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箱根峠を越えた先に
まちと世界が交わる
現代の宿場町をつくる

小田原から山を登り、箱根峠を越えて静岡県の三島まで下る32キロ、八里の街道。

高低差の激しいその街道は箱根八里と呼ばれ、江戸時代から東海道随一の難所として知られてきたそうです。険しい山を越えた先にある三島は、かつて「三島宿」という日本有数の宿場町として知られていました。

望む富士山は美しく、自然や食べものも豊かな三島の地。そんなまちを代表する名所・三嶋大社の門前で今、ゲストハウスをつくるプロジェクトが動き出しています。

今回募集するのは、新しくできるゲストハウスの運営マネージャー。スタッフのマネジメントからオペレーションづくり、地域の事業者と協力した体験やイベントの企画など、施設にまつわるすべてに関わります。

運営する加和太建設(かわたけんせつ)株式会社は、三島市に本社を構える建設会社。

道路や建物をつくる建設業を軸としながら、宿泊施設やブルワリーレストランの運営など、三島を中心とした地域の魅力を発掘し、伝えていくための仕事に広く取り組んできました。

今回のゲストハウスが目指すのは、日本や世界の各地から訪れる観光客と、まちの人との接点となる場。箱根八里という観光ルートと三島宿の賑わいを復活させながら、三島の魅力を多くの人に知ってもらいたいと考えています。

実際に三島を訪れて、詳しく話を聞いてきました。



東京から東海道新幹線で約1時間。三島駅の北口を出るとすぐに、「加和太建設」の看板を掲げたビルが目に入る。

駅前のロータリーを抜けて歩くこと数分で、加和太建設の本社に到着した。

まず話を聞いたのは、代表の河田さん。社員300人弱を抱える企業のトップでありながら、フランクな雰囲気でとても話しやすい方。

加和太建設は、今年で設立74年を迎えた。河田さんは、リクルートや三井住友銀行を経て30歳のときに入社した。

入社当時は、家業である建設業にあまり魅力を感じていなかったという。

「業界的にネガティブな話題で語られることも多いし、極めて勝手なんですけど、気性の荒い人たちがやっている危険な仕事、という印象を持っていましたね」

「でもあるとき、土木部門の現場監督たちから仕事への想いを聞く機会があったんですよ。酒の席で『お前、建設業わかってんのか?』って言われながらね(笑)」

自分たちのつくる道路や橋は、地域の人の生活を支えていること。災害時にはまちの人が被害に遭わないよう、すぐに家を飛び出してパトロールすること。一つひとつ、熱心に語ってくれた。

一歩間違えれば命を失う危険もある仕事に対して、誇りを持って取り組む姿に、それまでの考えが覆されたという河田さん。

「僕のようにネガティブなイメージを抱いている人って、実は結構いるんじゃないかと思って。道路や橋や建物をつくる建設業は、地域活性化を担う仕事なんだと、しっかり発信していきたいと思ったんです」

三島のまちを住民がもっと好きになり、地域が活性化するきっかけを、自分たちの仕事から生み出していきたい。

そんな想いから、加和太建設はまちづくりの事業に本格的に取り組みはじめた。

今回の舞台となるゲストハウスも、そのひとつ。もともとは2013年から加和太建設が運営する「大社の杜みしま」という複合商業施設だった建物で、三嶋大社の目の前に位置している。

飲食店や雑貨屋さんのほか、貸しスペースも備えた、大社の杜みしま。土地購入から建物の設計・建築、テナント集め、施設全体の運営まですべて自社で行ったそう。

「三嶋大社を参拝したお客さんが立ち寄ったり、地域の人たちが集まって一休みしたりと、地元の人を中心に愛される施設へと育ってきました。今後はさらに、この場所を外から人を呼び込む拠点にしていきたいと思っています」

大社の杜みしまは昨年11月に閉館し、この場所をどのように活用するかという議論をこれまで進めてきたという。

最終的には、既存の建物を生かしたゲストハウスとして、リニューアルオープンすることに決まった。

「大社の杜みしまが閉館すると決まったときに、たくさんの惜しむ声をいただいて。クロージングイベントでは、テナントのお店が感謝状をくれたり、地域の人がメッセージカードを集めてくれたり。僕らの想像以上に、地域に愛されていたんだと気がついたんです」

地域の想いを残したまま、新しい価値を生む場所へ変化させていきたいと考えている。



今は閉館中の大社の杜みしまに移動して、ゲストハウスの企画を担当している小林さんに話を聞いた。

コンセプト決定から施設の内装まで、一貫して企画に関わってきた小林さん。新しく入るスタッフとは、一緒に施設の仕組みづくりに取り組むことになる。

「三島の手前の箱根は、国内外から年間2,000万人が訪れる一大観光地です。一方で、三島の魅力はあまり知られていなくて、小田原に戻るか、西日本へと通り抜けてしまう人が多いという課題があります」

