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patience and diversity

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多様性と聞くどんなイメージを思い浮かべますか?

グローバリゼーション、トランスナショナル、異文化…

国や文化の単位でイメージすることが多いように感じますが、心の持ち方次第で、身近なところにも多様性の欠片が見えてくるのかもしれない。

チューリップ不動産のみなさんの話を聞いて、そんなふうに思いました。

チューリップ不動産 チューリップ不動産は、女性専用のシェアハウスを運営する会社。物価の高い東京で、女性たちが効率的に生活できるように、もっと自己投資する余裕ができるようにと15年前にはじまりました。

今回はここで、一緒にシェアハウスの運営をしていく仲間を募集します。

 


訪れたのは東京・練馬。住宅街のなかにチューリップ不動産の事務所はあります。

まずは代表の水谷さんに、お話を聞きました。

チューリップ不動産 水谷さんは学生時代ロンドンに留学、バックパッカーとしてアフリカやアジアを放浪後、デザイン会社へ入社。結婚や不動産会社でのOLを経て、お子さんの妊娠を機に起業しました。

「子供を育てるかぎり、周りにすごい迷惑をかけてしまう。家庭を大事にしたいから、組織の中では働けない。そう思って、起業を選びました」

「地方から東京に来たりする子も多いなか、女性のほうが待遇も悪いし、正社員率も低い。そのなかで自分に自己投資ができる余裕がないと30歳超えたらデフレスイッチが入り出す。だから女性に特化して、女の子たちが効率的に東京で暮らせる環境を提供したいと思って」

そんなときに考えたのが女性専用のシェアハウスだった。

チューリップ不動産 当時はまだシェアハウスが一般的ではなかったけれども、シェアハウスの文化は広がっていき、最近は女性専用のところもずいぶん増えた。

そんな中で、チューリップ不動産のシェアハウスはさらに進化していく。その特徴のひとつがとてもインターナショナルになってきたこと。入居者にも働くスタッフにも外国人が増えている。

ちなみにチューリップ不動産では、働くスタッフのことをチームメイトと呼んでいる。

「外国人のチームメイトが増えて、まったく違うカルチャーが入って。働く人も、会社の考え方も、どんどんお互いに影響しあいながら変わってきているので、いい方向に進んでいますよ」

「ジェシカたちが来て、違う視点からのマーケティングができるようになったし、華やかに、楽しくなったよね」

そうやって水谷さんが紹介してくれたのがジェシカさん。学生時代の留学を経て、今はワーキングホリデーで日本に来て働いている。

チューリップ不動産 仕事はどうですか?

「ハードですけど、みんな親切でフレンドリーだし、とってもカジュアルですね」

「日本に住むのは大好きだけど、大変なことが多いから、他の外国人を手伝える仕事はいいなと思って、申し込みました」

やっているのは、マーケティングや外国人向けの広報、それに入居者の募集など。

自分の持っている背景や得意なことを活かして、仕事をしている。

「今は新しいビザを申し込んでいますから…結果が良かったら、チューリップ不動産の正社員になりたいです」

チューリップ不動産には、他にもナオミさんとジャンさんという外国人のチームメイトがいる。

チューリップ不動産 みんながそろうと、パーっと会社の雰囲気が明るくなるんだとか。水谷さんとチームメイトの皆さんが話す様子を聞いていると、なんだか家族や姉妹のような雰囲気を感じました。

 


入ったらどんな仕事をするのだろう。

もう少し詳しく聞きたいと思ったので、入社して8年目になるという鏡宮さんにも話を聞いてみます。

「私も最初は不動産の管理という観念がなかったから、物一つ壊れただけでも次に何をしたらいいか全然わからなくて。逐一聞いて教えてもらってました」

チューリップ不動産  
「物件管理っていろんなことを想定しておかないといけない。ちょっとしたボヤ騒ぎもあったし、ネズミやらハクビシンが出たこともありましたね(笑)」
 
ときには虫や動物の退治をすることもあるし、掃除は基本中の基本です。
 
シェアハウス全体が汚れているときは人間関係が荒れていたりもするから、掃除や備品の補充をしていると、トラブルのきっかけに気づくこともあるんだとか。

普段から入居者さんと話したり、メールにはまめに返信をしたり。常に話を聞く姿勢をとっていることも大切だといいます。

「問題自体はうまく解決しなかったとしても、『スタッフが何か対応してくれている』っていうことが分かるだけで、入居者は安心することが多い。私は結構体張るほうなので、泊まり込んだこともありましたよ」

