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誰に届くものづくり?

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これは誰に届くんだろう、自分のアイデアはどんなふうに生かされているんだろう。

そう思いながら働いている人に、ぜひ知ってほしい会社があります。

ダイゴー株式会社は、70年以上手帳など、糸綴じ製本による商品を中心に製造・卸してきた文具メーカーです。

ただかっこいいものではなく、暮らしの中に馴染む品質を大切にしているから、長年手帳などを愛用しているファンも多いのだそう。

そんなロングセラーを守りながら、今後はもう少し商品の幅を広げて文具や雑貨でも新しいものづくりに挑戦しようとしています。

今回募集するのは、商品企画として仲間に加わる人。

Photoshopなどのソフトを使えるのが望ましいものの、経験がなくても自ら勉強を続けることができる人なら働くこともできるそうです。


東京・蔵前。

地下鉄の駅を出て、住宅や小さな町工場が並ぶ路地裏を通り抜けると、10分ほどでダイゴーのオフィスビルが見えてきた。

ここは東京支店。ダイゴーの本社や商品をつくる工場は関西にある。

扉をあけると、商品がずらりと並ぶ。最初にお話を伺ったのは商品開発部部長の石井さん。

「実はずっと営業畑にいて、この4月から商品開発にやってきたばかりなんです。でも不安よりも一緒にものづくりを盛り上げていきたい、これから何ができるかなっていう楽しみのほうが大きいです」

パリッとした印象もありながら、気さくに話しかけてくれる方。普段は大阪本社にいるそうで、月に2、3回は東京支店に出張しているのだとか。

そんな石井さんに、まずはこの会社のことを教えてもらう。

「うちで一番多く扱っているのはダイアリーと呼ばれる日付の入った手帳。ほかにもノートとか家計簿、住所録などもつくっています」

自社工場では、糸綴じ製本によるオリジナルの商品のほか、他社から依頼を受けた商品をOEMで手がけることもある。

どんな形であっても、ものづくりには強いこだわりがあるといいます。

「創業した当初は、一つひとつ手づくりで手帳をつくっていました。機械を導入したあとも、もっと良いものにしようという感覚が社内にはずっとあるんです」

たとえば、手帳の折り目をきれいにつけるために、折ったものを2〜3日寝かせて折り目を落ち着かせる。そうしてやっと、次の工程へと進む。

中身の罫幅やレイアウトまで、手帳を使う人がどうすれば使いやすくなるか、徹底的に考えてつくる。実際に使ってみるととても書きやすいし、細部まで計算されて生まれたことが感じられる。

手間は厭わず、いいものをつくろうという思いを大切にしながら生まれたダイゴーの製品。

10年以上同じ手帳を使っているファンも多く、仕様を変えると苦情が来ることもあるそうだ。

「お客様がいる限り、製造し続けていきたい。一方で、日本の人口は減っていて日本語の手帳も市場は広がらない。タブレットやスマートフォンでスケジュール管理をされる方も増えてきました」

「だからこそ、我々は“手帳のダイゴー”とは名乗りません。ライフスタイルに合わせて手帳もつくるし、ほかにも使いたいものはなんだろうと想像しながらものづくりをしていければと思うんです」

紙ものの加工には、豊富な技術と実績がある。その強みを生かして、異素材を組み合わせた新しいレターセットや、他のデザイナーと共同で企画した文房具などの開発を進めているところ。

そんなふうに幅広く新しいことに挑戦する商品開発部も、石井さんを含めわずか3名。もっと一緒にアイデアを出し合い、新たな商品づくりをしていく人を増やしたいと、今回の応募につながった。

この会社で働くならば、社内の雰囲気も気になるところ。15年以上働いている石井さんに、会社の好きなところを聞いてみると「意見が通りやすい」という言葉が出た。

老舗企業では、なんだか少し意外な言葉です。

「僕は入社1年目から、結構自分の意見を言うタイプで。たとえば名刺のレイアウトとか、ミーティングのあり方とか。些細な意見でも、最終的にお客様へのサービスが向上のためなら、と耳を傾けてくれる会社なのでやりがいを感じますね」

「だから今回入る人も、立場や経験を気にせず自分の意見を言ってくれるほうがありがたいかな。お互いに意見を出し合って、より良いものづくりをしていけたらと思うんです」



もう一人、一緒に働く人を紹介します。商品開発部リーダーの鞍留さんです。

新しく入る人は、鞍留さんが最も身近な存在になる。

話しているとさっぱりしているようで、趣味でトライアスロンをやっていたりとアグレッシブな面も持つ。まだまだいろいろな引き出しを持っていると思うので、ぜひ話を聞いてみてください。

美大ではグラフィックデザインを勉強し、その後パッケージのデザインを行う会社に入社した。

なぜ、ダイゴーで働くことになったのでしょうか?

