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母体が陶磁器メーカーだから
できるものづくりがある

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

色とりどりのマグカップ。温かみのあるタンブラー。純白の美しいプレート。

人の歴史のなかで、どれだけ多くの食器がつくられてきたことでしょう。その種類たるや、無限にあるのではと感じさせられるほど、私たちのまわりにはたくさんの食器があります。

でも使う人の声を聞いていけば、ありそうでなかったものが、まだまだ存在する。それを見つけて形にしていくことで、広がる輪がある。



株式会社ケーアイは、陶磁器を主に製造している光洋陶器が母体となっている会社。さまざまなメーカーの陶磁器製品をホテルやカフェ、小売店などに届けている。

さらに、プロのバリスタなどと密にコミュニケーションすることで、魅力的な商品づくりにもつなげています。

今回募集するのは、ここで企画として働いてくれる人。

仕事の中心になるのは、メーカーやユーザーとコミュニケーションを取りながら、社内の新たな企画にもつなげていくこと。そして自社のブランドを外へと伝えていくことです。

それ以外にも、メーカーやユーザーとの細かなやり取り、イベントへの出展、ロゴ入れのデザインなど、仕事は多岐にわたります。

陶磁器に関する知識がなくても、新しいものや流行を追うのが好きな人、なんでもおもしろがれる人にとっては、すごく魅力的な仕事だと思いました。


池尻大橋駅を降り、商店街を抜けていく。微かに香る惣菜の匂いが、なんだか懐かしい。

中目黒のほうへ目黒川沿いに歩いていく。山手通りを渡ると、1階におしゃれなコーヒーショップが入ったビルが現れた。

シェアオフィスとなっているこのビルの5階に、株式会社ケーアイの東京営業所がある。



株式会社ケーアイは、美濃焼で有名な岐阜に本社を持つ陶磁器の販売会社。母体である光洋陶器と組むことで、製品を仕入れて販売するだけでなく、ものづくりにもかかわっている。

その取引先は主に、ライフスタイルショップと呼ばれる一般の店舗。また最近では、カフェやホテルで使われる業務用の商品も多く扱うようになってきているそう。

最初にお話を聞いたのは、株式会社ケーアイの取締役である加藤さん。優しい笑顔と、柔らかい雰囲気が印象的だ。



光洋陶器は、加藤さんのおじいさんが創業した会社。その販売会社として30年ほど前に立ち上がったのが、株式会社ケーアイだという。

「会社は家業という形でやっているのですが、私は大学を卒業したあとメガネの販売をする会社に勤めたんです。そこで5年間働いたあと、2006年にケーアイに入社しました」

入社当時は、ライフスタイルショップと呼ばれる小売店が増えつつある段階だった。そのため特に変わったことをせずとも、店舗増に合わせて売り上げが伸びていく状況だったという。

しかし時代が進むにつれて店舗数も落ち着き、低価格商品へのシェアが高まってきたことで、陶磁器業界全体がきびしくなっていく。

苦しい状況のなかで生き残っていくためにどうするか。

辿り着いたのが、販売会社でありながらも、光洋陶器という自社メーカーを持っている強みを生かしていくことだった。

そして生まれたのが、ORIGAMIと名づけられた自社ブランド製品。



ORIGAMIは、コーヒーのプロであるバリスタ向けのカップやドリッパーを展開するブランド。名前には色の豊富さと、海外に向けて日本らしさを感じさせたいという思いが込められている。

「元々カップの製造は長い間やっていたので、つくるノウハウは溜まっていました。ちょうどサードウェーブという言葉が出てきた時期で、コーヒーが盛り上がりつつあったのも大きかったですね」

そして2014年に方向性をコーヒーに定め、まずは元々あった既製品をカフェ向けにセレクトして展示会に臨んだ。

しかし、反応は良くなかった。

「自社メーカーの商品は種類が多いのが強みなんですが、本当にプロが必要としているものをつくれていなかったんです」



そんなとき大きなきっかけになったのが、あるバリスタとの出会いだったという。

「どうしたものかなと考えているときに、社内の人が『名古屋にカフェをオープンする人がいるけど、会ってみますか?』って声をかけてくれて」

そのバリスタから出てきた言葉は、驚きのものだった。

「カップの反応が良くなかったということを言う前に、『これダメだったでしょ?』ってその人が先に言ったんです(笑)」

「『そもそも僕たちが使える物じゃない。だからダメだと思いました』って言われて、すごく衝撃的でした」

そこで加藤さんは、バリスタが納得し、そして使いたくなるような商品をつくることを決意する。

たとえば、ラテ用のカップ。

ORIGAMIのカップは、通常のカップよりも持ち手の部分がコンパクトになっている。これにより指がフィットし、ドリンクづくりやラテアートを描く際に安定した作業ができるそう。



また、縁から底の部分をなめらかな曲線にすることで、ラテアートを描きやすい構造に。これには母体である光洋陶器だからこそできる技術が生かされている。

「バリスタ向けという非常にニッチな領域でしたが、うちは工場があるので。とりあえずつくってみることができたんです」

展示会を重ねるうち、評判は徐々に広がっていった。機能性のみならず、カラーバリエーションの豊富さも、お店の雰囲気に合わせたカップを選びたいという声に応える形になった。



