぶ顔が見たいってことだと思いますね。お客さまに喜んでもらえることが自分の喜びというか。結局ずっと続けているのは、もうこの仕事が好きとしか言いようがないと思います」

目の前で相手の喜ぶ顔が見られることも飲食業の醍醐味。このやりがいを一度感じたら、簡単には離れられないのかも。

 
最後にお話を伺うのは、お店を立ち上げたときから働くシェフの渡辺さん。

「僕が働きはじめた20歳くらいのころは、ティラミスがブームだったんですよ。ティラミスつくれたらいいなあってところからはじまって、25年間ずっとイタリアンのコックですね」

当初はイタリア料理と聞いても、スパゲッティとピザくらいしか知らなかった。勉強をしていくうちに、いろいろなことがわかってきたんだとか。

「当時は日本に同じ食材がないから、レストランでも模してつくってたんですよ。たとえばジェノベーゼはバジルの代わりに大葉でつくったり。本場のイタリアンのことを本で読むと、普段食べているものと全然違う。それでまた興味が湧いて」

イタリア料理は、一度知ってしまったら離れられないんだそう。

「調べれば調べるほど、わからないことがどんどん出てくるんです。25年やり続けているけど、知らないこともまだまだあるし。どの料理もそうかもしれないけれど、日々勉強ですね」

「まだまだ途中だし、全然終わらないです」

25年やっても、まだ途中。いくらでも知らないことが出てくる面白さに、いまも魅了され続けている。

ここのキッチンで働く人は、まず皿洗いの仕事からはじめる。そのなかで食材や道具の名前を覚えながら、他のスタッフともコミュニケーションを取って、お店の空気に慣れてもらう。

その後、経験者にはできる仕事を任せていくし、未経験者なら野菜や魚の処理の方法などから学んでもらう。

未経験者でもいいというのは、ちょっと意外に感じる。

「きっとここに入って来る人って、料理人になりたいとかお店を持ちたいとか、何か目標があると思うんです。その意思を貫ける人なら、未経験でもいいんですよ」

渡辺さん自身も調理師学校を経験しないでレストランに就職し、働きながら現場で勉強してきた。若いときは、仕事が遅くて毎日怒られていた時期もあったそう。

「仕事をしていると、辛いことも辞めたくなることもあります。でも、それはここで働くみんなが通ってきた道。辛くても『自分はやりたいんだ』って意思が大切だと思うんです。そこに料理の経験は関係ないんですよね」

短時間にオーダーがたくさん入るのは日常茶飯事。大変だけれど、不安に感じることはないんだそう。

「自分が担当のオーダーが重なると、どうしても1人じゃ対応できなくなるんです。そんなときは、周りのスタッフがすぐに察して手伝ってくれる。もちろん僕も察したら手伝うし、助け合いですよね。近くにいてくれるから、どんなに忙しくても大丈夫って思えるんです」

「それでも料理が遅れちゃったら、今度はホールがお客さまに伝えてくれるし。キッチンだけの話じゃなくて、1つのお店として、お客さまに満足してもらえるように心がけていますから」

 
夕方17時30分。ディナーに向けて夕礼がはじまる。

カルパッチョに使う魚の種類や、お通しのメニューをみんなで共有。終わると、「よろしくお願いします」の掛け声とともに、一斉にディナーの準備に動き出す。

テキパキと動きつつ、新しく仕入れたオレンジをスタッフみんなで試食して、楽しそうに、でも真剣に意見を言い合っている。

キッチンもホールも関係なく試食するのは、みんなでつくるお店だから。

率直なやりとりを聞いていて、お互いを信頼しているのが伝わってきます。

 
ここで働くのは、この道に魅せられて、極めてきた人たち。

その働く姿はすごくかっこいい。

次にお店を訪れるときは、この記事がきっかけで入った人に会えたらうれしいです。

(2018/4/3取材 増田早紀)

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