「実際に箱根のゲストハウスに取材に行くと、外国人だけではなく、日本人でも三島をよく知らない人ばかりでした。観光客を呼び込むのは簡単ではないと感じましたね」

どうすれば三島を訪れたいと思ってくれるだろう。調べるうちにたどり着いたのが、箱根八里というキーワードだった。

「…箱根八里って、ご存知でしたか?」

聞いたことはあったけれど、正直あまり詳しくは知りませんでした。

「そうですよね。東海道五十三次のなかでも、三島宿に至るまでの箱根八里は、江戸時代の人たちが一日がかりで登るような難所だったそうです」

「今も実際に歩けるんですよ。たしかに大変な山道なんですけど、江戸時代の石畳が残っている場所があったりして。当時と変わらない風景が残っているって、すごい価値だなと思いました」

険しい山を越えた先にある三島宿。箱根を越えた旅人が旅籠屋で疲れを癒し、箱根に向かう旅人は三嶋大社で無事を祈願する場所として、東海道でも屈指の賑わいを見せていた。

旅人と、彼らをもてなす地元民との交流が盛んだった歴史があり、今も地域にそのDNAが残っているという。

小林さんたちは、ゲストハウスを起点に、当時のような賑やかさを再現したいと考えている。

「このゲストハウスでも、まちの人と旅人との交流を生むことで、三島の魅力を発信していきたいんです。たくさんの人が箱根八里を通って、再び三島を訪れるきっかけをつくれたらいいなと思っています」

地域の人との関わりが魅力になると感じる原点には、小林さん自身の体験があるという。

この仕事をはじめて3年になる小林さん。もともとは横浜で働いていて、母方の実家がある三島に移住してきたことから、加和太建設を知ったそう。

入社当初から取り組んできたのが、大社の杜みしまの企画運営。

裏道にひっそり佇む小さなカフェやバー、こだわりのマンゴーを育てている農家さんなど、地域には面白い事業者さんがたくさんいた。そんな人たちと連携して、ワークショップやマルシェなどのイベントを定期的に開催し、施設を活性化させていったそう。

「三島には、自分たちの力で地域を盛り上げようと行動している人がすごく多いんです。自分みたいな移住者でも、声をかけると『地域のために』って力になってくれる人がたくさんいて。すごく心強かったですね」

自分が実感してきた地域の温かさを、多くの人に知ってほしい。まだ構想段階だけれど、将来的には、宿泊客向けに地域の人たちが三島を案内してくれるツアーを企画できたら、と考えているそう。

ガイドブックには載っていない、地元の人ならではの視点をたどるツアー。きっと、三島の魅力をじっくりと味わえるようなものになっていくのだと思う。



続けて話を聞いたのは、同じく企画を担当している本多さん。

「このテラスの真ん中にカフェをつくって。宿泊者だけでなく、地域の人たちも気軽に利用できる場所にしていきたいと考えているんです」

本多さんは、加和太建設が手がけた最初のゲストハウス「富士山ゲストハウス掬水(きくすい)」の立ち上げにも関わった。

「掬水では、毎晩のように地元の人たちがふらっとバーに遊びにきて、泊まっている外国人の方とカタコトの英語で話して盛り上がっていて。僕らが思っていた以上に面白い光景が生まれているんです。そういう体験をここでも生み出していきたいですね」

実は掬水の運営マネージャーは、以前の日本仕事百貨の記事をきっかけに入社した方。本多さんはともに仕組みを整えたのち、現場の運営は任せて広報などに注力しているそう。

「今回入る方にも、スタッフのマネジメント、売上管理や広報、宿泊やカフェのオペレーションづくり、イベントの企画…。なんでもやってもらうことになると思います。宿泊業でなくても、何かサービス業の経験があると働きやすいでしょうね」

旅が好きだという本多さんは、今までも数多くのゲストハウスに宿泊してきたそう。

ゲストハウスの魅力って、どんなところなんでしょう。

「やっぱり、交流じゃないでしょうか。ゲストハウスって不思議で、はじめて会った人ともなぜか深い話ができちゃうんですよね。ニュージーランドの宿で、フランス人のおばちゃんと愛について語ったこともありました(笑)」

「そういうゲストハウスの温度感を知っていることは、結構大事だと思うんです」

たとえば、あるとき掬水では『ラウンジにこたつを置こうか』という話になったそう。

こたつがあれば、そこに人が集まるきっかけになるんじゃないか。こたつという日本の文化を伝えることで、宿泊者同士の話がはずむかもしれない。

ゲストハウスが好きなスタッフが集まっているからこそ、こたつのあるゲストハウスの雰囲気をイメージできたため、まず置いてみることになったという。

「三島のゲストハウスでも、関わりを生むためにどんな仕掛けをつくっていくのか、新しく入る方にもどんどんアイデアを提案してもらって、一緒に考えていきたいと思っています」

旅人同士や地域の人との交流が生まれることで、お互いにとって新たな発見や感動になる。今回のプロジェクトではそんな体験を生み出していきたいと、本多さんは話していた。



ゲストハウスづくりに興味があったとしても、ゼロから自分で立ち上げるのはきっとむずかしいことだと思います。

加和太建設という会社で、チームのみなさんと協力しながらであれば、チャレンジできることもあるはず。

三島が再び宿場町として知られるきっかけを、このゲストハウスからつくっていくことができるかもしれません。

(2019/2/6取材 増田早紀)

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