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人生に迷う女性に捧ぐ「しごととわたし」


これはしごとゼミ「文章で生きるゼミ」に参加された久野恵里さんによる卒業制作コラムになります。

文章で生きるゼミは伝えるよりも伝わることを大切にしながら文章を書いていくためのゼミです。2017年12月20日(水)まで、第4期生の募集しています。

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女性の生き方は選択の連続だ。これまでも、今も、そしてその先も。

数年前、迷いを抱えていた自分が偶然手にした美しいフリーペーパー。それが「しごととわたし」だった。

毎号違う女性に「仕事と生き方」について聞いていくインタビュー誌。

ここには単純な「仕事に邁進することが人生」も、「結婚こそ幸せ」も載っていない。それぞれの人の生きた過程、そこで苦しんだことと喜びがつづられている。

これは自分同様、選択に迷っている女性のヒントになる、と感じた。そして、男性にとっては揺れ動く女心を垣間見られる貴重な資料になる、とも。

発行から数年経った今読み返しても、色あせないその魅力はなんだろう。編集と執筆を担当した梶山ひろみさんに、お話を伺いました。


梶山さんは熊本県熊本市出身。東京の大学を卒業後、編集・ライター業に携わっています。彼女が仕事について考え始めたきっかけは、いったい何だったのでしょう。

「きっかけは、自営業で税理士をしている父の存在が大きいと思います。元旦から事務所に行くような、仕事が趣味の人で、お金はしっかり稼いでいて。そういう姿を見ていて、『私は何をしてごはんを食べていくんだろう?』と高校生の頃にはっきりと思うようになりました」

「高校の進路学習の一環で、気になる職業人にインタビューをするという課題があって、当時気になっていたカフェのオーナーさんに、手紙で質問をしました。そしたら、『進路学習ということなのでお答えします』とお返事がきて。それから、『この方法はいいかも!』と思い、周りの大人に質問するようになりました。そうやって話を聞くことを大学卒業まで続けました」

「なんでその仕事についたのか」「何を大切にして仕事をしているのか」

気になる大人にそう問い続けた梶山さんは、遂にそれを形にします。彼女が大学4年生の時につくった、「しごととわたし」の前身となる小冊子がこちら。


「好きなことを仕事にする」をテーマにしたこのインタビュー本は、彼女の卒業作品及び就職用のポートフォリオとなりました。

そして、この後「しごととわたし」がつくられることに。その原動力のひとつになったのは再び、父親の一言。

「父は私が東京に出ることも、編集の仕事をすることにも反対していました。就職は熊本でと言われていて。でも、私は東京にいたいから対立しました」

「就職が決まったとき、アパートの契約のために一緒に不動産屋に行ったんですよ。その時に父が真顔で『なんで女は結婚して子供を産むのが幸せなのに、そんな仕事につくんだ』というようなことを言ったんです。このときの『なんで決めつけるんだろう?』という気持ちも『しごととわたし』に込められています」

こうして梶山さんが自分ごととして始めたフリーペーパーづくり。しかし、仕事との両立はなかなかうまくいかなかった。

「2012年4月、フリーペーパーと仕事がほぼ同時にスタートしたので、とても大変でした。ある方のインタビュー中に、仕事の電話がかかってきたことがありました。電話口で問い詰められて、もうパニックになっちゃって。そしたら、私の様子を見たその方が、『今すぐ仕事をしたほうがいいんじゃない?』と言ってくださり、そのままアトリエをお借りして作業させてもらうことになりました。本当にひどい話です。そのときは感謝と申し訳なさでいっぱいでした」

そこまでして、なぜ「しごととわたし」を出したのでしょう。


「この『しごととわたし』は、女性が仕事をしていくことは、一体どんなことなんだろうという疑問の解決と、自分を勇気づけるためにはじめました。なので、はじまりは自分のためでした。でも、きっと私と同じように思っている人もいるはずだから、その人たちのためにもなったらいいなあって、思っていたような気がします」

「今でもそうですが、インタビューをすると、『そんなことがあったんだ』『そこでそう切り替えたんだ』というような発見があります。自分の人生のみでは出会えなかった出来事や想いに触れたり、わからなかったことがわかるようになる。そういう瞬間がありがたくて楽しいから、つづけられたんだと思います」

仕事、結婚、出産、ほかの様々なことに、わからなさや辛さを抱えている女性のためにつくられたフリーペーパー。発行部数は1000部から徐々に増えていき3000部へ。そして、2014年には今までの内容を再編集した本が完成。


残念ながら、「しごととわたし」は14号をもって休刊。けれどもこの書籍を読んでみると、世代も職業も違う女性たちの、筋の通った生き方に出会うことができる。フリーペーパーが放っていた熱量や豊かさも、失われていない。

現在梶山さんは大学時代の友人で、「しごととわたし」の写真を担当したカメラマンと結婚し、ライターの仕事を続けている。それはインタビューを重ね、様々な価値観に触れたからこそ辿り着いた「今」なのだろう。

最後に語ってくれたのは、現在の仕事観。

「自分の興味、関心から生まれるものを大事にしていきたいです。お金の大切さは身にしみてわかるし、それがないと生きることすらできないけれど、それでも、自分がやりたいと思えることを続けていきたい」
 
これからも彼女の発信が、誰かの役に立つことを願って。

プロフィール
1988年熊本県生まれ。
フリーランスの編集者、雑誌編集部のアシスタントを経験し、2015年6月に独立。
フリーランスのライターとして執筆を続ける。2012年に創刊したフリーペーパー『しごととわたし』、書籍『しごととわたし』(イースト・プレス)では編集・執筆を担当。その他、親の反対と子の夢をテーマにしたインタビュー誌『舵をとる人』や、夫婦の人生をかたちにするプロジェクト『quilt』を手がける。

(2017/12/20 久野 恵里)

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