※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
地域を元気にしたい。
様々な産業や豊かな自然、特産品などの多様な地域資源を生かして、地域の魅力・価値を開発・最大化する地域づくり。
どんな課題に取り組むプロジェクトであっても、大切なのは関わる人たちが考え方を共有し、同じ方向に進んでいくこと。
それができていないと、どんな計画を練っても、みんなベクトルがバラバラだからうまく力を発揮できないと思います。
地域が新しい一歩を踏み出そうとするとき、事前に“リサーチ”することはとても大切なこと。
株式会社アール・ピー・アイは、リサーチやコンサルティングを通じて、地域活性やマーケティングのプロジェクトを担う会社です。
今回は、リサーチを担当する人を中心に募集します。
東京・神田
神保町駅から歩いて2分ほど。
株式会社アール・ピー・アイは、複数の企業が入るオフィスビルの3階に事務所がある。
さっそく、ワークスペースの脇のミーティングルームで話を聞くことに。
代表の長澤さんが、挨拶がわりに切り出したのはこんな質問だった。
「今、あなたの元気度は10点満点で何点ですか」
え?元気度って何だろう?
突然の問いかけに戸惑っていると、長澤さんはこう続けた。
「僕は今、7.2です。日本の平均は5点台なんですよ」
“元気度”というのは、株式会社アール・ピー・アイが独自に設定した地域の評価基準のひとつ。この“元気度”を把握するために、3年前から全国的な“地域元気指数調査”を行なっている。
会社のビジョンである「地域を元気に」を実現するためには、まずその“元気”の正体を探りたい。
そんな長澤さんの強い思いからはじまった、会社の自主研究でもある。
この調査のポイントは、地域に対する住民のストレートな実感を“数値”で表すということ。
“元気”という説明しにくい感覚を数値にすることで、経年変化を見たり、ほかの地域との比較もできる。
ただ、“元気度”はその人の絶対値だから、回答する人によって基準も違う。本当にそれが自治体ごとの比較になるのだろうか。
実はこの一見主観的な回答が、統計的なデータと比例している面もある。
たとえば昨年、全国1位になったのは愛知県長久手市。
名古屋市と豊田市、2つの大きな都市に挟まれた市で、平均年齢が日本で一番若いことで知られている。
大都市郊外のベッドタウンで、子供の出生率が高い。長久手市を特徴付ける要素は、元気度の高いほかの都市にも共通する。
こうして上位の都市だけ見ても、“元気”の一面を探ることができる。
「地域の元気」を実現するために、どんな課題に向き合うべきか。
“元気度”はその手がかりとして、地域づくりの導入になることもある。
正確なデータとして活用するためには、膨大な数の回答を集める必要があるし、集計には時間もかかる。
調べるだけでも大変な仕事。
目的は結果を出すことではなく、それを入り口として問題に切り込むこと。
地域に新しい可能性を結びつけるためには、ロジカルに考えるだけでなく、ときにはダイナミックな想像力も必要だ。
「地域づくりというのは、地域に物語をつくって行くような仕事。だから、地域づくりの基礎となるリサーチに向いているのは、結果が出た後も、考えるのを諦めない人なんです」
調査の結果が示す数値から、その地域に足りないものを考える。
リサーチャーが持っている視野の広さが、地域の物語の展開を左右する。
実際に課題に向き合い、物語の主役になるのは地域の住民たち。
リサーチャーの仕事は、彼らがスムーズに事業に取り組めるように課題を明確に示すことだ。
実際のリサーチって、どんなふうに進んでいくんだろう。
話を聞いたのは、現在プランナーとして働く西田さん。
新卒で精密機械メーカーで働いた後、青年海外協力隊として南アフリカで活動。
帰国後、2015年に日本仕事百貨の記事がきっかけで入社した。
「海外で生活していると、日本の生活では気づきにくい地域の課題を意識するようになりました」
地域を問わず、日本のほぼ全国に関われることが仕事の魅力だと感じている。
実際に現地に出向いて行うリサーチも多い。
昨年度プロジェクトの一員として携わったのは、伊豆七島のある島でのリサーチ。
観光協会も、旅館の関係者も以前から「もっと島を活性化したい」という思いがあり、活性化事業に取り組む必要性はみんなが感じていた。
一方でどういう方向に向かっていけばいいか、当時はまだ気持ちがまとまらないという状況でもあった。
そこで、リサーチによって、現状感じている不安を洗い出すことになった。
まずは、旅館に対するアンケート調査(定量調査)。
通常はインターネットで行うことが多いのだけど、島の規模や調査対象者を考えて、紙で配って回る。
設問の中心に置いたのは、旅館の後継者のこと。
普段から感じている漠然とした不安を整理することで、島のことを前向きに考えてほしいという狙いもあった。
調べてみると、全島の宿のうち「後継者が決まっている」と答えたのは、25%だった。
一方で、「若い働き手がいる」宿は全体の60%にのぼることもわかった。
後継者に決まってはいないが、若い働き手はいる。
彼らに旅館の、ひいてはこの島の次世代を担う人として意欲を持ってもらうために、何が必要だろう。
