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映像は社会を変えられる

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

映画館で、いい映画を観たあとの帰り道って、なんとも言えない気持ちになる。

なぜあそこで、彼はあんなことを言ったのかな。自分だったら、どうするだろう。

登場人物と自分、画面越しの世界と今生きている社会、遠くで起きていることと、身近な人との何気ない日々。いろいろな問いや思考が、ぐるぐると全身を駆け巡る。

EXIT FILMの作品を観ていると、あの感覚を思い出します。

まるで映画のような雰囲気の映像を得意とするEXIT FILM。企画から撮影、編集まで、一連の流れをワンストップで手がける映像制作会社です。

難民支援や障害、福祉やアート、いじめやローカルの魅力発信など。社会課題を中心に、そのテーマの当事者や多分野のクリエイターと一緒になって、ひとつの映像をつくりあげていきます。

今回は映像ディレクターを募集します。技術レベルを引き上げたいため、最低でも2年以上の実務経験が必要とのこと。

消費されるものではなく、社会をよくするための映像を本気でつくりたい。そんな人を求めています。

 

取材に向かう電車のなか、EXIT FILMのサイトにあがっている映像アーカイブをずっと観ていた。

企業のブランディングやイベントの記録など、それぞれの目的をもった映像なのだけど、同時にどれもが映画のような雰囲気をまとっていて、つい引き込まれる。電車はあっという間に神田駅に到着した。

駅から歩くこと5分、EXIT FILMのオフィスが入るビルへ。

2階では、6名のスタッフが黙々と作業を進めている。部屋の角にはベビーベッドが。

「子どもが産まれたばかりで、ちょうど2ヶ月ぐらい。横で見ながら働いて、自分の作品づくりもしたいので、今日も朝の5時ぐらいまで脚本書いてましたね。まあでも、まだできるんだなって」

なかなかハードな近況から教えてくれたのが、代表の田村さん。イベントなどでも使うという3階の部屋で話を聞いた。

大学を中退して映画の現場に飛び込み、21歳で初監督を務めた作品が単館上映されて評判に。その後は映像制会社に入ったり、まったく別の仕事で食い扶持を稼ぎながら自主制作をしたり。さまざまな形で映像をつくり続けてきた田村さん。

EXIT FILMを法人化したのは2014年のこと。そのなかで見出したのが、共創型の映像制作というスタイルだった。

「Webや音楽、スタイリストやエンジニアなど。クリエイターとチームを組みながら、その課題やテーマの当事者も一緒になって作品をつくっていくようなやり方です。そのアプローチで最初につくったのが、KUROKAWA WONDERLANDという作品で」

国内でも有数の人気温泉街である、熊本・南小国町の黒川温泉。ただ、近年はバブル期の最盛期に比べると客足は落ち着き、まちの人口も減少傾向に。先行きに危機感を持つ人も少なくなかった。

その課題を、旅館組合など一部の人たちだけではなく、まちぐるみで考えたい。ひとつのきっかけとして、田村さんたちはWebや音楽、スタイリストやエンジニアなど、多分野のクリエイターを引き連れて、まちの人たちと一緒に作品をつくることに。

ターゲットはインバウンドの観光客。ストーリーの中心に据えたのは、地域に伝わる神楽の物語だった。

「キャストは町民の人たちにお願いして。みんなうまいんですよ。雑貨屋さんや農家さん、そのせがれ。裏方にはアーティストもいれば、東京の大企業の人もいる。混成チームですよね」

まちの人たちは、言ってみれば素人。それでも絶対にクオリティは下げないというのが、田村さんの考え方だという。

「課題解決とか社会貢献とか、それを言い訳にして映像の質を落とすのは違うと思っていて。いい作品をつくるからこそ、関わる人たちの意識や行動が変わっていくし、その課題やテーマの当事者でなかった人にも届く。そんなふうに社会を少しずつ変えていけるところが映像の持つ一番の力だと思うんです」

この作品をつくったことで、まちのなかでもさまざまな変化が起きた。

「映像にも出てくる、当時小学3年生だった農家の子、彼は高校進学前に農家を継ぐって宣言して。都会のクリエイターと対等にものづくりする親父の背中を間近で見たことは、ひとつのきっかけになったんじゃないかな。地元のまちでも、こんなふうにかっこいい仕事ができるんだって」

その親である農家さん自身も、黒川温泉と共同で、地域の特産「あか牛」のブランドを立ち上げることに。

ほかにも、制作に関わった人のなかから南小国産の素材を使った家具ブランドが生まれたり、ドキュメンタリーの制作会社を立ち上げる人が出てきたり。熊本の震災で風評被害が広がったときには、100人のライターで旅して現地の様子を発信するような動きにもつながっていった。

担い手不足で存続が危ぶまれていた神楽も、その後国内外のイベントに出演して注目を集め、多くの人が集まる行事として復活したのだそう。

このKUROKAWA WONDERLANDがきっかけとなって、EXIT FILMにはさまざまな業界から声がかかるように。

たとえば「横瀬クリエイティビティークラス」は、埼玉・横瀬町が舞台の教育プログラム。若年層の町外への流出を背景に、“もう一度この町に帰ってきたくなるアイデアは?”というテーマでハッカソンを開催。中学校で20コマの連続講座を行ったほか、最終的には中学生自らが映像をつくるプロジェクトへと発展していった。