ユーザーの声を形にしたいという思いは、メーカーである本社工場も同じ。

2017年に発売されたORIGAMIの新しいドリッパーは、まさに工場との二人三脚でつくられた。

「多くのバリスタと話すうちに、ドリッパーも使いやすいものがないことを知りました。プロのバリスタが使うフィルターに合うものがなかったんです」

普段私たちがよく目にするのは、台形型と呼ばれるタイプ。しかしバリスタの間で主流なのは、円錐型やウェーブ型と呼ばれるものだった。

円錐型は注いだお湯がコーヒー粉に触れる時間が長く、成分がより多く抽出されコクが出やすい。ウェーブ型は逆にコーヒー粉に触れる時間が短いことで、雑味や味のムラが出にくいそう。

ただ、この二種類のフィルターは深さや角度が違うため、それぞれに合うドリッパーを使い分ける必要があった。

「それで製造についてよく知っている本社の松原のところへ、二つのフィルターを兼用できるドリッパーがつくれないか相談しに行ったんです。最初は渋られたんですよ。『ドリッパーを開発したばかりだし、それでいいんじゃないか』って」

それでも、バリスタたちの声に応えたかった。

「松原もすごく考えてくれました。そして、『こうすれば両方とも使えるんじゃないですか』ということで出てきたのが、このドリッパーなんです」



円錐型に合う角度、なおかつギザギザの角の数をウェーブ型に合わせることで、一つのドリッパーで二種類のフィルターが使えるように。

角度が深く安定しないために、焼くときに自立しないという工場の問題も、『伏せて焼く』方法を編み出すことで解決した。

ユーザーとメーカーをつなぎ、形にしていく。

メーカーである光洋陶器を母体に持つケーアイだからこそできたチャレンジだった。


企画・営業として働く山口さんも、ケーアイはいろんなチャレンジができる環境だと話す。

ケーアイに入社したのは4年前。前職はなんと加藤さんと同じメガネの会社で、研修も一緒に受けた同期だったそう。



「加藤が家業に移った後も、私はそのままメガネのバイヤーとして働いていました。加藤と定期的に会って仕事の話を聞いていくなかで、バイヤーの経験を活かすことができ、なおかつ自分の裁量でやれる部分が大きいところに魅力を感じて」

入社してしばらくは、陶磁器業界の特殊性に戸惑うことも多かったという。

メーカーと販売会社の関係は、一般的には発注する側である販売会社の意見が強くなることが多い。しかし陶磁器業界は昔からの流れで、つくる側であるメーカーの意見が強いそうだ。

「他社のメーカーさんで新しいタンブラーをつくろうとしたときがあって。そのときも最初は、『つくれる数が決まっているから、それは無理』ってバッサリ断られてしまいました」

「何回も通って、お菓子を持って行ったりもしましたね(笑)。そうするうちに信頼関係が築けて、何とかつくってもらうことができたんです。今ではお客さまから毎月リピートを頂ける商品に成長していますよ」



メーカーだけでなく、ユーザーとの調整も大変なことが多い。

「焼き物は納期や数量がズレる事が多く、一つひとつ確認しながら丁寧に進めて行かないとトラブルになる事が多々あります。お客さまの期待を裏切らないよう打ち合わせを重ね、状況を随時報告し、臨機応変に対応する事が大切ですね」


最後にお話を聞いたのは、企画・開発として働く中嶋さん。

元々は岐阜の本社で食器のデザインを担当しており、4年前に東京営業所にやってきた。



「本社では食器のデザインを中心にやっていました。今はオンラインショップの管理や営業もしています」

本社と東京では雰囲気が違いますか?

「こちらだとお客さんのところへ直接行ったりとか、イベントに出展したりとか。人と人のつながりが多いと感じましたね。東京に来てよくしゃべるようになったと言われました(笑)」

最初はお客さんと直接コミュニケーションをすることに慣れなかったという中嶋さん。でも次第に、本社でデザインに関わっていたからこそ自分ができることに気付いたという。

その一つが、カップへのロゴ入れ。ケーアイではカフェや企業のロゴを入れるサービスも行なっている。

「このロゴを貼るときに、どうしても位置がずれたりすることがあって。それがクレームの対象になることがありました」



「でもメーカーさんが手作業で貼っているから、どうしてもズレは生じてしまう。私は本社にいたとき、サンプルに自分でロゴを貼ってレイアウトを確認していたので、そういった避けられない問題も把握していました。なのでクレームがあった場合は写真なども使って説明しています」

中嶋さんが東京営業所に来るまでは、製造の現場を伝えることがなかなか難しかった。今はお客さんに納得してもらえることが増えたそう。

メーカーとユーザー、両方のことを知るからこそ、風通しの良い関係をつくることができている。


最後にふたたび加藤さん。

「メーカーとユーザーの架け橋になりながら、キャッチボールのようにコミュニケーションをしていく。それを一緒にやっていきたいですね」

ORIGAMIはバリスタの世界大会で使用されたことなどをきっかけに、日本だけでなく世界中で広がりつつある。

今後はORIGAMIをもっと知ってもらう工夫も必要だし、架け橋の役割もさらに大切にしていかなければいけない。

いろんなことにチャレンジできる仕事だと思います。

(2018/12/11 取材 稲本琢仙)
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