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移り住む人たち − 福井編 − 第3回「等身大な人」

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いつか理想の地に移り住みたい。

東京で暮らしながら、ときどきそんなことを思います。

でも、どこに住むのかはっきり決めるのって難しいです。生きていくための仕事が必要だし、どの地域にも自分にとっての一長一短があります。

実際に移住した人たちは、何をきっかけに移り住み、その地で生きていくことにしたのだろう。

今回は、福井県を訪ねました。

はじめは数年で出て行くつもりだったけれど、7年を経て会社を立ち上げることになった人。大企業を退職して離れていた地元に戻り、ゲストハウスをはじめた人。そして、陶芸家を目指してその土地にたどり着いた人。

3人のお話を、全3回でお伝えします。

>>第1回「面白がれる人」
>>第2回「舞台に上がった人」

第3回は、福井県越前町に工房「実生窯(みしょうがま)」を構える陶芸作家の新藤聡子さんです。

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聞いたことありません?カップの口の造りによってコーヒーの味が変わるんですって。

舌の先は甘味を感じやすくて、奥は苦味らしくて。口の造りによって一番最初に触れる味覚が変わるから、味も変わってしまうんですって。けど、何だかなぁと思って。そこまで分かっちゃうと、焼物の形が制限されちゃうじゃないですか。

私のつくる焼物は粉引(こひき)という技法を使っていて、茶色い土の上に白泥を化粧掛けするんです。このスタイルはずっと変わらないですね。この辺りでは茶色い土がよく採れて、白土は山の入り口にある崖のようなところから自分で採ってきます。真っ白だったりちょっと茶色かったり、採るたびに毎回違う。土に合わせてつくってみようというタイプなので、私の焼物は素材にとても影響されますね。

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埼玉の所沢生まれです。あまり取り柄のない子だったんですよ。勉強が抜きん出ていたわけでもなくて、美術だけは何となくしっくり感じていた。美術の先生になれたらいいなと思って大学に入ったんですけど、教育実習に行って子供と関わるのはえらい大変だと実感して。これは無理だな、どうしようと思ったとき、教えるんじゃなくて自分でつくるほうがいいなって。つくるなら伝統工芸、それも人が日常で使うものがいい。思い浮かんだのが、焼き物でした。

最初は奈良へ行きました。けど、先生とうまくいかなくて、半年くらいで実家へ帰ったんです。しばらく染物と焼物のアトリエでお手伝いしながら、アルバイトばかりして。このままじゃ仕方がないって思ったとき、福井県の窯業指導所の話を聞いて。越前焼を受け継ぐ人を指導している県の機関なんですけど、県外からも受け入れてくれるって。ただ、住まいだけは自分でなんとかしなきゃいけない。

アトリエでお世話になっていた焼物の先生が、越前焼の協同組合の方とお知り合いだったんですね。福井へ行ったときには、その方が車で迎えに来てくださったり、下宿の話も通してくださったりして。そういう方がいらっしゃったおかげで、私は福井に来れたし、焼物をはじめることができたんです。

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はじめての福井でした。何もないなぁって思いました。スーパーは1軒しかないのに、夜の7時には閉まっちゃう。いまは十分間に合っているんですけど、はじめは驚きました。

来たのは3月の終わりくらい。研修がはじまる4月まで、どこへ行こうにも町のことが分からなくて。とりあえず地元にある窯元へ行って慣れようと思って、ご縁のあった「たいら窯」に出入りさせてもらいました。研修がはじまってからも、夕方の5時に研修が終わったらたいら窯へ行って、親方の手元を見たりするんです。そのうち「いくらでも練習していいぞ」っていろいろ使わせてくれて。

たいら窯は、平安時代から米や水を貯蔵するために使われていた大きな瓶や壷を「ねじ立て技法」でつくる窯元さんなんです。普通はろくろが回転しているところに自分の手を加えるんですけど、ねじ立て技法は自分が回って仕上げていくんです。それをずっと継承されていたところで。研修期間が終わったあとも、たいら窯の親方に修行させてもらうことになりました。もののあまり動かない時期だったと思うんですけど、そのなかで雇ってもらえたのはすごくありがたかったです。

