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フェアにつながるきっかけは
この街、このお店から

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

マイバッグを使う機会が増えて、最近は気に入ったお店の手提げ袋を通勤リュックに入れて持ち歩いています。

そのラインナップの一つに、フェアトレードショップのシサム工房があります。

手に持つと、イラストとつながっているように見えるこのバッグ。「お買い物を通してつくり手とつながる」というメッセージが込められています。

シサム工房は、京都を拠点にフェアトレード事業を展開している会社です。洋服やアクセサリー、コーヒーなどを適正な価格で輸入し、日本で販売しています。

今回募集するのは、東京・吉祥寺の直営店「vote for by sisam FAIR TRADE」で働く販売スタッフです。



よく晴れた日曜日の午後。吉祥寺駅前のアーケード街は、多くの人でにぎわっている。

服を選ぶ女の子たちに、お惣菜を買う家族連れ、店員さんと話すおばあちゃん。揚げたてのコロッケのいい匂いも漂ってきた。

吉祥寺は気ままに歩くのがとてもたのしい。ちょっと遠くても足を延ばしたくなる魅力が、この街にはある。

アーケード街の途中で曲がり、ファッションビルのコピス吉祥寺へ。3階の「vote for by sisam FAIR TRADE」では、たくさんの春服が紹介されている。

やわらかそうなガーゼのシャツや、繊細な刺繍のワンピース。お店には何度か訪れていて、来るたびについ気になる商品を見つけてしまう。

あっ、男性の洋服も並んでいる! そういえば去年の秋に取材したとき、メンズ商品の企画が始まっていると聞いたっけ。

「メンズのアイテムもいよいよお店に並び出したんです」と声をかけてくれたのは、シサム工房代表の水野さん。

「この一年でフェアトレードやSDGsがさらに認知されてきて、エシカルな選択をしたいって人が増えているんです。ただファッションの分野だと、男性はまだまだ選択肢が少ないんですよね。シサムはそんな男性の選択肢を増やしていきたいと思っています」

たとえば、シャツやスニーカー。ラインナップはまだ少ないけれど、お店を目がけて来店する男性も少しずつ増えているのだそう。

「このスニーカーはVEJA(ベジャ)っていうフランスのシューズブランドで、とくに人気です。キャンバス生地や靴ひもはフェアトレードのオーガニックコットンを使っていて、履き心地もいいんですよ。僕は3足買いました」

今では教科書でも紹介されているフェアトレード。

その言葉がほとんど知られていなかった22年前から、シサム工房はフェアトレード事業に取り組んできた。

パートナーは、アジアで暮らす生産者たち。お店に並ぶ洋服やアクセサリーの多くは、つくり手の伝統や技術、文化を尊重してデザインされたシサムオリジナルのもの。

手仕事のあたたかみを感じさせながらも、品質は下げない。パートナーと二人三脚で、日本に商品を届けてきた。

関西を中心にお店を展開しているシサム工房にとって、ここ吉祥寺店は関東唯一の直営店。この春でオープンから丸4年を迎えた。

「去年の今ごろはすべての直営店を休業していたので、無事に4周年をお祝いできたことにほっとしています」

「まだ世の中は健康な状態とは言えないし、しばらくお会いできていないお客さまもいらっしゃいます。でもショップスタッフから聞いていると、『思い切って出てきたのよ』『話すことができてうれしかった』と声をかけてくださる方もいらっしゃるんですよね」

ただ商品を売るのではなく、誰がどんな想いでつくったものなのか伝える人。

水野さんは、ショップスタッフの役割をそう表現する。

「ものの背景にあるストーリーに想いを馳せる。僕が本当にやりたいのは、その意識や行動を広げることなんです。コロナ禍もあいまって、途上国の人たちは過酷な状況におかれています。フェアトレードでつながれるのは、そのなかのほんの一部にすぎません」

「でも、商品を通して直接出会えない人たちを思いやれるようになれば、きっと世界も少しずつ変わっていく。そして何か行動に移したいなと思ったときに、シサムはその期待に応えられる場でありたい。それだけの商品があるし、伝えてくれるスタッフもいると思っています」



そんな吉祥寺店で働くうちの一人が吉田さん。3年前に知り合って以来、お店を訪れるといつも気さくに話しかけてくれる。

「もともとは金融業界で働いていたんですが、本当に世の中の役に立っているのかなとモヤモヤして。それでパンと辞めちゃったんです。ピースボートっていう船旅があるんですけど、それに乗ったら何か変わるんじゃないかって、思い切って参加して」

船が泊まった南米のウルグアイで、印象的な出会いがあったそう。

「スラムで暮らす女性たちを支援するNGO団体を訪れたんです。南米には“金の草”って呼ばれる、乾燥すると金色に輝く植物があって。それを女性たちがネックレスにして売っていました」

「ひとつ買ったら、その女性が笑顔で『ありがとう!』と言ってくれて。そのとき初めてフェアトレードという言葉を知りました。ものの先にいる人とつながるって、こんなに温かくて安心感があることなんだと。それで、帰国後はフェアトレードに関わりたいなと思ったんです」

