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持続可能な未来のために
両立させたいこと
エントランスは湖畔で

人間の社会活動は、すべて地球上の資源を利用して成り立っているもの。企業が自然を顧みずに成長を追い続ければ、いずれ資源が枯渇して、崩れてしまいます。

働いていても似たような感覚になるときがあります。

成果を出すために、友だちとの時間や睡眠時間を犠牲にするなど。一方だけを疎かにして得るものは、長い目でみると続いていかない。

経済も社会も、仕事も暮らしも。両立してこそ、豊かな未来につながっていく。

今回紹介する仕事は、そんな姿勢に共感して働きたい人にピッタリです。

長野県小海町。

八ヶ岳の麓にあって、冬は湖が全面結氷するほど冷たいです。

2025年春、松原湖の入り口にあるロッジを改修して、ホテルがオープンします。

単に泊まってもらうのではなく、ホテルや自然の中での体験を通して、心身の変化、環境への配慮、働き方などに気づき、持続可能な社会に向けてアクションを促すというコンセプトです。

手がけるのは、事業プロデュース会社さとゆめ。今回は、SXを体現するホテルのオープニングスタッフを募集します。

一からサービスを設計していくので、宿泊業での経験があると働きやすいと思いますが、必須ではありません。

新しい宿泊業の形を築いていきます。

 

東京から北陸新幹線あさまに乗車。1時間ちょっとで長野県佐久平駅に着く。

そこから小海線に乗り換え、40分ほど南下すると小海駅。

東京からのアクセスはよさそう。

さとゆめの方が迎えに来てくれて、車で10分の松原湖へ。

6月に入ったばかりなのに、もうひぐらしが鳴いている。

標高はおよそ1100m。

湖のまわりを木々が囲っていて、その先に八ヶ岳をはじめとした山々。

澄んだ空気が気持ちいい。湖のまわりを案内してもらうことに。

「この葉っぱ、よかったら嗅いでみてください」

勧めてくれたのは、さとゆめ長野支社長の浅原さん。

嗅いでみると、ちょっと甘さもありつつ、スッキリと鼻に気持ちよく入ってくる香り。

「ダンコウバイっていう植物で、いい匂いでしょ? 形も恐竜の足跡みたいで面白いよね」

ほかにも、ヘビがそり立ったときのような形をした植物がいたり、葉っぱの中心に小さな実がついたものがあったり。クロモジの茎を少し削るといい香りがすることも教えてくれる。

植物に触れたり、小川に足をつけたり、生き物の鳴き声に耳を傾けたり。

森の中を歩くうちに、リラックスしていくのがわかる。

小海町では、そういった森の癒し効果を活用して、企業向けのヘルスツーリズム事業に取り組んできた。

立ち上げから関わってきたのが浅原さん。湖畔のワーケーション施設であらためて話を聞く。

「2016年ごろから小海町の創生に関わってきて。はじめはまちづくり会議のファシリテーターを担っていました」

松原湖や白駒の池など豊かな自然に恵まれた小海町。一方で、都心からのアクセスがいいこともあり、日帰りの人が大半という課題があった。

まちを残していくために、小海の強みと方向性について話し合う。

「長野県はすでに観光客の方でいっぱいなんですよ。軽井沢、上高地、善光寺とか、同じマーケットで観光客を取り合っていても、すでに有名な場所と勝負するのは難しいよなって思って」

「あと、僕が信濃町で15年ほど、B to Bの森林セラピー事業を担当していた経験があって。それで、小海町でも展開することにしたんです」

名前は、「憩うまちこうみ Re・Designセラピー」。

自然を活かしたプログラムを通じて、本来持っている心と身体の健康を取り戻すことを目指した。

案内役となるセラピストは、専門的な講義や実技講習を通じて、正式にセラピストとしての認定を受けた小海町の住民たち。

まちのブランディングとともに、地域の雇用も生み出してきた。

現在は25社の協定企業がいて、新人研修や管理職研修向けのプログラムを提供している。

今回は、新たにホテルをオープンさせるとのこと。どんなお話から始まったんですか。

「2年ぐらい前かな。宮本屋っていうロッジが閉業するということで、さとゆめに相談をもらって。場所は、松原湖の玄関口。ここが朽ちて幽霊屋敷になってしまったら、観光自体がダメになってしまう。どうにかホテルを再興させてほしいという内容でした」