たいら窯には4年間お世話になりました。朝から夜まで作業して、17時半以降は自分の好きなことをさせてもらえる。焼物の裏には作家のサインが入っていたりするんですけど、私はそういうのがなくても私のだってわかるようなものをつくりたいと思っていて。夜をそういう時間に充てることができたんですね。だから、人と会ったりしている時間がなくて。祝日とかも出勤だったし。その間にいろんな人と疎遠になった感じ。でも、ちょうどよかったです。もともと、こもっているのが好きなタイプなので。

たいら窯にいる間に、この土地に居心地のよさを感じてしまいました。土地の持つ雰囲気というんですかね、おっとりしているんですよ。あんまり人に干渉しないし。この辺りの人も、自分が何をしている人か分かってもらえれば「あそこの〇〇さんね」って感じで。自分のサイクルで仕事がしたかったから、ほっといてもらえるこの土地がいいなって。

この建物も、以前は焼物をしていた人が住んでいたんです。買うのが条件だったんですけど、賃貸の10年分もない金額だったので、私としてはいろいろいじれるほうがよかったし買わせてもらおうって。それを機に2008年に独立して「実生窯」を構えて。そっか、もう10年近くだけど、あっという間ですね。

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冬は窓を締め切るので、外の音が聞こえなくなるんです。時間を忘れますね。というか、時間がわざと早く過ぎてるんじゃないかと思うくらい。集中するときはいいんですけど、流れ作業するときは眠気がすごいです。雪かきのあとは、よくお昼寝しています。

自分一人だといくらでも待てるから、10のことをいっぺんにやらずに、5ずつできるんですよね。わからなければ人に聞くし、無理なら無理ですって断っちゃう。もしくは、これしかできないですけどいいですか?って。分相応というか。一人で生活していると、できることしかしないから、できないことはなくなってきます。

焼物も、別に私じゃなくても、他にできる人はいっぱいいて。黒い器が欲しいんですって言われたら、それは黒い器をつくる人にお願いしてくださいって。私はこの白い土が好きだから。

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ゆっくり時間が流れている気がするんですね。その時間さえも楽しめるような、そういう人たちが増えると豊かになるんじゃないかなって思います。

必ず集まって何かしなきゃいけないわけでもなくて。自分の芯を持って物事の周りをちゃんと見つめられる人がいると、変に寄りかからずにみんながそれぞれ立てる状態になれるというか。そういう関わりがあるといいですね。それぞれが一所懸命やって、気が付いたらひとつの輪になってみんなでつくる、みたいな。

いまちょっと考えているのが「旅茶碗」。茶せんとか茶杓とかお抹茶が全部一緒になって巾着に入っていて、旅行先どこでもお茶が飲めるよっていうアウトドアセットみたいなもの。自分が使いたいんです。魔法瓶と可愛らしいお菓子を一緒に持って出掛けたら、楽しいだろうなって。お椀を私がつくるから、他を誰かできませんかね。

(聞き手:森田曜光)

 

福井に興味があったり住んでみたいという方。福井で開催されるツアーがあります。コラムに登場する方々にも会って話すことができるので、ぜひ参加してみてください。

後
【日時】
平成28年 3月19日(土)・20日(日)

【集合場所】
京都駅発
※集合場所までの交通費は各自負担

【参加費】
大人お一人様5000円、お子様(小学生まで)お一人様3000円

【定員】
10名

【内容】
3月19日(土)
9: 00 京都駅発
11:00 若狭おばま魚センター
12:00 小浜西組まち歩き&交流会・昼食
14:30 福井県海浜自然センター
16:00 かみなか農楽舎にて交流会・夕食
19:00 農家民宿にて宿泊
3月20日(日)
9:30 空き家リノベーションモデルハウス朱種(しゅしゅ)
12:00 越前陶芸村にておろしそばの昼食
13:00 越前陶芸村にて陶芸体験
16:50 京都駅到着

【お問い合わせ】
参加ご希望の方はFAXまたはメールで、参加日時・参加者のお名前・住所・連絡先 をお知らせください。
TEL:0776-25-7201(平日のみ)
FAX:0776-25-7202
E-mail:kuwabara@right-stuff.biz
株式会社ライトスタッフ 担当:桑原

【応募締切】
平成28年3月4日(金)まで

*福井への移住に興味のある方は、下記もご覧ください。
「ふくい移住ナビ」
「ふくいUターンセンター」

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