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何かを選ぶモノサシとして、「自分にとってちょうどいい」という感覚は、大切なもののように思います。今の暮らしにフィットするものや、使っていて違和感のないもの。
そんなふうに、生活にまつわる“ちょうどいい”モノたちを提案してきたのが、CLASKA Gallery & Shop“DO(ドー)”。
東京・目黒のリノベーションホテル『CLASKA』のリニューアルと同時にオープンし、今年で10周年を迎えます。
昔ながらの手仕事によってつくられた商品や、デザイナーによる新しいプロダクトなど。店内には、使うことでいつもより少し豊かな気持ちになれるモノが並んでいます。
今回募集するのは、CLASKA Gallery & Shop“DO”の販売スタッフ。6月オープン予定の二子玉川新店オープニングスタッフと、都内近郊の既存店舗で働く人を探しています。
店頭での経験をベースに、営業や本部での業務に取り組むようになったスタッフも多いそう。これから出会う人もゆくゆくはそんな存在になってほしいとのこと。
東京・日本橋のお店を訪ねました。
平日の午後1時。
COREDO室町3にあるDO日本橋店は、次々にやってくるお客さんで賑わっていた。隣には『DO TABELKA(ドータベルカ)』というカフェも併設されていて、お昼ごはんを楽しむ人の姿も。
カフェの一角で、DOのディレクターを務める大熊さんに話を伺う。
最近はピアノを弾くことが日々の楽しみの一つなんだそう。
「不思議なもので、昔は嫌いだったのが、大人になって自らやりたいと思うようになって。はじめることのよろこびを感じています。すごく楽しいです」
大熊さんは2008年のCLASKAのリニューアルに関わり、CLASKA Gallery & Shop“DO”を立ち上げた方。
当時すでにデザインに関心の高い外国人観光客から認知されつつあった、リノベーションホテルとしての『CLASKA』を生かし、訪れる人に楽しんでもらうお店をつくろうと考える。
大熊さんが思い描いていたお店とは、どんな場所だったんでしょう。
「自分たちの今の暮らしにフィットするような、リアリティのある提案をしていくお店ですね」
リアリティのある提案。
「たとえば伝統工芸品にしても、ただ伝統工芸だから良いということではないです。今の暮らしに違和感なく馴染み、より素敵にしてくれるモノを扱いたい。時代の変化を捉えつつ、“今”にフィットするモノを選んだりつくったりしていきたいと思っています」
“今”にフィットするもの。
それは、ただトレンドを追い求めることとはちがうという。立ち上げからずっと扱っている商品があることからもわかる。
どういう商品が残っていくのだろう。
「なかなか言葉にしづらいんですが…。価格に関係なく品があるかどうか、ということはすごく意識しています。過剰にデザインされているものではなく、控えめななかに温かみがあるような、そういうムードのあるもの」
たとえば、と大熊さんが紹介してくれたのは、DOが企画したオリジナルのスリッパ。
「緑や青色の業務用スリッパがあるじゃないですか。足の甲を覆う部分に『男性用』って書いてあったりして。そういうイメージもあって、家庭で使うものとは捉えにくかったりしますよね」
一方で構造面に注目すると、業務用ならではの耐久性に優れ、メンテナンスしやすいつくりの商品であることがわかった。
「世の中に出回っているスリッパの多くが、女性的なデザインになっているなかで、シンプルかつニュートラルで手頃な価格のものがあったら、使いたいと思う人もいるんじゃないか。そういう発想から、日本のある製造メーカーと協力してつくりました」
生地の質感や色、ステッチなど、さりげないところに気の利いたデザインは、落ち着いた雰囲気を感じさせる。
ソールにはスニーカーに使われる素材を用いていて、履き心地もいいんだそう。
「すでにある優れた技術を、今の暮らしにフィットさせるようにアレンジして、日本のものづくりを再提案する。DOのオリジナル商品にはそういう特徴があるかもしれません」
お話を聞いていると、大熊さんは“自分が今何を求めているか”ということを大事にされているように感じます。
「そうですね。今こんな暮らしがしたいな、っていう気分は人それぞれ抱いていると思うんです。それが重なり合うなかに、同じ時代を生きる人たちの間で共有できるものもある気がしていて」
「自分の感覚をきっかけに“今”を考える。そこで見えてきたこの時代の気分みたいなものを、形にしたらこういうものじゃないですか?と提案している。そんな感覚でしょうか」
お店の世界観や商品企画について、当初はひとりで考えることも多かったという大熊さん。
不特定多数の人が訪れる商業施設への出店などを通して、より多くのお客さんに知ってもらうためには裾野を広げていくことも大切だと思うようになったそう。
どんなお店にどういうお客さんが訪れているのか、もっともよく知っているのは店頭のスタッフたち。
「だから今は積極的に現場のスタッフに新しい商品の提案や、店舗ごとに行っている企画展の立案を積極的にしてもらっています」
「ただ与えられたもの、お店にあるものを販売するということではなく、スタッフ自らの足で探し見つけたものを自分の店舗で扱う。そうすることで、お店や商品、そして仕事に対する愛着を育て、モチベーションをより強く持ってほしいという思いがあります」
