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昨日より今日、いい仕事を
たった一握りの
木工塗装職人になる

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昨日より今日、もっと早く、美しく。

ものと向き合い、根気強く技術を磨いていく職人のひたむきさには、人を惹きつけるものがあると思います。

今回取材したのは、塗装に特化した職人の仕事です。

株式会社ひかり塗装は、主に家具や什器などの木工塗装や、商業施設や店舗などの内装塗装を手がける会社。

難しい依頼にも柔軟に挑戦していくうちに、自分たちの塗装表現の幅を広げてきました。

実は、ひかり塗装のように木工・内装の塗装に特化した会社は少なく、なかでも木工塗装職人は一握りの存在なんだそう。

今回は、そんな木工塗装職人となる人を募集します。

経験は問いません。内装塗装に興味がある人も歓迎とのこと。

どんな仕事なのか。

埼玉・川口にある、ひかり塗装の本社と工場を訪ねました。

 

東武スカイツリーラインに乗り、獨協(どっきょう)大学前駅に到着。

バスに乗って最寄りの停留所まで向かう。

バス停から5分ほど住宅街の中を歩くと、「ひかり塗装」の看板を見つけた。

外階段を上って、事務所のある2階へ。

外壁は左官仕上げのようになっている。自分たちで塗装したのだろうか。

「そうそう、あの塗り壁は自分たちでやりました」

そう答えてくれたのは、代表の小渕さん。

26年前に入社してから職人や管理職の経験を積み、2016年にお父さまのあとを継いだ。

いいところも課題に感じているところも、正直に話してくれる方。

「うちが手がけている主な事業は、大きく分けて2つです」

一つは木工塗装。店舗や住宅で使われる木製家具や什器の塗装を自社工場で行っている。

もう一つは内装塗装。商業施設やファッションブランドをはじめとした店舗に出向き、天井・壁・家具などの塗装を行っている。

「どちらも、今の塗装業界ではレアなものというか」

レアなもの?

「はい。現在の塗装業界のシェアのうち、建築用途のものは45%ほどを占めていて。その中で、内装塗装が10%ほど。木工塗装はおよそ1%にとどまります」

以前は婚礼家具を揃える慣習があり、美しい仕上げに欠かせない木工塗装の仕事も栄えていた。

しかし、住環境が変化していくにつれ婚礼家具の需要は減り、さらに家具そのものが売れにくくなってくると、木工塗装業界も衰退していくように。

木工塗装を専門に行ってきたひかり塗装も、徐々に仕事の幅を広げてきた。

「内装塗装をはじめたのは、お客さんから『店内の天井や内壁もお願いできない?』と相談されたことがきっかけで」

「先代である父は、『こういうことできないかな?』という声を聞いたら、最初から断るということをしない人だったんです」

お客さんの期待に応えるため、お客さんが抱えている課題を解決するため。たとえ難しそうに感じても、どうしたらできるようになるかと考え、お客さんの理想のものを仕上げていく。

そうした仕事への向き合い方が伝わったことで、次第に口コミが広がり、ほかでは断られてしまうような難易度の高い仕事の依頼が集まってくるように。

 

一体どんな塗装を手がけているのだろう。

ここで、昨年4月にオープンした1階のショールームを見せてもらうことに。

ショールームでは、実際に職人が塗装を施した壁面や、これまで手がけてきた木工塗装のサンプルなどに触れることができる。

「たとえば」と小渕さんが見せてくれたのは、金属の箱のように見えるサンプル。

「鉄のように見えて、これは木材に塗装してつくっています。緑色っぽくなっているところは、あえて金属の腐食を表現しているんです」

酸化したような表面の質感まで違和感がない。

塗装って、こんなこともできるんだ。

ほかにも、「艶あり」や「グラデーション」、経年変化を表現した「エイジング」といった幅広い塗装表現を得意としている。

培ってきた技術を応用させることで、お客さんの思い描くイメージを形にしてきた。

「塗装屋のなかでも、うちはものづくりを大事にする会社でありたいなと思っています」

小渕さんは今、特殊な塗装を積極的に紹介して新規開拓を進めている。

ショールームをつくったのも、商業施設や店舗といった既存の顧客だけでなく、新たに住宅やリフォームの分野でも興味をもってもらおうという意図があったから。

「ただ、私が特殊塗装などにフォーカスした発信をすればするほど、働いている人からしたら、理想と現実とのバランスが崩れているのかなと思って」

というのも、木工塗装に関しては、特殊な塗装の依頼は全体の5%ほど。普段は、「つぶし」と「染色」と呼ばれるオーソドックスな仕事がメインになる。

つぶしは、木目をあえてつぶしてフラットな面に仕上げる。染色は、木目を活かしながら色を透かすように塗装していく。

「繊細かつ地道に積み重ねる仕事です」

「でも誰にでもできる仕事ではないからこそ、技術を培って自分のものにしていけば、価値ある存在になれるはずだと考えていて。次の世代を育てて、塗装の技術が受け継がれていくようにしたい。そういう思いがあります」

 

