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やきもののまちとして知られる愛知県瀬戸市。
瀬戸は1000年以上の歴史を持つ、日本屈指の窯業地。「せともの」という言葉に耳馴染みのある人もいると思います。
その地で73年間続く陶磁器工芸メーカー、中外陶園。
招き猫や干支置物、雛人形など。時代のニーズに合わせながら、季節を彩る陶磁器をつくり続けてきました。
今回募集するのは、製造管理チームのメンバー。
自社の開発チームと、国内外の製造工房とのあいだに立って、品質や納期がきちんとおさまるように調整する役割です。
知識や経験は、問いません。
製造先は国内と中国にあるため、英語を用いてコミュニケーションができるとうれしいです。中国語ができれば、なおうれしい。
ニッチなものづくりに興味のある人は、ぜひ読み進めてみてください。
名古屋駅から、在来線を乗り継ぎ1時間ほどで、尾張瀬戸駅に到着。
目の前には川が流れていて、その両岸に商店街。せとものを売るお店が軒を連ねている。
道のタイルや橋の欄干など、まちの風景のちょっとしたところにも、やきものが使われている。
駅から歩いて10分ほど、中外陶園の事務所に到着した。
お家のような佇まいで、玄関に招き猫。
温かく迎えてくれている気がして、安心して扉を開ける。
「こんにちは、待ってましたよ」
代表の鈴木さんがにっこりとした笑顔を見せてくれた。
「仕事百貨さん経由で入社したメンバーは、みんな活躍してくれていますよ。新しい取り組みも広がってきているので、お話しするのが楽しみです」
1952年、鈴木さんのひいおじいさんが創業した中外陶園。
招き猫や干支置物、ほかには雛人形、五月人形といった季節商品も。日本の暮らしに馴染み深いやきものをつくり続けてきた。
最近では、瀬戸に根付いたやきものの文化を、もっと身近に感じてもらうために、BEAMS JAPANや中川政七商店、ポケモンなど。コラボレーション商品も積極的に生み出している。
もともと、招き猫や干支置物は、企業の社長室、応接間にある豪華な床飾りだった。
時代の移り変わりとともに、もっと身近になってきたという。
その新しいニーズをつくってきたのが、中外陶園。
「さまざまなデザインを提案してきたことで、日常に溶け込んできている感覚があって。インテリアのひとつとして取り入れる人が増えているんです」
たとえば干支置物。
今年の干支の辰だけで、約70種類のアイテムが販売される。
ひとつの動物がモチーフになっていることを考えると、多いように思う。
サイズやデザインも豊富で、晴れやかな日を彩るものから、インテリアに馴染む落ち着いたものまで。3万円のものもあれば、300円で手に入るものもある。
百貨店だけでなく、ロフトやハンズなど、カジュアルな雑貨店での取り扱いも増えてきているそう
今では干支ものは、年間約300万個を生産する、主力商品のひとつになっている。
「健康でいたいとか、今年こそは頑張ろう、とか。人々の気持ちにもっと寄り添えるようなものづくりができている実感があって。そこに携わることができて、本当に幸せです」
「時代によって、つくるものが変わっていくこともあるかもしれない。大切なのは、人の想いに寄り添うやきものの文化を無くさないこと。瀬戸に根付いたやきものの歴史を守りつつ、僕らができるものづくりを続けていきたいです」
人の想いや願いが込められた、やきものの文化を残していきたい。
そんな想いから、昨年9月には、やきものの絵付け体験やギャラリー、カフェの入る複合施設「STUDIO 894(スタジオ ヤクシ)」をオープン。これまでの記事でも構想段階から完成まで、話を聞かせてもらっていた。
オープンして、いかがですか。
「絵付け体験やギャラリーを目当てに、遠方から来られる方もいて。瀬戸観光での一つの目的地になっていることは自信につながっています」
「なにより、ふらっとコーヒーを飲みに来たよとか、ワンちゃんと散歩途中に寄ってくれる人もいて。瀬戸に暮らす人にとって親しみやすい場所になっていることが、一番うれしいですね」
観光地としてだけでなく、働く人自身にもこの土地を好きになってもらえるように。現在、中外陶園では社員にとって働きやすい環境づくりも進めている。
人事制度や給与体制の見直しなど。そのほかにも、瀬戸地域へ移住する人には、家賃補助手当も支給していて、岩手や兵庫など県外から移住する人も増えてきている。
「若手からベテラン社員まで。僕がランドセルを背負ってたころから勤めている40年選手もいるんですよ」
「みんなそれぞれに背景を持っているなか、一緒の屋根の下で仕事をしている。僕らの強みとして、人に勝るものはないなと。幸せを招くものづくりをするために、社員が働きやすいと実感できる場所をつくることも、僕の大事な役目だと思っています」
中外陶園の事務所から、歩いてすぐのSTUDIO 894に移る。
店内のコーヒースタンドでは、お昼休憩だろうか。社員さんがコーヒーをテイクアウトしている。
話を聞いたのは、製造管理チームの太田さん。新卒で中外陶園に入社し、今年で7年目。
チームは太田さんを含めた3人。年次としては2番目だけれど、社内で世代交代を進めたこともあり、最も若い年齢で管理職に就いたんだそう。
