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それぞれの社会貢献

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働くモチベーションは、人それぞれ。

世のため人のために働く人、自分の人生を楽しむために働く人。「生きる」と「働く」の境目がない人もいます。

そして、その正否は定められるものではなく、人それぞれに合ったバランスが存在するものだと思います。

広島県神石高原(じんせきこうげん)町。

このまちに、地域の特産品や新鮮な食材を使った料理を提供するショップ&カフェ「マルクトプラッツ」があります。

ここで働く人たちは、社会や他者へ貢献することを大切にしながら、自分というもうひとつの軸を持ち、うまく両立させていると感じました。

P1620977 運営するのは、国際協力NGOピースウィンズ・ジャパン(PWJ)

イラクや南スーダンなどの紛争・貧困地域や、大規模自然災害に見舞われた国と地域など、世界中で人道支援を展開している団体です。

近年は東北や熊本の震災で炊き出しやテントの無償提供を行ったり、瀬戸内海の無人島・豊島(とよしま)でのゲストハウス運営やアート事業など、国内でも活動の幅を広げています。

今回は、PWJの一員としてマルクトプラッツで働く仲間を募集します。

メインは店長候補。調理や接客、商品の仕入れや施設全体の運営まで、幅広く担当できる人を求めています。経験や能力によっては、「豊島ゲストハウス」での業務も任せられるかもしれません。

また、PWJの広報やデザイン部門でも人材を募集中です。

銃弾が耳元をかすめるような紛争・貧困地域での支援と、穏やかな自然に囲まれたショップ&カフェの運営は、一見まったくかけ離れたものに思えます。

ただ、それぞれ形は違っても、掲げる想いは同じ。「必要な人びとに必要な支援を」提供するため、奮闘しています。

広島県神石高原町を訪ねました。


広島空港から車で1時間。

いくつもの田んぼや集落を抜け、今回の目的地であるマルクトプラッツが見えてきた。

標高700m。爽やかに流れる風が気持ちいい。

P1620963 ショップ内には、神石高原町の特産品のほか、PWJが生産を支援する東ティモールのフェアトレードコーヒーや、施設内の工房でつくられるバームクーヘンなど、さまざまな商品が並べられている。

また、カフェスペースでは地元食材を使った料理を提供。隣接する自然体験型の公園「ティアガルテン」に惣菜を持ち込むこともできるという。

外を見渡せば、牧場やドッグラン、農園やツリーハウスなどが点在しており、牛が草をはみ、犬が散歩している姿も見える。

のどかな場所だなあ。仕事も忘れて、芝生に寝転がっていたい。

しばらくそうやって景色を眺めていると、いかにもやさしそうな男性がやってきた。PWJの国内事業部次長を務める石井さんだ。

P1630106 ハワイの大学に通っていたころの愛称で、みんなからは「ボブさん」と呼ばれている。

「平日の昼間は、こんなふうに比較的のんびりしています。でも、土日や連休は賑わいますよ」

今年のゴールデンウィークには、世界各国の料理や音楽を楽しむイベントを開催。動物とのふれあいやピザづくり体験など、多くの観光客で賑わった。

ほかにも「有機栽培農業塾」というセミナー形式のイベントや、子どもたちに人気の「真夏の雪まつり」など、幅広い世代に向けた企画を実施している。

DSC08742A と、ここまでは単なる観光施設のよう。

なぜPWJが関わることになったのだろう?

「きっかけは、2010年にはじめた『ピースワンコ・ジャパン』という取り組みです」

殺処分対象の犬を保護し、災害救助犬として育てたり、新しい里親のもとに届けるこの活動。本拠地に選んだのが神石高原町だった。

一方、地域の有志団体によって管理されていた公園を活用し、テーマパーク化する構想が発足。神石高原の活気を取り戻すため、国際的なノウハウを持つPWJの協力を求めることに。

マルクトプラッツが地域の特産品や地元の食材を扱う理由はここにある。

「今、ソーシャルビジネスという言葉が脚光を浴びていますよね。ただ、自分に何ができるかと考えてみても、結局窓口がないんですよ」

「ここはカフェだけれど、地域の特産品をどう加工して、いかに販売ルートをつくるかとか。そういう社会的な実験に挑戦していく場でもあります。こんな入り方もあるよっていうことを、社会に向けて発信していきたいですよね」

18558978_377363375993291_6452789282015876069_o イギリスやスコットランドでは、行政が離島にかかる橋などといった公共施設の維持管理を民間企業に委託し、通行料をとる許可を与えることで、持続可能なビジネスとして成立させていくPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)という事業形態が根づいている。マルクトプラッツの取り組みも同様に、観光分野において広島県ではじめてのPFI事業だという。

だからこそ、今回は単純にショップやカフェのスタッフ募集というわけではない。

もう少し別の角度から、この社会的な実験に挑戦していく人が求められている。

「9月には、社会起業家やインキューベーターを集めた3日間のキャンプ研修を企画中です。会議室の中と外では発想も違うだろうということで、自然を活かしたプログラムを考えています」

