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知る楽しさ、できる喜び
子どもたちの目が
輝くように

家族が小学校の先生をしているので、子どもの話をよく聞きます。

音読が恥ずかしいと泣いていた子が、発表会の劇で大活躍したり、引っ込み思案だった子が運動会の応援団に立候補したり。

知識や体験を日々スポンジのように吸収して、ぐんぐん成長していく子どもたちの様子を聞くと、直接会ったこともないのにうれしい気持ちになります。

北海道奈井江町(ないえちょう)。小中学校1校ずつという小さな町に、「ななかま」という小学生向けの塾があります。

毎日小学3年生から6年生まで数十人がやってきて、勉強したり、学校でのできごとを話したり。ときには町の大人が先生になる特別授業もおこなわれます。

今回は、地域おこし協力隊としてこの塾で働く講師を募集します。

 

札幌から高速に乗って1時間。到着した奈井江町は、のどかな平野が広がっている。

北海道米‟ゆめぴりか”の産地である奈井江町。4月の田んぼには水が張られていて、きらきらとまぶしい。一昨年の秋に取材で訪れたときは、黄色い稲穂があたり一面に広がっていて、とてもきれいだった。

当時は、これから公設塾を立ち上げようというタイミングでの取材だった。

学ぶ場所が限られている町の小学生のために、誰もが通える学習塾をつくりたいこと。塾では基礎学習だけでなく、子どもたちがワクワクするような体験授業もおこないたいこと。

小学生のうちに「自分でもできるんだ」「勉強って面白いかも」と気づいてほしい。そんな想いで生まれた塾は、この春、ちょうどオープン一周年を迎えた。

 

向かったのは、公設塾「ななかま」の入る公民館。

子どもたちが来る前の教室で、塾講師の上野さんが迎えてくれた。

「すぐ目の前が小学校で、放課後になったら20~30人がやってきます。ゴールデンウィーク明けなので、まだみんな勉強のスイッチが入っていないかもしれません」

昨年5月にオープンしたななかま。上野さんはオープニングスタッフとして、神奈川からやってきた。

「もともと教育関係の仕事に就きたくて、中学生向けの塾でアルバイトをして、高校の教員免許もとりました。結局一般企業に就職したんですけど、やっぱり教育やまちづくりに関わる仕事をしたいなと思って」

全国の公設塾を支援する株式会社Prima Pinguino(プリマペンギーノ)に問い合わせたところ、紹介されたのが奈井江町だった。

「今まで小学生と関わったことはなかったのでドキドキでした。でもコミュニケーションのとりかたは中高生と大きくは変わらなくて、隣で一緒に解きかたを考えるようにしています」

ななかまは、「学年×10分 +10分」を目標に学校の宿題や塾の教材に取り組む自学自習スタイル。

入塾は希望制なのもあって、もくもくと机に向かう子が多いそう。子どもたちの勉強時間も、オープン前に比べて増えている。

とはいえ、高校や大学といった進路を考えるにはまだ遠く、遊びたい盛りの小学生。早く終わらせようと適当に解いたり、「わからない!」と鉛筆を投げ出したりする日もある。

「 オープン直後は、早く答えを教えて!と合唱状態で。『難しいよね、でもゆっくり考えたらきっと解けるから一緒にやってみよう』って、本当に粘り強く声をかけています。それでも無理なときはこっちも泣きたくなっちゃうんですけど(笑)」

ななかまで過ごすなかで、勉強への姿勢が変わってきた子どももいる。

「新6年生の男の子の話で。塾が始まったばかりのころは、友達とふざけながら勉強していたんです。それがある日、いつもより難しい問題を解けない悔しさに泣いたことがあって。それから『この解きかた教えてくれない?』と来てくれるようになりました」

「勉強の面白さって、できなかったことができるようになるうれしさや、何かを知る楽しさだと思うんです。その子は『自分はまだまだだ』って言うんですけど、そんなことないよ、すごい頑張ってるじゃん、と伝えています」

子どもたちからは、名前をもじって「うえじゅん先生」と慕われている上野さん。

親でも先生でもない距離感で、目線を合わせて接してくれる大人は、子どもたちにとって貴重な存在なんだろうな。

 

上野さんの隣で話を聞いていたのは、もう一人の講師の柴田さん。

「上野くんは最初、男の子のことは手に取るようにわかるのに、女の子はわからないんです!って本当にあたふたしていて。同じ人間なんやからそこまで気負わなくても大丈夫だよ、と話したことを思い出しました」

柴田さんは大学で教育を学んだのち、京都市役所に入庁。ある日たまたま日本仕事百貨の記事を見つけて、奈井江町の取り組みを知った。

「勉強やいろいろな体験活動ができる塾は、子どもたちにとってすごくいい居場所になると思ったんです。自分がやりたかったことがここに詰まっている!と運命を感じてしまって。その場で応募して、気づけば北海道に来ていました」

