チョコレートの欠片を口に入れると、ふわっと広がるカカオの香り。
ザクザクと歯応えを楽しんでいると、フルーツの風味がしたり、ハーブのように爽やかだったり。Minimalのチョコレートは、カカオと砂糖しか使っていないとは思えないほど、それぞれの味わいが豊かで個性的です。
さらに、多種多様なスイーツやドリンクも生み出し、チョコレートという食べものの可能性を追求しています。
産地を直接訪れてカカオ豆を買いつけ、自分たちの工房で豆からチョコレートをつくり出す。「Bean to Bar」のチョコレートブランドとして、Minimalは今年10周年を迎えます。
提供しているのは、チョコレートを知り、味わうことによる「体験」。
板チョコレート専門店から、カカオとチョコレートのコースを楽しむレストランまで。業態の違う4店舗を展開し、チョコレートが生み出す表現の多様さを伝えています。
今回は、各店舗のスタッフとパティシエを募集します。
チョコレートに限らず、食全般への興味関心が高い人や、一つの会社にいながら多様な経験を積みたい人なら、日々楽しめる環境だと思います。
代々木公園駅から歩いて5分ほど。
多くの車が行き交う山手通り沿いを歩いていると、坂道の途中に「Minimal富ヶ谷本店」を見つけた。
オープン数時間前の朝8時。
お店の一角で話を聞いたのは、代表の山下さん。
「いつも自分でコーヒーを淹れて、チョコレートを食べてから家を出るのが日課なんです。でも今日はコーヒー豆がなかったんで、ちょっと物足りない気分ですね」
10年前、まったくの未経験からチョコレートの世界に飛び込み、Minimalを立ち上げた山下さん。
「チョコレートって本当に多様なんですよ。板チョコレートとしてそのまま食べるのはもちろん、ケーキにもドリンクにも、いろんな表現ができるじゃないですか。僕が最初にチョコレートをおもしろいと思ったのはそこなんです」
「しかも、苦手な人があまりいなくて、愛されている。10年やっていてもまったく飽きないし、日々いろいろな発見があります」
Minimalでは、各店舗に『チョコレート×◯◯』のようなテーマがある。
板チョコレートの食べ比べができ、イートインメニューが豊富な「富ヶ谷本店」。ガトーショコラとコーヒーのペアリングが特徴の「代々木上原店」。
工房併設で、パティシエがその場でつくるスイーツを味わえる「祖師ヶ谷大蔵店」に、コース形式でカカオとチョコレートを楽しむ「麻布台ヒルズ店」。
新商品も常に開発していて、合計すると年に30〜40の商品が入れ替わりで店頭に並ぶ。
「せっかく全部都内にあるんだから、同じようなお店を増やすよりも、チョコレートのいろんな側面を体験できるほうが、お客さんは楽しいと思うんです。2軒ハシゴする人もいるし、気分や用途によって使い分けもできる」
手土産にはガトーショコラを。自分へのご褒美に季節限定のパフェを。誰かとの特別な時間にチョコレートのコースを、というように。
「チョコレートの表現を増やしていけば、お客さんの役に立てる場面が増えていく。生活のなかにMinimalがあることで、なんだか豊かになっていると感じてもらえたらうれしいです」
それは長い目で見れば、Bean to Barのチョコレートを楽しむ文化の醸成にもつながっていく。
働く人たちからすると、店が変わったらまた一から覚えるという大変さがある反面、同じ会社にいても飽きることがない、とも言える。
「全部同じにしないもう一つの理由は、人にあわせて店をつくりたいからなんです。店舗ってあくまで人なので」
たとえば代々木上原店は、バリスタ出身の店長の入社をきっかけに、コーヒーに力を入れることに。5種類ほどのコーヒーを常備し、ガトーショコラとのペアリングを提案している。
「個性豊かな人たちが、溢れんばかりの個性を表現したらこうなりました、っていうほうがおもしろい。それが店舗になるってすごくいいと思うんですよね」
「自分の言葉でお客さんと喋ってほしいから、マニュアルも必要最低限です。お客さんと会話しながら、逆に教えてもらうこともあると思う。そうやって、お客さんと一緒にお店の雰囲気をつくっていってほしいと思っています」
そんな姿勢を体現しているのが、ここ富ヶ谷店の店長代理の木村さん。
「味見してみますか?」
一番人気の水色のパッケージ「’Arhuaco(アルアコ)」をいただく。
「これはコロンビア産のカカオで、ブドウやヨーグルトみたいな爽やかな印象です」
たしかに、フルーツが入っているような香りがふわっと口に広がる。
普段食べ慣れているチョコレートの甘さとは、まったく違う新鮮な味わい。
「チョコレートって、口に入れると溶ける、滑らかなイメージがあると思うんですけど、Minimalはカカオが中挽きだったり粗挽きだったり、ザクザクした歯応えが特徴です。食感によって味わいの出方も変わるんですよ」
富ヶ谷店ではこんなふうに、会話をしながら板チョコレートを食べ比べて、お客さんにフィットする商品を提案していく。
スタッフも毎朝試食をして、どんなふうにお客さんにその味を伝えるか、みんなで言葉を出し合っている。
「少し前には、ご自身の香水の香りに合うチョコレートがほしい、というお客さんもいらっしゃいました」
香水、ですか。
