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国内外問わず、多くの人に馴染みのあるチョコレート。
チョコに必要なカカオ豆をつくる生産者がいて、チョコに加工するつくり手、そして私たち買い手がいます。
関わるみんなが笑顔になれることを目指し、チョコレートをつくっているのが、横浜発のチョコレートブランド「VANILLABEANS(バニラビーンズ)」です。
創業は2000年。はじめは、2坪のプレハブから事業が始まりました。
現在は、カカオ豆からチョコレートまで一貫して自社でつくる「bean to bar」の手法で、南米やアフリカ、東南アジアなどから輸入したカカオ豆を自社の工場で焙煎してチョコレートをつくり、5つの実店舗とオンラインストアで販売しています。
今回募集するのは、ECサイトの運営やWEBデザインを担うスタッフと、チョコレートの製造開発に関わるスタッフ。あわせて、神奈川に複数あるバニラビーンズの各店舗で働くスタッフも募集します。
どの職種も経験者優遇ですが、会社の想いや考えに共感し、同じ方向を目指してチョコレートに携わる人を求めています。
お菓子が好きで、いろんなことに挑戦してみたい。そんな人におすすめの仕事です。
11月上旬、この日は秋晴れ。
向かったのは、横浜市磯子区岡村町。
京急の上大岡駅や横浜市営地下鉄の弘明寺(ぐみょうじ)駅からバスで向かうと近い。今回は地元に近かったのもあり、JR根岸駅から歩いていくことにした。
住宅街を道なりに進んでいくと、お菓子の甘い香りがしてくる。
立ち止まってあたりを見回した先に白い建物を発見。ここがバニラビーンズの事務所のようだ。
一階が工場で、二階は事務所になっているみたい。階段を登ってインターフォンを押すと、中からスタッフの方が迎えてくれた。
まずは、代表の八木さんに話を聞いていく。
バニラビーンズをはじめたのは、八木さんが23歳のとき。
「最初は、実家の庭2坪ぐらいの場所にプレハブを立てて、そこで1人でつくって販売していました。焼き菓子とかを30種類ぐらいつくって、セットにして販売していたんですけど、いろんな種類をするとなると、そのぶん作業工程も増えてしまって」
「おかげさまで、売上は上がっていたんですけど、1人で全部やっていたので利益もそんなに多くなくて。疲れてしまったんですよね」
お店を4ヶ月ほど休業し、海外に渡った八木さん。街歩きをしたり、さまざまなお菓子を食べ歩きしたり、365日仕事漬けだった日々から距離を置くことで、心身ともにリフレッシュできたという。
「そのとき思ったのは、時間とか仕事に忙殺されると、クリエイティブな仕事ができないし、その結果いい仕事もできないっていうことで」
「多品種で商品を揃えると、忙しさが何十倍にもなってしまうので、業務量を抑えるためにもお店の看板商品を一つだけつくろうと思ったんです」
そう言って教えてくれたのが、今も続くバニラビーンズの看板商品「ショーコラ」。
サクサクしたバタークッキーのなかに、パリッとしたチョコレートでコーティングされた生チョコが入っている。
「奇をてらうというよりは、どちらかというと王道な商品で。食べてホッと落ち着いたり、また食べたいと思えたりするようなものを目指しました」
「自分はつくり手でもあったし、売り手でもある。売り手としてはたくさん売りたいけど、つくり手としては製造が大変なものをつくり続けるのは厳しい。そのバランスをじっくり考えて、商品づくりをするようにしたんです」
価格は一個400円ほど。実は何度か食べたことがあって、八木さんが話してくれたようにシンプルな見た目と味わいでありながら、贅沢な気分も味わえるし、味も飽きない。定期的に食べたくなるチョコレートだなと思った記憶がある。
定番の味に加えて、シーズンごとに限定バージョンが登場するので、季節の移り変わりとともに味の変化も楽しめる。
ほかにも、板チョコをよりシンプルにした商品など、味にこだわるだけでなく、つくりやすさにも配慮した商品を開発していった。
また、会社の大きな転換点になったのが、フェアトレードチョコレートの導入。カカオ豆の原産国を訪れたとき、安い賃金で過酷な労働環境を強いられ、学校に行けない子どもたちがいることを知ったのがきっかけだった。
つくり手と買い手だけでなく、カカオ豆の生産者も含めて、チョコレートに関わる人みんなが笑顔になる方法はないだろうか。
模索した結果、その翌年からフェアトレードチョコレートを導入して商品をつくることに。
ほかにも、製造途中で割れたり欠けたりしてしまった商品の一部をチャリティオークションに出品。2008年から2015年までの落札金額を積み立てて、ガーナの子どもたちのために学校を建設した。
資本金300万円からはじまった会社は、今では年商10億円以上にまで成長。横浜を中心に、地域に根差した店舗も増えている。
八木さんはさらっとした表情で話してくれるけれど、あらためて考えるとすごいことだ。
自分にとって何が大事なのか。日々試行錯誤しつつ、その時々で舵取りできる柔軟性と行動力を持った人だと思う。
「もともとは自分の職人的な要素がすごく強くて。自分がつくった物を食べてもらうことが喜びだったんです」
「だけど海外での経験を通して、働く人が働きやすい環境をつくる方向にシフトし始めて。たとえば、味やデザインにはこだわるけれど、時間をかけすぎて無理をしないようにするとか。それは、今のメンバーにも意識してもらうようにしています」