新しく入る人にとっては、一番頼りになる存在だと思う。
「干支置物や招き猫をつくるというニッチな仕事に、素直に面白そうだなって思いました。地域の産業を応援することにも興味があって」
愛知生まれ、県内で大学に進学した太田さん。留学をしたり、デザインイベントにボランティアスタッフとして参加したり。興味のあるものにチャレンジするなかで、中外陶園を知って応募した。
商品開発チームがイメージスケッチや図面を描き、それを元にサンプルを制作。そのサンプルを受け取ってからが、製造管理チームの役割。
「まずはサンプルを、工房や工場に確認してもらって、製造方法、見積もりや納期について相談を進めていきます」
調整を重ねて最終的な商品仕様が決まれば、鈴やひもなど必要な資材と一緒にまとめて製造先の工場へ送り、生産が始まる。
担当者は製造の進捗を確認しつつ、品質管理、卸先への納期調整など、細やかなコミュニケーションを重ねていく。
関わる人は原型師さん、それを石膏の型にする型屋さん、絵付をする職人さん、量産を依頼する中国のメーカーなど、多岐に渡る。
これまでに、苦労したことはありましたか。
「干支置物のような、毎年の定番商品は価格を大きく変えることが難しいんです。サンプルをつくる段階で、職人さんに『さすがにこの値段じゃ見合わないよ』って言われれば、開発のほうに戻して、デザインを考え直すこともあります」
「デザイナー側の意図と、工場でかかる手間とコスト。ちょうどいい落としどころを見つけるために調整していく。コミュニケーション能力や、やりきる力が求められますね」
製造先の工場は主に中国にあるので、中国語が話せればうれしいけれど、英語でも十分とのこと。
「完成後、国内に仕入れる際の通関手続きがあるので、細かな書類などを用意する必要があります。自分も未経験でしたし、最初はきちんとサポートするので安心してください」
国内に輸入されると、自社倉庫へ移すために荷物を搬入する。作業は自分たちでおこなうため、ときには力仕事になることも。
自社の倉庫に納めたら、営業へバトンパス。全国のショップへと商品が運ばれていく。
「メーカーにおける製造管理って、花形の部署だよ、と言われたことがあって。商品のアイデアやイメージを形にして、販売にたどり着くまでを一貫して携わることができるのは、やっぱりやりがいがありますね」
「社員も50人ほどで小規模なので、裁量を持って仕事ができている実感があります。興味のある人は、ぜひ話を聞きに来てほしいです」
太田さんのように県内出身で働く人もいれば、県外から移住して働く人もいる。
そのひとりが、十川(そごう)さん。入社8年目で、開発チームでマネージャーを務めている。製造管理チームと、日々連携をとることになる立場だ。
もともと、九州でやきものを販売するお店に勤めていた十川さん。次第に自分でものづくりをすることに興味が湧き、瀬戸にある陶磁器の訓練校で学んで、中外陶園に入社した。
「入社するときに、有給や産休、移住を応援する制度について丁寧に説明してくれて。若い人を積極的に採用しているし、不安をクリアにできました。安心して働けそうだなと思ったんです」
働いてみて、どうですか。
「社員の年齢層が広いので、親戚の家みたいな安心感がありますね。切磋琢磨しながらも、決められた期間内にきちんと成果が出せるよう、みんなで工夫していこう! って気持ちで働いている人が多いです。オンオフ区切りがつくので、生活と仕事のバランスが取りやすいですね」
休みの日には、市内の工房を借りて陶芸をすることもある。
「いろんな作家さんが身の回りにいるので、そういうのが好きな人は楽しめると思います」
「瀬戸には市民農園もあるので、畑を借りて野菜を育てています。移住してきた若い人がお店を始めることも増えているので、遊びに行ったり。いろんな人とつながることができて、楽しいですよ」
昨年末から進めているのが、中外陶園のブランディングプロジェクト。十川さんも推進メンバーのひとりとして参加している。
「今年で創業73年を迎えて。100年企業になるためには、どこを変えてなにを残していくのか。社員を中心に考えていこうって提案してくださったんです」
「今は、5年後に会社としてどんな姿でありたいかを話し合っています。それぞれチームに投げかけて、一人ひとりの意見を拾い上げながら、具体的なビジョンやミッションをあらためて考えている最中です」
ブランドの売上目標を考えたり、知名度アップのためにホームページやSNSを見直したり。
新しく入る人も、まずは普段の業務に慣れつつ、興味があればプロジェクトに参加してほしい。
「自分の仕事が売上や会社の発展にどうつながっているのか。先のことまで、考える癖がつきました」
「ときには社長に相談をするときもありますが、基本的に社員主導で進められるのは楽しいです」
デザインから製造まで、社内にすべての部門があるという利点を活かして、他部署と密に連携できるのも中外陶園のよさだと思う。
世代交代をしながら、常に考えをアップデートしていく。歴史ある瀬戸の地に根を張りながら、のびのびと働いているような印象を受けました。
平面から始まるイメージを、商品としてかたちづくるまで。誠実かつ真摯なものづくりができる仕事です。
(2024/06/05 取材 田辺宏太)