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「農業」という言葉を聞いて、何を思い浮かべますか?
汗が滴るような暑い夏の日も、小雪がちらつく冬の日も。毎日畑に出て野菜と向き合う。
きつくて、汚い。安定しない、というイメージを持つ人もいるかもしれない。
もちろん大変な面もあることは否定しません。だけどこのイベントは、これまでの固定概念が崩れるきっかけになるように思います。
2/8(土)に開催される農と食の合同企業説明会「アグリク2021」。今回はこのイベントへの参加者を募集します。
昨年は57社の企業が出展し、来場者は500名以上。12回目の開催となる今年は、60社の出展と700名の来場者を見込んでいます。
アグリクの大きな特徴は、前衛的な農業法人・農業関連企業が出展する会だということ。
安定した会社のなかで農業に携わりたい人や、就農のスキルを身につけたい人にはまたとないチャンスです。これまで農業を仕事の選択肢に入れてこなかった人も、ぜひ読んでみてください。
まずはアグリクを主催する、アグリコネクト株式会社を訪ねることに。新橋駅から直通のビルの中にオフィスはある。
「うちは農業専門のコンサルティング会社で。企業・農業法人のコンサルティングを中心に、成長意欲の高い農業法人、農家をサポートしていくことがミッションです」
そう話すのは、取締役副社長の前田さん。
目指すのは、あくまで持続的な発展。ただ商品のパッケージや売り方を変えるような、瞬間的な発展ではなく、時間がかかっても人材を育て、地域や企業そのものを良くしていけるような取り組みを実践している。
たとえば、大手旅行代理店と一緒に、新たな地域のリーダーづくりを目的とする「食農観光塾」を実施。販路拡大のため、海外で商談会を開催することも。
農業と食に特化して多角的に事業を展開している。とはいえ、最初から農業に特化した会社ではなかったと前田さんは振り返る。
きっかけは、農業生産法人トップリバーの嶋崎さんとの出会いだった。
「トップリバーは、6年間勤めたら社員をどんどん卒業させていくんです」
卒業、ですか。
「嶋崎さんは、『日本の農業を救っていけるのは農家じゃない、農業経営者だ』とおっしゃっていて。畑を増やそうと思うと、雇用と売り先、会社としての運営が必要になる。そんな人材を育てようとしているんです」
卒業生には、畑もトラクターも安く譲ってしまう。目先の利益ではなく、人を育てるための日銭を稼ぐ。
「強烈でしたね。そこまで本気で日本の農業を考えているんだと思って。一方で日本には成長意欲のある農業法人や農家さんがたくさんいるのに、経営や雇用のやり方がわからないところが多いと気づいたんです」
想いを持つ企業を経営面で支えても、どの会社も将来を担える人材がおらず、持続的・継続的な発展は難しい。
そこで成長が期待される企業と、農を志す若手人材をつなげる場をつくりたいと始めたのがアグリクだった。
集まる企業は、野菜、畜産、果樹、流通、卸など実に幅広い。業種も、農業ヘルパーからコンサルタント、営業、教育、商品企画まで。自分に合った関わり方を見つけられそうだ。
「みんな農業=農家みたいなイメージなんですよね。僕らは固定化されているイメージを壊して、もっと“今の農業”を伝えていく。アグリクでは出展している全企業がプレゼンをします。一通り聞いてもらえれば、印象が変わるんじゃないかな」
どんな企業が出展するのだろう。
前田さんと別れ、汐留にオフィスを構える株式会社オプティムを訪ねた。
見晴らしのいい会議スペースで、速水さんにさっそく会社のことを教えていただく。
「当社はもともとソフトウェアの会社なんです。現在は、AIやいろいろなものがインターネットでつながるIoTの時代に、ネットに繋げたモノから情報を取得、蓄積、解析するプラットフォームである『OPTiM Cloud IoT OS』を開発・展開しています」
なかでも、注目は農業とITを掛け合わせた「スマート農業」。
「楽しく、格好良く、稼げる農業」をスローガンに掲げ、農業に対してのマイナスイメージを、最新技術を活用して払拭したいと考えている。
速水さんが見せてくれたのは自社開発のドローンで撮影された画像。
畑の上を飛行し、4Kの高画質で画像を撮影する。画像はオプティムが提供しているAI・IoTプラットフォームに送られ、圃場情報管理サービス「Agri Field Manager」上で動作しているAI(人工知能)がデータを解析。
すると害虫がいる場所が一目でわかり、被害が広がる前に、ドローンで農薬をピンポイントに散布することも可能だという。
「畑全体に農薬をまくことなく、コストを1/10以下に削減し、減農薬の商品として売り出すことも可能になります」
さらに一緒に作物をつくり、ブランド化して販売するところまで、オプティムは伴走していく。ブランド化された「スマートやさい」は、百貨店に通常の3倍の値段で並び、すぐに完売となったそうだ。
現在は、150以上の農家からスマート農業への導入申し込みがあるのだとか。
技術の進歩には目を見張るばかり。ところで速水さんは、もともと農業に興味があって入社されたのですか?
