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誰かの暮らしがより豊かになったり、環境を育てることにつながったり。自分がしたことの“その先”に未来への希望を感じられることは、仕事を続ける上でモチベーションになると思います。
今回紹介するのは、その広がりを日々感じられるような仕事です。
生活アートクラブは、人にも環境にも優しい日用品や生活雑貨、衣料品を扱う会社。
自社の通販サイトに加え、主に全国各地の生協などに商品を卸しています。
今回募集するのは、主に衣料品の発注や納期の管理を担う生産管理と、チラシづくりや卸、営業を担当するスタッフです。あわせて、デザイナーやマーケティングのスタッフも募集します。
広がりのある仕事がしたい。そう感じている人は、ぜひ続きを読んでみてください。
東京・新宿。
曙橋駅から歩いて3分ほどの場所にあるオフィスビル。その2階と3階が生活アートクラブの事務所になっている。
棚に商品が並ぶ2階の部屋で少し待っていると、代表の富士村さんがやってきた。
「お待たせしました。福岡のテレビ局が、脱プラスチック特集でうちの商品の『未晒し木綿』を取り上げたいっていうことで、急遽打ち合わせが入ってしまって」
さらし、ですか。
「オーガニックコットンを使った無漂白のさらしなんです。今でこそ、ラップとかキッチンペーパーが使われていますが、昔の家庭ではさらしがそれらの役割を果たしていたんですよ」
「赤ちゃんのおしめとか抱っこ紐もさらしだったし、鰹節で出汁をとる際もさらしで濾したりとか。いろんなことに使えて、素材も安心できる。今はサステナブルなものへの関心が高まっているので、需要も大きくなっていると感じています」
生活アートクラブが創業したのは、2002年。
それ以前は、父親の経営する乳酸菌製品の会社で働き、腸内環境を改善するための食生活指導や独自のノウハウ提供をしていた富士村さん。
ただ、健康を守るためには、食生活だけでなく身の回りのあらゆる環境を改善していかなくてはならない。そこでできるだけナチュラルなもの世の中に広めていきたいと、独立を決意した。
自社商品のほかに、さまざまな自然派商品を厳選して仕入れ、自社サイトでの販売と全国各地の生協への卸しをおこなっている。
代表的な商品のひとつが、「ムシさんバイバイ」という防虫剤。虫を寄せ付けず、植物精油のすっきりした香りが部屋の消臭もしてくれるというスグレモノ。
化学薬剤を一切使用しないのに、従来の防虫剤に負けず劣らずの効果があって、身体への害の心配がない。
4年ほど前からは、日用品だけでなく衣料品にも事業を拡大。リネンや天然繊維を使った衣料品を販売していて、売上も順調に伸びているそう。
「アパレルの世界って、一見すると華やかなイメージがあるじゃないですか。でも実際は、石油産業に次ぐ環境破壊の原因になっている産業だと言われていて」
「今はそういう事実も知られてきているので、生地に化学的な処理をせず肌に優しかったり、長く着続けられたり。そういった価値が大切だと、最近の若い人たちは思ってくれている。会社を立ち上げた時期は、合成洗剤を使わないっていうことですら、変わった人たちだと思われていることもあったけど、うれしい変化が起きているなと思っています」
さらしや防虫剤、オーガニックコットンの服に石けん洗剤など。
生活アートクラブの商品を見ていると、自分たちの手の届くところから、人や自然に優しいものへ変えていこう、という思いが伝わってくる。
エシカルな暮らしに憧れはあっても、急に家の中のものすべてを環境に負荷をかけないものへと入れ替えることはむずかしい。そもそも、環境に負担をかけることなく生きる、なんてことはできないのかもしれない。
100%を最初から目指すのではなく、80%からでもいいから、少しずつ前進していこう。「これは、会社を立ち上げた当初から考えていることなんです」と、富士村さんは教えてくれた。
「もう一つ、僕らがずっとモットーにしているのが『売れるものを売るんじゃなくて、売らなくてはいけないものをどう売るか』っていうことなんです」
売らなくてはいけないものをどう売るか。
「手前味噌ですけど、うちは超二枚目な会社だと思うんですよ。つまり、社会貢献しながら、利益もきちんと出している。僕らは会社としてやっている以上、売上もつくることではじめてかっこいいと思うんです」
「その社会貢献と経営のバランスは、かなり上手くいっていると思っています。これは新しく来てくれる人にも伝えたいですね」
会社として自然や人に優しい商品を扱っている以上、働く人自身もその価値観を大切にしたいと思っていることは必須条件だと思う。
ほかには、働く人にとって必要なことってありますか?
「何事も自分ごととして取り組める人がいいんじゃないかな。ここで働くなかで、それまで知らなかったことを知れたりすることがあると思う。その学びをどうやって広げていくか、一緒に考えていける人だったらいいですね」
人と自然、そして人が使うモノたち。富士村さんと話していると、そうだったんだ!と気付かされることがたくさんある。
知らずに生きていけるかもしれないけれど、知ってしまったら考えざるを得ない。そんなふうに、働くなかでどんどん自分ごとが増えていく環境なのだろうな。
続いて話を聞いた山下さんも、知らないことだらけの状態から、働きつつ学びを広げてきた方。8年ほど前に入社し、営業を長く勤めていたそう。今はマーケティングを担当している。
「わたし、もともと環境問題にすっごく恐怖心を持っていたんですよ」
恐怖心、ですか?
