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まじめさを裏切らない仕事

佐賀・九州を代表する酒をつくろう。

そんな心意気から生まれたのが「鍋島」という日本酒です。

九州のお酒らしく甘みがありながら、シュワッとしたガス感ですっきりとした飲み口。国際的なコンテストで最優秀賞を受賞するなど、世界的にも評価を得ています。

つくっているのは、富久千代酒造有限会社。大正時代から続く歴史ある酒蔵です。

今回は、ここで酒造りに携わる蔵人を募集します。

また、築200年を超える商家を改装し、昨年オープンしたオーベルジュ「御宿 富久千代」で働く人もあわせて募集します。

いずれも酒造りや接客の経験は問いません。

時を重ねるなかで、知識も増え、感性も磨かれていく、終わりのない仕事です。何事にもじっくり向き合いたいという人を求めています。

 

佐賀・鹿島までは、博多駅から特急と各駅電車を乗り継いで1時間と少し。

このあたりはかつての宿場町で、駅前から歩いて5分ほどの酒蔵通りには、趣ある建物が並ぶ。富久千代酒造の蔵とオーベルジュも、このまちなみのなかに佇んでいる。

まずは蔵へ。代表の飯盛直喜さんを訪ねた。

直喜さんは、富久千代酒造の3代目。30年ほど前に東京から鹿島に戻って会社を継ぎ、老舗の酒蔵にさまざまな変化を起こしてきた。

「鍋島」という銘柄を立ち上げたのも、直喜さんの代から。江戸時代に300年にわたって佐賀藩を治めていた鍋島家の名を冠し、佐賀・九州を代表するこだわりの酒造りを目指した。

2011年に国際ワインコンテストで最優秀賞に輝き、以来毎年のように受賞。国内の鑑評会でも金賞の常連になっている。

「販売ルートは、うちのこだわりをちゃんとわかって売ってくれる専門店さんに限定しています。リベートといって、お酒が売れたときのバックマージン的なものもあったんですけど、一切なくしました。メーカーも販売店さんも、みんなが適正な利益を受け取れるようにやっていこうと」

最近は農業法人を立ち上げ、地域の棚田や農村風景を守りつつ、米づくりから酒と向き合っていく取り組みもスタート。

昨年オープンしたオーベルジュのほかにも物件を所有していて、カフェやギャラリースペースなど、さまざまな形で活用していく構想もある。

酒造りに関しても、少しやり方を変えていこうと考えている部分があるという。

「これまで製造は製造、出荷は出荷と分けていたんですが、今後は製造の人も出荷までできるような体制にしていきたいなと思っています」

なぜでしょう?

「製造は午前中が忙しいんですよ。で、午後は比較的やることがない。出荷まで全員ができるようになれば、まとまった休みもとりやすくなるだろうし、誰かが風邪を引いたときなどもカバーしやすくなりますよね」

日本酒業界は、海外への販売がここ10年ほど好調で、コロナ禍も伸び続けているそう。来季から輸出にも力を入れていきたいので、今のうちから出荷体制を整えておく必要がある。

そのため今回は、酒造りから出荷まで担当できる人、そして出荷専任の人も募集したい。

「しっかり腰を据えて働いてくれる人がいいですよね。時代に逆行するかもしれませんけど、終身雇用のような形がいいんじゃないかなって」

「鍋島」のブランド力もあるし、海外市場も拡大中。空き物件を活用したまちづくりなど、新しいことにもどんどんチャレンジしている会社だから、働き続けるなかでも将来性を感じられる環境だと思う。

本人の希望次第では、酒造りをしつつオーベルジュ運営に携わるような働き方もあり、とのこと。

「酒造りは基本的に単純作業の繰り返しです。飽きずに、って言い方は変だけど、責任を持ってピシッとやっていかなきゃいけない。そういう意識のある人でないとむずかしいのかなという気はしています」

直喜さんにとって、地道な仕事を続けていくモチベーションってなんですか。

「少しでもいい酒をつくるってことだけ。それ以外ないですね」

 

そんな直喜さんのもとで昨年から酒造りを学びはじめたのが、娘の日奈子さん。

「家業を継ぐつもりで、大学も経営学部に通っていました。昔からうちはグリーンツーリズムをやっていて、田植えとか稲刈りにも参加していたので、自然と継ぐんだろうなって。ただ、お酒造りのことは入るまで全然わからなくて、まだまだ勉強中です」

この1年、実際に携わってみてどうですか。

「すごく数字が大事だなと感じます」

数字が大事。

「たとえばお米の吸水率を計算して、このアルコール度数にするには水をどれぐらい足さないといけない、とか。お米に対して麹をどれぐらい振るのかとか。データと向き合いながらつくっていくんです」

お米の種類や精米度合い、その日の気温や湿度に応じて、微細な調整を重ねていく。

一方で、手触りや香り、味わいなど、五感を使う場面も多い。

データと感覚を行ったり来たりしながら、理想の味を目指していく過程に夢中になれる人だといい。たとえば、理科の実験が好きだった人は合うかもしれない。

「体力も必要だと思います。精米したお米を運んだり、タンクをかき混ぜたり。二の腕は細くなりますね(笑)」

麹室と呼ばれる部屋は、室温35℃程度、湿度60%以上を保つため、冬でも作業中は汗びっしょりになるそう。

富久千代酒造では、各工程をおおよそ1年ごとにローテーションしていく形をとっている。

四季を通じて経験することで一つひとつの作業への理解が深まるし、全員がまんべんなく酒造りの経験を重ねていくことで、チームとしてよりよい酒造りに取り組める。

「作業としては個人で進めるものが多いですけど、全体で見たらチームワークなので、協調性は大事ですね。明るい人でも、静かな人でも。未経験でも全然いいと思います。あとはやっぱりお酒が好きな人ですかね」