実際に、木工塗装をしている工場も見せてもらうことに。本社からは歩いて3分ほど。

場内に入ると、機械の稼働音が響きわたる中、職人さんたちが黙々と仕事をしている。

木工塗装の仕事は、つぶしと染色の2種類の仕上げごとにチームに分かれて行うそう。班長と5人ほどのメンバーで一つのチームになっている。

数十年続けているベテランの職人もいれば、10数年目、5年目、1年目…と、勤続年数も年齢もさまざまな人が集まっているとのこと。

工場全体をとりまとめているのが、工場長の林さん。

26年前から勤めていて、今は依頼窓口から全体の管理まで一人で担当している。

「本当は今も現場で手を動かしていたいんですけどね」と話す林さん。

コワモテによく通る低い声のせいか、社員からも近寄りがたい印象を持たれやすいそう。ただ、ものづくりの話になると、とても楽しそうに話をしてくれる。

28歳でひかり塗装に入社するまで、グラフィックデザインや画材販売、トリックアートを描く仕事などをしてきた。

最初は塗装に対して、誰がやっても同じ仕事だと捉えていたという。

「ところが木工塗装って、塗装する人の腕次第で、出来上がりに歴然とした差が出てくるんですよ」

「たとえばつぶしでいうと、たくさんの量の塗料を吹けばみんな同じようにできるだろうと思っていたのが、そうではなくて。センスのある人ほど、平らな層を何回も重ねることで、表面を波立たせずきれいな平面に仕上げているとわかったんです。奥が深いなと思いましたね」

違いさえわかればすぐにできるようになるかというと、そうではない。身体を動かしながら覚えていく仕事なんだと思う。

「技術だけでなく、そのときどきの温度や湿度によっても仕上がりに影響が出るので。職人だったときは、朝いちばんと10時ごろ、昼、夕方、夜とで、シンナーの乾く速度を調整するようにしていましたね」

どういうことでしょう。

「塗料は時間が経つとともに、重力に従って平らになっていきます。塗料の乾きが早いと、平らにならないうちに固まってしまうから凹凸が残っちゃうし、反対に乾くのが遅すぎると、乾かしている間に埃がつきやすくなる」

垂直面を塗装するときには、塗料が垂れる前に乾く早さで、なおかつ平らに仕上げる必要がある。

「塗料を希釈するために使うシンナーは、速乾性のものと標準のものとで種類を変えたり、塗料との比率を工夫したりして、ちょうどいい塩梅を見つけていきました」

基礎を踏まえたうえで、工夫を重ねてきた林さん。

実は28歳で入社したとき、「その年齢から職人を目指すのは難しいよ」と言われたことがあったそう。当時は高校を卒業してすぐ見習いになる人がほとんどで、林さんのように20代後半で職人を目指す人は珍しかった。

「でも、5年しっかりやれば、一人前の職人として認められる。そうしたら、たとえ会社を辞めても、そのあとの選択肢は増えるだろうって受け止めていて」

「年齢よりも、ものごとを柔軟に考えてすぐに実行に移せることが大事だと思います」

 

最後に話を伺ったのは、昨年4月に新卒で入社した木村さん。

「就職を考えたとき、心の中にあったのは、内装業の職人である父や、大学時代にアルバイトをしていた高級寿司店の職人の仕事でした」

「自分の好きな“ものをつくる”ということを通じて、生計を立てていきたい。そう考えて、この仕事を選びました」

入社して間もないころは、ゴミ捨てなどの雑用係もしつつ、「調色」といって色をつくる仕事にも触れていった。

とはいえ、技術も知識もない状態からはじめたから、わからないことばかり。焦りを感じたという。

「そんなとき先輩が、『最初の2年、新人は失敗もするし、時間がかかるのも当たり前。4〜5年経ってようやくプラスの仕事ができるようになるんだ』と話してくれて」

「それを聞いて、職人になるまでの5年間、お金をいただきながら勉強させてもらうからには恩返しできるようにがんばろうと、腹をくくった感じです」

今は少しずつ、一人で任せてもらえる仕事が増えてきているという。

最近は、つぶしの仕上げの最初から最後まで、一通りの流れを経験した。

「最初に木目をなくすために水性パテを塗ります。乾いたらヤスリをかけて。次はスプレーガンで下地用の塗料を吹きます」

下地づくりは、美しい平面にするためには欠かせない。

「大事なのは、下地の層を薄く重ねていくこと。塗料の噴出量が多いと、粒子が大きいために凹凸ができてしまいます。ヤスリをかけては、下地用の塗料をさらに2回3回と重ね、またヤスリで削る。そうしてやっと、仕上げの塗料を吹くんです」

本当に、一つひとつ繊細に積み重ねていく仕事だということが伝わってくる。

しかも、依頼内容ごとにつくるものが異なるから、工程も塗装方法もまったく同じというものはない。基礎を身につけたうえで応用させていくことになる。

そして自分に合ったやり方で、スピードと質を向上させていくことも大切。

突き詰めていくなかで、大変に感じることはないのだろうか。

「もちろん、質に対して厳しい部分はありますけど、もともと好きなことを仕事にしているので」

「先輩たちも、自分から前向きにアドバイスを聞きに行ったりすると、快く教えてくれるんです。ものづくりが好きで、誰よりもうまくなろう!という気持ちを持てる人。ちょっとやそっとのことではめげないような人が向いていると思います」

自分自身や会社がどうありたいかを考え、前を向いていくみなさんの姿勢が印象的でした。

根気のいる仕事だけれど、まっすぐにたくましく、ものづくりと向き合える場所だと思います。


(2018/08/23 取材、2019/09/02 更新・再募集 後藤響子)
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