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人と人をつなぎ
企業と森をつなぐ
心ひらく自然のなかで

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

岐阜・石徹白(いとしろ)。

富士山、立山と並んで、古くから山岳信仰の対象となっている白山の麓にある小さな集落です。

降った雪が溶けて、雨が集まり、川になって下流に流れていく源流の村として、水とともに暮らしてきました。

今回は、森づくりを起点とした企業の社会貢献活動を担当するプロジェクトマネージャーを募集します。

「NPO法人やすらぎの里いとしろ」に所属して、まずは現場の活動に参加するところから。地域や企業の人たちとの関係づくり、プロジェクトの進行管理、予実管理などを担います。

地域に根ざし、人とのつながりを大切に生きていきたい。自然豊かな土地で子育てをしたい。そんな人にはぴったりな環境だと思います。

 

岐阜県の北西部に位置する石徹白。

名古屋から電車・バスを乗り継いで、郡上八幡駅まで2時間半。

そこから車で山道を1時間ほど走り、集落の入り口にあるオフィスに到着した。

「自然が豊かで、お年寄りから子どもまでみんなが顔見知り。子どもたちが育つ環境として、すごくいい場所なんです。みんな石徹白の暮らしが好きで住んでいます」

そう話すのは、NPO法人やすらぎの里いとしろ理事長の平野さん。岐阜市出身で、上京して働いた後に石徹白に出会い、移住した方。

1960年には約1300人いた人口が、現在では約200人にまで減少している石徹白地区。

その状況に危機感を持った地元住民が、恵まれた自然環境での交流を通して、石徹白の歴史や文化を後世に残すための団体として、NPO法人やすらぎの里いとしろを設立。

その後、全戸出資による小水力発電、子育て世代の移住促進など、20年以上にわたって地域づくり活動に取り組んできた。平野さん自身も、地元の人たちとともに活動の中核を担っている。

「この15年で移住者が増えてきて、今では移住世帯だけで約40人いるんですよ。廃校寸前だった小学校には12人、保育園には7人の子どもたちが通っています」

「移住には一定の手応えを感じていますが、先々を見据えると、石徹白で働く場所を増やしていきたいんです。NPO法人やすらぎの里いとしろは、これまでは地域住民がボランティアで関わる場でした。今後は雇用を生むことができる組織にもしていきたいと思っています」

今回の社会貢献活動は、愛知に拠点を置く半導体の研磨材メーカーとの出会いがきっかけだった。

「研磨材の製造に使っている地下水は年間で1600万トンほど。事業に欠かせない地下水を自然に返そうと、拠点が集中する岐阜で、水源林の環境を保全する活動を始めようとしていました。その活動パートナーとして、私たちに声をかけてもらって」

「一つの地域とじっくり関わりを持ちながら生まれる社会貢献活動をしたいと。その想いに共感して一緒に活動をすることを決めました」

半導体研磨材世界シェアナンバーワンの会社と小さな源流の村がタッグを組んで始まった「Water Offset活動」。使った水を自然に返そうとさまざまなプロジェクトが生まれていく。

活動内容は大きく分けて3つ。

一つ目は、未来の水を守る森づくり。皆伐跡地において森の再生を促進するために、笹を除去して広葉樹の森づくりを推進している。植える木々の苗は外部から購入せずに、石徹白地区内で種や稚樹を採取して、育てるところから行うなど、石徹白の地域にあった植物を選定。

森づくりを通じて水源地の自然環境を守り、安定して地下に水を供給する土壌を育て、豪雨による土砂崩れや河川の氾濫リスクの軽減につなげることを目指している。

次に、結(ゆい)の作業と呼ばれる公共活動。石徹白の住民による農業用水路の掃除や、水の神様を祀る白山への登拝道の清掃などに、社員がボランティア活動として参加する。

最後に、石徹白の水で育った農作物を味わう農業体験を通じた交流活動。名産品のトウモロコシを収穫したり、田植えから稲刈りまで米づくりをして、餅つきをしたり。冬の雪遊び体験を通じた交流は、豪雪地帯ならではの環境と水の源である雪を体感する機会にもなっている。

2020年から始まった活動は、今年で5年目を迎える。

今年度は毎月2、3回の頻度でイベントを実施できた。

「コロナで活動の制限もありましたが、この5年で社員と家族のみなさんが石徹白に通ってくれるようになっています。社員の皆さんと一緒に収穫したトウモロコシも、1200人いる全社員にお届けできました。人のつながりが少しずつ生まれてきたなと感じます」

これからは地域との接点をさらに増やして、地域と企業のみなさんが、お互いにとってよかったと思える活動へと発展させていきたい。

「石徹白では2メートルくらい雪が積もるので、建物に板を当てて雪囲いをつくるボランティア活動があります。大きい板を立てるので、お年寄りだけでは大変な作業なんですが、今年は社員さんが手伝ってくれました」