前職では、さまざまな問題を抱える子どもを対象とした施設で、共同生活に近いことをしていた鏡宮さん。

「家族だけで問題を解決しようと思うから、さらに問題がこじれていくのを見てきて。家族以外のコミュティがあってもいいと思ったんです」

「結婚願望がなかったっていうのもあるし、家族以外の選択肢をつくることとシェアハウスがつなげられるかなと思って、働いてみようと思いました」

ところが実際に働きはじめて見ると、思っていた環境とは違っていた。

シェアハウスに入る人はコミュニティを求めているんじゃないかと期待していたら、チューリップ不動産には費用がかからないという理由で入った人が多数だった。

予想は外れたけれども、もっと深く話を聞いていくと、なかには交流したいという人もいることがわかる。

チューリップ不動産 そこで、まずは入居者同士が交流する場をつくろうと考えているという。

「まだ反応は少ないですが、フラワーアレンジメントの会を開くお手伝いをしたりしています」

さらに鏡宮さんは農学部出身ということもあって、シェアハウスで「農業」もやってみたいと考えているそうです。

「入居者の方の話を聞いていると、みなさん料理教室などには興味があるみたい。ただ、私はもっとつくるところから関わったほうがいいんじゃないかな、と思っていて」

「普段の仕事をしながら、それをどう農業につなげていくのかとか、何となく考えています。これから入る人も、そういうゆるやかなマインドがあるといいかな」

チューリップ不動産 鏡宮さんのようにシェアハウスを通じてやりたいことがあると、日々の地道な仕事も前向きに取り組めると思う。

それに日々の仕事にだって、喜びはあるんだとか。

「めったにないですけど『いつもありがとうございます』って言われたときや、『長い間お世話になりました』って気持ち良く別れられたときは、やっぱりやっててよかったなって思います」

「入居者対応で大変なときもあるんですけど、1年振り返って、そういえばあんなこともあったよねって。ネタにできるくらいカラッとしたものがないとね」

そう言って笑う鏡宮さん。きっと気を使うし大変なことも多い仕事だと思うのだけれど、なぜか重たいものを感じませんでした。

 


なんだかここで働く人たちは、自分と違う考えの人たちがいる環境にも向き合える、広い懐を持っている気がします。

どうしてだろうと水谷さんに聞いてみると、こんな話をしてくれました。

「フランス人がサンドイッチを食べているとき、机に直接置いたり、パンくずを下に落としたりする。それを見て日本人が『けしからん!』と怒る。けれどフランス人にとってそれは普通のことなんです」

「ここは日本なので日本風を教えてあげて、食べものを直接机の上に置くと私は不快感を感じるからって伝えればいいんだけど、意外と最初から排除に動く人が多くて」

水谷さんは自身が海外にいるときに自分が怒られる立場になったことがあるから、どちらの気持ちもわかるという。

水谷さんのように自身がマイノリティになったことがあったり、鏡宮さんのようにいろんな事情を持つ人と接したことがあったり。

そういう経験があると、自然と相手の背景も含めて考えられるのかもしれない。

チューリップ不動産 「お互いのことを知っておけば『けしからん!』にならないはずなので。私たちが事前に互いの文化について説明できたら、問題は起こらないかもしれないですよね」

国籍も人種も関係なく、相手の考えに関心を持って向き合えたら、いろんな原因で起こる問題もうまく解決していけると思います。

その姿勢はきっと、会社というチームのなかでも大切なこと。

チューリップ不動産 「常に情報を共有することはこの会社の基本なので、何が起こっているのかはいつも理解していてほしい。たとえ英語が喋れなくても、外国人のチームメイト間で起こっていることについて、仲間としてちゃんと関心を持ってくれたら」

「あとは、一通りのことができるようになったら、自分のやりたいことをプロジェクトにしてどんどん自分のカラーを出していってほしいですね」

現在水谷さん自身も、ものづくり補助金という制度を使って、新しいチャレンジをしているところ。

起業の良さをもっといろんな人に知ってもらいたくて、シェアハウスのノウハウを動画で伝える『女性シェアハウス起業塾』というサイトをつくっているそうです。

チューリップ不動産 新しいことに挑戦している水谷さん。とはいえ、ビジネスを大きくしたいわけではないのだとか。

「つくったものを改良改造して、うまくいったらそれにまた手を加えて。大きくならずに少しずつ中身を変えて、新陳代謝している感じですね」

「自分の好きなことを会社っていう仕組みを使ってやってみたい。そう思ってくれる方が合うんじゃないかなと思います」

 


チューリップ不動産のみなさんの話を聞いていて、ふたつ思い浮かんだ言葉がありました。

ひとつは、多様性。

もうひとつは、こつこつと頑張る気力のようなもの。英語で言うなら、“patience”だと思う。
これは、ジェシカさんが言っていた言葉からかりました。

「私は日本人じゃないから、たまに相手をイライラさせてしまう。だから、patientな人がいいと思います」
“patient”には “忍耐強い、寛大な、持続的な”などの意味がある。
地味な仕事でも、根気強く続けること。自分と違う考えを持つ人がいても、寛容になって受け入れてみること。

そんなふうに頑張れる人にとっては、自分の可能性が広がる場所だと思います。

(2017/6/2 黒澤奏恵)

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