「そう。母親が環境問題に関心を持っていて、このままだと人は生きていけなくなってしまうとか、今思うとちょっと偏った怖い話を聞くことが多くて。それでも、怖いなら勉強してみようって、エコ検定っていうのを受けたり、仕事も環境に関する仕事を選んだりしていました」
「それで探したときにドンピシャだったのが、生活アートクラブ。まさにやりたいことだと思って入社したんです」
入ってみてどうでしたか?
「最初は、どんなものが地球や人に優しいのか、その知識が全然足りていないなって感じました。たとえば森林問題でも、間伐って言葉もそれまでは詳しく知らなくて。働きながら、あらためて勉強させてもらっているような感じでしたね」
営業は、それぞれが担当の卸先を持ち、スケジュールに合わせてチラシを作成していくのが主な仕事。
一口に生協といっても、毎週2回チラシを入れるところもあれば、月に1回のところもある。それぞれが担当先に合わせて取り組んでいるそう。
「何年か前に、木製のまな板やカトラリーの商品チラシをリニューアルしたことがあって。得意先の担当者さんが、見せ方を変えたら売上がよくなるんじゃないかって、アドバイスをくださったのがきっかけでした」
「うちのデザイナーも含めて、写真の選定とかキャッチコピーをもう一度考えて。それまでは1ページに載せる商品数に重きを置いていたんですが、一つの商品に絞って、その特徴がよくわかるような構成にしたんです」
右が以前のチラシで、左がリニューアル後のチラシ。たしかに、左は1ページまるまるまな板だけが載っていて、木のまな板を使うとどんないいことがあるのかが詳しく紹介されている。
「このチラシに変えて、前年を上回る売上をあげることができました。そのときは、私も会社と社会に貢献できたっていう喜びがすごくありましたね」
ただ売るだけじゃなく、どう売るか。ものの背景までしっかりと伝えて届けることで、それを大事に使い続けてくれたり、使う人の意識が変わったり。そこまで想像することが大事なんだと思う。
最後に話を聞いたのは、生産管理を担当している赤井さん。
オーガニックコットンを扱う会社で働いたのち、大手アパレルーメーカーに転職。長年の繊維業界での経験をへて、生活アートクラブへやってきた。
「過去を振り返ったとき、僕が一番気持ちよく働けたのは、最初のオーガニックコットン屋さんだったんですよ。たとえば糸の注文をもらって、その出荷指示をするだけでも、オーガニックコットンを世に出すお手伝いができた、みたいな。仕事がそのまま達成感になっていて」
「3年前に、生活アートクラブが衣料品も取り扱う話を知って応募しました。オーガニックコットンや国産の繊維を扱っているので、今は働いていてすごく気持ちいいですね」
赤井さんは、メーカーや職人さんとやりとりをして、商品の仕入れを調整する生産管理の仕事をしている。当初は繊維製品のみの担当だったのが、今は繊維以外の生産管理にも関わっているそう。
今回新しく生産管理として入社する人は、赤井さんのもとで学びながら働くことになる。
印象に残っていることを聞いてみると、昨年赤井さんが企画した「あと染め」のことを話してくれた。
「白系のシャツって、時間が経つと黄ばんだりするじゃないですか。あれって洗濯でもなかなか落ちないけど、もう一度黒に染めてしまえば、まだ着れるじゃんって思って。これを生協でもできないかなって考えたのがはじまりでした」
「SDGsっていうワードが知られるようになった今の世の中で、染めて繰り返し使うっていう選択肢を生協のなかで提示できたら、それはすごく意味があるんじゃないかなと。それで『サスティナブルをまとう』っていうキーワードで企画を考えたんです」
通常、チラシはできるだけ多くの商品を掲載することが多い。そのほうが売上につながりやすいからだ。
ただこのときは商品を極力小さく、「サスティナブルをまとう」というストーリーをどう紹介するか、赤井さんと営業で考えて形にしていった。
「これは特殊例すぎて、生協さんによっては『うちではこのチラシは使えない』って言われたところもありました。要は商品を売るだけじゃなく、時間が経ったあとに送ってくださいねっていうことをしているので、生協ではまずやったことがなかったんですよね」
「既存の価値観や当たり前に思われていることを、恐れず揺さぶっていく。それは僕らの方針ですね。代表の富士村も新しいチャレンジをしていくべきだという人なので、僕はすごく面白くて。そこがこの会社に居続ける理由だなと思っています。同じことの繰り返しだったら、長く仕事できてなかっただろうなと思いますね」
赤井さんは、どんな人と一緒に働きたいですか。
「そうですね… 空回りしてても夢を持ってる人のほうがいいなと。夢っていうのは、自分のやりたいことかもしれないし、こうありたいっていう価値観かもしれない。なにかしら目指すものがあって、僕らの仕事の延長線上にそれが重なれば、一緒に働いていて楽しいと思います」
どの方も、それぞれの仕事に誇りを持って、気持ちよく話してくれたのが印象的でした。
売らなきゃいけないものが、まだまだある。その気持ちが原動力なのかもしれません。
(2022/2/8 取材 稲本琢仙)
※撮影時はマスクを外していただきました。