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TOKYOを油田に
あらたな循環が生まれる

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揚げものはおいしい。でも、自分でつくるのはなかなか大変だ。

そう思う大きな理由のひとつが、使い終わった油をどうするのか。同じように感じる人も多いのではないでしょうか。

その油が資源として生まれ変わるということ、知っていますか?

TOKYO油田。

一度聞いたらなかなか忘れないこの名前。使用済みの天ぷら油を回収し、エネルギーや飼料・肥料などとして有効活用していくリサイクルプロジェクトです。

運営する株式会社ユーズは、今年で設立27年。当初から、社会や環境にやさしいビジネスに取り組み続けてきました。

今回主に募集するのは、新規取引先の開拓やイベント・ワークショップの企画運営などに取り組む、企画営業。油の回収を担うエコディネーターのサポートに入ることもあります。

どんな仕事なのか、まだ想像できない人も多いかもしれません。

「環境問題」「地域コミュニティ」「ソーシャルビジネス」といったキーワードにピンとくるなら、きっとおもしろい仕事だと思います。

 

東京都墨田区。スカイツリーのある押上駅から5分ほどの八広(やひろ)駅で降りる。

住宅街を歩くこと15分、あたりに昔ながらの町工場が増えてきた。これから油の会社を訪れるからか、道中に何軒かある油の工場が目に留まる。

昔から油屋さんが集まる地域だったのかな。そんなふうに考えながら歩いていくと、大通り沿いのマンションの1階部分にある、ユーズの拠点に到着。

黄色い暖簾を掲げた「油田カフェ」、隣がテナントとして入っているチャリティーのリサイクル・リユースショップ、その奥にユーズのオフィス、一番奥には野菜工場のベンチャー企業。

一見、何屋さんかわからない。

様子を見つつカフェに入ってみると、出迎えてくれたのは代表の染谷さん。次々に話を展開してくれるパワフルな方。

「ソーシャルビジネス」という言葉が一般的になるずっと前から、染谷さんはこの分野で走り続けてきた。

きっかけは高校卒業後、世界を見てみたいと、アジア放浪の旅をしていたときのこと。中国からネパールに抜けるヒマラヤ山脈の道中で土砂崩れに遭遇した。

「今通ってきた道が崩れてしまって、10分遅かったら命はなかったっていう経験をして、すごく怖かった。そのとき村の人に、『これは天災じゃなくて人災、コンクリを埋めて道路をつくったせいで山が壊れたんだ』って聞いて、ドキッとして。環境問題に目覚めるきっかけになったんです」

帰国後、旅行代理店を経て、祖父の代から廃食油回収業を営む実家の染谷商店に入社。

1993年に、世界で初めて廃食油を再利用してつくるバイオ燃料“VDF”の開発に成功し、より環境に特化した事業に取り組むためにユーズを立ち上げた。

「TOKYO油田は、東京中の油を集めて油田をつくろうと掲げて、2017年まで取り組んでいたプロジェクトです。実際、東京中から集めるのは難しかったんですけど、廃食油を原料とする電力会社を起こすところまで到達して、一区切りつけることができました」

残念ながら、コロナ禍や電力市場の価格高騰により、電力事業は一時休止。この3年ほどは、身を低くしてなんとか乗り越えてきた期間だった、と染谷さん。

主な回収先である飲食店から集められる油の総量は、コロナ禍の影響で減少。一方、自宅で料理をする人が増えたことで、各自治体が主導する回収量は増えているという。

「戦争の影響もあって今は油が高騰していて、使用済みの油でも結構値がつく時代になりました。これから何に展開していくかっていうと、ジェットエンジンなんです」

シンガポールでは、CO2削減に廃食油を再利用した燃料での航空機の運行がすでに開始。日本の大手航空会社でも、導入に向けた取り組みがはじまっているという。

日本国内はもちろん、円安の影響で海外からのニーズも大きい。

「日本には資源がないとずっと言われているけれど、天ぷら油という資源なら豊富にあるんですよ。今までは私たちがどれだけ『油田』って言っても、単に油の回収って思われていた面が強かったかもしれない。でも今は本当に資源として、TOKYO油田が実現できるステージに来ているんです」

世の中で起きているさまざまな問題や社会の動き。染谷さんの話を聞いていると、それらが自分の暮らしと地続きであることを再認識する。

社会情勢の影響を受けやすいというのは、それだけ自分の仕事が、社会を変えることにダイレクトにつながっていくとも捉えられるはず。 

「ライバルも増えてしまったけれど、どんどん開拓して取りにいきたいですね。長年言葉で伝えてきたことを、一緒に、本当に実現してくれる人を大大募集、ということです」

 

現在ユーズで働くスタッフは5人。「少ないけれどみんないい感じ」と表現する染谷さん。

2014年から働く事務局長の佐野さんは、一番社歴が長い方。会社の事務まわり全般を広く任されている。

「わたしは知り合いの紹介で入社したので、正直環境問題に関心があったわけではなくて。新しく入る人も、関わるなかで少しずつ理解して、発信していければいいのかなと思います」