調理や接客にとどまらず、こうしたイベントの企画運営にも携わってほしいという。

「香港からやってきたスタッフは、普段は接客の仕事をしていますが、うちの教育プログラムにもよく関わってくれています。来月は香港の学校の校長先生が視察に来るときに、コーディネーターをしてもらうんです」

また、管理運営する豊島ゲストハウスにおいても、新たな取り組みがはじまろうとしている。

もともと、PWJの支援者を招待する目的でつくられたこのゲストハウス。ドイツの現代芸術家ゲルハルト・リヒターの作品を展示するなど、アートを通じた地域活性化を目指す側面もある。

Tagitsu 「才能はあってもそれぞれの事情で日の目を見ていないアーティストたちをサポートしたいということで、滞在型のアトリエをつくる計画もあります。イラクやアフガニスタンなどからも受け入れようっていう、大きなビジョンで」

ゲストハウスを訪れる富裕層にとっては、リヒターの作品を見ながら新しいアーティストを見つける機会にもなるし、才能あるアーティストに対して世界中からサポートを集めるきっかけにもなる。

アートの力で無人島を世界的な観光地にできるなら、ほかの地域にもそのノウハウを活かせるかもしれない。

人道支援もゲストハウスも、根っこのところでは「必要な人への支援」につながっていることを感じる。


そんな豊島のゲストハウスで接客サービスを担当しているのが、富田さん。

P1630048 「5月から8月末にかけては、ほぼ毎週末宿泊の予約が入りますね。夏場がちょうどいいシーズンなので」

料理に使うのは、その日お客さんのとった岩牡蠣や釣った魚、島でとれるたけのこや神石高原でつくられた新鮮な野菜、神石牛など。

マルクトプラッツでも腕を振るう料理人さんが同行するため、調理経験がなくても大丈夫だという。

「ただ、質の高いサービスを受けてこられた方に対応する機会が多いので、接客の経験はどこかで積んできた方のほうがいいと思います」

とはいえ、ご家族の要望を受けて、たこ焼きをつくるような日もある。相手に対して気持ちよく接せる人であれば、気を張りすぎなくてもいいと思う。

宿泊の予約がない日は、どんなことをしているんですか?

「コミュニケーション部でピースワンコ・ジャパン関係のチラシ作成やイベント準備、寄付データの管理や広報などを行っています」

どちらかというと、普段はこれらの仕事がメインだそう。さらに、簡単なデザイン業務を担当することも。

今回募集するコミュニケーション部スタッフは、イベントのチラシやパンフレット、オリジナル商品のパッケージデザインなどもできる方だと心強いという。

一方の接客スタッフの場合、今年から設置されたアウトドアブランド「スノーピーク」のコーナーでの販売も行うことになる。

P1620919 「わたしの場合は、マルクトプラッツや豊島、東京の事務所のメンバーとも顔を合わせる機会があります。PWJで働くまでの経歴も、今やっていることも、バラバラな人たちばかり。一緒に働くなかで吸収できることがたくさんあるし、必ずどこかでつながっていくので。いい意味で終わりがないんです」

神石高原でイベントを開催するにしても、海外事業部のノウハウを活用したり、個々人のコネクションを通じてコラボ企画が生まれたり。

幅広く活動を展開してきたPWJならではのつながりが、効果的なPRに活かされているのだと思う。


「イベントのときは必死ですよ」

そう話すのは、マルクトプラッツでパティシエとして働く高木さん。

P1630031 「バームクーヘン100個とか大きい注文が来ると、ひとりで部屋にこもってつくり続けます。その日の天気によって生地も変わるので、目が離せないんですよ」

ゴールデンウィークのイベントでは、それまで経験のなかったパンづくりを依頼されて、1週間で300個の手ごねパンをつくったという。

話だけ聞くと、なかなかキツそう。でも高木さんは、大変な状況のなかでも楽しんで働いているのが伝わってくる。

「イベントだと、お客さんの反応がすぐ目の前で返ってくるのがいいんです。最終的には全部自分で考えてやれますし、価格表をつくったり、パティシエとしてやってこなかった仕事をやらせてもらえるのもいい経験になっていると思います」

以前は神戸でパティシエとして働いていた高木さん。地元の岡山に戻ろうと退職した直後、熊本の地震が起きた。

「ボランティアに参加して、テント村の立ち上げから入居者募集まで、1ヶ月ほど関わっていました。そこでピースワンコ・ジャパンのリーダーである大西純子さんとも知り合ったんです」

バタバタとめまぐるしい時期を経験し、無力感を感じることもあった。

高木さんは、純子さんにかけられたある一言で一歩踏み出すことを決めたという。

「『別の形で支援することもできるんじゃない?』と言われて。わたしはパティシエだから、自分のできることで支援したいと思ってここに来ました」

「去年はクリスマス柄のクッキーを送ったり、カフェで調理した料理を定期的に送って、それを現地スタッフに配ってもらったり。ちょっとは助けになれてるかな」

Exif_JPEG_PICTURE ひとりの生き方、働き方を、ほかの誰かが決められることは何もないと思います。

それぞれの人生、それぞれの社会貢献の形があっていい。

ここで自分だけの方法を実現していきませんか。

(2017/9/9 中川晃輔)

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