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クリエイターとして
京都から明日のデザインを

木を削り取った柔らかな痕跡と、鍛金の細やかな鎚の跡。

木と金属を組み合わせたキャンドルホルダー。まったく異なる技法や素材でありながら、色味や風合いのバランスがとても自然に調和しています。

工芸の素材や技法を活かしたプロダクトやデザインで、現代のライフスタイルの提案をするデザイナー、眞城成男さん。

その眞城さんが代表を務める京都のデザイン事務所、株式会社スフェラで働く人を募集します。

求めるのは、デザインのアシスタント、プロジェクトマネージャー、そして販売に関わる担当者。

少しずつ役割の違いはありますが、基本的な考え方は同じ。スタッフ一人ひとりがクリエイティブな視点を持ち寄り、デザインを届ける仕事です。



京都・東山区。

京都駅から、地下鉄を乗り継いで三条京阪駅へ。祇園や繁華街からも近く、観光客で賑わう鴨川沿いを5分ほど歩いていく。

骨董品店や小さな飲食店が並ぶ路地に入ると、その中でひときわ存在感がある「スフェラビル」に到着。植物模様を施した外壁はスウェーデンの建築家による設計だそう。

5階建てのビルの中には、犬を同伴できるカフェ、ショップ、ギャラリーを備えていて、どの空間も現代的で落ち着いた雰囲気に統一されている。

代表の眞城さんがブランドを立ち上げたのは2001年。ミラノサローネへ出展するようになったのはそのわずか3年後。当初から売り先としては日本より海外のほうが多かった。

「僕らは、数や値段で勝負するものではなく、カスタムメイドに近い領域でデザインに関わっている。日本にはまだその市場があんまり大きくないんですよね」

量産されるマスプロダクトではなく、表現のためのアートでもない。時には、オブジェのように機能と結びつかない形を選ぶこともあるけれど、ライフスタイルを豊かにするための装置という視点はとてもデザイン的だ。

眞城さんのデザインで特徴的なのは、工芸の素材や技法をデザインに調和させていること。

「京都で生まれ育って工芸が身近な存在だったから、僕にとっては自然なことだったんです」

とはいえ、一緒にものづくりをしていく職人さんは、それぞれの専門領域でのれんを守ってきた人たち。新しいアイデアを伝えるのは簡単ではなかった。

「工場ではないから、図面を書いて渡せばものができるわけじゃない。向こうの制作工程、考え方を知った上でないと話を聞いてもらえないですし」

「同じモチベーションで仕事をするためには、ただお願いするだけじゃなく、これが評価されることで、職人さんが自分のキャリアになると感じてもらう必要があるんです」

職人の視点や、工芸の世界に対して、配慮や理解の必要性を常に意識している眞城さん。一方で、アウトプットするデザインは、日本の伝統的な工芸のイメージそのものではなく、むしろ、伝統的な技法や素材であることを、良い意味で忘れさせてくれる、現代的な魅力がある。

その理由のひとつは、異素材の組み合わせ。竹と磁器を組み合わせたフラワーベースもそのひとつ。

「日本の伝統的な竹かごを、海外の生活にそのまま持ち込むと、日本らしさ、オリエンタルな雰囲気が際立ってしまう。それに、“落とし”っていう筒を入れないと花器としては使えないから、文化圏の違う人には扱いが難しいんです」

欧米の人にも馴染みのある磁器を組み合わせることで、竹という素材のアクセントをもっと気軽に楽しめる。

竹と磁器。一方は編組、もう一方は焼成と、全く異なる造形工程を必要とする素材同士。それが無理なく、新鮮なビジュアルとして伝わってくるのは、デザイナーが工芸技法に対する深い理解を持っているからこそ。

一人ひとりが異なる分野の専門家である職人さんたち。それを俯瞰しながら、ひとりではできない新しいものを提案するのが、デザイナーとしての眞城さんの役割だ。

これまで、海外に向けた制作を中心に活動してきたスフェラ。今後、日本での活動の広がりについて尋ねてみた。

「国内では工芸に対して、まだどこかノスタルジックなイメージを求める傾向が強いんです」

「今後、時代がマスプロからカスタムメイドへ移行していけば、おのずと、工芸は日本の現代の産業として、今とは違う評価のされ方をしてくると思いますよ」

大量生産・大量消費のあり方は、たしかに、もう前時代的。安く消費されるものだけじゃなく、それぞれのライフスタイルに必要なものをデザインする。ヨーロッパを中心に少しずつ浸透しているこの考えは、いつか日本でも当たり前になるのかもしれない。

そんな話を聞いていると、突然、顔をのぞかせたのは一匹のフレンチブルドック。

「彼はドンっていう名前なんです」

「前に犬のためのプロダクトをつくることがあって、リサーチだけでつくることもできるけど、リアルじゃないでしょ。機能としての実感と生活としての魅力を知りたくて、実際に飼ってみることにしたんです」

