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最良の日に、ふたりで交わす指輪。
結婚指輪は人生のなかでも忘れられない贈り物です。
手仕事の温度がある、洗練された指輪は、どんな年代や国籍の人の指にもすっとなじむ。
株式会社PERCHは、デザイナーである北條さんが2014年にたちあげた「YUKA HOJO」に加え、新しく「birds」というブライダルリングのブランドを中心に展開している会社。
直営店はなく、国内30店舗、香港と台湾にそれぞれ1店舗ずつ取扱店があり、海外向けのオンライン販売の準備も進めているところです。
今回は、生産管理・営業企画を担うスタッフを募集します。
指輪の検品出荷から、オンラインストア運営や年に数回のイベント出店での接客販売、SNSの投稿や商品撮影など。
小さなチームだからこその、まずやってみる大胆さと、繰り返しの業務のなかから小さな気づきを見つける繊細さ。その両方をあわせ持つ仕事です。
顔の見えないふたりの幸せを思い、心を尽くせる人。そこに自分のやりがいや豊かさを重ねられる人にはぴったりの仕事だと思います。
東急田園都市線の用賀駅で降り、歩いて13分ほど。緑が多い住宅街を歩いた先に、PERCHのアトリエがある。
アトリエのなかにも緑があり、大きな窓からの光が心地いい。
迎えてくれたのは代表の北條さん。婚約指輪、結婚指輪といったブライダルリングを25年つくり続けてきた方。
「この仕事は天職というか、私の仕事なんだなって思っています」
「限界を感じたり、もう無理かもって何度離れても、この仕事に戻ってきちゃう。これは自分の役割なんだなって」
大学進学に挫折し、幼いころからキラキラ光る宝石を見ることが好き、ということを手がかりに、週1回の彫金の習い事から、ジュエリーの専門学校、指輪の製作工場、さまざまなブランドの立ち上げなど。
ブライダルリングの道をどんどん進んでいった。
最初に入った指輪の工房では、ブライダルリングのデザインを任され、年間数百もの新作のデザインを手がけた。
「10年くらいフリーランスで仕事をして、もうブライダルリングはやり切ったと思ったんです。辞めたら、ほかの会社からブランドの立ち上げをやらないかと声をかけていただいて。その後もいくつかのブランドの立ち上げにも携わりました」
「立ち上げては離れる、を繰り返して、あとはもう自分のブランドを立ち上げるしかないって思ったんです」
ブランドをつくるに至ったきっかけは、もうひとつ。
「恵まれてはいるけれど、自分の人生が思うようにいっていなくて、いつもモヤモヤしていたんです。それで『YUKA HOJO』を立ち上げる前、しっくりこないものを全部やめました。全部手放したら、やりたいことしか残らないんじゃないかって。仕事も、プライベートも、全部」
「さぁ、今日からどうやって生きていこうという状態を1回つくりだして(笑)。自宅でウクレレのワークショップを開催したりしながら、自分の身体には何が入っているんだろう、何ができる人間なんだろうと、内側へ内側へ目を向けていきました」
そんな自問自答のなかで、「YUKA HOJO」のコンセプトや指輪が生まれていった。
会社の理念で、『YUKA HOJO』のブランドコンセプトにもなっているのが“Light inside you.”。
「一番美しいものは、あなたの心の中にある。そんなメッセージを届けるために、指輪をつくっているんです」
CADを使うことが多くなっている今、PERCHが届ける指輪の原型は手作業でつくられている。
自然なゆらぎ、軽やかな着け心地。手仕事から生まれるものを大事に、感じて経験したものを形にする。
「完璧な人生も、完璧な人もいないじゃないですか。ゆらいだり、迷ったり、へこんだり。でもだからこそ美しいと思っていて」
「ブライダルリングって愛のシンボルなので。指輪をつけるふたりの人生や気持ちを込められるものでありたいんです」
手作業での型づくりは、0.01ミリといった細やかな世界での精緻さが求められる。型をつくるための道具からつくることもあれば、歯科医で使う器具など、本来の用途でないものを使うことも。
そして指輪の形の一つひとつには、名前とストーリーが添えられている。
見せてくれたのは、“CURRENT”と名付けられた指輪。
「『流れ』という意味の指輪です。出会う前は同じ空の下、お互いの存在を知らずに暮らしていて、離れたところで流れているふたつの人生が出会って、1つの大きな流れになる。今度はふたりでつくり出すパワフルな流れが幸せな場所につながるように、と。形、名前、ストーリーがつながっています」
どんな想いが込められたものなのか。北條さんの言葉ひとつをとっても、大切に考えられていることが伝わってくる。
「最初一人ではじめた会社も、だんだんとスタッフが入ってきてくれて。家族や友達といる時間よりも長い時間を、会社で過ごすことになるじゃないですか」
「一生ではないかもしれない。けれど、ご縁あってうちのアトリエという木に集まったメンバーがいたから生まれるもの。それをみんなでやれたらいいなと思ってはじめたのが、もう一つの『birds』というブランドなんです」
2023年11月にデビューした「birds」は、今育てているところ。
「ブランドの立ち上げのときは、これからの人たちの幸せとかについてスタッフみんなでよく話しました。話して、手を動かして。3年かけてつくったブランドです」
