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トリヒキよりトリクミ
売れるものではなく、
世の中に必要なものを

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

ものにはそれぞれに背景がある。

つくり手の想いが込もったものもあれば、誰かの不幸の上で成り立ったものも。

毎日の暮らしの中では気づきにくいかもしれない。でも知ってしまえば、そのままにはできない。

「我々はそういったことを学習しながら、伝えていく。取り引きよりも“取り組み”をしていく問屋なんですよ」

そう話すのは、生活アートクラブ代表の富士村さん。

生活アートクラブは人にも環境にも優しい日用品や生活雑貨を扱う会社です。

自社の通販サイトのほかにオイシックス・ラ・大地や全国各地の生協など、150の販売先を持っています。

一昨年、取引先のオーガニックコットンメーカーから事業を継承することになり、新たにオーガニックコットン部門が立ち上がりました。

今回募集するのは、その担当者。

部門の中心人物となって、オーガニックコットンにできることを模索していきます。

曙橋駅の出口を出て、大通り沿いに2分ほど歩く。生活アートクラブのオフィスは10階建ビルの2階と3階にある。

代表の富士村さんとお会いするのは1年ぶりだろうか。気さくな方で、いつもいろんな話題を交えながら楽しく話してくれる。

つい先日は、一昨年からスタートした食品事業のために、和歌山へ調査に行ったそう。

「那智勝浦町には古くから伝わる延縄(はえなわ)漁という漁法がありまして、パン食い競争みたいに1本の長い縄に1000本くらいの針を垂らすそうです。そのうち5%くらいにマグロが食いつく。ただ、小さな稚魚が掛かっていたときは放すんですって」

「一方で大手漁業者がやる巻き網漁っていうのは、1日の漁で延縄漁の100倍ものマグロが捕れる。ただそこまでの量があると網を引き上げるときに下のマグロが重さで潰れちゃうんです」

さらに巻き網漁は産卵期の親魚やこれから育つ稚魚まで一網打尽にしてしまうため、クロマグロが激減している要因とも言われているそう。

そこで現在は、非効率でも水産資源の保全につながる延縄漁が持続可能な漁法として注目を浴びているのだとか。

自分も食べるものなのに、全然知らなかった。

「私もまったく知らなかったです。でも海のことって沿岸部に住む人たちだけに限った話ではなくて。海は森や川とつながっているし、農薬の土壌汚染だって川や海にまで影響します」

「いろんな関連性がある中で、我々も日用品や生活雑貨の問屋だからって海のことを知らんぷりするわけにはいかないんですよね」

生活アートクラブが創業したのは2002年。

それまで富士村さんは「健康の専門家」として全国各地で講演活動を行い、腸内環境を改善するための食生活指導や独自のノウハウ提供をしていたそう。

ただ健康を守るためには、食生活だけでなく身の回りの環境から改善していかなくてはならない。そこで自然なものを使った商品をつくっていこうと独立した。

自社商品に加えて様々な自然派商品を厳選して仕入れ、今では約3000もの商品を取り揃えるほどに。

一番の人気商品は、独自に開発した『ムシさんバイバイ』という防虫剤だという。

ムシさんバイバイは虫をまったく寄せ付けず、植物精油のすっきりした香りが部屋の消臭もしてくれる、というスグレモノ。

開発のきっかけは、市販されている殺虫剤の大半が農薬を原料に使用しているという事実を富士村さんが知ったからだったそう。

しかも田畑には薄めた農薬が散布されるのに対し、殺虫剤には原液のままの農薬が使われている。

コバエ駆除剤や衣類防虫剤、トイレ消臭剤など、様々な家庭で日常的に使われているものが人の健康に悪影響を及ぼしていた。

「そうだったんだ!と思うことはいろんな分野であって、農薬を使わない防虫剤をつくろうとか、児童労働問題まで考えている商品を扱おうとか、我々が徐々に学習していくことによってエコな商品を揃えるようになりました」

「我々が一番にやろうとしているのは“売れるもの”を売るのではなくて、“売らなきゃいけないもの”を売っていこうと」

オーガニックコットンの商品を扱うようになったのも、コットン栽培の実情を知ったから。

海外ではコットン栽培に大量の農薬が使われ、収穫時には効率化のために枯葉剤が使われる。その結果、土壌や河川の汚染が進み、農家や地域住民に健康被害をもたらしているという。さらには児童労働の問題もあるそう。

そこで生活アートクラブでは、人や環境に負荷をかけずに栽培され、フェアトレードで輸入されるオーガニックコットンに着目。金沢のオーガニックコットンメーカーの商品を長年仕入れていた。

ところが2016年の夏にそのメーカーの代表が体調を崩してしまい、話し合いの末、生活アートクラブが事業を継承することになった。

最初、メーカーの代表の方は廃業を考えていたそう。でも最終的には生活アートクラブに任せたいと話してくれた。

数ある取引先の中で、どうして生活アートクラブだったのだろう。

「想いがつながってる人たちに任せたいってことかな。これを見てください」

そう言って富士村さんが机に広げたのは、生協などに挟む生活アートクラブ独自の折り込みチラシ。

ひとつが森の間伐材を使った木皿のチラシで、もうひとつが多治見でつくられた陶器の湯たんぽのチラシ。どちらも商品の背景を綿密に伝えている。

たったひとつの商品のためにここまでページを割くのは珍しく、業界的には「非常識」なのだとか。

「普通だったら同じスペースに5個や10個の商品を並べてもおかしくない。チラシの制作費も掛かってますから、同業他社さんからすると何てもったいないことをするんだと」

「けど我々は、商取引というより取り組みをしているというか」

取り組み、ですか?

