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何百年と続いてきた日本のものづくりの文化。
現代の生活に合った形で世に提案しているブランドがあります。
それが、NAGAE+(ナガエプリュス)。
金属加工の盛んな富山・高岡の地で63年前に創業した株式会社ナガエを母体に、最先端技術やデザイン性など、ポジティブに足し算していくことでものづくりに取り組んできました。
日本のものづくりを世界に発信する、プラットフォームブランドを目指してきたNAGAE+。
今回は、東京・神宮前にオープンする初の直営店の店長候補とオープニングスタッフ、事業拡大に伴い、企画営業のスペシャリストも募集します。
今まさにはじまろうとしている第二章。このブランドを一緒に育てていく人を求めています。
地下鉄銀座線の外苑前駅から地上の出口へ。
大きなビルやデザイナーズブランド、洗練されたライフスタイルショップが立ち並んでいる。
地図にしたがって通りを一本入ると、少し空気感が変わった。交通量が減り、より落ち着いた雰囲気になる。
駅から5分ほどでNAGAE+のオフィスに到着。
まずはじめに話を聞いたのは、ブランドマネージャーの鶴本さん。
鶴本さんの背後には、NAGAE+のプロダクトがずらりと並ぶ。
美容と健康のためのリラクゼーションツールやアクセサリー、酒器やテーブルマットなど。
富山・高岡の金属加工をベースに、全国各地のさまざまな素材や技術を組み合わせたものづくりを展開している。
たとえば、ちょっと不思議な形をしたこのマッサージツール。
フランス語で白鳥を意味する「cygne(シーニュ)」は、熟練の職人の手によって全面手磨きで仕上げられている。
「これはデザイナー松山祥樹さんの素晴らしいデザインで、すべて曲面で構成されていて。顔や肩、足のどんな曲面にもフィットするんです。機械で磨くと均一にできるんですけど、トロンとしたこの仕上げは手磨きならでは。ある意味アートですよね」
メイキャップアーティストの監修のもと、自然の造形を活かすデザイナー、鍛造工場、磨きの職人、ミクロンレベルの表面加工工場など、それぞれのプロフェッショナルが粋を尽くして製造。
解剖学や人間工学に基づいた設計になっているので、力むことなく効果的にマッサージできるそうだ。
「磨きの職人さんは燕三条の方で。高岡でつくっているアルミ製の別の製品を持っていったら、それをじーっと眺めて『高岡すげえな。粗がないか探したけど、どこにもねえや』って。そこから火がついちゃって(笑)、本当に一生懸命つくってくださっているんです」
職人さんの技術やものづくりのこだわりについて話す鶴本さんからは情熱を感じるし、なんだかとっても楽しそう。
NAGAE+のコンセプトを表す、こんな言葉がある。
“美という光で世界を輝かせる”
「美というのは、高岡を象徴するキーワードで。八百万の神に対するまなざし、自然への尊敬。高岡という町には、奥ゆかしい美の感覚がそこはかとなく漂っているんです」
もともとニューヨークと東京を拠点に現代アートのマネジメントを15年経験し、新潟・燕三条の工場とともに真空チタンカップのブランド「SUSgallery」を立ち上げるなど、日本のものづくりを世界へと発信し続けてきた鶴本さん。
3年前にNAGAE+を立ち上げて以来、海外の展示会に出展したり、製品のバリエーションを増やしたりしながら、少しずつ世界に通用するブランドを築きあげてきた。
取材の3日前まではドイツにいたんだそう。
「向こうから帰ってきて、あらためて思うことがあって」
思うこと?
「以前は巨大な展示会場にいろんなものがわーっと並んでいるのを見て、すごいワクワクしていたんです」
「でも、自分はメーカー側の人間としてものを生み出す責任のある立場。この巨大な市場の渦のなかで声を上げ続ける必要があるのかな?と、ふいに思ってしまったんですよね」
ものはすでに溢れているなかで、本当にものづくりは必要なのだろうか。
必要だとしたら、自分たちはどんなものをつくっていくのか。
「そう考えたときに、ゴージャスだったり華美なものよりは、日々の生活を輝かせるもの。なおかつ、ものづくりが継続・発展していける、いい循環を生むもの。今一度呼吸を落ち着けて、そういったものをつくり、丁寧に伝えていきたいと考えました」
遠く、広い世界に向けていた視線を、一旦足元に向けてみる。
すると、以前にも増して日本のものづくりのよさが感じられるようになった。
「ちゃんとお出汁をとることで食事の幸福感が全然違ってきたり、ゴージャスじゃなく、素朴で心地いいお皿を使うことだったり。日本の素晴らしさが瑞々しく働きかけてきて」
「今はここにどっしりと根をおろし、大切にブランドを育て伝えていくタームなんじゃないかなと思っています。何かが一巡して、まさに第二章がはじまるような気分ですね」
これからオープンする直営店は、そんなNAGAE+の第二章を象徴する場になっていくと思う。
従来はオンラインや国内外への卸のほか、展示会やイベントなどといった場で発信する機会が多かったNAGAE+。それに加えて、今後は自分たちで場を持ち、丁寧に育て伝えていくことが重要だと考えている。
「場所は、このオフィスの入っているマンションの隣のビルなんです。オーナーさんが日本舞踊のお家元で、その向こうには熊野神社がある。オフィスを構えたときからご縁を感じていて、お店を開くならここだなって」
