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第11回「その後、どうですか?」

日本仕事百貨の記事をきっかけに、新しい環境で仕事をスタートさせたひとたちに会いに行くコラム『その後、どうですか?』。

今回は、日本仕事百貨のオフィスからもほど近い東京・清澄白河で、特注家具をつくるニシザキ工芸を訪ねました。


ニシザキ工芸は、大正時代から90年以上も続く老舗の会社。空間に合わせたオーダーメイドの家具やキッチンの製作、家具塗装、アンティークや文化財の修復まで幅広く手掛けています。

お話を伺ったのは、入社されて1年経った営業製作課の柴さん。

東京都出身の26歳で、大学時代に起業をして雑貨の輸出販売をしていた方です。
背伸びをしていない、親しみやすい雰囲気が印象的でした。

今は先輩に付いて、出来上がった家具の取り付けなどを担当しています。そしてなんとこの度、塗装職人の奥さまと社内結婚をすることに!

転職と結婚が決まったこの1年。一体、何があったのでしょうか。

(聞き手:今井夕華)



—まずはご結婚おめでとうございます!

ありがとうございます、恥ずかしいですね(笑)。

—結婚の話も聞きたいところですが、まずはこの会社で働くことになる経緯から教えてください。

就職活動がうまくいかなくて。4年生の夏に休学を決めたんです。就職は一旦諦めて、海外に出てみようかなと。

休学中は、東南アジアとアフリカを合計3ヶ月ほど回りました。

日本に戻ってきて、さあ就職するぞ、ということになったのですが、またうまくいかなかった。そこで以前から興味があった起業に、友人と二人で挑戦してみようと思ったんです。

輸出や輸入だったらはじめやすい、ということで、ネットを通して日本の商品を海外向けに販売していました。英語はペラペラではなかったですが、メールを通してのやりとりだったので問題はなかったですね。


—どんな商品を扱っていたんですか?

まんがやアニメのキャラクターをモチーフにしたおもちゃが多くて。普段使っているようなボールペンや文房具、台所用品のスライサーや包丁など、日本製のものはかなり人気でしたね。

日本のメーカーが海外に直接輸出していないものや、海外ウケのいいものをリサーチして、ヨーロッパやアメリカを中心に、頼まれれば世界中に送っていました。

—うまくいっていたそうですが、どうしてやめようと?

お客さまも満足してくれていたし、やりがいもありました。

だけど、自分がつくったものじゃなかったから、そこまでのめり込むことができなかったんですよね。

たとえば商品の出来が悪くてクレームになっても、僕たちは扱いをやめたり処分するだけ。メーカーに意見を言うこともないし、改善されるわけでもない。

どこかのだれかがつくった商品を、需要さえあれば仕入れて販売する、ということにだんだんと違和感を感じていきました。

赤字だったわけではないし、むしろ上り調子だったんですよ。でも起業してから2年でやめました。

そのあとすぐに仕事を探したわけじゃなくて。海外に行ったときに、お金がなくても幸せに暮らしている人たちを見ていたので、急いで次の仕事を探す!というよりは「いい巡り合わせがあれば就職しようかな」くらいに考えていましたね。

そこでたまたま日本仕事百貨にたどり着いたんです。

今までのように既製品を扱うというよりも、もっとものづくりの近くで働きたいな、という想いでいろいろな求人を見ていました。

衣食住に関するものなら、納得してできると思ったんですよね。

—自分が納得できるかどうかって、大事ですよね。

そうなんです。もちろん、すべての人が家具を必要としているわけじゃないけど、学生時代に中古の家具屋でアルバイトしていたこともあったので。僕にとって家具は身近な存在でした。

記事を読んで、体力が必要なこともわかっていたし、大変だということも覚悟していました。「未経験でも大丈夫」という言葉が決め手でしたね。

—お仕事ではどんなことをやっているんですか?

今はまだ修行の身なので、上司に付いて建築現場に行って、職人さんと一緒に出来上がった家具を設置しています。

たとえば、1ミリ大きさが変わるだけでも印象が変わってくるので、そういった感覚を養うためにも、建築の知識を増やすためにも、現場に出るんですよね。

先輩たちからも「少なくとも3年は経験しないと」と言われています。そのあとでやっと、簡単なものから自分で担当させてもらえるのかな。


—ニシザキ工芸のお客さんって、かなり立派なお家も多いですよね。

そうですね。数千万もするような絵とか壺も置いてあるのでヒヤヒヤしますよ。

—1年間働いてみて、印象的だったことはありましたか?

