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森が家になるまで -組み立てる編-

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こんにちは。日本仕事百貨の並木仁美です。

森が家になるまでを追いかける旅。いよいよ最終回です。

前回「整える編」では、山から切り出され、製材所で木材へと加工された木。今回は大工さんの手によってついに家になります。


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とうとう迎えた最終日。まだ5月とは思えないほど、日差しが強くて気温も高い。まるで夏がきたよう。

今日は東白川村を出て、可児市まで向かいます。距離は車で1時間くらい。そこに、お話を聞かせていただく大工さんの現場があるとのこと。

村にいるときには見かけない、ホームセンターや大型のドラックストアの前を通り抜け、現場に到着。

「うわ、緊張する。うまくしゃべれるかな」と言いながらも、さわやかな笑顔で迎えてくれたのは、大工の今井章弘(あきひろ)さんです。

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なんとなくみんなで作業しているような現場を想像していたけれど、今日はお一人でしかも作業はほとんど終わってしまったらしい。

「まだ土台しかないですけど、ここに注文住宅が建つ予定です。雨が降っても大丈夫なように、もうブルーシートでぴしっと覆っちゃいました」

どうぞ、と車に積んだクーラーボックスから出してくれた缶コーヒーを飲みながら、お話を聞くことにする。

「僕は東白川村の出身で。今は村内に住んどって、東白川専属の大工ってなると僕が一番若いみたいっすね。今年で33歳です」

「父親が大工で、一緒にはじめたのがきっかけですね。半年くらい、村外に出て家具屋さんで働いたんですけど。父親が忙しい時期があったもんで、たまに日曜日とか手伝っとったんです。それがいつのまにか、会社辞めて毎日働くようになった。それからずっとですね」

大工になったのは19 歳のとき。父親に教えてもらいながら、仕事をはじめた。

「家をつくるには、いろんな業者さんが関わるんですけど。大工が家の下地をつくっていくような感じ。屋根の下地とか、壁の下地。そういうものをつくったあとに、屋根屋さんや板金屋さんが施工されるんで、家の基礎はやっぱ大工が一番重要だと思いますね」

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「仕事は、9割がた一般住宅です。だいたい岐阜か愛知県が多いですね」

今、この現場はどんな状況なんですか。

「今日は朝から床の下に断熱材を入れる作業をしてました。昼からは床の下地になる板をはって。2日後に建前があって、柱や梁なんかを組み上げるんでその材料を搬入したっていう感じです」

毎日、同じ仕事を続けることはほとんどない。柱をたてて、床をはり、天井を組んで。カウンターやテレビ台をつくることもある。

「家にある工場で作業することは、今は少なくなってますけど。削ったり加工したりすることはありますね。ここの屋根の材料は、今回化粧なんで。昔の家みたいに」

化粧?

「なんだろ、木を見せるっていうのかな。塗装したり、覆ったりしないで木そのものを見せるつくりなんです」

覆い隠さずに見せられるということは、それだけの腕があるということ。大工さんの技術が問われ、木の良さも引き立つ。

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けれども、最近では和室をつくっても柱が見えないつくりにしたり、扉も取り付けるだけになったりと、腕の見せどころは減ってきている。

「やっぱり村民としてね。せっかくいい木があるんだから見せたいですよね。だって村のほとんどが木っすよ?こんなに山に囲まれて育つなんて、普通ありえないでしょ」

東白川村で育つ東濃ヒノキは、他の産地とは異なり淡いピンク色をしている。脂分が多く艶がいい。加工性が高く粘りがあって、強度も優れている。

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そんな優れた木材だから、古くから神社建築に使われてきた。高い技術が求められる社殿建築に関わる大工たちの名誉ある呼称として「白川大工」という言葉が生まれたと言われている。

「東白川は一刻な人が多いですよね」

一刻? 

「頑固という意味。みんな絶対自分がいい家をつくるっていう、大工としてのプライドがある。そういうのはあって当たり前だもんで」

「大工が一人前になるには5年かかるって言われるけど、東白川では10年でやっと現場を任されるんです。やっぱり減ってきているとはいえ、東白川は昔ながらの手でつくる加工が残ってるんで。僕も10年越えたけどまだまだだと思います」

昔は柱を組み合わせるときの組み部分などは、ノミを使って手作業でつくっていた。今ではプレカットと呼ばれる機械を使い、決まった形を素早く正確につくり出す技術がある。この技術によって、工期の短縮やコスト削減にもつながった。