「父はほんとうに、趣味かっていうぐらい仕事が大好きで。誰かがいいって言っているからではなく、自分がやりたいからこうする、っていう。自分の道を突き進んでいるのは、すごいなと思います」

ゆくゆくはその後を継ぐことになると思うのですが、日奈子さんは将来どんなことをやっていきたいですか。

「日本酒のよさを、日本の方にもっと知っていただきたい。大学でも“罰ゲームで飲むお酒”みたいに思われがちで、それ違うから、と思って。サークルに鍋島を持っていったら、みんなおいしいって言って飲んでくれました(笑)。これから世界に広めていくにしても、まず日本の文化として誇れる人を増やしていくことが大事なのかなと思っています」

 

続いて、酒蔵から歩いて3分ほどのオーベルジュへ。今回はこちらで働く人も募集する。

迎えてくれたのは、料理長の西村さん。

オープンから一年経って、いかがですか。

「おかげさまで、全国からいろんなお客さまに来ていただいています。一名あたり一泊6〜7万円と高価格帯なこともあって、ゆったりと過ごせる余裕のある方がほとんどですね。高いレベルのサービスが求められるので、気は遣いますけど、いい方ばかりで。息子や孫のようにかわいがっていただいています」

チェックインを済ませたら、まずは宿泊者限定の酒蔵見学へ。この時間は、代表の直喜さん自ら案内することも多いという。

部屋に戻って少しくつろいだら、夕食の時間。九州でつくられた器や食材を活かして、西村さんが腕をふるう。お酒を傾けながら話していると、少しずつ緊張の糸もほぐれてリラックスした雰囲気になっていく。

ぐっすり眠って、翌朝の食事では「このあとどこに行こうか?」という話になることも多い。料理に使っていた器が買えるお店を紹介したり、要望を聞いて観光スポットをおすすめしたり。

一日一組限定で、長い時間をともに過ごすので、お客さんとの距離感も自然と近くなる。

「ぼくらが5つ星ホテルのフロントマンみたいな接客をしても、絶対つまらないですよね。お酒の知識もやっていくうちに覚えるし、パーフェクトに知っている必要もないので。わからないときは『社長(直喜さん)に電話して聞いてみますね!』って、それぐらいの感じでいいと思うんです」

ただ、肩肘張らないことと、手を抜くことは意味が違う。

「どんな人と働きたいですか?」と聞くと、軽やかに話していた西村さんの声色が少しだけ変わった。

「愛はないとだめですね。お客さんは、こういう施設には行き慣れてる人。ぼくらが真剣に取り組めば評価してくださるんですけど、逆に言うと、表面上だけつくったような接客は絶対に見抜かれます」

「完璧じゃなくていいんで、真剣に、一生懸命向き合うことが大切で、それを心の底からやってくれる人がいいですね。別に失敗しても、間違ってもいいから、誠心誠意手を抜かないでやろうねって。人対人の仕事なので」

酒造りと同様、オーベルジュのスタッフも経験は問わない。ただ、お酒に、人に、ひたむきに向き合うという姿勢は共通している。

ここはまじめさを裏切らない環境なんだろうな。そんなことを思った。

 

最後に話を聞いた下(しも)さんは、今年の1月に入社した方。もともとは嬉野の旅館で働いていた。

「ハローワークの企業説明会があって、それで知ったんです。こういうサービス業で、残業もほぼなく、完全週休2日ってまずあり得ないだろうと思って聞いてみたら、本当で(笑)。そこは決め手の一つではありました」

月火は休館で、お客さんは多くても一日4名まで。じっくりと接客できるだけでなく、働き方としても健全な形をとれているのは、理想的なことだと思う。

「スタッフの関係性とか、心から仕事を楽しめているかどうかって、お客さまにも伝わると思うんですよね。同じ方向を向けている人たちで集まったほうが、いいものをつくれるのかなって思います」

オーベルジュのスタッフは4名。全員が20代だという。

「西村さんは好奇心の塊というか。お客さんと話していても、器や食材のこと、作家さんの話もすぐ出てくるし、すごく刺激をもらっていますね。今まで知らなかった世界にも興味が湧いて、探求したくなります」

今、下さんの好奇心は何に向かっていますか。

「カフェをやりたいなって気持ちはちょっとあります。じつはちょうど、富久千代酒造が持っている空き物件でカフェをはじめる計画があって、打ち合わせにも混ぜてもらっています。それが今は楽しみですね」

オーベルジュや酒蔵の周辺には、飲食店やお店はまだまだ少ない。

その環境も、受け身で捉えたらつまらないけれど、自分たちでさまざまな拠点をつくり、まちを盛り上げていける余地があると捉えると、途端に楽しくなってくる。

バーをつくって夕食後に案内するとか、農産物の直売所にするとか、イベントスペース兼ギャラリーを立ち上げて新たな人の流れを生むとか。

日々の仕事は地道だけど、その先にはさまざまな可能性が広がっている。まじめさがちゃんと報われる環境だと思います。

(2022/6/2 取材 中川晃輔)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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