今回メインで募集するのは、ECサイトの運営やWEBデザインを行う通販事業部のスタッフと、チョコレートの製造開発に関わるスタッフ。
通販事業部の仕事は最低限のスキルが求められるけど、その人の人柄や仕事への向き合い方を大切にしたい。
「仕事の醍醐味って、教わるよりも自分で経験して成長していくことで感じられると思うんです。俺がそうだったから」
「経験して学んだものは忘れないから、なるべく自分で手を動かして実際にやってみる。それを続けてほしいなって思います」
通販事業部の坂本さんは、新卒で入社してから店舗スタッフなどいろいろな仕事を経験してきた方。
入社して今年で8年目、現在はWEBサイトの運営とデザインの業務をしつつ、マネジメントも行なっている。
「WEBページってどうしても無機質になりやすいんですね。どうやったら、お客さまの心を動かすようなものを画面上で伝えることができるか、日々考えています」
通販事業部の仕事の流れとしては、まずバレンタインなどシーズンごとのイベントを年間の大まかなスケジュールとして決めた後、それに向けた企画をつくりデザインに落とし込んでいく。
パッケージ製作に商品撮影、WEB上でのコピーなども自社メンバーで形にしている。今年のショーコラのクリスマス限定パッケージは、坂本さんがデザインしたものなんだそう。
シーズンごとのプロジェクト以外にも、メルマガの作成やWEBに載せるお知らせの更新など、日々細々とした作業がある。
現在、バニラビーンズでは自社サイトと4つのECモールでチョコレートを販売していて、各販売先によって客層も若干異なるため、それぞれの特性に合わせたバナーやメルマガを作成するなど、工夫を重ねている。
「たとえばメルマガでも、同じ内容を使い回すと、この前も同じこと書いてなかったっけ? ってお客さまにすぐ悟られちゃうんです。そういう小さいことの積み重ねが、売り上げにも顕著にあらわれてしまう」
「商品もそんなに安いわけではないので、一つひとつきめ細やかに対応することを心掛けています」
今後は自社サイトのブラッシュアップに加え、豆やチョコレートの産地ごとの違いなどを発信するコンテンツも作成していきたい。
働きやすさを担保しつつ、新しいステップに進むためにも、まずは既存の業務を一緒に担ってくれる人材を必要としている。
「言われたことをそのままするよりも、周りの人がどうやったら働きやすくなるのか、積極的に考えられる人がいいと思っていて。やっぱり、働きやすい環境でつくられたものは、結果としていい商品になると思うんです」
本社を後にして向かったのは、横浜市都筑区にあるチョコレート製造工場。
ここで働く製造開発部の藤原さんも、坂本さんと同じく常に現状を良くしていこうとする姿勢を大切にして働いている。
「私が入社した6年前には、すでにショーコラっていう大ヒット商品がありました。そこで安定した売り上げがあるからこそ、豆からつくるbean to barの事業に挑戦できている。なので、bean to bar事業も成果を上げていきたいというモチベーションがすごくあるんです」
「たとえば、製造過程の効率化を図ったり、新しい商品に使えそうなチョコレートを開発したり。何に対しても、より良くできないだろうかって考えながら働いています」
カカオ豆がチョコレートになるまでには、いくつかの工程がある。
海外から届いたカカオの生豆は、そのまま食べると渋い味。専用の機械でローストすることでチョコの風味が出てくる。
その後皮と胚芽を取り除き、カカオニブと呼ばれる部分をすり潰すと、豆に含まれる油分でペースト状に。最後は砂糖やミルクを入れて、味を調整していく。
これまではフェアトレードのチョコレートを使って商品をつくっていたけれど、bean to bar事業をはじめたことで、産地ごとの豆の風味を活かしたチョコレートをつくることができるようになった。
「豆ってそのままだと産地ごとの違いがわかるんですけど、チョコレートにしていく過程で、苦味や酸味が抜けて似たような味になってしまうんです」
「お客さんにも豆の違いを楽しんでもらうために、焙煎の時間を調整して、豆の風味をうまく残せるようにしています」
同じ種類の豆でも、加工方法によって味も変わる。藤原さんたち製造開発のチームは、商品ごとに適した味わいを引き出せるよう、ときに商品企画のメンバーと連携しながらチョコレートの開発に取り組んでいる。
今回、新しく製造開発スタッフとして入る人も、まずは豆の味やチョコレートがつくられる工程を実際に見ながら仕事を覚えていくことになる。
「重いものを持つので体力も必要だし、商品開発にはトライアンドエラーがつきものなので、根気強くやろうっていう意識は大事かな」と藤原さん。
bean to barの仕事がメインであるけれど、商品開発に参加してアイディアを交わす機会もあるとのこと。
より美味しい味を探求するのはもちろん、ほかの立場の人の意見も知ることで、自分の仕事を俯瞰的に捉えることもできるのだろうな。
通販事業部の坂本さんが話していた「働きやすい環境でつくるものは、結果としていいものになる」という言葉。
互いを思いやり、気持ちよく、責任を持っていろんなことに挑戦していくからこそ出てくる言葉なんだと思う。
あらためて、素敵な環境だと思いました。
(2022/11/8 取材 杉本丞)
※撮影時はマスクを外していただきました。