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手仕事の美しさに
光を当てて
特別な一着を日本から

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

着物に使われる絹は、蚕が吐き出す糸からつくられる素材です。

普通は、一頭の蚕がひとつの繭をつくるものですが、ごくまれに、二頭の蚕がひとつの繭に入ることがあります。二つの糸が絡まってできた「玉繭」は、通常より大きくて不格好。

糸に節ができやすいので、出荷用として売ることはできない。農家の人たちが「せめて自分たちのために使おう」と、繭から糸を紡ぎつくった織物。それが紬(つむぎ)と呼ばれる着物のルーツです。

人の手作業でつくられる紬糸は、驚くほど柔らかく、織りあがった生地もふっくらと軽い。石川県に受け継がれる牛首紬などは、今もこの伝統的な手法でつくられています。

日本にはこのほかにも、地域や風土のなかで育まれた多種多様な布の文化がありますが、着物を着る機会が減るにつれ、ものづくりは厳しい現実に直面しています。

美しい布をつくる職人さんを応援したい。

そんな思いから生まれたファッションブランドが、今回紹介するMIZENです。着物のためにつくられた織物を、洋服に仕立て、現代のライフスタイルのなかで楽しむ提案をしています。

今年の12月にオープンする直営ショップでは、洋服の受注販売のほか、イベントや展示などを通じて、日本のものづくりの魅力を発信していく予定。今回は、このショップのスタッフを募集します。

将来的には洋服だけでなく、着物の販売にも取り組んでいきたいので、できれば呉服の知識がある人だと心強い。ただ一番大切にしたいのは、経験よりも、ものづくりに対する興味や熱意です。今回は合わせて、パタンナーなどの技術職も募集します。

 

東京・青山。根津美術館の近くにある4階建ての建物が、MIZENのアトリエ。ショップも、同じ建物のなかにつくっている。

迎えてくれたのは代表の寺西俊輔さんと、デザイナーで台湾出身のMOLLYさん。ミラノで出会ったおふたりは、私生活でもパートナーなのだそう。

MOLLYさんが身につけているスカートはMIZENのオリジナル。着物の生地とニット素材を組み合わせたデザインで、独特の存在感がある。

「これは結城紬の反物ですが、大島紬や牛首紬など別の反物を使うと、同じ形でもまったく違う雰囲気になります。ショップでは、お客さんに生地を選んでもらうセミオーダーで販売していく予定です」

紬などの反物は洋服の生地に比べて幅が狭く、単価がとても高いため、今まで多くのデザイナーが憧れながらも敬遠してきた素材。

MIZENでは、なるべく生地を無駄にしないパターンやニット素材との組み合わせなど、さまざまな工夫を重ねることで、洋服として成立させている。

「ときどき、『うちの母の着物を洋服に仕立ててもらえませんか?』って、ご相談いただくことがあります。ただ、そういったお話はお断りしていて」

「MIZENは、あくまでも職人さんを応援するためのプロジェクトなので、新しい生地を使って、産地の経済を循環させていきたいんです」

日本のものづくりに強い思い入れを持つ寺西さん。もともとは海外志向で、日本の文化は眼中になかったという。

学生時代はヨーロッパのファッションシーンに憧れ、建築を専攻する傍ら独学で服をつくっていた。「そんなに熱意があるなら」と、大学の先生に紹介されたのがヨウジヤマモトのアトリエ。

「毎日ひたすら仮縫いをする、修行みたいな日々でしたね。自分が線を引いた型紙が、立体的な洋服になるおもしろさにのめりこんでいきました」

28歳のとき、キャロル・クリスチャン・ポエルで働く機会を得てミラノへ渡り、一度の転職を経て、パリにあるエルメスのメゾンへ。

海外では思った以上に「日本人を採用したい」という企業が多かったという。

「彼らのなかにはおそらく、日本人はパターンが上手いっていうイメージがあったと思うんです。イッセイミヤケさんの洋服が折り紙みたいだって言われるように、日本人デザイナーの服は形がおもしろい。その技術力を評価されていたんだと思います」

そうして寺西さんが少しずつ自分のアイデンティティとしての「日本」を意識するようになったころ、パリの展示会で着物に出会う。

「そのうちのひとつが紬です。一見すごく地味だけど、色使いや糸の繊細さが美しい。何より、まだこんな手仕事をやっている人がいることに衝撃を受けました」

それからは休暇で日本に帰るたびに工房を訪ね歩き、着物の魅力を知ると同時に、後継者不足や市場の縮小など、業界が抱える課題も知ることに。

「工房の社長さんたちは、『もう日本にはマーケットがない』って言うんです。呉服は売れないし、洋服の素材として提案するにしても、日本にはそれだけ高価な素材を扱えるラグジュアリーブランドがない、って」

オートクチュールの文化が残るヨーロッパであれば、高級素材に興味を示すクリエイターも多い。その可能性を求めて、海外にアプローチする日本の伝統工芸産業は少なくない。

寺西さんはその現状に、どこか違和感を感じたという。

「海外のブランドにとって日本の着物は、“ネタ”のひとつでしかない。仮に職人さんの生業が行き詰まってつくれなくなっても、別の素材を探すだけ。もっと職人さんを大切に思ってくれるマーケットを、日本につくるべきじゃないかと思うようになりました」

