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食と文化と人
すべてが溶け合う
ここでしかできない宿

福井県小浜市(おばまし)。

若狭湾と山に囲まれたまち。古代では「御食国(みつけくに)」と呼ばれ、京都に豊かな海の幸を届けてきました。

酒粕を餌にして育った「小浜よっぱらい鯖」や、身の引き締まった「若狭ふぐ」など。若狭湾で獲れる海産物はもちろん、山からの澄んだ水で育った美味しいお米や野菜など、豊富な食材が揃っています。

そんな小浜市で、地元の人とともに地域の魅力を発信している宿があります。

昨年オープンした、「若狭佳日(わかさかじつ)」。

今回はここで働く料理人と、サービススタッフを募集します。

経験がなくても大丈夫。地域の人と季節の手仕事にいそしんだり、料理やサービスを考えたり。地域に根を張り、まちの人たちと一緒に小浜の魅力を伝えていく仕事です。

 

上野駅から新幹線と電車を乗り継ぎ、約4時間。小浜駅に到着した。

東京からは遠いけれど、京都や名古屋、神戸からは車で2時間ほどで、アクセスもいい。

車でさらに15分ほど走り、阿納(あのう)と呼ばれる漁村に向かう。

阿納は、穏やかな内海と青々とした山に囲まれた小さなむら。

ここで暮らす18世帯のうちなんと14世帯が民宿を営んでいる。多くの家庭が民宿をしながら、魚の養殖や梅の栽培もしているんだそう。

まちには、昔ながらの瓦屋根の宿が軒を争うように建ち並んでいて、迷路みたいで面白い。

なかでも一際立派な門構えの宿が、若狭佳日。

本館の入り口には、若狭湾をイメージした深緑色の暖簾がかかっている。

本館、離れ、別館など、全部で5つの棟が集まってできていて、部屋数は全部で13部屋。

部屋からは、若狭湾が一望できる。

「元々、小浜は京都にハレの日の食材を送っていた地域。この場所も、特別な日を過ごしてもらう場所にしたくて、『良き日』を意味する『佳日』という言葉を使って、若狭佳日という名前にしたんです」

教えてくれたのは、若狭佳日を運営する株式会社まちづくり小浜の代表、御子柴(みこしば)さん。

以前は農林水産省でキャリア官僚として働いていたそう。小浜に出向した後、1度は東京に戻ったけれど退職。小浜に移住した。

「出向が終わって東京に帰ってきたときに、小浜の豊かさと東京での生活にギャップを感じてしまって」

豊かさ、ですか。

「小浜は、古くから京都や奈良に海の幸を届けて発展してきたまちなんです。都から持ち込まれたいろんなお祭りや文化が、いまも生活に根付いている」

「仕事もそうで。東京での仕事はハードル走のような感覚。すでにゴールが決められていて、そこに向かっていかに早く辿り着くかを競っている。でも、小浜での仕事はレゴブロックみたいで。小浜の資源や魅力、人々の想いを積み上げて型をつくっていく感覚なんです」

昨年オープンしたばかりの若狭佳日も、いろんな人の想いや小浜の歴史が積み上がってかたちになったもの。

「ここは、閉業した地元の旅館をリノベーションした宿なんです。地域の人たちから、『この場所を空き地にしたくない』、『地域を引っ張っていく場所にしたい』っていう声が上がって。その想いに応えようと、この宿ができました」

地元の人たちとまちづくり小浜、地元の銀行が共同で出資して、株式会社阿納という新しい会社を設立。株式会社阿納が施設を保有して、まちづくり小浜が宿の運営を担っている。

「地域の人が『困ったことがあればなんでも言いなよ』って、よく宿に顔をだしてくれるんです」

立ち上げたばかりで人手が足りないときは、ほかの民宿の人が代わりに魚を捌いてくれることも。最近も「おすそわけ」と、地域で育てている山椒を大量にいただいたそう。

若狭佳日では、地元の人との交流を楽しんでほしいと、若狭佳日に泊まりながら、夕食はあえて地域の民宿で食べるプランも販売。ほかにも、地元の人たちによるカヤック教室をお客さんにおすすめするなど、地域の人たちと密接に関わりながら、まち全体を盛り上げる拠点になっている。

とはいえ、若狭佳日も民宿も同じ宿。お客さんを取り合うことにはならないんでしょうか。

「阿納地区の民泊は、大体1泊1万円前後。一方で、若狭佳日は1泊4万円くらいなんです。ターゲットを変えることで、今まで小浜に来たことのなかった新しいお客さんを呼び込むきっかけになっています」

実際、若狭佳日での宿泊を通して「若狭ふぐ」や「若狭ぐじ」など、地元の食材を知ってもらったり、小浜の観光地を巡ったり。

若狭佳日で泊まったお客さんが「次は民宿に泊まってみたい」と話すこともあるのだそう。

「『初めて行ったけど、まちがすごく良かった』って口コミに書いてくれる人も多くて。まだ1年目ですけど、思った以上の波及効果を実感しています」

「この場所を、地域の魅力を本当に発信していく宿にしたいと思っていて。この宿や、まちづくり小浜の取り組みを通じて、小浜を一流の観光の目的地にしたいと思っているんです」

 

続いて、話を聞いたのは料理長の飛山さん。

ちょうど夕食の仕込みの真っ最中。すこし時間をつくってもらい話を聞く。

「今日も朝からセリに行ってきたんですけど、とってもいい魚が手に入って。今の気分は最高です!」

福井出身の飛山さん。専門学校を卒業後、京都、東京、北海道で日本食やフレンチの経験を積んできた。

30歳になるのを機に「地元で仕事がしたい」と福井県に戻り、昨年から若狭佳日で働いている。

「小浜の魅力は、やっぱり圧倒的な海の幸。すぐそばに海があって、季節によっていろんな魚が獲れる。水も綺麗なのでお米も美味しいし、野菜もいいものがたくさんありますよ」

