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まるで宝箱のような

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

文房具にブローチ、洋服にお菓子…

ちょっと遊び心があってかわいらしい。このお店に置かれているものは、特別なきらめきを持っているように見える。

日本のカッコイイを集めたお土産屋さん、katakana(カタカナ)は、まるで宝箱のような場所でした。

お店に並ぶのは、まだ世に広く知られていない日本のいいものたち。自分たちでものづくりの現場を訪ねて、商品の背景にあるストーリーまで光を当て、魅力を伝えています。

今回募集するのは、オンラインストアやHP、SNSを担当するWEBスタッフ。あわせてプレス向けの情報発信をする広報スタッフも募集します。

もちろんWEBと広報のどちらもできる、という人も歓迎します。


東京・自由が丘。

電車を降りて、ゆるやかな上り坂を進む。洋服屋や雑貨店が立ちならぶ通りを5分ほど歩いたところで、katakanaを見つけた。

軒先にはオレンジジュースの瓶がきれいに並べられている。もう一方の入口には、ワールドカップの真っ最中とあって、青靴下やポテトチップスが。

「ちょっと見ていこうよ」と話すお客さんにつられて扉を開けると、色とりどりの雑貨が目の前に広がった。

動物をモチーフにしたブローチや、手縫いの革財布。波佐見焼のマグカップに、詩集や絵本まで。

何を手にとるか迷ってしまうほど、たくさんの商品がお店に詰まっている。

「このお店に置いてあるものは、すべて日本のものです。伝統工芸や和雑貨のようなものだけじゃなくて、日常で使えて、ワクワクするようなものを集めたお店にしたいなって思っています」

そう迎えてくれたのは、お店と同じく柔らかな雰囲気を持つ代表の河野さん。

katakanaを開くまでは、アパレル会社で働いていた河野さん。いつかは自分で洋服店を開きたいという夢も持っていたそう。

転機の一つとなったのは、およそ15年前。奥さんの闘病中に、曲げわっぱに出会ったことだ。

「妻は働きながら闘病していたんですが、薬の副作用で味覚がなくなってしまって。空腹感も消えてしまって、大好きだった食事が、薬を飲むための作業の時間になってしまっていたんです」

そんなある日、奥さんに「記念日に曲げわっぱが欲しい」とお願いされた河野さん。

曲げわっぱとは木でできたお弁当箱で、秋田県・大館の伝統工芸品。プレゼントした翌日、さっそくお弁当を使ってみた奥さんは、きれいに食べきって「おいしかった」と河野さんに話したそう。

「ええ、本当?いつもほとんど残しているのに、って。お弁当箱で味が違うなんて、正直あまり信じられなかった。ぼくも曲げわっぱを貸してもらったら、本当においしかったんです。ごはんが全然ちがうの」

「それまで昔ながらの家に飾ってあるようなものだと思っていた日本の伝統工芸品が、ガラリと変わって見えて。いまも残っている日本のものって、ひょっとしたらとてもすごいものなんじゃないかって思いはじめたんです」

さらに仕事でも、海外の友人たちが『河野の持っている文房具は格好いい』と言ってくれた。

そのとき手にしていたのは、日本製の文房具。洋服の上から下まで海外のものが格好いいと思っていた河野さんには驚きだったそう。

もしかしたら、日本には格好いいものがたくさんあるのかもしれない。

二つの体験を通して、そんな気持ちを抱いた河野さん。こうして日本でつくられた良いものが集まる空間、katakanaが生まれた。

katakanaにとって何より大切なのが、商品のセレクト。

雑貨に洋服、お菓子など、お店に並ぶ商品は、年に何度か全国各地へ「さがしモノの旅」に出て発掘している。

「流行りの商品をインターネットで仕入れることもできるんです。けれどぼくはできれば自分で現地に行って、どんな人がつくっているのか、どんな質感なのか、直接きちんと話したり感じたりして仕入れをしたくて」

「やっぱり仕入れる商品には、一つひとつ理由があるんです」

理由がある。

「たとえばこのアサヒシューズという靴もそう。ここの営業さんは2年間も熱心に通ってくださって、商品の魅力や、つくり手の思いを話してくれました。商品そのものの魅力はもちろん、ものへの愛や思いがきちんと深まっている。ぼくにはそんなものがすごく魅力的に、キラキラ輝いて見えるんです」

「ものの魅力はもちろんだけど、セレクトする上で大切にしているのはやっぱり人です。つくり手の思いを知って選んだ商品を、自信を持って、大切に売っていきたいと思っています」

自分たちが心からいいと思った商品を、大切に伝える。接客も、ただ数字を上げるためだけのものにはしたくないという。

「カタカナをはじめるときに、ツバメノートというノートだけをつくる会社に商談に行って。ノート1冊に対して2時間半かかっても商談が終わらなかったんです」

「ノート1冊にこんなに物語が詰まっているなら、お客さまにもより深く知っていただくための接客をしたい。そのほうが、お客さまも楽しく買い物をしていただける気がするんです」

もっと多くの人に商品の魅力を知ってもらうために、これから力を入れようとしているのがオンラインショップ。

直接お店に行けないお客さんにも、お店にいるような雰囲気で、ものを見たり選んだりする楽しさを味わってほしい。

「お店のような雰囲気といっても、やみくもに品数を増やしていこうということではなくて。やっぱり商品一つひとつの背景をきちんと丁寧に伝えていくのがkatakanaらしさになると思っています」