今年、1階に入居していた家具屋さんが事業拡大のため引っ越すことになり、そこにNAGAE+の直営店が入ることになった。
周囲にはセレクトショップや飲食店のほか、学校や美術館があったりと、地域の人が日常的に利用する場所も点在している。
その一方で、ビルの地下にはミシュラン2つ星のレストランがあり、著名人や海外からのお客さんがふらっと訪ねてくることも考えられる。
さまざまなコミュニティの交差点というか、海水と淡水の交わる汽水域のような場所。
ここではじめるからには、地続きのコミュニティを大事にしたいという。
「NAGAE+の製品を販売するスペースだけでなく、インテリアにも日本のものづくりをちりばめた『小昼屋』という名前の小休憩スペースをつくろうと思っていて」
小昼(こびる)は北信越にもともと存在していた食文化で、昼食の前後にとる軽食のこと。
富山県の日本酒や発酵食をお出ししたり、都内の一流レストランから出るフードロスを活用したランチやおつまみを提供したり。
お昼から一杯飲みにくる人がいてもいい。
「器はもちろん、NAGAE+でこだわってつくります。自社でつくっているテーブルウェアがここでつながってくるんですね」
桔梗の花をイメージした「TRAVEL CHOCO」は、飲み口によって味わいが変わるおちょこ。
平盃のようにまっすぐな飲み口は、フルーティーな純米大吟醸。白ワイングラスのように丸みを帯びた飲み口からは、のどごしのいい吟醸酒。さらに角度のついた赤ワイングラスのような飲み口は、重めの古酒が合う。
「日本酒飲めますか?」と鶴本さん。一口ずつ飲み口を変えていただく。
たしかに…!同じ日本酒でもこんなに違うんですね。
「飲み口によっておちょこの角度が変わるので、口に入るスピードや舌に触れる位置が変わり、味わいも異なってくるんです。すごいですよね」
バレンタインにはBean to BarチョコレートのMinimalとコラボレーションし、チョコレートと日本酒のマリアージュを楽しむイベントも企画したそう。
今回募集する店長候補の人は、製品の販売と飲食両方のリーダーを務めることになる。
「スタッフ全般の管理をしてもらうことになるので、店舗の立ち上げやチームマネジメントの経験がある方を求めています。海外からのお客さまも多いので、英語もできればありがたいですね」
ただ、いずれの分野に対しても、専門的な知識は必ずしも必要ないという。
「ものづくりに対する好奇心とパッションを持ちながら、偏り過ぎず軽やかに伝えられる人がいいなと思っていて。ものを売るのではなく、価値を伝える感覚です。その結果、いかに価値を持ち帰りたいと思ってもらえるか」
それに、店舗は社会とブランドとの接点になる。
日々いろんな出会いがあるだろうし、そのなかでさまざまなオーダーを受ける場面も出てくるかもしれない。
「たとえば、こういう器を何十枚つくれませんか?とか、この壁面材、面白いからうちでも使えませんか?とか。そこでできませんと言わずに、一度すべて話を聞いて、うまくビジネスにつなげられるような人。媒介となることを楽しめる人なら、無限大に楽しい仕事だと思いますよ」
なにも、ひとりで抱え込まなくてもいい。
商品の受発注は母体である株式会社ナガエと連携をとったり、ビジネス・顧客対応は営業担当の方に引き継いだり。接客の人手が足りないときは、すぐ近くのオフィスで働く鶴本さんたちにヘルプを求めることもできる。
店舗でのイベント・ワークショップの企画や広報に関しては、担当の福島さんとのやりとりが多くなると思う。
大学時代に工芸を学んでいたという福島さん。
プロダクトデザインの事務所に入り、その後オンラインショップの運営などをしていたものの、いつか仕事で工芸に携われたら…と思っていたそう。
ある日たまたま日本仕事百貨でNAGAE+の記事を見つけ、興味を惹かれたという。
「もともと漆を扱っていたので、日本の技術はこんなにいいんだよ、っていうことを伝えたい気持ちを持っていたんです。記事を読んで、仕事でそれを実現できるんだ、と思ったのが応募を決めた一番の理由ですね」
取材時は入社して1ヶ月とのこと。
「今はまだ大変な部分を経験していないだけかもしれないけれど、商品開発の際に工場見学をしたり、職人さんたちの話を聞けるのが楽しいんです」と福島さん。
「ここのスタッフは3名。あとはイベントや展示会運営のアルバイトスタッフが4名います。少人数で製品の企画開発や営業、ブランディングまで行っているので、正直目の前のことに精いっぱいになってしまいがちです」
前回の記事にも少数精鋭ならではの大変さが描かれていて、応募をやめようか直前まで悩んだという。
「想いには共感できるし、がんばれそうだけど、やっていけるかなと」
なぜ、思い切って挑戦しようと思えたんですか。
「大変でも、その先には『美という光で世界を輝かせる』っていうダイヤモンドみたいな目標があって。その世界観に共感できたからじゃないでしょうか」
「実際に入ってから大変なことはあっても、ギャップはなかったと思います」
店舗運営がはじまってみれば、予測できない日々がそこには待っているはず。
この立ち上げを経験することでかなり力がつくだろうし、営業や企画の仕事がしたいと思えば、後進を育てて仕事の幅を広げることも可能だそうです。
日本のものづくりで世界の人たちを輝かせる。NAGAE+の第二章ははじまったばかりです。
(2018/2/15 取材 中川晃輔)