「前職では、個人の意見が必要とされなかったんです。ただ言われた通りにつくるっていうのがあんまり面白くないなと思っていたのと、勤務時間がとても長くて体力的にも厳しかったので、転職を決めました」

当時一緒に働いていた人から「それはデザインというより、商品開発なんじゃない?」と助言を受け、見つけたのがダイゴーだった。

入社後に、何かギャップを感じたことはなかったですか。

「やっぱり、商品開発に求められるのはアーティストではないってことだと思います」

アーティストではない。

「商品開発って、その先に必ず使う人のことを考えるんです。自由に自分の思いを表現できる場ではないし、ときには他社のデザイナーさんにデザインをお願いして、自分はその良さを引き出す役割にまわることもあります」

ダイゴーの商品開発部では、大きく分けて2つの仕事の進め方があるそう。

まず1つ目は、社内の公募や自分のアイデアを形にしていく方法。たとえば最近では「もしもメモ」という商品が生まれた。

もしもメモは、その名の通りもしものときに備えるもの。自身の情報や考えを書いておくことで、周りの人に緊急時の連絡先や自分の健康情報を伝えたり、家族への大切な想いを伝える。

「最初は、エンディングノートをつくろうというアイデアから出発して。だけどすでにたくさんの商品があるなかで、終活を迎える人だけでなく、誰でもすぐ使えるものがいいんじゃないかと思って」

若いご夫婦であっても、家のことをすべて管理している奥さんにもしものことがあったら。旦那さんは銀行口座のことも、子どもの友達もわからないかもしれない。

災害時にスマホが動かなくなっても、かかりつけの病院や親戚に連絡できる。もしもメモを常に身につけていれば、自分が道端に倒れていても誰かが家族に連絡してくれるかもしれない。

「ただ項目を増やせばいいというものでもなくて。ペットを飼っていない人にとっては、ペットの情報を書くスペースは必要ない。だから用途に合わせた9種類を、気軽に使ってもらえるようにしたんです」

新しい商品をつくるときには、さまざまな工程が必要になる。たとえば、市場調査やすでに世の中にある商品との比較。本当に使いたいか、そもそもこの形でいいのか?など細かく仕様やコストを検討しながら、プレゼンの企画書にまとめていく。

「すごく時間もパワーも必要です。ときには社内で反対されることもありますが、社内の人を説得できなければ、世の中の人も説得できないので。なぜ必要なのかデータを分析して理論も考える。そういうことを何度も繰り返して、やっと世の中に出るという感じです」

商品ができたら終わりではない。今度は営業に同行して販売店を訪ねたり、什器をつくったり。売り上げが思わしくなければ、打開策を考える。

目が回りそうな忙しさですね。

「でも次々に起きることを、どうやって解決していくかが面白いんです。冷静に物事を見極める力が必要だと思いますね。自分がものをつくるとなると、もっとかっこいいものをつくりたいと思いがちだけど、高齢者の方向けの商品なら、こうじゃないなとか考えていくので」

誰に向けたものづくりなのか。自分のアイデアだからこそ、全体を俯瞰して考える視点も必要だ。

2つ目は、外部の人と協力しながら商品開発を進める方法。

鞍留さんが、外部のステーショナリーディレクターの方と一緒につくった「すぐログ」がそのひとつ。

「もとはジェットエースという、黒い表紙で鉛筆が付いている商品だったんです。おじさんが胸ポケットから出し入れしてメモするような商品でした」

その商品を愛用していたステーショナリーディレクターから、使い勝手がいいのに見た目がよくないのはもったいない、若い人にも良さが伝わるように改良しようと声がかかった。

「こういうときには、その人が思っていることをどう実現させるか、良さを引き出すかということを考えます。メモには図を書いたりすることもあると聞いて、ラフに書けるように横罫じゃなくドット方眼にして。鉛筆も丸軸から握りやすい六角軸に変えました」

相手の言葉を聞きながら、こういうこともできるのでは?とアイデアを提案する。言葉の裏側にある気持ちを読み取って、実際に形にしていく力が求められる。

すぐログは、当初の予定を大きく上回る5万冊が一気に売れる大ヒットになっているそう。

どちらの方法も、ものづくりの先にいる“人”のことを強く考えているように思います。

「そうですね。形になったときの喜びはもちろん、ユーザーの方から評価してもらえると本当にうれしい。苦しいときもあるけど、『ありがとう』っていう声を直接もらえることもあるので、ちゃんと伝わったんだな、考え方として合っていたんだなって感じることができます」

アイデアを具現化する仕事。はじめはやり方がよくわからなくても、まずは自社工場でできることや、素材のことを勉強することからはじめればいい。一通りのことがわかったら、鞍留さんと一緒に開発に参加していく。

商品企画部の仕事は、ものづくりに限らず、時にはテレビの取材に応えたり、産学協同でものづくりをした際には学生の前で講義をしたり、伝える仕事を担当することもあるそう。

枠にはまらない柔軟な意識でいたほうがいいかもしれない。

「なかなかできないことなので楽しいですね。だからなんでもやってみたいっていう気持ちがある人がいいなと思っているんです」

ものをつくって届けるまで。人との関わりも含めて、ここではすべてが商品企画の仕事。

いろんな人との関わりがあるからこそ、きっとこれから面白い展開が待っていると思いますよ。

(2018/6/8 取材、2018/11/5 再掲載 並木仁美)

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