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「自分たちがあったらいいなと思うものだけをつくること。世の中の流行や他者からの要望には流されずに、ずっとshiroが大事にしてきたことです」コスメティックブランドshiroは、2009年に株式会社ローレルから誕生したブランド。開発から製造、販売まですべての工程を自社で担っています。
ユニークなのは、使われる素材たち。
たとえば北海道栗山町の酒かすや函館市のがごめ昆布、鹿児島県のごま、小豆島のオリーブなど、日本全国で大切につくられた自然素材を使用しています。
掲げているのは「自分たちが毎日使いたいものをつくる」こと。そして商品を通じて、生産者が素材に込めた深い想いを伝えていくこと。
ここで、一緒にブランドをつくっていく人を募集します。職種は店頭に立つビューティーアドバイザー、企画・開発、製造など。どんな働き方ができるのか想像しながら読んでみてください。
東京・表参道。
ハイブランドのショップや、ライフスタイルショップなどが立ち並ぶエリア。地下鉄の駅から直結のビルにローレルの東京本社がある。
なかに入ると、洗練されたデザインの商品が静かに並ぶショールーム。
隣の応接室で少し緊張しながら待っていると、専務取締役の福永さんが「こんにちは」と声をかけてくれる。
代表の今井さんと二人三脚で会社をつくってきた。早速、会社について教えてもらう。
株式会社ローレルは、1989年に北海道の砂川市で創業。現在の代表である今井さんが代表に就任してからは、OEMメーカーとして入浴剤や石けんなどの企画、製造事業を展開してきた。
「franc francや無印良品など、ピーク時は130を超える他社ブランドの商品を手がけていました。ただ、そこにはやはり原価や成分に対するさまざまな制約があったんです」
限られた費用のなかで顧客の要望に応えつつ、さらに自分たちの利益も捻出する。そうして出来上がったものは、本当に自分たちが使いたいと思えるものだろうか。
大量にものをつくるうちに、そんな疑問が浮かんだそう。
「それなら一度、費用の上限を取り払ってものづくりをしたい。今井はそのためにOEMを完全にやめて自社ブランドを立ち上げたんですよね」
「億単位の売り上げを捨てて、たった1080円のハンドクリームを一からつくる。当時は社外にいた僕から見ても大きな決断だったなと思います。でも、迷いよりも解放されたものづくりができる喜びのほうが大きかったそうです」
その後、オリジナルブランド「LAUREL」が立ち上がる。海外進出も見据えて、ブランド名を現在のshiroに変更したのは3年前のこと。
商品のベースになっているのは自然素材。代表の今井さんが「美味しいものは体にもいいはず」と直接足を運び、見つけてきたものだ。
たとえばロングセラーになっている、がごめ昆布の美容液。
きっかけは、昆布漁の漁師さんを訪ねたこと。まるで我が子のことのように「うちの昆布は本当にいいものなんだよ」と話してくれる一方で、商品にできず捨てられている部分があることに気づいた。
「それなら漁師さんの想いや、素材の良さも伝えられる商品にしたい。どんな切り方をしたらエキスが一番出るか、トライアンドエラーを繰り返して。機械で絞ると大事な成分が十分に抽出されないんです。だから今も、一つひとつ手で絞り出して商品をつくっています」
スタッフは現在200人以上、お店も全国に24店舗を構えるほど広がってきた。ロンドン、ニューヨークを皮切りに海外にも店舗が着々と増えている。
そんななか、今でも手作業で商品をつくっているなんて正直驚いた。
規模が大きくなってもブランドの考えや想いが薄まらないように、さまざまなこだわりがあるのだそう。
競合他社の分析など、マーケティング調査は一切行わない。店頭でのセールやポイントカードもない。原価ありきではなく、本当に使いたい素材を考えるところから商品開発を始める。
昆布などの素材はその年の天候によって収穫量が少なくなることもある。それでも新規の取引先を見つけて補うことはしないそうだ。たとえ生産数が減っても、生産者さんとの信頼関係や素材にかける想いを大切にしたいと考えている。
shiroにふれる人が正直でいられるように。徹底したこだわりには、すべて理由がある。
働いている人たちは、どんなふうに考えているのだろう。
商品の企画・開発を担当する笹尾さんにもお話を伺う。さっぱりとしていて、気持ちのいい方。
まずはここで働くことになった経緯を聞いてみる。
「前職の化粧品会社では、企画から発売までのタイムラグが結構長くて。もっとスピード感のあるものづくりがしたかったんです。あとは『この成分を入れています』って堂々と言いたくて」
堂々と言いたい?