「子どもたちにとって、安心して相談できる大人であれたらいいなと思いながら日々接しています。あとは“特別活動”といって、ふだんとは違う授業をしているのも特長です」

ななかまでは、町の大人が先生になる特別授業や、理科の実験や陶芸など特別な体験ができる企画を、定期的におこなっている。

たとえば、昨年の冬にひらいたのは「アンモナイトの化石クリーニング」。

「町内の化石コレクターの方が、アンモナイトが埋まっている石を子どもたちに一つずつプレゼントしてくれて。実際にハンマーを使って化石を取り出す体験をしたんです」

近隣の博物館や、化石に詳しい町の方の協力のもと、クリーニングの事前授業もおこなった。

アンモナイトはどんな姿だったんだろう。化石がとれるということは、昔北海道は海だったのかな。

柴田さん自身が興味をもったことも授業に盛り込みながら、これから触れるアンモナイトについて理解を深めていった。

「子どもって、本当にちょっとしたきっかけでガラッと変わるんですよね。夢のかけらになるような体験をたくさんちりばめたいし、目がきらきら輝くような場面を増やしたい。勉強でも将来の夢でも、みんなの背中をトンと押せるようなお手伝いをしたいです」

ゼロから塾を立ち上げ、試行錯誤で運営してきた一年間。

通常の塾運営に加えて、SNSやチラシを使った広報活動、学校や地域の方とのコミュニケーションなど、 裏方仕事も自分たちでやってきた。

一年目を振り返って、いかがですか。

「毎日忙しかったですね。理想や完璧を目指すあまり、キャパオーバーになっていました。たとえば夏冬休みは、実験、書道、工作と毎日特別な活動を用意したんです。たしかに子どもたちは楽しんでくれたけど、自分たちの余裕がなくなってしまって」

「今年は、子どもたちにとって必要なことは何かを考えながら、うまく取捨選択したいと思います。 と言いつつ、私も上野くんもやると決めたらとことんやりたいタイプなので、結局バタバタしちゃうと思うんですけど(笑)」

協力隊の任期は3年。いま自分たちにできることはすべてやりたい。

「大変ではあるんですけど、それ以上にみんながかわいくて。はな先生、はな先生って来てくれたら、もう疲れが吹っ飛んじゃうんですよね」

 

15時。学校が終わった子どもたちが元気よくやってきた。

それぞれ机に向かい、今日の計画をシートに書いてから宿題やワークにとりかかる。

「はな先生、これ丸つけして」「今日学校で撮った写真、見せてあげようか」

教室のあちこちで声が聞こえる。上野さんと柴田さんは一人ひとりを見て回りながら「ここ難しいよね。教科書を見てみようか」「ほら、そろそろ集中しよう」と声をかける。

 

その様子を見守るのは、教育委員会の井上さん。ななかまの企画と立ち上げを担当し、現在も毎週講師の二人とミーティングをおこなうなど、塾の運営をサポートしている。

「保護者アンケートには、『ななかまのことを家で楽しく話してくれています』という声もあって。本当にすてきな講師に来てもらえたなと思っています。子どもたちのためなら何でもできる二人なので、頑張りすぎちゃうことだけが心配です」

小学生向けの公設塾は、町にとってもはじめての取り組み。

柴田さんたち講師と井上さん、教育長で何度も話し合いを重ねてきた。

「たとえば、今は勉強の部屋と休憩の部屋に分かれているんですけど、ここに至るまでもかなり時間をかけました」

きっかけは、おしゃべりの声が耳に入って、勉強に集中できないという意見があったこと。

「教育長は、『ななかまは勉強の場所だから、勉強が終わったら家に帰すべきじゃないか』って。でも講師の二人は、ななかまにいたいというみんなを受け入れてあげたい。みんな想いがあって、みんな正しい。だからこそ難しくて」

「二人とも、『教育長、私はこう思います!』 ってちゃんと自分の意見を言えるんです。勉強したい子も、息抜きしたい子も共存できる方法を懸命に考えて、提案してくれて。今のところうまくいっているし、こうした話し合いの一つひとつが、ななかまが成長していく糧になっていると思います」

二年目を迎えたばかりのななかまは、特別活動の仕組み化、学校との連携強化など、これから改善したい点がまだたくさんある。

自分たちだけでは解決できないことは、井上さんに相談できる。そんな味方が塾の外にもいるのは、とても心強いことだと思う。

 

7月には、教育委員会の事務所がななかまと同じ建物に移動してくるそう。

今でもよく教室を訪れている教育長の相澤さんは、今回募集する方にとっても身近な存在になるはず。

「何もかもはじめてのなか、一年間とてもとても頑張ってくれたことを本当に感謝しています。二年目は、子どもたちが自分の興味を深めていくような学びを支援できたらいいねと話していて、新しくななかまノートを始めることになりました」

ななかまノートは、興味を持ったことを調べてまとめる自由研究ノート。

習い事でもアイドルでも、もっと知りたいと思えることなら何でもいい。ただ、子どもたちはまだ何をどう書くか迷っているそう。

日々の会話のなかで「それ面白い!ノートにまとめてみない?」と地道に声をかけることで、少しずつ取り組む子たちが出てきている。

「このあいだはそれぞれの家の味噌汁について書いてきて、味噌汁にヨーグルト入れるの!?って盛り上がったみたい。年に2回、教育長にノートを見せる日っていうのも設定してくれたようで、どんなノートになっているか、楽しませてもらいます(笑)」

「子どもたちって十人十色ですよね。だから講師も多様な方がいるといいなと思っていて。一緒にいろいろなことを話し合いながら、種から双葉になったななかまをもっと大きくしていきたいです」

はじめての体験にわくわくしたり、問題が解けない悔しさに泣いたり。子どもたちは毎日、ななかまで色濃い経験をしています。

子どもたちと勉強を頑張ってみたい、興味関心を広げるような体験を一緒に積み重ねたい。

一人ひとりの応援団として、まっすぐ向き合ってくれる方を待っています。

(2022/5/6 取材 遠藤真利奈)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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