「Netflixでも使われているような、800万円ぐらいのカメラで本格的な映像をつくってもらって。彼らの作品も賞をとったり、ここからWebや映像の仕事につながっていったり」

「町長をはじめ行政の人、富士通やJR東日本といった大企業の人たち、当時の総務大臣補佐官の方なんかも関わってくれて。黒川温泉のときと比べると、レイヤーがまた一段上がった取り組みでしたね」

その後も、島根・海士町の高校生たちと一緒に学習センターのブランドムービーをつくったり、キッザニアのSDGsをテーマにした映像プログラムを共創型で手がけたり、「RUN TOMORROW」というプロジェクトでは、認知症当事者の人たちとの映像制作に取り組んだり。

多様な社会課題に向き合ってきた。

「そうすると、だんだん映像から離れてない?と思われるかもしれません。でもうちはあくまで、映像のプロであることにこだわりたい。つくり手が主体的にコトを起こし、課題に立ち向かっていく。そういう事例をつくっていきたいんです」

今回募集したいのは経験者。映像制作会社や広告代理店で、少なくとも2年以上はディレクターやプロデューサーとして経験を積んだ人を求めている。

「コロナ禍で世の中が変わり、自分のスキルをただ消費されるだけのものに使っていていいんだろうか、もっと社会のために使えないかって疑問をもった人。きっといると思うんです」

ただかっこいいものをつくるのではない。一方で、意味ややりがい先行でクオリティの低い映像をつくっていても、社会にいい影響は与えられない。

「映像における作家性は、スキルセットだと思うんですよ」

どういうことでしょう?

「映像は“総合芸術”と呼ばれるくらい幅の広い世界なので、何かを極めようと思ったら偏らざるを得ない。たとえばリズム感がいいとか、美術めちゃくちゃ組めますとか、カメラオペレーションの発想がものすごいですとか。シナリオしか書けないけどこういう仲間がいます、っていうのでもいい。それが作家性だと思っていて」

つまり、まんべんなくなんでもこなせるより、何か武器があったほうがいい、と。

「そうですね。ぼくと同じような人じゃつまらないというか、会社として意味がない。いろんな作家性をもった人がいて、テーマによって担当を選べたら最高ですよね」

 

常に高いレベルを求めて制作を続ける田村さん。そんな彼のもとで働いているのはどんな人だろう。

プロダクションマネージャーやプロデューサー、ディレクターなど、さまざまな役割をこなす寺井さんに話を聞いた。

中学生のとき、フォトジャーナリズムの雑誌でキルギスの誘拐婚を知り、衝撃を受けた寺井さん。

「人権的な立場から、それを悪だと言うことはできるけど、現地の人にとっては伝統的な慣習でもある。あなたはどう思う?と問いかけられるような写真で。そこから、ある視点に立って世界との接点をつくる写真家なり、映像作家というものに興味を持ちはじめました」

大学で文化人類学を、大学院では映像を使ったファシリテーションやアドボカシーの手法を学び、イギリス留学中にたまたま見つけたのが、EXIT FILMを取り上げた記事だった。

「田村さんの作品をはじめて観たとき、キルギスの誘拐婚の写真と同じような衝撃を受けて。テーマに対して良い悪いを言わずに、『で、あなたはどう生きますか?』って問いかけてくるような作品だなと思ったんです」

分断されたもの、関わりのなかったものの間に橋をかけるというか。

みなさんにとっての映像は、何かと何かをつなげるようなイメージなんだなと、お話を聞きながら感じています。

「ただ伝える手段としての映像じゃなくて、それを観たときに、自分のアイデンティティとか、世界の捉え方を一歩踏み込んで考えたりとか。そういうきっかけをつくれるのは、やっぱり映画の力だなと思いますね」

働きながら感じる、この会社ならではの文化もあるという。

「メンバーみんなでキャンプに行くんです。このあいだは、帰ってきた日曜日の夜に、田村さんからキャンプでの全員の振る舞いを振り返るメッセージが来て(笑)。その人の人生丸ごと向き合っている感じがして、ある意味すごくファミリー感があると思います」

取材中もみなさん、率直な言葉でやりとりしているのが印象に残った。

理不尽な厳しさは感じないけれど、きっとストイックな人たちだと思う。それはお客さんに対しても同じ。

クライアントというよりは、同じチームの一員という感覚で映像制作に取り組める人がいい。

そしてもうひとつ、伝えておきたいのが、自主制作のこと。

EXIT FILMでは、クライアントワークだけでなく、インディペンデントな作品づくりにも力を入れている。

作業は勤務時間を使って進めてもいいし、予算もしっかりつけて臨む。Webサイトをつくったり、イベントを企画したり、映画祭に出展することもあるという。

「むしろそっちが本当にやりたいことで」と、田村さん。

「企画はめちゃくちゃぼくが見ますし、世の中にとって意味がないなと思ったら何度でも突き返します。個人のポートフォリオ制作をサポートしますよ、っていうわけじゃなく、価値ある作品をつくって社会を変えることがこの会社のミッションなので」

「観た人の行動が変わり、それが社会の変容につながるような、すぐれた作品をつくっていきたい。その想いに共感できる方に来てもらいたいですね」

大量のコンテンツが消費されていくような時代。映像を通じて、どうしたら社会をもっとよくしていけるだろう。

ここでなら、できることはまだまだあるような気がします。

(2020/12/7 取材 中川晃輔)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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