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瀬戸との縁をつなぐ
ギャラリーとカフェ
そして招き猫

働く場所を自由に決められる仕事がある一方で、その地域だからこそできる仕事もある。

愛知県瀬戸市は1000年以上の歴史がある、日本屈指のやきもののまち。豊かな陶土や登り窯がつくりやすい地形があり、そこに集まる職人たちは高い技術力を持っています。

陶磁器のうつわ全般を指して「せともの」と呼ばれるほど、今も昔も多種多様なやきものがつくられています。

この地で創業70年を迎えた株式会社中外陶園は、陶磁器の置物や季節飾りをつくるメーカー。干支の置物や招き猫、雛人形、五月人形など、季節を彩るやきものをつくり続けてきました。

瀬戸市内にある直営店のほか、5000点の招き猫のコレクションを展示する招き猫ミュージアムも運営し、お客さんとの接点もつくってきました。

今年、カフェ、ギャラリー、絵付け体験ができる工房の「Studio894」(スタジオ ハチキューヨン)を尾張瀬戸駅の近くにつくる予定。瀬戸市内外の人が、ものづくりやまちに触れる最初のきっかけになるような施設を目指しています。

今回募集するのは、Studio894のマネージャーとスタッフ。コーヒーを淹れたり、ギャラリーでお客さんやアーティストさんの対応をしたり。加えて、絵付け体験の受付や体験のサポートも。

施設の3つの顔を欲張りに楽しめる人には合っていると思います。そして何より大切にしたいのは、やきもののまち瀬戸への興味。

これから知っていくという人も大歓迎。好奇心を持って関わる人を求めています。

 

東京駅から新幹線で名古屋駅へ。

改札を出ると、代表の鈴木さんが迎えてくれる。車で40分ほど走ると、中外陶園のある瀬戸に到着。電車でも名古屋駅から30分ほどで行くことができる。

鈴木さんのお誘いを受けて、瀬戸のまちを見てから会社に向かうことに。

まず案内してくれたのは、「窯垣の小径(こみち)」。窯でうつわなどを焼くときに使う窯道具を積み重ねてつくられた塀で、瀬戸でしか見られないものだそう。

窯元の家が並び、周辺にはギャラリーなどもある。緑から差し込む光と古い街並みが心地いい。

観光案内板の猫は中外陶園でつくったものだそう。瀬戸のまちは、観光案内板や橋の欄干など、さまざまなところにやきものが使われていて、宝探しをしているような気分になる。

散策を終え、会社の会議室を借りて話を聞く。

「うちは創業からずっと置物をつくっています。戦後すぐの1952年に創業して、最初の30年はヨーロッパやアメリカの会社の下請けで陶器の人形やオーナメントをつくっていました。それ以降は日本国内向けの商品に転換して、干支、招き猫や節句人形などをつくっています」

今では招き猫は瀬戸を代表する工芸品。中外陶園ではBEAMS JAPANとコラボした招き猫などもつくっている。

今の主力商品は干支の置物で、売上の半分を占める。毎年70アイテムほどデザインし、社内外で300万個を生産。大手量販店などに卸しているものの、コロナ禍の影響もあり、好調だった海外からの観光客向けの販売は一時激減。

「このやり方だと生き残っていけない」と感じたそう。

「大変でしたけど、そのなかでも前を向いて、瀬戸に会社がある意味を見つめ直そうと思って。瀬戸でどんなふうにものづくりがされているかを見てもらい、買ってもらう。お客さんと直接つながることに力を入れようと考えました」

そして生まれたのが、Studio894の構想。目指すのは、瀬戸に人を招くきっかけになる施設だ。

「今の瀬戸はまちを歩く人が少なくて、にぎわいもない。一方で、住環境の良さから若いファミリーが増えています。けれど、まちに縁がなく、まちのことも知らない人がほとんどで。遊びに行くとか友達とご飯に行くってなると、名古屋とか別の場所に行ってしまう」

今回つくるのは、人が集うカフェ、ものづくりのまちを発信するギャラリー、産地ならではのものづくりを体感できる絵付け体験工房の3つが揃った複合施設。

「カフェにしてもギャラリーにしても、外部の一流の方と一緒につくっていきます。僕らも陶器メーカーとして一流の体験を提供したいと思っていて。『瀬戸といえばここ!』と自慢できるような場所をつくるために、妥協なくこだわっていきたいんです」

絵付け体験では、中外陶園の職人が講師として、初級・中級・上級のように、自分のレベルに合わせた体験をすることができる。何度も通ってつくることもできるし、1回で仕上げることもできるため、近くに住む人にも、遠くから来る観光客にも体験してもらいやすい仕組みにする予定。

海外輸出の陶磁器製の置物から受け継がれた精巧な絵付けの技法を体験すると、やきものを見る目も変わりそうだ。

お皿、招き猫、風鈴など、どんなものに絵付けしてもらうか。新しく入る人も一緒にアイディアを出しつつ、社内でサンプルをつくりながら進めていくことになる。

 

鈴木さんが「お兄さんみたいな存在」と話す、Studio894の構想から関わっているリドルデザインバンクの塚本さんにも話を聞く。

東京を拠点に伝統工芸のリブランディングや、駅ナカの活性化など幅広いデザインの仕事を手がけている方。

「別の地域での仕事の帰りに、鈴木さんのところに寄らせてもらって。招き猫ミュージアムを見たときは、世の中には招き猫だけでこんなにもバリエーションがあるのか、と衝撃を受けました」