「世の中には我々の暮らしに密接なことでも、知られていないことがいっぱいあるわけです。日本が世界で最も遺伝子組み換え食品を食べている国というのも私は知らなかった」

「そういうことを学習して、商品の背景やメーカーの想いを伝えていくっていうのは“取り組み”なんですね。売れるほうへ走り、売れないと思えばすぐに手を切るような“取り引き”ではない。そういったところからメーカーさんとは想いがつながって、非常に強い信頼関係が生まれるんです」

こうした“取り組み”はオーガニックコットンの分野でも行っていく。そして今後はメーカーだからこそできることも模索していきたい。

「いま衣類の生産のほとんどは海外にシフトしていて、大量生産・大量消費・大量焼却がされています。労働搾取の問題もある。けど、誰かの不幸や犠牲の上ではファッションを楽しめないよねって時代になりつつあると思います」

「大手でも、無農薬とかの衣料品が広がってきているとはいえ、まだまだ数は少ない。うちがやる意味はあると思うんです」

そう話すのは、営業本部仕入課の課長の大野さん。理由あって写真はNGとのこと。

大野さんは前職で25年以上アパレル企業に勤めていた経験を活かし、いまはオーガニックコットン部門を兼務している。

事業を引き継いでから1年半。最初はもともとメーカーがつくっていた靴下や下着、手袋などを引き続き生産し、体制を整えてきたそう。

昨年の秋頃からは、新商品をリリースしはじめるようになった。

「今年の春にはガーゼシャツとTシャツを出しました」

商品はどのように企画しているのですか?

「うちはもう営業とか編集デザインのスタッフ数人が集まって、いろいろな意見を出し合ってベースをつくっていくんです」

そんなところからスタートするのですね。

「ええ、部署に関係なく皆でつくっています。最初のプロトタイプから4〜5回ほど修正して、半年かけて最終的に納得するところで落ち着きました」

前職とは環境がまったく違いそうです。

「本当にその通りです。衣料品メーカーではないことが反対にプラスとなって、デザインも商品開発も、いろんなことができる環境の会社なんです」

大野さんはまだまだやりたいことがいっぱいあるという。

これからもオリジナル商品を少しずつ増やしていきたいし、数が揃えば展示会に出展して新しい販路を開拓したい。そこからまた新商品の開発につながっていくかもしれない。

「ただ僕はなかなか掛り切りになれなくて。心強いパートナーというか、オーガニックコットン部門の中心となって開発や営業をしてくれる人に来ていただきたい。将来的にはディレクターとなって、うちの繊維製品全般に携わってもらいたいと思っています」

現在、オーガニックコットン部門を主に担当しているのは大野さんを含めて2人のみ。

まだはじまったばかりのタイミングだし、大手と違ってファッションデザイナーやパタンナーが社内にいるわけではない。

「分業じゃないので、すべて組み立てできる人だといいな。反対にこれしかできないんです、ってことだと困る。自分で全部できることに楽しみを見出せる人だといいなと思うんです」

「そして一番大事なのは、我々の会社の根本的なところを理解してくれること。ただ洋服をつくるんじゃなくて、世の中に必要なものは何なのか、どう伝えて売ろうかっていうのを一緒に考えてやっていきたいです」

もしかしたらファッション業界に一石を投じるような動きがここから生まれるかもしれない。

自分たちで業界を変えていきたい、という強い気持ちを持っている人もいいのだろうな。

「そうですね。ただそういう面ばかり表に出ちゃうと、お客さんから拒否反応も出てくると思うんです。うちのような業界ってつい表に出しがちだけど、本当はいい塩梅を模索することも非常に重要で」

それは商品開発においても同じだという。

たとえば、先ほどの春の新商品では一般的な化学染料を使っている。

「オーガニックコットンだったら草木染めがいいというのは分かるけど、じゃあシャツ1枚が2〜3万円となるとなかなか手が出ない」

「うちも無染色の生成りや茶などオーガニックコットンならではの商品を基本にしていますが、色をつけて遊び心を加えたり、価格を抑えるのも、この業界に求められていることだと思うんです」

隣でウンウンと頷いていた代表の富士村さんも口を開く。

「この業界ではたとえ1%でも許せないって人がいます。化学染料を使うのはダメ、だったら何もしない、というように。けど、それこそこの業界が大きく広がっていかない理由だと思っているんです」

「完全無欠にはできません。それより前進することのほうが大切なんです。もちろん私の考えに反論される方もいますけどね、でも、そうしないと世の中は変わっていかないですよ」

この言葉はとても意外だったけど、生活アートクラブの商品が本当に多くの人に支持されていることを思うと、納得いく気がする。

たしかに、どんなにいいことをやっていても、広まらなければもったいない。

(2018/7/25 取材 森田曜光)

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