友人がシサム工房でインターンをしていたこともあり、帰国後はとんとん拍子で入社が決まった。京都のお店に2年ほど勤めたあと、2年前に吉祥寺店へ。

「お店に立っていると、オープンからずっと通い続けてくださっている方や、関東への出店をずっと待っていたんですって話してくれる方もいて。気に入った一着を大切に着てくださる方も多いですね」

以前シサムのデザイナーさんにインタビューしたとき、「流行はそこまで追わず、体型が変わっても着続けられる洋服をつくりたい」と話していたのを思い出す。

吉田さんたち販売スタッフもお客さんの顔を覚えていて、「このパンツは、以前買われたブラウスにも合うと思うんです」と提案することもあるという。

洋服の基礎知識、生産者のこと、お客さんのこと、フェアトレードの考え方。

商品一つひとつを通じて伝えたいことがたくさんあるぶん、知識を蓄え、アップデートすることは欠かせない。ペンだこができるほど、ノートにあれこれ書き込んでいるスタッフもいるとか。

海の向こうのつくり手や、その人たちの暮らしにまで関心を持ってもらえたら。お店にはそんな想いを反映した細かな工夫がちりばめられている。

「こっちに来てから、吉祥寺という街にお店があることの意味を感じていて」

というと?

「地域とのつながりが濃いんです。たとえば、“ハモニカ横丁”っていう昭和の雰囲気が残る横丁があるんですけど、そこで毎月朝市が開催されていて。シサムも出店しています。普段お店にはいらっしゃらないような方にも、そこで出会えるのがたのしいんです」

「それに吉祥寺のある武蔵野市には、フェアトレードタウンむさしのっていう市民団体もあるんですよ。私たちもマルシェや交流会を通して関わっています。まちぐるみでフェアトレードの消費を拡大しようという空気があるし、シサムと吉祥寺は親和性があるんじゃないかな」

これからもっと街に出ていきたいという吉田さん。代表の水野さんは、「朝市も、フェアトレードタウンむさしのの活動も、吉祥寺店のスタッフが参加したいと言って始めてくれたこと」と話していた。

スタッフや店舗ごとの取り組みを共有するため、社内向けのSNSも最近つくったそう。

「この間、地域の中学生に取材してもらいましたって投稿したら、関西のスタッフもスタンプやコメントで反応してくれて。ほかにも、『このお洋服着なくなったので、どなたかもらってくれませんか?』とか『こんなイベントがあるので、興味のある方は行ってみてください』っていうやりとりもあったりするんです」

「今回募集する方も、シサムの想いや雰囲気をいいなと思ってくれたらうれしい。メンズ商品も加わったので、男性も歓迎したいです。一緒にたのしんで働いてくれる方に出会いたいですね」



一時間ほど経ったころ、「そろそろ私の番かなと思って」とスタッフの平川さんがやってきた。

今日は吉田さんと同じブラウスなんですね。

「あっ、本当だ! 吉田さん、今日はブラウスじゃない服にするって言ってたのに!」

平川さんは、以前の日本仕事百貨の記事を見て入社した方。この春でちょうど3年目を迎えたそう。

「後輩も入ってきて、任される仕事の範囲も広がって。最初は覚えることもたくさんあって必死だったんですけど、自分や周りのスタッフのこと、お店のことを少し客観的に見られるようになりました」

スタッフは接客のほかに、売上管理やフェアの企画、アクセサリー作家さんとのやりとりなど、さまざまな仕事に携わる。

とくに売上管理は、お店を運営していくうえで欠かせないもの。お店ごとに目標を立てて、毎日の朝礼で共有しているそう。

「売上をしっかり達成しようという意識はみんな持っています。達成が危うそうなときは、他店舗のディスプレイを参考にしたり、Instagramを更新したり、できることを探します。達成できなかった日はちょっと落ち込みますね」

「そのぶん、自分の担当した企画で売上を達成できるとうれしくて。年末に‟贈りもの展”というフェアを担当したんですけど、ターゲットを定めて商品を選んで、ギフトセットもつくって。ニット系の小物が想像以上に人気でした。ルームシューズもあたたかくてかわいいんです」

だいぶ成長したと思います、と平川さん。一方で、昨年はお店が1カ月ほど休業するなど、大きな変化もあった。

「お店に立っていないと何もできない立場なんだって、すごく無力感を感じました。そんなときに、Instagramのフォロワーさんとのつながりに勇気づけられて。私もシサムのスタッフとしてできることがあるんじゃないかなと思って、どんどん発信することにしたんです」

吉祥寺の風景や面白かった本、おすすめのレシピなど、ざっくばらんに発信。インスタライブも始めたところ、営業再開後に「見ていました」と声をかけてくれるお客さんもいたそう。

「この一年で、『あ、ここフェアトレードのお店だ!』とか『環境にいいものがいっぱい置いてあるんですね』って喜んでくれる方がすごく増えました。質問されることも増えてきて、わかりやすく伝えることの大切さと責任をあらためて感じています」

「成長したと思ったんですけど、うーん…やっぱり毎日必死です。でもすごく充実しています」



「シサム」は、アイヌ語で「よき隣人」を表す言葉だそうです。

お客さんにとっても、海の向こうのつくり手や地球に対しても、よき隣人でありたいと願い、工夫を重ねるみなさんのやさしさを感じる取材でした。

(2020/04/18取材 遠藤真利奈)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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