今回募集する人にも、自分の頭で考えて主体的に店をつくっていってほしい。
「多店舗展開していくなかでも、ひと手間かけて手触り感のあるお店をつくっていきたい。新しく入る方にも、積極的にお店づくりのアイデアを出してほしいです」
実際、どんなふうにお店をつくっていくのか。
続いてDO日本橋店で店長を務める、伊藤さんに話を伺った。
前職もライフスタイルショップを運営する会社で働いていた伊藤さん。
「すごく素敵な会社ではあったんですが、スピード感をもってたくさん商品を販売することが求められたり、マニュアルがガチッと決まっていて」
「徐々に、仕事をこなすという感覚になってしまっていたんです。それでいいのかな?と考えるようになり、転職を決めました」
もともとはお客さんとして、DOの本店や渋谷パルコ店によく足を運んでいたそう。
「同じ販売職の立場としても、雰囲気のいいお店だなと思って惹かれていました。それから、日本のいいモノを取り扱っていたり、作家さんのフェアを開催しているのを見て、僕もこういう仕事をやってみたいと思ったんです」
5年前に入社した当初は、マニュアルが一切ないところに戸惑ったという。
一度売り場をつくったらそれでおしまいではなく、お客さんの反応をよく観察して、お店づくりに反映させていく。渋谷パルコ店や丸の内店での試行錯誤の経験を活かし、昨年3月から日本橋店の店長に。
今は、売り場づくりや在庫管理、スタッフの教育など日々の運営に加えて、期間限定で開催するフェアの企画など、幅広い役割を担っている。
「自分主導で進めていくということは責任も大きいです」
「店長になってからは特に、結果も出していかないといけませんし、お店全体の方向性を一緒に働くスタッフとどうやって共有するかについても考えていて。難しく感じるところもありつつ、それも含めて楽しみながらやらせていただいてます」
伊藤さんは今、どんなお店にしていきたいと考えていますか?
「そうですね。お店が笑っているというか。お客さまとの距離感が近くて、会話のなかで笑顔が生まれていく。そんなお店にしていきたいと思っています」
丸の内店でサブリーダーを務める夜船(よふね)さんは、まさにお客さんとの会話を楽しんでいる方だと思う。
印象的なお客さんとのやりとりについて話してくれた。
「丸の内店では、純銅製の玉子焼き器を扱っていて。それを見たお客さまが、『銅製のものはふんわり焼けてすごくいいのよ。今でもこういう道具があるのね!』とお話ししてくださったんです」
「知識として知っていることでも、実際に使っているお客さまの声を通して、あらためて『そうなんだ!』と実感が湧くというか。そういったやりとりを通じて、売る人と買う人というだけではない関係が生まれるところが楽しいですね」
自社の商品を愛用しているという夜船さん。自分で使うことで、お客さんにも商品の魅力が伝えやすくなるからだそう。
なかでもお気に入りは、DO TABELKAの制服でもある『ヂェン先生の日常着』という台湾のデザイナーによる服。
「気に入っている理由は着心地がいいところ。それにデザインがシンプルで、どういう方が着ても似合うし、合わせ方も自由で。余白があるところが好きですね」
また、取り扱いの難しい器などの商品については、本を読んだり、スタッフに聞いてみたり、工夫しながら知識を取り入れている。
そうやっていろんな商品を日常に取り入れていくなかで、自身の生活も少しずつ変わってきたという。
「以前は服がすごく好きだったので、生活にまつわる雑貨は二の次だったんです」
「DOに入ってからは、特別な予定でなくてもふらっと出かけて、ちょっといい器でごはんを食べたりすることで、十分気持ちが満足できるんだと気づいて。暮らしが新しくなったように感じています」
夜船さんは、暮らしと仕事の両方を楽しんでいるように感じる。
一方で、大変に感じることはありませんか?
「そうですね。今勤務している丸の内店は常にお客さまがいらっしゃる店舗なので、効率的に仕事を進めないといけないのは、今の私の課題です」
接客のほかにも、フェアの準備をしたり、ディスプレイを変えたり、店長の仕事の補佐をしたり、担っている仕事はたくさんある。
その中でも、店頭での接客を最優先に考えているという。
「やっぱり、以前よりモノって売れなくなっていると感じていて。どうしたらお客さまによろこんで買ってもらえるかと言えば、スタッフの振る舞いも含めて、お店でどう商品と出会うかという体験が大切になってくると思っています」
ここで、ふたたび大熊さん。
「モノって、モノ自体だけで存在するというよりも、それをどういうふうに使うか、暮らしに取り込むかっていう関係性のなかに価値が見出せると思っていて」
「暮らしを楽しむヒントやわくわく感を共有していけるお店だからこそ、ここで働く人は暮らしと仕事を自分流に楽んでほしい。楽しまないともったいないと僕は思います。どちらも楽しめる人に来てもらいたいですね」
お話を伺ったみなさんは、自分の気持ちに正直に、暮らしと仕事に向き合っているように感じました。
自分にとってちょうどいいとはどんなものだろう。
想像しながら、お店を訪ねてみてはいかがですか。
(2018/05/10 取材、2019/04/05 再掲載・更新 後藤響子)
(※本文中にあります渋谷パルコ店は、ビル全体の建て替え工事のため、2017年3月に閉店しました。)