「でもいざホテル事業をやるってなったとき、僕自身、全然モチベーションが湧かなかった」

そうなんですか?

「やらなきゃいけないが先行していて、『自分がやりたい』になってないじゃないですか。ホテルを残したいだけなら、さとゆめよりもホテル専門企業に任せたほうが理にかなっている」

「僕らがやる意味について悩んでいたとき、たぶちゃんが『小海SX Field』を提案してくれました。言われたときに、それじゃん!と。やりたいって素直に思えたんです」

 

となりで聞いていた、たぶちゃんこと田房さんが話を続けてくれる。

さとゆめに入社して4年目。小海町には入社したときから関わってきた。現在はプロジェクトマネージャーとして関わっている。

「建物を点だけで捉えるよりも、小海町全体で捉えたほうが事業が拡がると思って。ここでは、SXを” Sustainable Experience, for Sustainable Transformation.” と捉えているんです」

通常、Sustainable Transformationの略として呼ばれているSX。その意味は、「企業の持続可能性と、社会の持続可能性を両立させること」。

それに対して、田房さんが定義したSXは「持続可能な体験の先にある、持続可能な社会への変革」。

「ここですぐに変化を促すというよりも、泊まって体験したことを持ち帰ってもらって、意識や行動の変化につながるような。そんな場所にしたいと思っています」

さとゆめは、「ふるさとの夢をかたちに」をミッションに掲げ、全国各地で地方創生に取り組む会社。

これまでにも、村をまるごとホテルに見立てた「NIPPONIA 小菅 源流の村」、JR東日本との共同事業「沿線まるごとホテル」など、地域の課題に対して、ユニークなアイディアで事業を生み出し、貢献してきた。

小海町で事業が成功すれば、似た課題を持つ地域でも導入することができる。

さとゆめとしての意義も合致し、本格的に事業が進むことに。

客室は7部屋。

そのうちの6部屋から松原湖を望むことができる。

空間のつくりは、明確に役割が分かれていて、カフェ・レストランは滞在者が交流を楽しめる、にぎやかな空間。そのほかは、草木が揺れる音や生き物の鳴き声に集中できたり、湖をボーッと眺められたり、自然の中に溶け込んでいくような設計で進めている。

内装には植物由来の素材や廃棄材を使用。また、滞在中の二酸化炭素排出量や使用電気量を見える化するなど、社会に対しての気づきも持って帰ってもらえる仕掛けを散りばめていく予定だ。

まずは自分たちがSXを体現する。そして訪れる人にも、気づきを持ち帰ってもらい、企業や個人の変化を促していく。

「いろいろな要素を複合的に体験できる場所なので、新しく入る人は湖畔やまち全体をフィールドに活躍してもらえたらと思います」

サービス設計、アメニティの準備、スタッフの採用・育成といった業務はもちろんのこと、まちのセラピープログラムとの連携をはじめ、地域住民を巻き込んだプログラム開発もゆくゆくは進めていきたい。

湖底でお酒を熟成している業者さんもいるとのこと。地域と深く関わることで、より事業は面白くなっていくはず。

 

現在、田房さんは一時的に小海町に住まいを借りている状況。

工事が落ちつき次第、岡山に戻るので、ホテルの立ち上げから運営まで関わるマネージャーと、サービススタッフを小海町で採用。新しく入る人は、その人たちと一緒に進めていく。