たとえば、リビングに置く水入れ。市場で犬用というと、どうしてもケミカルでファンシーなものしか手に入らない。

家族である犬のための道具。自分たちの器と同じように、ライフスタイルに合う、愛着あるものを使いたい。

そんな要望に応えて、眞城さんは木や焼き物の温かな素材で器などのアイテムをつくった。

「リサーチ犬です」と言われつつ、みんなに愛されているドン。おとなしく床に寝そべり、いつの間にか寝息を立てていた。

「犬が職場にいるとやっぱり散歩とか、手間は増えますけど、気持ちの切り替えにもなる」

「それに、犬がいることで、この空間にディスプレイされている製品にも、実際のインテリアとしてのリアリティを感じてもらいやすいんじゃないかな」

つくり出す製品そのものだけでなく、そこから生まれるライフスタイルや産業との関わりまで。これからスフェラとして、ソフトも含めたデザインを目指していきたいと、眞城さんは言う。



そんな眞城さんのアイデアを届けるために、企画や広報、プロジェクトマネージメントの仕事をしているのが久保さんという女性。

写真はちょっと苦手とのことなので少し遠くからカメラを向けさせてもらいました。とても優しい口調で話してくれる方です。

「うちは、会社の規模に対して、事業とエリアの幅がすごく広いんですよ。今いる5人のいるスタッフはみんな自分のメインの担当がありつつ、状況に応じて業務を補完し合いながらやっている感じです」

久保さんの仕事の中でも、大きなウェイトを占めいているのは、ミラノサローネなど、海外の展示会運営に関わる仕事。

「今年のミラノサローネでは、アンティーク店のスペースを借りて展示したんです」

コンセプトに合わせて場所を探すところから、企画、展示、プロトタイプの開発、プレスリリース、カタログの編集、輸出の手配や現地での対応まで。

「もちろん、1人で担当するわけではないんですけど、仕事は本当に幅広いです」

この仕事を始めて10年目だという久保さんはもともと東京出身。

美大のインテリアデザイン科を出て、小さな建築事務所で2年ほど勤務。その後、オランダの大学院へ留学し、日本に戻るタイミングで、スフェラに入ることになった。

「私が入ったころは、ちょうど眞城が日本のクラフト技術を使ったプロダクトを海外へ展開し始めたころで、ノウハウもまだなかった。会社もはじめて体験することを、一緒にやって覚えていくっていう感じでした」

これまで、日本の職人さんとつくったプロダクトを発信してきたスフェラ。ここ数年は、眞城さんが海外のギャラリーの依頼を受けて、自社ブランドであるスフェラの枠を越えたデザインの新しい仕事も増えてきた。

今後、もっと広く活動していくために、制作をサポートしてくれるアシスタントが必要だという。

「うちは、工芸を手法として製品をつくっているので、CADで精密な図面を引くというより、正面、平面、側面という“三面図”が描ければいいと思います。作業効率より大切なのは、コミュニケーションの感覚ですね」

たとえば、職人さんへの仕事の依頼。こちらの意思を伝えるのと同時に、相手の仕事へ理解や配慮が足りなければ、すぐに行き違いが生じてしまう。ときには、職人さんのコンディションに合わせて、細やかな調整をすることもある。

そうやってできたデザインを、今度は海外のデザインギャラリーに届ける。英語のような言語だけでなく、感覚のギャップを埋めるために双方の通訳のような存在になる。

「ごく基本的なビジネスの感覚が身についていれば、異業種から挑戦してもらうこともできると思います。デザインや海外の市場に関心がある人なら、ビジネスのノウハウを生かして、興味を形にできるかもしれない」

もともとデザインを学んでいた久保さん。直接手を動かしてものをつくるデザイナーだけでなく、スフェラでは広報や企画もクリエイターと同じだと話す。

カタログを編集したり、海外のキュレーターと一緒に何かを企画したり。

形をデザインする眞城さんに対して、久保さんたちは場や関わりをデザインしていく。

「私たちの競争力は、値段とか数での価値じゃなくて、“他にないもの”ということなんです。だから、営業的にがんがん売るっていうことではなくて、必要としてくれている人たちに、どう届けるかを考えていく仕事ですね」

ヨーロッパや京都。活動の場には華やかなイメージもある。ただ、そこできちんとプロジェクトを形にするためには、職人さんへの細かい気遣いから、地道な梱包作業、議事録、資料整理など日々の細かい積み重ねが欠かせない。

プロジェクトが佳境に差し掛かると、日常的に残業が増えることもある。

それでも、久保さんはここでしかできない経験にやりがいを感じている。

「ニッチな業界の職人さんと海外の市場の最先端。その両方に関われる仕事ってなかなかないと思うんです。ギャップの大きい世界だからこそ、調整は難しいけど、そこでオリジナルのものをつくるって、ユニークな環境だと思います」

日本の伝統に根ざしながら、常に海外からの関心を集める京都。日本の窓口であるこの街は、ある意味、東京よりも海外に近い場所。

その京都を拠点として活動するスフェラ。工芸やデザイン、そして、職人さんから海外のギャラリーまで幅広いネットワークを活かしたものづくりは、まさに、ここだからできること。

工芸をノスタルジーの枠から外して、現代に必要とされる価値に変換する。

スフェラの取り組むカスタムメイドは、いつか日本でもスタンダードになっていくデザインの形なのかもしれません。

(2018/6/12 取材 高橋佑香子)

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