続けて、西田さんたちは各旅館からヒアリング(定性調査)を行い、具体的な事例を調査した。
一軒につき30分ずつ。ときには相手の考えを一緒にまとめながら、話を聞く。
「誰もが顔見知りというような小さな島だからこそ、普段はシビアな後継者問題の話はしづらいのかもしれないですね。僕たちが島に入ると堰を切ったようにいろんな話が出てきました」
その結果をまとめて、島の関係者が一緒にいる場所で確認する。
数値だけでなく、旅館ごとのサービスの内容も紹介された。
「お客さんに観光のモデルコースを提案している」
「シャワーを24時間使えるようにしている」
お客さんの満足につながる新しいサービスが、若い人のアイデアから生まれている。
そんな実例を一緒に確認していくうちに、不安を口にしていたベテラン世代から、「若い人は頼もしい」という評価の声が聞こえるようになった。
旅館を手伝ってくれる子供世代や、島の外からやってくる若い人たち。
彼らが頑張ってくれるから、島が元気になっていく。
そんな評価や信頼関係を再確認することではじめて、同じ課題に向き合う気持ちがまとまった。
リサーチを経て、今、島では活性化に向けて具体的なプロジェクトが動きだしている。
島の宿で働く若い女性たちが中心となり、島で採れるテングサを使った新しいスイーツの開発が進められることになったのだ。
テングサというのは、ところてんや寒天の原料になる海藻で、今はまだ、ところてんの酢の物として、たまに旅館の食事に出される程度なのだそう。
実際にスイーツづくりを担当する、プロジェクトの主役は若い人たち。
リサーチを通じて、世代間の気持ちが近づきつつある今だから、旅館の女将さんたちも若手のつくったスイーツに誇りを感じてくれるはず。
「島に来たら、ぜひ食べて行ってね」
そんなふうに旅館で提供されるようになったらと、西田さんたちは期待を込めて見守っている。
地域に関わりたいという思いで仕事を始めた西田さんとは対照的に、リサーチやマーケティングの専門性を買われてこの会社に入った人もいる。
高瀬さんは前職も含めると20年以上調査に関わってきた、調査チームのリーダーだ。
「地域のことはここに入るまで縁がなくて、大量にあった仕事をがむしゃらにやっていた時期は長かったですね。リサーチの大切さがわかるまでは辛かったですよ」
リサーチの大切さ。
「リサーチって、地域づくりのスタートの部分なんです。地域ごとに、全く同じ課題はないから、まずは課題が何かを調べないとプロジェクトは始まらないんです」
「結果がリリースされて活用されたり、それが元になってプロジェクトが進むのを見るとうれしいですけど、ほとんどは地道な仕事です」と、高瀬さんは笑う。
民間のマーケティングなどの事業も請け負うこともある。
机に向かって集計したり分析したり、正確なデータを取るために集めた膨大な数字と向き合う時間も長い。
間違えられないから、何人ものスタッフを動員してチェックを続ける。
「数字を出すだけなら、誰がやっても変わらないと思われるかもしれないけど、面白く見てもらえるかどうかは工夫次第です」
リサーチした人の意味づけによって、数字の力は大きくも小さくもなる。
「そこが本当に我々の腕の見せ所ですよ」
高瀬さんたちが目指すのは、コンサルもできる調査チーム。
機械的に数字を処理するだけじゃなくて、それを使ってちゃんと提案ができる。その提案を実現するために、また必要なリサーチを検討する。
地域づくりでも民間のマーケティングでも、感覚値では人を動かせない。
誰の目にも明らかな数字は、何より説得力がある。
「仕事に関わる人にはまず、リサーチのプロフェッショナルを目指して欲しい。地域に関わる面白さは、きちんと仕事をしていれば必ずわかるから」
リサーチャーに求められるのは、地域に憧れる気持ちではなく、それぞれに“寄り添う”という感覚で課題に向き合うこと。
「この会社にいるのはそういう人ばっかりだと思います。地域が好きで地域に寄り添って、自分の時間を削ってでもやりたいっていうメンバーだと思います」
株式会社アール・ピー・アイは、産休を経て復職したりしながら10年以上働いているスタッフも多い。定着率の高さも特徴の一つ。
リサーチのプロとして、仕事を続けていくコツってなんだろう。
「リサーチはいろんな分野にわたるので、これがあれば大丈夫という専門はないんです。」
「ただ、僕がマーケティングの経験を頼りにすることが多かったように、自分は“これ”、という強みがわかっていると、迷ったときに拠り所になると思います」
強みになるもの?
その問いに答えをくれたのは、代表の長澤さん。
「建築や農業や数学、なんでもいいんです。読解力やコミュニケーション能力のようなスキルでもいい。小さな会社だから、一人ひとりが専門性を補い合ってチームにして行くような気持ちでいてほしい」
もともと持っていた知識だけでなく、一つひとつのリサーチの経験を通じて、視野が広がることもある。
長い時間をかけて腕を磨いていけば、もっと多くの地域により良い物語を築いていけるかもしれない。
入社時期などは相談に応じてもらえるそうなので、本気で長く取り組みたい意欲があれば、ぜひ相談してみてください。
(2018/4/6 取材、2019/1/18 再募集 高橋佑香子)