そう話してくれたのは、スタッフの古宮さん。営業と生産管理、SNSに投稿する写真の撮影・投稿などの広報も担当している。
アパレルの販売、アクセサリーの会社を経て、3年前にPERCHへ入社した。
「ひとりでも生きていけるけれど、ふたりでいるのってなんでだろうと考えて。『birds』のロゴには、飛ぶ2羽の鳥がいます。まわりに風を生み出して、お互いを押しあって、助け合うように飛んで、その翼で大事な人を温めることもできる」
「自由な空で、一緒にいることを選ぶ。そんなふたりの気持ちや決意に寄り添えるものにしたいと思うんです」
「YUKA HOJO」のコンセプトは、心の内側に目を向け、ひとの内面の美しさを伝えるブランド。イエローゴールドなど温かみのある素材を使い、シックなテイストのものが多い。
一方で「birds」は軽やかに、自由な空に飛び立つようなイメージでつくられている。指輪もプラチナなど透明感のある素材を使い、ツヤがある印象。
PERCHで働いているのは、古宮さん含め2名の社員と3名のアルバイト。どんなふうに働いているのだろう。
「今は、新しいダイヤの商品と指輪ができたので、その運用マニュアルや仕様を決めています。マニュアル用や『birds』のInstagramに投稿するための写真を撮ったりしていて。けっこう忙しいですね」
「幸せなおふたりに関われる幸せな仕事だなと思います。その反面、一生に一度のお買い物に関わることなので、どれも重要で、緊急度も高い。緊張感もある仕事ですね」
PERCHの仕事の基本となるのが、検品業務。
原型を社内でつくり、サンプルと商品となる指輪の製造は外部の工房に委託している。工房では手作業でつくられるため、磨きの具合で表面の凹凸がなくなってしまったり、空気の穴が入ってしまうことも。
サイズや刻印、傷、表面のデザインの確認などは、2名のスタッフでダブルチェックを必ず行う。1回の検品で済む場合もあれば、10回ほど工房との間を行ったり来たりすることもあるそう。
「1人で黙々と作業するというよりは、みんなで検品の基準について話あって、よりよくしようと試行錯誤しながら行なっています。自分の業務だけに集中したい人にとっては大変かもしれません」
「流れ作業の感覚でするんじゃなく、繰り返すことで小さな違いに気づく。それがアトリエ全体の改善につなげられることもあると思うんです。」
チェックシートを自分たちで改良したり、管理方法を変えたり。小さいチームだからこそ、柔軟にやり方を変えながら前に進んでいける。
検品と聞くと地味な仕事と思うかもしれない。けれどその先には、指輪を心待ちにするお客さんがいて、それぞれの人生に寄り添っていくものになる。
目の前のことを細やかに見る目、遠くの人をイメージする目の両方があると楽しんで働けそう。
最後に話を聞いたのは、萱沼(かやぬま)さん。生産管理とスタッフの出勤管理などの総務的な仕事に加え、「birds」のリングの原型づくりも手がけている。
「4年前働きはじめたときは、ちゃんと検品して納品するってことしかできない状況で。そのころほかのメンバーも検品の仕事が多すぎて、夢でも検品してたって話していましたね(笑)」
「当時から体制も変わって、原型づくりとかはじめて任される仕事がたくさんありました。石橋を叩きながら進む私に、北條さんは『もう少し考える前に行動してみればいいよ』って。自分の殻を破りながらやっている感じですね」
会社としては、「birds」のブランドを広めていくこと、海外、とくにアメリカ向けのオンライン販売とヨーロッパでの展開をスタートしようとしている。
「みんなの心の深いところにある、愛にまつわるストーリーを形にしているので、どこの国の人も共感できると思っています。Instagramやホームページで海外からのお問合せもいただいてきましたが、これまではお断りをするしかなくて」
ただ販売するだけでなく、今の取扱店と同じようにサイズ直しやメンテナンスといった購入後のアフターケアも行いたい。貿易のこと、法律のこと、専門家の意見を聞きつつ進めている。
新しく入る人も、はじめての試みを楽しめる人だといい。こういう企画をしてみたいというアイディアと、やり遂げる意欲を持った人に来てほしいとのこと。
取扱店さん、お客さん、社外の専門家など、多くの人とコミュニケーションをとっていく必要がある営業企画の仕事と、検品・納品をする生産管理が基本の業務。そこからのプラスα分を創造的につくっていってほしい。
「取扱店は土日も開いているので、私は土日休みで、古宮さんは火水休み。出社が3日しかかぶらないこともあって、情報の共有や引き継ぎは密にしています」
「仕事では密ですが、会社の人間関係はさっぱりしているので、そこは安心してきてほしいですね」
最後に、北條さんがこんなことを話してくれた。
「なんというか… 塩梅がわかる方がいいと思っていて」
塩梅?
「人の心の機微みたいなのがわかるのが重要だと思うんです。たとえば店頭で私たちの想いを伝えて下さるお店の方たち、作って下さる職人の方たち、みなさん一人ひとり個性があって、一生懸命やってくださっている人ばかりなので、敬意を持って接する」
「シンプルなことなんですけど、それを大切にしてほしいなと思います」
遠くのふたりに。そして、一緒に仕事をする近くの人にも。愛と誠意を伝えていくような仕事だと感じました。
好奇心があって、自分のなかにチャレンジしたい気持ちを持っている人。そんな人にとって、このアトリエという木は心地いい場所だと思います。
(2024/10/21 取材 荻谷有花)