ただ、宿泊業は未経験。そんなとき、専門的にアドバイスをしてくれるのが谷口さん。NIPPONIA 小菅 源流の村の立ち上げから関わり、いまは支配人を務めている。

小菅村からオンラインで話を聞かせてもらう。

「都会で働いていると、ふと立ち止まって、このままストレス過多な時間を過ごしていくのかなって思うときが、節目ごとにあると思っていて」

「都会で培ってきたスキルを地方に還元できないかとか、地方に移住して暮らしの豊かさを見つめ直したいとか。そういう人にはすごく合うんじゃないかと思います」

谷口さんは、新卒で会員制のラグジュアリーホテルに入社。

職場はお台場で、歩いて数分のところに住んでいたそう。

「5年ほど過ごしてみて、接客の仕事は好きだったんですけど、人工的な暮らしが好きじゃなかったんです」

思い切って仕事を辞めて、オーストラリアに移住することに。

「向こうでは地元のトライアスロンチームに所属して。朝3時ぐらいに起きて、まずはプールに行って泳いで。そのあとバイクを漕いで、練習を終えたらアルバイト先に行くみたいな」

「休日にバルコニーで朝食を食べていると、全然知らない人が話しかけてきてくれることもあって。当たり前のように助け合ったり、関心を持ったりするのが、すごくいいなと思って」

宿泊業という好きな仕事と、オーストラリアで見つけた好きな暮らし。

日本に帰国した際、見つけたNIPPONIA 小菅 源流の村の求人が、ピタリと重なった。

ホテルの立ち上げ経験は一からだったと思うのですが、実際どうでしたか。

「相当しんどかったですね。小菅の場合は、さとゆめで取り組む初めてのホテル業だったのでみんな右も左もわからず。夜中叫んで起きる、みたいなこともありました(笑)」

チェックインからチェックアウトまで、お客さんの滞在シーンをすべてイメージしてつくりこむ。食事内容やアクティビティはどんなものがいいだろうか。

「ホテルのコンセプトを一本の串でつながるようにする必要もあって。考えては壊してをたぶん半年ぐらい繰り返したと思います。そこは難しかったですね」

たとえば道の駅はホテルのショップ、温泉施設はホテルのスパ、など。村全体をひとつのホテルに見立てて運営している、NIPPONIA 小菅。

いまでは、住民が村を案内する「小菅さんぽ」や、村の人みんなで祝うウェディング事業など、さまざまな広がりが生まれている。

自身が経験したことを積極的に還元したい、と谷口さん。

新しく加わる人とは、オンラインツールを通して、何かあれば相談に乗る形。また、月に2回ほど面談を行う予定だ。

どんな人が向いていると思いますか。

「安定感とか安心感が大切だと思っていて」

最初のホテルで働いていたときに、上司から『いいホテルマンはどういう人だと思うか』と質問された谷口さん。

とにかくお客さんを感動させられる人、と答えたそう。

「そうしたら、違うって言われて。『常に、一定以上のサービスを提供できる人が一流のホテルマンなんだ』と。自分の回答に自信を持っていたので、それがすごく衝撃的で」

「でもたしかに、ホテルをつくりあげていくうえでは外しちゃいけない要素だなって、強く意識するようになりました」

安定するためには、どんなことを心がければいいんでしょう。

「健康的なご飯を食べて、ちゃんと睡眠もとって。家族とも良好な関係を継続して、自分自身にも適度にご褒美を与えて。仕事の時間だけ着飾ろうとしても、長い目で見るともたないんですよね」

 

企業と社会の持続可能性を目指す、SX。

大きな言葉ではじめはあまり自分ごとになっていなかったけれど、谷口さんの仕事と暮らしの関係を聞いて、腑に落ちたというか、より身近に感じることができました。

ほんとうに大切なことを意識しながら、日々取り組める環境だと思います。

(2024/06/06 取材、2024/11/18更新 杉本丞)

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