「実は、そうじゃないんです。前職では営業や事業企画の仕事をしていたんですが、ITや農業の専門でもなく。ゼロから勉強して、関わらせてもらっています」
前職では中国語が話せないながら、上海での新規事業立ち上げに参加。学生時代には、ダイビングの資格を取るために単身オーストラリアに渡ったこともある。
丁寧でやわらかな物腰とは裏腹に、チャレンジを恐れず進んで新しいことに飛び込んでいく方らしい。
今も、北海道から九州まで全国を飛び回っている。帯広では、長時間飛行可能な大型のドローンを使い、実証実験を続けている真っ最中。
「小麦をつくっている農家さんでは、経験豊富な年長の農家さんが目視で刈っていいもの・悪いものを選別し、青年部がその指示を元に刈り取り作業を行っていました」
とはいえ、高齢化が進み正確な指示は難しく、何より作業効率が悪い。そこでドローンを活用することにした。
今後は長年の経験に基づく指摘に加え、さらに効率的に収穫ができるようになる見込みで、喜ばれているそうだ。
「農家さんが我々の技術でやる気を取り戻したり、『農業の世界は変わった』とまで言っていただける。現場でそれを目の当たりにすると、感動することも非常に多いですね」
大きな手応えを感じられているんですね。一緒に働くなら、どんな人がいいでしょうか。
「IT企業なので、技術がないとダメだと思われがちですが、そんなことないんです。一番大切なのは素直な気持ちと柔軟性でしょうか」
スキルではなく、気持ち。
「たとえば、北海道の土壌センサーは私の手で埋めたんです。現地では『速水がやるの?』ってびっくりされました(笑) 作物の販売にも立ち会うかもしれない。農業はやりたくないと断っていたら、こんな経験はできなかったでしょうね」
仕事に枠は設けず、目の前の課題に全力でぶつかる。そうして一つひとつ解決してきた速水さんの言葉には説得力があるし、なんだか背中を押されるような気持ちになる。
速水さんはイベント当日も企業ブースにいらっしゃるそう。ご自身の体験も交えながら、一人ひとりの声に丁寧に応えてくれると思います。
お話を聞くうちに新しい農業の姿が伝わってくるものの、実際に働くとなると不安は尽きない。そこでアグリクを通して農業法人に就職した山本さんにもお話を伺うことに。
就職先は、九条ネギの生産・加工・販売を行う、こと京都株式会社。京都から画面を繋いでお話を伺います。
大学時代は、NPOで里山の保全活動や地域産品を通した地域活性化のボランティア活動をしていたそう。
「楽しかったけど、僕一人がつくれる農産物は限られている。だから農産品づくりをサポートできるような仕事がしたかったんです。さらに、持続可能な形で続けていきたくて。安定して農業に関わり続けられる企業でやろうと思いました」
農業系の求人サイトで、アグリクの開催を知る。
実際に足を運び、印象に残ったのは「日本全国の青ネギ農家をつなげるネットワークをつくり、加工から販売までを手がける会社をつくりたい」という、こと京都代表の山田さんの力強い言葉だった。
アグリクでは、出展企業の半数以上が社長自ら参加。それだけ、本気度が違うということだろう。
「社長自身が自分の言葉で話していたので、実現するやろなと。ここなら若いときから大きな仕事も任せてもらえると思ったのが決め手でした」
入社後は、加工部でサブリーダーとして働く山本さん。工場全体のマネジメントや、JGAPの整備など品質管理も任されているのだとか。
ちなみにJGAPとは、食の安全や環境保全に取り組む農場に与えられる認証のこと。2020年のオリンピックでも、この認証を持っていないと選手たちに食材を提供することができない。
それにしても、本当にいろいろな仕事を任されているんですね。
「そうですね。JGAPの内容は今も変化し続けているし、農業もまだまだ覚えることがあります」
たとえば同じネギでも、花が咲く時期になると幹が硬くなる。ネギの状態に合わせて、農薬や肥料を変えるのだとか。
毎日の作業に加え、自ら勉強を続けながら変化についていくことは、大変でありやりがいでもある、と山本さんは言います。
「工場の製造方法や管理方法を自分で考えて、変えていける。部下もいますし、現場の最前線に立っていると肌で感じられるので、楽しいですね」
ネギの栽培、ビジネスとして持続していくためのノウハウ、そして人を育てること。
山本さんの話を聞いていると、会社に所属しているからこそ着実にキャリアを積んでいる印象がある。
同時に、会社も成長を続けている。2014年には、アグリクで語った内容を本当に実現させた。日本のネギ生産者を連携させる「こと日本株式会社」を立ち上げたのだ。
今後は国産ねぎの調達力日本一、売上200億円を目指す。「次は、こと日本で働きたいんです」と山本さんはうれしそうに話してくれた。
取材も終わりにさしかかり、最後に伝えたいことを聞いてみる。すると、こんなメッセージが返ってきた。
「イベントでは、農業の楽しさだけじゃなく、厳しさもしっかりと感じてほしいと思います」
「基本的に農業は、毎日が同じ作業の繰り返し。体力的にきつい部分もある。それをどれだけ早く、丁寧にやって結果を出せるか。自分なりにどう楽しさを見つけられるか、考えてみてほしいなと思います」
いい面も大変な面も、さまざまな側面を知って初めて、自分に身近なものとして感じられるようになるんだと思う。
農業だからと線引きをするのではなく、一企業として向き合ってみると、あなたの知らない農的ビジネスの今が広がっているかもしれません。
少しでも興味を持ったら、ぜひ会場に足を運んでみてください。
(2018/3/1 取材、2020/1/16 更新 並木仁美)