「それに、日本の手仕事が詰まった服は、着る人に誇りを与えてくれます。海外に出ると、自国の文化に対する教養を重視されるので、社交の場で和服の正装に代わる勝負服として提案していけたらいいな、という思いもあったんです」

寺西さんは2018年に帰国し、着物を使ってオーダーメイドで洋服を提案するブランド「ARLNATA(アルルナータ)」を立ち上げる。

理念に共感してくれるお客さんの輪が少しずつ広がるのを実感する一方で、自分が細々と活動するだけでは、地域の産業を変えられないという迷いもあった。

地域の産業を変えるためには、もっとビジネスの規模を大きくする必要がある。その思いを後押ししてくれたのは、「ふるさとチョイス」などのサービスを運営するトラストバンクの創業者、須永珠代さん。

もともとARLNATAの顧客だった須永さんと共同で、今年の春にMIZENのプロジェクトをスタートさせた。

 

この半年ほどで、生産体制も少し大きくなり、メンバーも増えた。

その一人が、生産管理担当の武田さん。もともとはボタンやファスナーなどの服飾資材を扱う問屋で働いていて、寺西さんとは取引先の関係だった。

「海外の有名なブランドで経験を積んだデザイナーっていうと、普通は雲の上の存在を想像しますけど、寺西さんたちはすごく腰も低いし、チャーミングな方だと思います」

「ただ、やっぱり、こだわりはすごいです。服飾資材屋だった僕からすると、テープ一つにこんないい素材使うの?って、驚きます。素材も技術も、MIZENじゃないとできない要素がたくさんあるんです」

MIZENの洋服は、生地だけでなく縫製も一級品。特にニットと着物の縫合は難しく、日本でも数少ない技術を持った工場が、特別に小ロットで対応している。

そのほかの縫製も一級和裁師の資格を持った技術者に依頼しているので、洋服の裏側まで美しい。

日本には、反物の職人さんだけでなく、縫製やニットなど、それぞれの分野に優れた技術を持った人たちがいる。彼らが正当に評価される社会をつくることも、MIZENが目標とすることのひとつ。

今までにない服づくりを目指す過程では、技術にも素材にも、いろんな挑戦が生まれている。

たとえば、CGによるシミュレーション。

「とにかく生地が高価なので、気軽にサンプルをつくるわけにはいきません。なるべくCGを使って、人が身につけたときの質感まで実感できるようなイメージを作成しています」

そう言って画面を見せてくれたのが、パタンナーの崎村さん。もともと、婦人服のアパレルブランドでパタンナーを9年間務めていた。

パタンナーにとって、MIZENというブランドはどうですか。

「幅が狭い着物の生地でパターンをつくるのは難しいです。何回もやり直して、やっと1着お洋服ができる。それが大変でもあるけど、妥協せず、より良いものをつくるなかで、自分がパワーアップしていく感じがして楽しいです」

「これからショップで接客を担当する人も、同じように仕事を楽しむ気持ちを持っているといいなと思います」

ショップは、アトリエのすぐ上の階にできる。

デザイナーとの距離も近く、試行錯誤の過程でも一体感を感じやすいと思う。

売り場は2フロアに分かれていて、入ってすぐのスペースには、ギャラリーのように反物が並ぶ。お客さんはまずリラックスした雰囲気で、スタッフと話をしながら、職人さんや産地について知ることができる。

そこで興味が湧いたら、もうひとつ上の階へ進み、実際の洋服を見たり、購入の相談をしたり。ゆくゆくは、洋服の受注だけでなく、反物を呉服に仕立てるサービスもはじめたい。

セミオーダーなので、お客さんとのコミュニケーションが重要な仕事。売るテクニックというより、人への思いやりのような部分が必要なのかもしれない。

またショップでは、展示会やイベントを開催する計画もある。自分で産地をリサーチしたり、企画を考えたりする熱意や興味が尽きない人だといい。

 

現在、ショップのオープニングスタッフとして準備を進めているのが、伊禮(いれい)さん。日本の工芸が好きで、地元沖縄の伝統工芸を扱うギャラリーで働いていたという。

「今の世のなかでは、工芸って、少し端っこに置かれているように感じることもあって。もっとカッコよく紹介することで、職人さんが豊かになる。そういう寺西さんの考えに共感しています」

「アパレルで働いた経験はあるんですが、着物を扱うのは初めてです。着付けや反物の知識も少しずつ覚えていきたいと思っています」

オープンしてしばらくは、接客と並行して、勉強や業務改善などを一人ひとりが主体的に行っていく必要がある。伊禮さんも、新しい仲間とコミュニケーションをとりながら、お店づくりを手探りで進めているところ。

メンバーが揃うまでは、自分もショップに立ってサポートするという寺西さん。最後にこんな言葉をくれました。

「MIZENは、着飾るためだけのファッションではないので、洋服の裏にある人とのつながりを大事にできる人と一緒に仕事をしたいです。伝統産業を良くしたいっていう熱意があれば、経験や知識は後から補えるものだと思います」

着る人の満足だけでなく、生産者への思いを表現するファッション。

MIZENの洋服は、今の時代に必要な本物のラグジュアリーとは何か、気づかせてくれるかもしれません。

(2022/11/9 取材 高橋佑香子)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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