小浜は、古くから京都に塩や海産物を運んでいた地域。京都へ続く道は鯖街道とも呼ばれていた。

「朝はセリにいって、直接漁師さんたちと話をします。話をしていると、俗に言われている旬とは違うものが実は旬だったりする。見聞きしたことを活かして、お客さんに今一番美味しいものを、いい状態で食べてもらいたいと思っています」

「たとえば、今朝仕入れたのはメカチキントキっていう魚。市場の方も、『なかなか見ないよ』って話していて。捌いて食べてみて、どうやったら一番いい形で提供できるか、キッチンのメンバーと話し合いました」

メカチキントキは、美しい赤い皮が特徴の魚。その見た目と味を活かすため、皮をさっと湯引きして炙ったお刺身にすることに。

「毎日食材と対峙して。どう料理するかを考えるのは楽しいですね。それがお客さんにもちゃんと伝わって、美味しいとか、こんな魚あるんだねとかって喜んでもらえるとうれしい。朝からセリに行ってよかったなって思います」

若狭佳日の調理場はパートを含めて6人で、20〜30代の若い世代が中心。新しく入る人とも、年齢や経験にかかわらず、一緒に食材を見て、提供の仕方や見せ方について考えていきたい。

「人手不足なので、新しい人が来てくれるとありがたい。経験がある人はもちろん歓迎ですけど、学校を出たばかりとか、お店で働いたことがない方でも、料理を仕事にしたい思いがあるなら、きっと楽しくやれるんじゃないかな」

「下積みというか、決められたものをただひたすらやり続けるのってしんどくなっちゃうし、飽きますよね。ここでは、一緒に食材を見に行ったり、自分で発想してそれを形にしたりすることが若いうちからできる。早い段階から自分の発想を活かしたいっていう人にはすごくいいと思います」

料理人の世界といえば指導が厳しいイメージがあるけれど、若狭佳日の調理場の人たちは、真剣に食材と向き合いながら、明るくのびのびと働いている。

調理場とホールスタッフのコミュニケーションが密なのも、印象的。

「お客さんと一番近くに接しているのは、ホールのスタッフ。反応とか声を伝えてくれるのも彼らなんです。一方で、ホールスタッフも料理のことを聞けたほうがより良い接客ができる」

飛山さんが料理長になってからは、夕食の前にホールとキッチンのメンバーでミーティングをしたり、ホールスタッフが仕込みを手伝ったり。スタッフ同士の交流の機会を積極的につくるようにしている。

「食材との距離も近いし、生産者の人の懐が深いのが小浜の魅力。こっちが興味を持てばなんでも教えてくれるし、協力してくれる。30歳で料理長をしていると、若いって思われて相手にしてもらえないこともあるけれど、ここではそんなことは全然なくて」

今年は、近所の人が育てている梅を一緒に収穫して、それでつくった梅干しを料理に使う予定。漁師さんに実際の漁の現場を見せてもらう予定も入っている。

地域のひとたちとつながって、そこで見聞きしたことを活かして料理をつくる。この地域だからこそつくれるものがあるんだろうな。

 

続いて話を聞いたのは、小浜で生まれ育ったという、サービススタッフの森松さん。福岡の大学を卒業後、地元に戻ってきた。

「小浜はご飯も美味しいし、人もいい。めちゃくちゃいいまちなんです。その魅力がちゃんと伝わればもっと活性化すると思っていて。若狭佳日がその入口になればと思っています」

地元のおすすめスポットを伝えたり、この地域で暮らす人々の生活について話したり。宿での接客が、小浜に興味を持ってもらうきっかけになる。

「この地域って、堅苦しい雰囲気よりもあったかい接客が合うなと思っていて。基本は親戚のおじさんと喋るくらいの距離感で、なるべく自然体で接するようにしています」

宿の口コミを見ていると、「おもてなしが素晴らしい」「接客や食事など、これ以上は望みません」など、お客さんの満足度がとても高い。

「僕も含め、サービススタッフ全員が素人なんです。土台がないので、どうやったらお客さんに満足してもらえるか、みんなで考えながら試行錯誤し続けています」

たとえば、チェックインの方法。最初は通常通りフロントでやっていたけれど、混雑してお客さんを待たせてしてしまうという課題があった。

いろんな方法を試した結果、部屋の中でチェックインをすることに。

プライベートな空間でゆっくり落ち着いた接客ができるようになり、お客さんにも好評なんだそう。

「今は部屋ですけど、いろいろやっているうちにまた変わるかもしれない。素人の集団だからこそ、当たり前にとらわれずに、お客さんにとって何がいいかを柔軟に考えられるのが、うちのいいところかなと思います」

森松さんは、どんな人と働きたいですか。

「ここで働いていると、地域の人と接する機会がすごく多いんです。地元の酒屋さんがお酒を持ってきてくれたり、民宿での食事にご案内したり。地元の人とのコミュニケーションを楽しめる人に来てもらいたいですね」

 

みなさんのお話を聞いたあと、実際に宿に泊まらせてもらいました。

夕食は、鯖街道の歴史イメージした椀物や、鯖寿司など小浜の食材を活かしたコース料理。

目の前で静かに波打つ若狭湾を見ながら、この地で採れたお魚や野菜をいただく。接客や食事を通じて、この土地でしか味わえない豊かさを感じました。

目の前のお客さん一人ひとりに向き合って、まちの魅力を伝える。

宿での地道な積み重ねが、まちづくりにつながっているんだと思います。

(2024/6/18 取材 高井瞳)

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