大手の住宅メーカーでは、工場でつくった部品を組み立てるだけでできる家もある。

ただ、複雑な造形や、美しい仕上がりは手仕事が果たす役割はまだまだ大きい。

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「だけど、いいと思っていることでもあんまり予算をかけられなかったりとか。質にこだわりながら、利益も出さないといけない。難しいところですね」

「あとは当たり前だけど、図面通りじゃないとお客さんも設計士さんも納得されないので。設計図通りに狂いがないようにっていうのは、一番気を使います」

家一軒、数千万円ぶんの責任とそこに暮らす家族の未来も背負って、仕事を果たす。

「あとは暑くても寒くても、外で作業ですからね。今日も炎天下だけど屋根もない。だけど、どれだけえらかろう(大変だろう)が、大工なんで」

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章弘さんたち東白川村の大工さんが、誇りを持って家づくりをしている一方で、全国的にみても住宅の着工戸数は減り続けている。毎年新しい住宅に入居するのは、全国の世帯のわずか約2%ほどだ。

村も、そんな状況にただ手をこまねいているわけじゃない。

東白川村では、東濃ヒノキと白川大工の技術をもっと活かしていきたいと、工務店などの事業者とお施主さんを仲介するインターネットサービス「フォレスタイル」を展開している。

自治体が運営しているという安心感と、東白川の木をつかって低コストで木造住宅が建てられること、そして住宅の性能・デザイン・価格を比較できるという住まい手視点の仕組みが評価されて、着実に戸数を増やしている。

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「技術はあっても、価格が上がったらニーズに合わないし。お客さんのニーズにどれだけ合わせられるかっていうところは僕らも考えています。役場や工務店さんとも協力して、もっと東白川村っていうブランドを出していけたらいいなって思います」

官民一体というか、誰も他人事として関わっている人がいないのが、この村のすごいところだと思う。

「やっぱ自分の生まれた村が好きですからね」

どういうところが好きですか。

「子育てしやすいんじゃないですかね。中学生とかになっても、みんな非行に走らない。いい子ばっかりです。まぁ悪さするような場所もないんですけど(笑)」

「あとは…そういえば僕、東白川が好きやからこの前家を建てたんです。自分の家は自分でつくるっていうのが、一つの夢で。一から図面引いて、自分で決めてつくりました。家族も養っていくんで大変ですけど、まぁでもやっぱり、自分の家は大事なので」

大工さんのお休みは日曜日。休みの日は家族でショッピングセンターに出かけたりして過ごすのだそう。

「あ、でも最近は消防で忙しいっすね」

消防、というのは消防団の訓練のこと。だけど、都会で行われるような消火器を使う簡単な訓練ではありません。

実際に見せてもらったら、消防署にいる消防員が行うような、ホースを使って水をかける本格的な消火訓練だった。

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ここまで本格的だとは、予想外です。

「当たり前じゃないっすか。村民の生命と財産を守っているんですよ。たぶんある程度の年齢の人は外から来た人も必ず入ると思います。面倒かもしれないけど、地域にも早く溶けこめるんじゃないかな」

そういえば、最初にお話を聞いた渡辺さんも田口さんも、消防訓練の話をしていたっけ。そうやって、役割を果たすことで居場所ができていくんだな。

それを負担と感じるか、楽しめるか。この村でなら、なんとかやっていけるような気もする。

最後に、章弘さんはこれからどんな大工を目指しているのか聞いてみた。

「やっぱり、親父の背中をずっと見て育って、仕事も一緒にやってきたんで、親父を超えたいっていうのはありますね。まずは親父のような職人になりたい」

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「儲かるように手を抜くこともできるかもしれないけど、やっぱり納得できる以上のものをつくって、お客さんによろこんでもらいたいですね」

自分にも、お客さんにもごまかしのない仕事。私も自分の気持ちに正直に、胸を張って誇れるような仕事を続けていきたいな。なんだか清々しい気持ちになりました。



山から木が切り出されて、家をつくるところまでを見てきた、今回の旅。

話を聞くほどに、林業は仕事というよりも山と共に生きる生き方そのものなんじゃないかと感じています。

私は東京で緑を見かけるたびに、その緑がどれだけの手間と時間をかけて育ったものなのか、東白川村で会った人の顔を思い出しながら考えるようになりました。

よかったらぜひ、東白川村を訪ねてみてください。

このコラムが、少しでも林業に興味を持つきっかけになったらうれしいです。


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大工の仕事に興味をお持ちの方は、お気軽に東白川村役場産業振興課までご連絡ください。メールでのお問い合わせはこちらから。
507sanshin@vill.higashishirakawa.gifu.jp



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