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思い出の「あの家」に

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

学校が終わったら、ランドセルを投げ捨てて遊びに行った公園。10円玉を握りしめて何を買おうか迷った駄菓子屋さん。毎年の夏休みに過ごした田舎のおばあちゃんち。

みんなそれぞれに持っている、思い出の「あの場所」。

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Mアンジョウ建築研究所の安生さんは、そんな思い出の場を残そうと、東京・中野にある築92年の古民家asagoroをシェアスペースとして運営しています。

今回募集するのは、asagoroを管理・運営し、シェア事業をプロデュースする人です。

たくさんの人に、この古民家を知って利用してもらうため、シェアスペース事業に限らず、さまざまな仕掛けをつくることが期待されています。

 

鷺ノ宮駅の南口から川沿いの道を歩いて、子どもたちが遊んでいる公園を抜ける。

住宅街に通る小坂を上がっていくと、左側に緑濃い敷地が見えてくる。

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木々が覆い隠していて、一見建物が分からないくらい。

東京にもこんな家があるんだと思いながら、「こんにちは」と中に入る。

古い家の懐かしい匂い。土間で靴を脱いでいると、田舎のおばあちゃんちに来たときの感覚を思い出した。

この日は、利用者主催のイベントが開かれる「古民家week」の1日。玄関から見える畳の広間では、親子の撮影会が行なわれていた。

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そのとなりで、3歳くらいの男の子が「きもちいい〜」と畳の上で仰向けになってごろごろしている。

そんなに畳が好きなのかなと不思議に思っていると、「最近は畳のない家も多いですからね」と安生さん。

安生さんは、asagoroを運営するMアンジョウ建築研究所の代表です。

コーポラティブハウスやシェアハウスなど、これまで人のつながりが生まれる事業を手がけてきました。

「これまでシェアハウス事業を数多く手がけてきましたが、建物の共用部であるリビングや庭、軒先・玄関などを半公共的な『街に開かれた』空間として入居者とご近所の方がつながっていければ、そこにはいろんな可能性があるんじゃないかと考えていました」

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2年前に新しくはじめたのが、古民家asagoroでのシェアスペース事業。

asagoroには縁側付の広間と部屋数が多くあって、庭も広い。東京では数少ない“古民家”というキーワードでの差別化ができると判断したという。

asagoroは、元禄時代からこの土地に続く14代目の当主、浅五郎さんが建てた家なのだそう。

大きく立派な梁や柱にも、すすの黒ずみにあたたかさを感じる。

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「東京の都心近くで築100年ほどの民家の建築ってなかなかないじゃないですか。専用の住宅として使うよりも、いろんな人に見てもらって、昔の住空間の雰囲気を感じてほしいなっていう気持ちが、建築に携わるひとりとしてあるんです。もしかしたら、この家も100年後にはなくなってしまうかもしれませんが、ひとりでも多くの人の記憶に残ってもらえたら、この家もうれしいんじゃないかなって」

「みなさんも経験があるかと思うんですけど、建物が取り壊されたりすると、なんとなくそのころの思い出もなくなってしまうような感覚がある。人の記憶に残るという役割が、建築にもあると思うんです」

みんなの記憶に残る、思い出の“あの家”。

そんな存在になってほしいとシェアスペースをはじめたけれど、最初のころはあまり利用者がいなかったという。

というのも、そもそもご近所の方はこの家のことをあまり知らなかったそう。

そこで、まずは知って来てもらうために、さまざまなイベントを企画しはじめた。

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知り合いの写真家を呼んで写真展を開いたり、マルシェを開いて野菜を販売したり。

イベントをはじめてから、だんだんと近所の人がやって来るようになったという。

「『こんな場所があったんですね』って。ベビー服のバザーもやりました。そのときは自分たちでチラシを近所に配って『ベビー服ありませんか?』って、なるべくまわりの人を巻き込んで知ってもらおうと」

「そのうち、地元の方が自分たちでもやりたいって言ってくれるようになりまして。手づくりのアクセサリーやバッグを販売したり、竹細工のワークショップやタロット占いをされたり。近くのパン屋さんはイベントのときに出店されたりして。そのときはワイワイとすごかったな。それでこんどは、利用した人が知り合いに宣伝してくれて。そんなご近所の身近な広がりがあるんです」

その広がりは、ここに集う人たちのつながりも生んでいる。

これまで知らなかったご近所さん同士が仲良くなったり、おとなりさんの主催イベントに参加してその人の趣味をはじめて知ったり。

2回3回と来てくれるリピーターや、知り合いを連れて来てくれる人が増えたという。

「なかなか難しいかもしれないけど、そういう人のつなぎ目になればいいかな。このあたりは新しい団地とかマンションが建って、どんどん新しい人が入ってきているけど、昔から住んでいる人もいて。子どももおばあちゃんも、自然につながっていったらと思います」

