※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。
長い人生のなかで、はじめて出会った人たちとひとつの家に住み、生活を共にする。
シェアハウスで生まれたつながりは、ときに自分を変えるきっかけになるかもしれません。
まだシェアハウスが一般的でないころから事業を手掛けてきた、東京シェアハウス不動産。
今回、事業運営と管理マネジメントを担う人を募集します。
仕事は、入居者の生活のサポートをはじめ、募集・広報・企画など事業全般。現在働いているスタッフは、自分たちもシェアハウスに住みながら、入居者のコミュニティづくりもサポートしています。
ほかにもシェアスペースの運営をしたり、新たな物件のデザインに関わったり。小さい会社だからこそできる仕事は幅広く、働く時間や場所も自由でフレキシブル。
自分で可能性を広げて、新たなチャレンジができる仕事だと思います。
東京・王子駅。多くの人が行き交う駅を出ると、川沿いの並木道に出る。そのまま15分ほど歩くと、シェアハウス「Sharely (シェアリー)」に到着。
東京シェアハウス不動産の一番新しい物件で、これから働く人もメインで関わることになる場所。
出迎えてくれたのは、代表の安生(あんじょう)さん。落ち着いた穏やかな雰囲気の方。
独立するまでは、集合住宅の工事現場監督や建築設計、不動産企画の仕事をしてきた。
「集合住宅は居住者の距離が近いんです。なので、技術者としてハード面での建物はつくれても、完成後のソフト面は住まい手がつくっていくことになります」
安生さんが長年、企画設計に携わってきたのが、入居者が自由設計できるマンション「コーポラティブハウス」。住人同士が話し合って住まいをつくるので、入居後のコミュニティを築きやすいのが特徴だそう。
「コーポラティブハウスの魅力は、人と人のつながりがつくれること。ただ、理想の家を形にするためにクライアントと時間をかけて向き合う必要があるので、企業が求める大量生産とは相反する事業でした」
「これからの時代の家は、大量生産型でなく、一つひとつのつながりが重視されるのではないかと考えたのが、独立のひとつのきっかけです」
独立後にはじめたのがシェアハウス事業。これまで100棟以上のシェアハウスを手がけてきた。
こだわったデザインの建物には一つとして同じものはなく、そのなかのコミュニティもそれぞれ異なっている。
「人が変われば、ハウスも変わる。シェアハウスは生き物のようなものです。私たちは育てるようにサポートして、入居者が心地よく暮らせる環境をつくることが役目です」
今回訪れたSharelyは、もともと社員寮だった建物をリノベーションしてつくられた。
全部で38部屋と、一般的なシェアハウスよりも入居者が多いのが特徴。
木製の靴箱に長い廊下、大浴場や広い食堂、そして部屋の多さ。安生さんは、はじめて建物を見たときに、学校の寮をイメージしたそう。
「寮ならともかく、シェアハウスとなると、まったく顔を合わせない人も出てきてしまう規模。なので、スタッフのアイディアで、学校行事のイメージでイベントを開催して、交流の機会をつくってきました」
イベントをつくるときに大切なのは、管理側から押し付けるのではなく、入居者に自発的に行動してもらうこと。
「情報発信や、やりたいことを提案してもらうためのスペースを各階につくりました。それを実現できるようサポートするのが、スタッフの仕事です」
「ただ住むための場所ではなく、そこに人と人のふれあいをつくりたい。今後はほかのシェアハウスの入居者と交流する機会をつくったり、つながりを広げていけたら面白いなと思います」
シェア事業の領域で、新たな取り組みを続ける安生さん。
いま進めているのは、高齢者と若者が一緒に暮らす“ホームシェア”だそう。
「高齢のオーナーさんが、自宅の空き部屋を貸し出す仕組みです。高齢者の孤立も防げるし、入居者もその親もオーナーの顔が見えて安心でしょう。双方にとっていい関係が築けると思うんです」
シェアハウスに代表されるように、家族という決まった枠組みにとらわれずに住まいを共にすることが、これからは増えていくと安生さんは予想する。
その流れのなかで、自分たちにできることを常に考え続けていく。
東京シェアハウス不動産にはオフィスや決められた就業時間がなく、働く場所も時間も個人の自由。
「心と身体が健康な状態で、ゆとりをもって働くことが大切だと思っています。日々のスケジュールにゆとりがあれば、急ぎの仕事にもすぐに対応できる。結果的にそれが、お客さんに喜んでもらうことにつながるんです」
そんな考えから、働き方も柔軟になってきた。
スタッフそれぞれが自分の時間をマネジメントして、日々の仕事を進めている。
「過去には、9時から17時の決まった時間で働くほうがいいと退職した人もいました。公私ともに時間と体調の自己管理をして、自立した環境をつくることが必要になります」
日々の仕事は基本的に一人で行い、社員同士は月に1回のミーティングで顔をあわせる。
会う機会が少ないからこそ、すべてのメールとスケジュールを共有し、誰がどんな仕事をしているかお互いにわかるようにしているそう。
「入社後は研修もありますし、困ったときはいつでも電話やメールで相談できます。今働いているスタッフも未経験でしたが、問題なく仕事をしていただけています」