「成分表示にはいろんな素材がずらずらっと書いてあるものが多いけど、実際の含有量は商品の1%に満たないこともあります。使用感もほかとあまり変わらない」
「結局どこも同じじゃんっていう絶望感みたいなものもあって。それならシンプルに、種類は少ないけれど成分がしっかりと入っているもののほうが私は好きだなと思ったんです」
素材にこだわる一方で、shiroは完全なオーガニックではない。その柔軟さも、魅力の一つだったそう。
「植物の花粉でアレルギーが出ることもあるし、必ずしも植物由来のものが肌に合うわけではないんです。でもオーガニックと言いたいがために品質を損ねている会社が多いんじゃないかなって」
毎日使うからこそ、アイシャドウは発色よくあってほしいし、シャンプーも髪がつやつやになるものがほしい。
「人それぞれだけど、私はオーガニックに固執しすぎて、暮らしが楽しくなくなってしまうのはいやだなって。ここは必要ならば、ケミカルな素材も合わせてより良いものをつくろうと考えているので、ものづくりもしやすいです」
自分が心地いいと感じるものを、自分で選ぶ。
商品づくりにも、その姿勢は貫かれているよう。印象に残っているという、金木犀の香りのフレグランスをつくったときのことを話してくれた。
「私自身もほしいと思って探していたんです。でも人工的だったり、芳香剤みたいだったり、なかなか良い香りがなくて」
香料会社と相談しながら、何度も試作を重ねた。金木犀の香りを思い浮かべながら、どんな香りをつくりたいか、一つひとつその特徴を説明していったのだそう。
「たとえば、金木犀って果物みたいなジューシー感がありつつ、お酒のような大人っぽい香りもあるんです。ふわっと伝えてしまうと既にある商品と似たものになりがちなので。形がないものを言語化していくのは重要な仕事です」
香料と成分が決まったら、次は配合を考える。1%ずつ割合を調整して、納得いくものができたのは5ヶ月後だったという。
「本当に発売ギリギリまで粘りましたね。もちろん他の仕事と並行していたので大変でしたが、予約の時点で完売するくらい大人気の商品になりました」
「どこかで妥協していたらこうはならなかったと思うので。みんなが知っている香りだからこそ期待に応えたかったし、社内のスタッフが気に入ってくれたのもすごく嬉しかったですね」
自分たちが納得できる上質なプロダクトをつくることと、お客さんに素早く届けるスピード感がshiroでは両立されている。
だからこそ、社員一人ひとりに与えられる裁量も責任もとても大きいという。
「最初はそこまでやるの?って戸惑いましたね(笑)。ショッパーやカタログなどの販促物、什器、店舗で使うタッチアップ用のスポンジも手配します。スポンジは一つずつ触ってこれだ!っていうのを見つけました」
職種に囚われず、商品をつくり届けるために何が必要なのか、自ら考え動く姿勢が求められる。
それでも楽しそうに商品のことを話してくれる笹尾さんの様子からは、納得感を持って働いているように感じました。
こうして出来上がった商品を実際にお客さんに届けているのが、各店舗に立つスタッフ。
本社を後にして、shiroの自由が丘店へ。ここではカフェや物販など、スキンケアで使用する素材を生かした事業がコスメ以外にも展開されている。
出会ってきた素材を、化粧品だけでなくいろいろなものに応用して楽しんでもらえたら、と考えて出来上がった空間なのだそう。
「『酒かすが気になっていたんです』とか、うちを目がけて来てくださるお客さまが多いですね。最近は海外からのお客さまもすごく増えました」
店内を見渡しながら、嬉しそうに話してくれたのは店長の原島さん。まわりがぱっと明るくなるような笑顔が印象的な方です。
「商品企画のチームから商品のこだわりをまとめたシートを毎回もらっています。その想いをきちんと伝えながら、お客さまの普段使っている化粧品なども聞いて合うものを一緒に考えていきます」
原島さんが初めてshiroに出会ったのは、友人に贈るプレゼントを選んでいたときのこと。
「棚にはshiroの商品が丁寧に並べられていて。気がついたらshiroのフレグランスを試していました。スタッフがすごく自然に接してくれたのが心地よかったんでしょうね。気持ちいい買い物ができたなって嬉しかったんです」
その後、縁あってアルバイトスタッフとして自由が丘店の立ち上げから関わることに。より深く関わっていきたいと入社2ヶ月で社員登用の試験を受けた。
そのときのエピソードは、shiroのみなさんのあり方をよく表しているように思う。
「面接のときに、新しいスムージーの企画を持っていったんです。スキンケアにも使われているルバーブを使った、真っ赤なスムージー。それまで甘い系のスムージーが多かったので、さっぱりした味もほしいかなと思って」
代表の今井さん、福永さんにも試飲してもらいながら改良を重ねて、商品化されたのだそう。
社員を目指していたとはいえ、なかなかそこまで積極的に動けない気がします。
「当時の店長のアドバイスもあって、ここで働いているからこそできることを何か持っていこうと思ったんです。もちろん一度でOKは出ないけれど、めげずに挑戦する人に対しては会社もやらせてくれる風土があると思います」
その後、入社1年で店長を任された。現在はスタッフの育成や店舗運営など経験を積んでいる最中なのだそう。
「shiroは立ち止まることがないブランドだなって感じていて。月に1度は新しい商品が出ますし、社内の仕組みも変わっていきます。それを楽しんじゃうくらいの気持ちで、ブランドを一緒に広めていける方が来てくれたら嬉しいな」
お会いしたみなさんは、自分が大切にしたいものが何なのかをちゃんとわかっているように感じました。それが会社の目指す方向とも一致しているから、気持ち良く働いている。
想いを貫くのは、簡単なようで難しいこと。とても清々しくて、かけがえのない仕事だと思います。
(2018/11/30 取材 並木仁美)