「香りを確かめながら、これは合う、合わない、と一緒にチョコレートを選んでいって。食べものと香水の相性っていう、普通なら交わらない組み合わせを楽しめるのはおもしろいですよね。チョコレートってもっと自由に楽しんでいいんだよって、私たちからもどんどん発信していきたいなと思います」
「コーヒー豆をお土産でくれる常連さんには、お返しで特別に普段とは違う豆で淹れたコーヒーを出してみたり。柔軟に、お客さんに合わせた接客をしていきたいと思っています」
木村さんは入社3年目。以前はコーヒーショップで働いていた。
「コーヒーのイベントにMinimalが出店していて、そこで初めて食べたんです。味わいも食感も新鮮で衝撃を受けて。実際に店舗に行ってみました」
「いろんなフレーバーを試食させてくれて、スタッフの方も楽しそうに詳しく話してくれて。嗜好品であるコーヒーと、Bean to Bar のチョコレートは楽しみ方が似ているなと思いました」
そんな原体験をもとに、今は自分が提案する側として、お客さんとのコミュニケーションを日々楽しんでいるんだな。
隣で聞いていたスタッフの荻野さんも続ける。
「Minimalのホームページを見ると、情報量も多いし、『すごくこだわりがあってハードルが高そう』って思うかもしれません」
「でも、お店に来てもらえば、みんなめちゃくちゃフレンドリーで話好き。まちの喫茶店やケーキ屋さん、みたいなイメージで、地域に愛されるお店でありたいと思っています」
前職は大手アパレル企業でCSRの部署にいた荻野さん。社会貢献の観点から、Minimalに興味を持ったのがきっかけだった。
「食べておいしいのはもちろん、これを買えば世の中にちょっといいことができる。そんな気持ちになる商品って素晴らしいなと思って」
「働きはじめたら、カカオ農家さんに実際にお会いする機会もあって。生産者さんとの距離がすごく身近に感じられるんです。自分たちの仕事が本当にこの人たちのためになるんだって、真剣に楽しみながら取り組んでいる会社ですね」
「入ってくれたらブランドを好きになってもらう自信はある」と話す荻野さん。
いつか自分のお店を持つために経験を積みたい、という気持ちで、山下さんたちとともにブランドを育ててきた。
入社8年目の今は、販売サービスチームのマネージャーと、「Minimal The Specialty 麻布台ヒルズ」の店長を兼務している。
「Minimalのすべてを体験できる」とうたう麻布台ヒルズ店は、全店から商品を集めているほか、チョコレートを使ったコース料理が特徴。日本国内から選りすぐったお茶やお酒とペアリングし、全8品を提供している。
カカオ豆を食べるところからはじまり、カカオパルプからつくられたドリンクなど、ここにしかないチョコレート体験を味わうことができる。
「食に関心のあるスタッフが多いので、いろんな食との接点が生まれるこの仕事をみんな楽しんでいます」
「お客さまにも、バリスタやバーテンダー、調味料をつくっている方もいて。Minimalのチョコレートの魅力をお伝えしながら、お客さまからも教えていただくような気持ちで接客しています」
今回、木村さんや荻野さんのように、店長や店長候補となる人からの応募も歓迎する。
最近は、チームリーダークラスのメンバーが、週に一度集まる研修をはじめたそう。
たとえば店舗であれば、目的を持ってお店を訪れてくれるお客さんを増やすために、どんなラインナップの商品を置くべきか、どんな頻度で入れ替えるべきか。どんな声かけやPRをするのか。
意見を出し合いながら、個々の裁量に任せていたことを体系的に整理し、よりよいお店をつくるためのガイドをつくっている。新しく入る人でも業務に取り組みやすい環境が整いはじめていると思う。
「リーダークラスに限らず、日々よりよくしていこうっていう想いはスタッフみんなが持っているように感じます」
「みんなでお店をつくっているので、自分が主役っていう気持ちで動いてほしい。それぞれの店舗でも、毎日振り返りと改善をテーマにコミュニケーションをとる時間は大事にしています」
代表の山下さんも、言葉を重ねる。
「店舗って、ひとつの小さな会社みたいなもので、ここにすべてが詰まっている。どこの仕事よりクリエイティブなんです」
販売接客はもちろん、マーケティングもプロモーションも、コスト管理も、マネジメントも。ステップアップしていくことで、できることがどんどん増えていく。
とくに、成長途中で変化の多いMinimalだと、より実感できるはず。
「僕たちって、新しい体験をお客さんに提供しているんだと思うんですよ。チョコレートのプロダクトを通した体験で、どうお客さんを豊かにするか」
「だから、情熱とか好奇心とか、自分がこれ楽しいなって思うワクワク感がないと、お客さんには届かない。自分なりの気持ちの源泉を持って、仕事に臨んでもらえたらと思います」
チョコレートについて話をするMinimalのみなさんは、すごく生き生きしていました。
このチョコレートについて伝えたい、語りたい。まず自分自身がワクワクしているような気持ちが手に取るように伝わってきました。
日々単調、という言葉が似合わないのがMinimalです。常に新鮮な気持ちで、商品やお店と向き合っていくなかで、自分自身も成長できる環境だと思いました。
(2024/6/24取材 増田早紀)