自立した働き方に魅力を感じて入社したのが、二ノ宮さん。自身もシェアハウスに住みながら働いている。
「以前は、設計の仕事をしていました。固定の時間で働くことにロスが多いなと感じていて。定時より早く仕事が終わっても、時間になるまで座っていなきゃいけない。それって無駄なんじゃないかなって」
自分で時間を決められる働き方がしたいと思っていたところ、この会社に出会った。
「たとえば昨日は、まずラジオ体操から(笑)。朝ごはんをつくって食べたら、コーヒーを飲みながらメールをチェックして。内覧の日程調整や備品発注をして、お昼くらいには終わりました。そのあと、ほかのハウスで内覧があれば出掛けて、終わり次第フリーです」
「スタッフやパート・アルバイトさんと連携をとって、休みもしっかり取ることができます。この前は長期休暇で岐阜の集落に滞在してきました」
こんなふうにゆとりを持って働ける時期もある一方で、2〜4月の繁忙期はとても忙しくなる。
入退去や契約が大幅に増えるし、内覧希望も多い。ほかのスタッフとも調整して、効率良くスケジュールを組んでいく。
「どれくらいのペースで仕事を進められるかは、個人の能力次第です」
任される仕事の裁量が大きいので、自分で責任を持って進めていかなければならない。
それは、スケジュール以外にも言えること。
「私は設計の経験があったので、Sharelyをつくるときには図面も引いたし、各部屋の床や壁紙、カーテンも決めました。インテリアは未経験だったけれど、安生さんに『やってみる?』って言われたので(笑)」
「ここでは、いろんなことを広くやれるというか、やらなくちゃいけない。戸惑うこともあるけれど、面白いなあと思います」
シェアハウスでのイベント運営も、大切な仕事の一つ。
二ノ宮さんは今まで、外国籍の入居者に母国の料理を教えてもらうイベントや、富士登山やピラティスなどの企画を実現させてきた。
いずれも、入居者からの提案がきっかけとなっている。
「あくまでスタッフは、イベントを整える側の人間で、主体は入居者の方々です。無理やりイベントを企画するのではなくて、入居者さんの声を聞いて、きっかけづくりのお手伝いをする。イベントをつくるときは、そういうスタンスのほうがいいと思います」
もう一人の社員が、入社して3年になる塩川さん。
二ノ宮さんと管理運営業務を分担しながら、古民家を改装したシェアスペース「asagoro」の運営も担当している。
「毎年春と秋に古民家フェスというイベントを行っています。地域の人に呼びかけて、カフェやワークショップをやっています」
5年前にオープンしたばかりのころは、積極的にイベントを開催していた。最近では、近隣の住民自らイベントを実施するようになってきているそう。
「このSharelyも、そんなふうになったらいいなって。入居者たちが自立して、自分たちで何かをはじめていくような場所のほうが、続いていくと思うので」
塩川さんは、前回の日本仕事百貨の記事を読んで入社した。
ちょうど当時勤めていた会社を退職したタイミングだった。
「シェア事業や民泊に興味があったので、空き家になっている母方の実家で、何かできないかなって考えていたときでした。この仕事は、自分のためにあるように感じたんです」
自身もシェアハウスに入居しながら、管理の仕事をしている。仕事とプライベートの区切りはあまりないそう。
鍵をなくしたり、設備に不具合があったり、同じハウスの住人から対応をお願いされることもある。トラブルには対応するけれど、些細なことなら自分で解決するように伝えるという。
「会社では管理業務を行うけれど、あくまで私は一住人でもあるので。どれくらいの距離感でほかの入居者と接していくのか、自分のなかで決めておいたほうがいいと思います。私はかなり近いほうですね」
入社してからは、仕事のかたわら、独立を視野に入れて幅広くシェア事業の勉強をしている。
「古民家でのイベントの企画もそうだし、時間を自分でマネジメントして働くことも、全部将来に向けての練習や実験みたいな感覚です」
学生時代から計7年間シェアハウスに住み、仕事以外でも、民泊ホストの勉強会に参加しているという塩川さん。
どうしてそこまで、シェア事業に魅力を感じるんだろう。
「一緒に暮らすって、面白いんですよ。お互い似てくるし、無意識のうちに影響し合うんです」
化粧品や調理方法など、日常のなかで新しい情報を得たり、誰かがはじめた取り組みが、だんだんとハウス全体の文化になっていったり。
「シェアハウスっていいなと一番感じるのは、『今この瞬間、誰かと喋りたい』ってとき。なんだか元気が出ないときに、その場で話を聞いてもらうだけで気が楽になるんです」
「友だちと電話したり飲みに行ったり、他にも方法はあります。でも、話したいと思った瞬間に気持ちを共有できるのは、一緒に住んでいるからできることなんです」
今回、取材場所となった「Sharely」には、「共感する」という意味があるのだそう。
塩川さんの話から、そう名付けられた理由がわかったような気がした。
シェアという領域で、新しいことに挑戦し続ける東京シェアハウス不動産。
そこにはいつも、人と人のつながりがつくられてきました。
その関わりのなかで、自分の可能性も、シェアハウスの可能性も広げていける仕事だと思います。
(2018/10/02取材 増田早紀)