「より大事なのは、営業としてお客さんの要望をちゃんと汲み取れるか、細かい変化にも気づいてあげられるかっていうことですかね」

ほかのスタッフ4人は、全員がエコディネーター。必然的に、それ以外の業務を佐野さんが担うことが多いので、今回新しく入る人と仕事を分担していきたい。

たとえば、イベントやワークショップの企画運営。

環境イベントにブース出店して油の回収をしたり、VDFでの発電をデモンストレーションしたり。キャンドルやオイルランプづくりのワークショップも頻繁に実施していて、昨年5月には大型ロックフェス「METROCK」にエコブースを出展。

「ご家庭から集めたものの使い道を知ってもらう目的で、自治体と連携してイベントを開催することもよくあります」

「小中学生の参加者が多いので、家で使った油もキャンドルにできるんだよ、こういう使い方もあるんだよって、なるべくわかりやすい表現でお伝えできるように心がけています」

 

今回入る人に担ってほしいのは、新規開拓や既存のお客さんとのコミュニケーション、イベントの企画運営が中心。

とはいえ、小さな会社なので、社内の仕事はなんでもやるくらいの心持ちがちょうどいいと思う。エコディネーターと連携して、廃食油の回収にも取り組んでほしい。

話を聞いたのは、約4年前からエコディネーターとして働く小坂さん。

新卒から17年間、舞台の裏方として働いていたものの、不規則でハードな生活をあらためたいと転職。

「日によっては朝早いこともあるんですけど、早ければ16時くらいに仕事が終わる。何より、イベントがなければ基本土日休みなので、最初はそれがすごくうれしかったですね」

「環境に関する事業は将来性があるのかなとも思って。運転も嫌いじゃないし、個人店からショッピングモール、学校や公共施設まで、いろんなまちのいろんなところに行けるのも新鮮ですね」

エコディネーターは、お客さんからの依頼にあわせて、毎日異なるルートを組み、油を回収する。

毎週行くお店もあれば、月に一度や半年に一度のペースでしか行かないお店も。回収量もボトル数本からタンクいっぱいまで、さまざま。

「世の中には無料回収の業者もあるなかで、うちは原則有料回収なんです。そのぶん回収の時間帯とか量とか、お客さんのやりやすいようにこまめに合わせていく。そっちで勝負するしかないなと思っています」

「コミュニケーション力は結構問われる仕事ですね。世間話とかもするし、お客さんは顔見知りの納品業者って感じの捉え方をしてくれているのかな。厨房に入ることもあって、癖のある店主にやんや言われることもあれば、親切なところもあるし。それもひとつの面白さですね」

廃食油の回収のほかに、新油の配達も行なっている。集めた油は、歩いて5分くらい離れた場所にある染谷商店へ持っていき、再利用のための処理をしていく。

力仕事に思われがちだけれど、女性も歓迎だそう。

主にエコディネーターが対応しきれないときサポートとして入るので、近隣や少量の回収先を担当するなどの調整もできる。

 

ここで再び、代表の染谷さん。

「工場では油を降ろしたり缶を洗ったり、油まみれになります。エコに興味があると言って入社しても、そういう小さいところを見ていやになって、大きな目指す先が見えなくなっちゃう人はむずかしい。理想通りにいかないのは、どの仕事でも同じですからね」

TOKYO油田は、油にまつわる事業に加え、パンやドリンクを提供する「油田カフェ」をオフィスの隣で運営。自分たちの活動を発信する場でありながら、地域の人たちの憩いの場にもなっている。

3年前からカフェで働いているのが三浦さん。空間デザイナーや大学の講師として働きつつ、週に一度はパートスタッフとして働いている。

「墨田のまちの人たちでファッションショーをするイベントがあって、染谷さんとはそこで出会いました。コロナ禍でマスクが不足していたときに、自作のマスクをこの店の前で売らせてもらって大忙しになったこともありましたよ」

「油田カフェは昨年10周年でした。お客さんは長く通ってくれている方が多くて、ご近所事情とか、わたしが教えてもらうことも多いです」

近所のお年寄りがふらっと入ってきて、チャリティーショップを眺めたり、三浦さんと話をしたり。少し時間を過ごしただけで、ここが地域に住む人たちの居場所として機能してきたことがよくわかる。

「長居しておしゃべりしていく方もいるし、私もまかない食べたいって言ってくる方もいるし(笑)。新しい人も、お客さんの気持ちを汲み取っていけると、常連さんもついてきてくれると思います」

「染谷さんが取り組んできたことや、この場所の存在がすごくおもしろいですね。週に一度だけでも、ずっとつながりを持っていたいなと思っています」

環境問題や地域の活性化。自分の仕事が、ダイレクトに社会と結びついていると感じられる仕事だと思います。

スタッフのみなさんは、それを明言はしませんでした。でも自分なりに仕事への考えをしっかり持っていることはよく伝わってきて、話をしていてとても気持ちがよかった。

一歩踏み出してみたら、ここで気づき、得られるものはたくさんあると思います。

(2023/4/28取材、2024/1/15 更新 増田早紀)

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