「そのときに見たものはファンシーなデザインが中心。けれども、絵付けの雰囲気を少し変えるだけで、おしゃれなカフェのレジ横に置けるかっこいいものができるんじゃないかと、いろんな可能性を感じたんです」

鈴木さんからの依頼もあり、現在は「瀬戸まねき猫」のリブランディングを手がけている。

「あるとき、まちに人を招いて、にぎわいづくりのきっかけにしたいって話を聞いて。ならば人が行きたくなるような施設が必要だと思ったんです。中途半端なものではだめ。愛知に行くんだったらここに行かなきゃっていう施設にしようって、こだわりを持ってつくっています」

スタッフ側の使い勝手やお客さんの導線、コンセントのカバーやドアノブなどの細部まで。施設全体を俯瞰してアドバイスしている。現状はまだ図面の段階で、今年の6月にはオープンする予定だ。

「参考になりそうなカフェがあったら、東京でも広島でも福岡でも、鈴木さんは翌週とかには足を運んでいて。これだけ熱量のある人と仕事ができるのは楽しいです。僕もできる限りのサポートをしていこうと思っています」

ギャラリーの展示にもこだわりがあるとのこと。外部のアーティストの展示をただ瀬戸に持ってくるのではなく、1つの平面の作品を中外陶園の技術で立体的につくることを考えている。

「3年前からイラストや絵本をつくるユニット『tupera tupera』とコラボして干支置物をつくってきました。アーティストたちの平面作品が立体になって、実際に手に取れる。アーティストにとっても、つくる職人にとっても可能性を広げる取り組みになるんじゃないかな」

工房やギャラリーがあることで、社内の職人も瀬戸にいながら、外部の人と関わりを持ちつつ働くことができる。

マネージャーになる人は、塚本さんに協力してもらいつつ、展示するアーティストを決め、やり取りを重ねて実際の展示まで伴走することになる。

デザインが必要なものは塚本さんに依頼もできるし、展示の準備や方法も相談して決めていける。塚本さんも頻繁に東京と瀬戸を行き来しているので、展示を経験したことがない人でも、コミュニケーションをとりながらいいものをつくっていけると思う。

 

施設の顔となるカフェはどんな雰囲気になるのだろう。

後日、東京・三軒茶屋にある、OBUSCURA COFFEE ROASTERS(オブスキュラ コーヒー ロースターズ)を訪ねた。

コーヒーのいい香りに包まれる店内には、ひっきりなしにお客さんが訪れている。

OBUSCURA COFFEEの方が、カフェのアドバイザリーとして関わっているそう。本人の意向で顔の写真はないけれど、丁寧に話を進めてくれる方。

「カフェのプロデュースのご依頼は多くいただくのですが、最近は社内のことに集中したいと思って、お断りしていて。でも塚本さんから『瀬戸の仕事がある』と聞いて、興味が湧いたんです」

「器や恵比寿大黒とか招き猫とか、私自身、縁起物が大好きで。瀬戸の会社にもお邪魔して、つくる工程などを見学させていただきました。それでぜひご一緒させていただきたいと思って、カフェのプロデュースをお手伝いすることにしたんです」

スタッフの導線や、機材、基本のメニューやオペレーションなど、お客さんに1杯のコーヒーの提供ができるまでの多岐にわたる準備を、一貫してサポートしてくれている。

カフェでは、コーヒースタンドとお菓子などの軽食を提供する予定。しっかりした食事メニューについて今は考えていないけれど、イベントで外部の飲食店を呼ぶことができるよう、流動的に使えるレイアウトにしている。

「駅からも近いので、瀬戸の散策の起点になるような場所にしたいと思いつつ、メインのターゲットは地元の人です。いいお店の1番の条件は『地になじむ』ってことだと思っていて」

地になじむ。

「地元の人に愛される、地元のコーヒー屋さん。まずは地元の人に受け入れてもらうことが大切です。カフェって目的もなく人が集まれる場なので、そこから中外陶園や瀬戸のことを知ってもらえるといい」

「関わる以上はちゃんと続くお店にしたいです」

新しく入る人は、最初どんなことをするんでしょう。

「まずはコーヒーの基準を覚えてもらいます。お客さんからすると美味しいコーヒーって正解がないんですが、お店に立つプロとして提供するコーヒーには基準があります。まずは味を覚えて、そこからその美味しさを出せるように反復練習をします」

エスプレッソマシンのメンテナンス、抽出するときのフィルターのセットの仕方、出したい味に合わせたコーヒー豆の挽き方など。1杯の美味しいコーヒーにはたくさんの手間や技がかけられている。

「トレーニングは3回を予定しています。1回は3時間でみっちりと。1週間空けて、次の回をするのが理想です。最初はついてくるのに必死だと思いますが、コーヒーに関してはしっかりサポートするので、そこは安心してついてきてほしいです」

まずはプロの技を学んで、身につけていく。

スタッフはコーヒーだけでなく、ギャラリーや絵付けの仕事も担当することになる。瀬戸のまちのことも知っていく必要があるから、最初は覚えることが多いと思う。そのぶん、身につくものは多くなるし、なにより知る過程に楽しみを見出せるといい。

「私たちは立ち上げの部分をしっかりつくるので、基本を覚えたうえで、入った方がお店に合わせてちょっとずつ改善していくのがいいと思います」

「そういう意味では、好奇心を持って吸収して、物事をコツコツ積み上げていけるような人がいいんじゃないかな」

 

これからできる施設が瀬戸に何を招くのか。

この場所との縁を紡いでいける人が来てくれることを待っています。

(2022/10/11、25 取材 荻谷有花)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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