社名の書かれたジャケットを着用して作業を手伝う社員の姿を見て、住民が感謝の声をかけてくれることも。これまでになかった光景がまちに生まれ始めている。

3つの活動を進めていく上で、具体的にどんなことをしていくんだろう。

社会貢献活動の事務局として活動しているのは、平野さんを含めて3名。そのなかで、森づくりに関わっている河田さんに話を聞く。

普段は東京で会社員として働きながら、岐阜との二拠点生活を送っている。新しく入る人にとっては身近な相談相手になってくれると思う。

「もともと岐阜出身で、平野さんたちが数年前に取り組んでいた郡上市のプロジェクトがきっかけで、二拠点生活をはじめました。コロナで自然と切り離されたときに、自然が近くにないと自分はしんどいことに気づいて。事務局の大西さんにその話をしたらWater Offset活動に誘ってもらいました」

「ここで仕事をしていると『川に遊びにいくけど、一緒に行く?』って誘われて、お昼休みに川にじゃぼーんって入ってまた働くみたいな。そういう暮らしと日々の生活が両立できる場所って、岐阜でもなかなかないと思います」

基本的には、プロジェクトの窓口となる社員や森づくりの専門家と打ち合わせをして、次回の活動日に向けて準備を進めていく。

「たとえば森づくりの活動では、森のどんぐりを拾う日があります。社員さんに案内する資料をつくって参加者を募り、活動日が近づいてきたら、参加人数を集計して、当日の天候をもとに参加者の皆さんに持ち物をアナウンスしたり、当日は裏で進行をサポートしたりもします」

ほかにも、住民向けの活動報告会の開催や、年間の予算作成、予実管理を担当している。

5年かけて活動内容は固まってきたので、まずは今のサイクルを引き継いで、安定的にプロジェクトを回していってほしい。

活動に関わりはじめたとき、大変なことはありましたか?

「今までずっと、平野さんと大西さんの2人が事務局として活動されていたので、自分が入るイメージを持つのにちょっと時間はかかりました。どの段階から仕事を引き継いだらいいんだろう、みたいな。まずは平野さん、大西さんと話して、関係をつくることからですね」

「次の活動に向けていつまでに何をするか、表には見えないいろんな調整があって。伝え方とか、調整の仕方とか。あとは2人が大切にしているポイントをちゃんと聞くことが大切です」

河田さんは、石徹白とのつながりをこれからも保ちつつ、自分自身が健やかでいられる関わり方を模索しているのだそう。

「石徹白に来るようになって感情を表に出すことが増えました (笑)。自然豊かな環境だし、何よりみんなが素直なんですよね。反対意見があれば正直に伝えるし、伝えても良いと思える信頼関係がある。私が石徹白に通い続けたいと思う理由の一つです」

 

石徹白に住み、暮らしていく上で、苦労はなかったのだろうか。

そう伝えたところ、「この人に話を聞くといいんじゃないか」と紹介してもらったのが斉藤さん。

やすらぎの里いとしろの理事であり、困ったときにも相談に乗ってくれる方。

10年前の日本仕事百貨の記事で、地域おこし協力隊として石徹白へ。任期後そのまま定住した。

普段は石徹白洋品店で働いて、週に1回、石徹白小学校で英語の先生を務めている。

「息子のことをみんなが知っているような場所です。それをあたたかいと思うか、わずらわしいと思うかは表裏一体ですけど、地域全体で見守ってくれている安心感があって、いいなって私は思います」

なにか苦労したことはありますか?

「住民のみなさんが地域おこし協力隊の活動を知っているわけではないので、何をしているかわからないと思われることもあって。『あれ、私ってそんなに必要とされていなかったのかな』って思ってしまうことも最初はありました」

「だけどみなさん、『協力隊の人』ではなくて、『私』という人に対して接してくれて、それがすごくあたたかい。辛いこともあったけど、それでもここの暮らしが好きだし、石徹白に住むおじいちゃん、おばあちゃんの精神を受け継いでいきたいなって思っています」

石徹白のまちを歩いていると、子どもたちがお年寄りと話す光景をたびたび見かける。

はじめて来たけど、どこか懐かしい。人のあたたかみを感じる場所。

最後に平野さんはこう話してくれました。

「まずは来てくれた人と一緒に、Water Offset活動を安定的に運営していきたいです。将来的な展開は、来てくれた人によって変わっていくと思います。今取り組んでいるメンバーとの化学反応が起きて、新たな未来が生まれるといいな」

「だからまずは石徹白を好きになってもらって。一緒に活動に取り組みながら、将来的にはご本人の関心があることを活動にしてもらえたらうれしいです」

 

小さな源流の村で生まれる人のつながり、豊かな水源林が未来まで残っていく。

心をひらく石徹白の暮らしのなかで、自分の携わる活動がいつの間にか社会貢献になっている。

その手応えをここでは味わえると思います。

(2024/09/25 取材 櫻井上総)

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