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これまで企画したイベント数は100以上。

スペースマッチングサイトやロケ提供サイトなどへの登録も行い、大手企業の会議やテレビ番組の撮影などにも利用されるようになった。

だんだんと収益は上がってきているけれど、まだまだ可能性はあると感じている。お客さんからは「こんな使い方をしたい」とか「こんなふうになったらいいのに」というたくさんの声が届いている。

「よりこの家を利用してもらえるために、ビジネストライすることが必要かなって。だから起業したいと考えている人のほうがいいかもしれないです」

「大小に関係なく、また失敗を恐れないで、いろんなことを仕掛けていきたいです。基本的には、この家の管理マネジメントをやっていただき、その人が楽しみながらこの家を活かした企画や運営をしていって、この家にまた来たいという人がひとりでも増えていくのが一番いいですね」

ここで働いていると、だんだん名前で呼んでもらえるようになっていくと思う。つまり、この家の顔のような存在になるということ。

「理想はそういう人です。将来の夢や目標をもって、チャレンジしたいっていう気持ちが強くあって、仕事が仕事でなくなるような、生活と仕事の境界がないような働き方ができる人だったらいいですね」

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安生さんは、ゆくゆくは事業を新しく入ってきた人に渡したいという思いがあるという。

「うちのスタッフにも、採用するときるから言っているんです。『シェアハウスやそれに関わる事業などで独立してください』って。自分で事業をつくって成功したなら、会社をつくってもらってもいいと思っていて」

なぜ安生さんはそう考えるのだろう。せっかく積み上げてきた大切な事業を手放したくないという人は少なくないと思う。

「これからって安定はないと思うんですよね。常に変化の前に気づいて、自分で何かチャレンジしていかないと食べていけない。安定に入ったとたんにマイナス成長になる。だから常にチャレンジしていける人に入ってほしいなって」

「会社=社会貢献だと思っていますが、無理して急成長しなくても、よろこんでいただける仕事をしっかりと提供しながら、社会に役に立てることができればいい。ただ前提として、自分の健康と心が充実した時間を得ることが、個人的には大切だと思います」

 

この会社は決まったオフィスがなく、仕事環境は自由。ミーティングは都内のカフェなどで必要に応じて行われる。メールのやりとりが基本で、働く時間の使い方はその人に任される。

顔を合わせる回数が少ないので、社内の情報はスタッフ間で共有しオープンにしているという。自由だからこそ「時間」と「仕事」の自己管理と業務遂行ができる人でないと務まらない、とも話していた。

そんな働き方に惹かれてここで働くようになったと、シェア事業責任者の渡部さんは話してくれた。

渡部さんはこれまでシェアハウスの仕事をしながら、asagoroの管理人を兼任してきた。

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以前は工務店で現場監督を務めていたという。結婚を機に退職。その後、仕事を探しているときに、自由な働き方ができるMアンジョウの求人を目にしたそう。

「わたしの概念にはない働き方だったので『あ、こういう会社もあるんだ』って。女性専用のシェアハウスを男性がやっているっていうのも、不思議に思ったのもあって(笑)」

渡部さんのお子さんは1歳半。家にいながら仕事ができるため、子育てと両立しやすい環境だという。

「今後子供が大きくなっていったら、都心からちょっと離れたところで住んで、基本は家で月に何回か都心に出てくるような仕事をするっていうスタイルができたらなって思っていて」

「仕事とプライベートのバランスを自分で調整できる仕事なので、自分のできる範囲内でお金を生んでいくっていう、その感覚を身につける経験ができると思います。この先のビジネスのあり方として考えられるっていうのは、すごく幸せなのかなって」

渡部さんは「働き方が自由だからからこそ、自分のチカラを試してみたい人に向いていると思います」と話していた。

今回加わる人はシェアスペース事業のasagoroをメインに、シェアハウス事業や新規事業開発など社内全般にも関わってもらうという。

ただ、すべての業務を自分だけでやる必要はない。安生さんはこう話してくれた。

「アルバイトやスタッフと仕事の分担したり、時間シフトでワークシェアしたりして、この家を経営する感覚でマネジメントしてもらってもいい。また田舎で古民家を活用したいとか、シェアハウス事業をするための勉強に来てもらってもいいです。可能性はいろいろあると思います」

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asagoroでの事業実績を積んで、また別の場所でシェアスペースすることを計画しているという。

ここでの経験を次に活かせるだろうし、新しい事業への発展もあるかもしれない。

そんな広がりも視野に入れつつ、まずはasagoroをより多くの人に利用してもらえる仕掛けを考えてつくる仕事です。

(2015/9/1 森田曜光)