いまオンラインショップに掲載されている商品数はお店の1割ほどで、選りすぐりの商品を商品ページやブログ、SNSで紹介している。

商品を見つけたきっかけやつくり手のことを、文章や写真を使いながら丁寧に伝えていく。今後は、そのスタンスを大切にしながら品数も少しずつ増やしていく予定。

「ぼくは、オンラインショップって、お店と同じだと思っているんです。つくり手から聞いた話を、お店では口頭で、オンラインショップでは言葉で伝える。その根っこは何も変わらない」

「お店に立っていると、お客さまが商品を見てニヤッとする瞬間があって。お客さまの期待を超えられた瞬間なんです。それがもう、たまらないんですよね」



現在、katakanaのWEBと広報を担っているのが皆川さん。

実は今年7月にkatakanaを離れる予定。今回の募集は、皆川さんの後任を探したいという思いからはじまっている。

皆川さんは、はじめてお店を訪れたときのことを今でも覚えているという。

「私がいま使っているシャープペンシルはここで買ったものです。ぺんてるという会社の『KERRY』っていうものなんですけど、何気なく見ていたら、スタッフが『キャップをしめるときのカチッていう音がいいんですよ』って話しかけてくれて」

「話を聞くうちに、買う予定なんてなかったのに思わずレジに持って行っちゃったんです(笑)。不思議なお店だな、ってずっと興味を持っていました」

そんな折、前職の仕事でkatakanaを紹介する文章を書くことに。そのつながりで声がかかり、3年前にメンバーに加わった。

はじめてしばらくは、目標の数字になかなか届かず苦労したという。

「WEBはPV数やシェア数、CVRなどでお客さまの反応がダイレクトに伝わります。私は紙媒体の業界が長くて、WEBの経験はほとんどありませんでした。新鮮で面白くもあったけど難しくもあって、商品の打ち出し方やタイミングも、迷いながら進めていました」

皆川さんにとって大きなきっかけとなったのが「春財布」の特集を組んだこと。

春財布とは、お金でいっぱいになった財布の「張る」と、季節の「春」をかけたもの。財布は新春から初夏までよく売れると聞いて、特集を組むことにしたそう。

「それまでは、あらゆる企画を立てて新しい商品を紹介しては売れず…を繰り返していたんですが、その時期はお財布に絞ってうち出すことにしたんです。春財布の選び方やおすすめの商品をまとめたブログを3本ほど書いて。多くの方に見ていただけて、はじめて目標をクリアしました」

「どれももともと販売していた商品なんです。しかも自分を含めスタッフが実際に使っていたりして、自信を持っていいといえるものだったし、つくり手さんや選んだ河野の思いがきちんとあるものだった。katakanaらしさを持っていたから、いい結果を出せたんだと思います」

商品の見せ方をどう編集していくかによって、お客さんの反応もぐっと変わってくる。このように積み重ねてきたノウハウは、社内の他のスタッフとも共有されているそう。

さらにお店では、全国各地のつくり手さんを紹介するため、毎週末マルシェを開催している。皆川さんは広報として、その様子をSNSで紹介するなど、お店と事務所を行き来しながら働いている。

「お店に行くと、スタッフが『最近、この商品の問合せが増えてますよ』と教えてくれて、それならオンラインでも買えるようにしたら、遠方のお客さまが喜んでくれるかも、とWEBの方針が決まることもあります」

「お店からヒントを得ることが多いので、オンラインだけではなく、いろんなことに首をつっ込みたい、という人に向いている職場だと思います。ものや人と関われるのが面白さですね」

なかでも印象に残っているのが、hirariという手縫いの革作家さん。河野さんにアトリエに連れて行ってもらって、直接話を聞いたそう。

「現場に足を運ぶ機会はなかなかないので、すごく貴重な体験でした。作業の様子も見させてもらって、商品からは窺い知れない作家さんの想いや葛藤といった背景も聞くことができて」

インタビューをブログにまとめたところ、作家さんも喜んでくれた。

「人が見えると、ものの見方も変わりますね。つくり手さんの顔が浮かんで、応援したくなるんです。もっとたくさんの人に知ってほしいって。反対に、その気持ちがないとお客さまにも響かない」

「やっぱり商品や人に親しみを持って書いた文章は、熱量がある。文章を書くスキルはやっているうちに身につきます。いちばん大切なのは、伝えたいって気持ちだと思うんです。その思いがあれば、きっと大丈夫だと思います」


最後に紹介してもらったのは、津川さん。前回の募集で入社した方で、保育士として10年ほど勤めたあと、katakanaの店舗スタッフとしてやって来た。

「このお店に並ぶものは、小さなノート一つにもきちんと物語があるんです。ちゃんとお客さまに伝えていかないといけない難しさもある。でもいまは、知らなかったことを知れる楽しさのほうがずっと大きいです」

働くようになって、驚いたことがあるという。それは、お客さんと話していると「このお店、すごいね」と言ってもらえること。

「お店をじっくり見て、面白いものが揃っているねとか、どうやって選んでいるの?って聞いてくれるんです。わざわざ口に出して伝えてくれるのが、すごいなって」

「また来るねって言ってもらえるとうれしいし、きっとこのお店には何かあるんだろうなって思います」

katakanaに流れる不思議な空気。

手にとる商品から伝わる思いが、katakanaをつくり上げているのかもしれません。

(2018/06/28 取材 遠藤真利奈)

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