入社して半年くらいに担当した、新築の邸宅ですかね。螺旋階段を施工しました。

—階段もつくるんですね。

そうなんですよ。頼まれれば、ある程度はなんでもつくります。


弧を描いているので、通常よりも位置を出すのが難しくて。それに土台は鉄骨でつくって、カーブのついたガラスも入れるんです。

ガラス屋さんに指示を出してつくってもらうのですが、このレベルだと発注できるところも限られる。鉄骨と合わせてみて「カーブが緩かったからもう少しきつくしてください」といっても、納期や金額を考えるとつくり直すことはできないわけですよ。

少しずれるだけでも、取り返しがつかなくなるんですよね。どんなに大きなものでも、ミリ単位で仕事をするんだ、ということを実感しました。

—ぴったり合ったときは感動するでしょうね。これはやっちゃったな、という失敗はありましたか?

職人さんが使う高価な機械を壊してしまったことですかね。

基本的には職人さんの「手元」というのが僕の役目なんですけど。

—手元?

たとえば「あれ取って」と言われたら取って渡しますし、大きなものを一緒に運んだりするんです。

当時の現場は高所作業が多くて足場が組んであったのですが、職人さんと一緒に足場で作業をしていたとき、自分の不注意で手に持っていた木材の端切れを高いところから落としてしまって。

そしたら下に置いてあった、職人さんが使うレーザーの水平器にぶつかって、水平器がスコーンと飛んでいってしまったんです!

少しでも狂うと仕事にならないくらい、大切な道具だったのですが……。職人さんには「みんな一回はやるよね」と励まされました(笑)。


—現場には何人くらいで取り掛かるのでしょうか。

プロダクトマネージャーの先輩と家具取り付けの職人さん1人か2人という形が多いですね。建設現場だと、ほかの業者さんも来ているので、それぞれのプロがたくさんいるんだなあと驚きました。

うちは「家具屋さん」ですけど、壁紙のことを担当する「クロス屋さん」、塗り壁を担当する「左官屋さん」、「タイル屋さん」に、大きい水槽を入れる「水槽屋さん」もいました。

みんな「なになに屋さん」って呼んでいて、まったく建設業界を知らなかった僕からすると、かなり新鮮でしたね。


—自宅に水槽があるなんてすごいです(笑)。それにしてもプロの職人さんたちって、カッコよさそうですね。

やっぱり現場特有の空気感があって。みなさん職人気質の人が多くて、個性が強いんです。最初は怖かったですけど、慣れてくれば意外とそんなこともなくて。もちろん、こっちがちゃんとしていればの話ですけどね。

あとは業界特有の言葉も面白いですよ。

—専門用語でしょうか?

たとえば「チリは何ミリだな」とか「ダイワはこれくらいで」とかって業者さん同士が打ち合わせしてるんですけど、最初は何が何だかさっぱり分かりませんでした。

これも一種の外国語だな、と思いましたね(笑)。未だに現場で話しかけられると怖いですよ。

その場所にいれば、まだボディーランゲージもできるのですが、電話口やメールだと本当に伝わっているか確認できないので不安ですね。


—ぜひ最後に、ご結婚の話も聞かせてください。

たまたま新人研修のときに、僕を担当してくれた塗装職人が今の奥さんでした。

ニシザキの強みは「塗り」と言われています。塗装のことを知らないとニシザキの仕事はできないということで、営業で入社した人も塗装の修行をするんですが、そのときに今の奥さんの下についていました。

一緒にご飯を食べたり話したりする機会も多かったですし、将来的に僕が塗装の職人になるわけではなかったのに、真摯に教えてくれて。

わあ、恥ずかしいですね、これ(笑)。

—いいお話です。すぐに結婚することになったんですか?

20人ほどの小さな会社内で付き合うからには、結婚は意識していました。僕のまわりで結婚している人は全然いなかったですし、早いほうでしたね。

結婚したいと思う人が現れたらそのときに、と思っていたらこうなりました。

—仕事も結婚も、いい巡り合わせがあったんですね。しかもニシザキ工芸さん、なんと社内ではすでに8組ものご夫婦が誕生しているとか。やっぱり先輩に相談したりするんでしょうか。

実は僕たちもギリギリまで言っていなくて。みなさん話さないらしいですよ。

最初に報告したのは先輩だったのですが、驚いた後に「おめでとう」と言ってくれましたね。大声をあげて「え〜!」という感じではなかったですけど(笑)。

社長は涙を流して喜んでくれました。


—このコラムのご依頼をいただいたときもすごくうれしそうでした。これからの柴さんのご活躍、とても楽しみにしています。末長くお幸せに!


*ニシザキ工芸は過去に求人をしています。よろしければ、こちらもぜひご覧ください。

「デザインから搬入まで」
「塗師になる」

*お話を聞いた柴さんが3/2に「しごとバー」に登場します。詳細は追ってイベントページに掲載しますので、ぜひ直接お話を聞いてみてくださいね!

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