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スタッフみんながバイヤー
お客さんが欲しいものを
とことん追求する料理道具店

バターをふわふわに削ることができるスライサーや、ゆで卵の殻がするっと剥けるエッグピーラーなど。

いつもの料理がもっと楽しくなる。そんな道具が揃う「飯田屋」。

8500種類もの料理道具を取り揃え、世界中からお客さんが集まる人気店です。

今回は浅草のかっぱ橋道具街の店舗で働く販売スタッフを募集します。

大切にしているのは、売ることではなく、喜ばせること。だから、売り上げノルマもなければ、決まった接客もありません。

目の前のお客さんに対して、心からおすすめしたい。そう思える商品だけを素直に販売しています。

販売の経験や料理の知識はなくても大丈夫。全員がバイヤー権限を持っているので、商品の仕入れや、商品開発にも携われます。

お客さんや一緒に働くスタッフを大切にしたい。そんな想いを持つ人に知ってもらいたいです。

 

東京・浅草にあるかっぱ橋道具街。

家庭用からプロ向けのものまで、飲食にまつわるすべてのものが揃う専門店街だ。

数あるお店のなかでも、「料理道具の聖地」と呼ばれ一際賑わっているのが飯田屋。

店内は商品がひしめき合っていて迷路のよう。見たことのない料理道具が沢山あって、ワクワクする。

おたまのコーナーには、1ccごとに大きさの違うものがずらり。0.1ccから2000ccまであり、左利き用のものも含めると1000種類もあるんだそう。

どんな人が使うんだろう、と眺めていたら、代表の飯田さんが声をかけてくれた。

「ラーメン屋の店主さんが買ってくださることが多いんです。うちのスープのタレは14ccが一番美味しい!という人もいれば、うちは19ccがいいとか。要望に応えているうちに、取り扱い数が世界一になりました(笑)」

店内を歩きながら、軽快に商品のことを教えてくれる。

「全部で8500種類の調理器具を揃えています。ご家庭のお客さまから、ミシュランの星付きレストランのシェフまで。世界中からいろいろな方が飯田屋に足を運んでくださるんですよ」

どうしてこんなにたくさんの商品があるんでしょう。

「すごい数ですよね(笑)。年に1個しか売れない商品もあったりして。それでも過剰なほどに在庫を持っているのは、お客さまにうそのない商売をするためなんです」

うそのない商売、ですか。

「たとえば、キャベツの千切り用のスライサーが1種類しかなかったら、お客様の好みに関わらずそれを売るしかない。でも、お客さまによっては、フワフワな食感が好きな人もいるし、シャキシャキした硬い食感が好きな人もいる。スライサーひとつとっても、人それぞれどんなものが喜んでいただけるかは全然違うと思うんです」

好きな食感や、つくりたい量によっても、選ぶべき道具は変わってくる。

お客さん一人ひとりにピッタリくる商品を提案するため、飯田屋ではキャベツの千切り用スライサーだけで20種類以上を揃えている。

「僕たちのゴールは、ただモノを買ってもらうことだけではなくて。家に帰って商品を使ったときに、どれくらい喜んでもらえるか。『いい買い物ができた』って思ってもらえる瞬間を沢山つくっていきたいんです」

自分たちの仕事を「喜ばせ業」と語る飯田さん。だからこそ、飯田屋では売り上げノルマを設定していない。

商品の仕入れ方も、飯田屋ならでは。アルバイトも含めスタッフ全員がバイヤー権限を持っていて、それぞれが商品を仕入れることができる。

「飯田屋では、お客さまの顔が浮かぶものを仕入れるようにしています。自分の判断で、これは売れそう! と思って仕入れたものより、実際に接客するなかでお客さまが欲しいと言っていたもののほうが、圧倒的に人気が高いんです」

「だったら僕だけが仕入れるよりも、実際に接客をしているスタッフ全員で仕入れたほうがいい。10年以上前からこの方法をとっています」

スタッフはそれぞれ300万円から2000万円の予算を持つ。その予算を使って、自由に商品を仕入れたり、商品開発をしたりすることができる。

「飯田屋は、いい人が、いい人のまま働ける組織でありたいなと思っていて」

「最初はいい人でも、働く組織の雰囲気や考え方によって、いい人のままじゃいられなくなる職場っていっぱいあると思うんです。以前の飯田屋がまさにそれで。僕自身が売り上げばかりにとらわれて、会社の経営も組織の運営もまったくうまくいかなかった」

転機となったのは、10年ほど前にあった社員の集団離職。

辞める理由を問うと、一人の社員から「あなたと働きたくないからやめる」と言われた。

「恥ずかしい話、なんでも人のせいにしていたんです。売り上げがあがらないのも、社員が働かないからとか、景気が良くないからとか。どん底まできて初めて、自分に原因があるんだって」

お客さんの笑顔や感謝の気持ちなど。一番大切なことをないがしろにしてしまっていたことに気づいた。

そこで、大事だと思うことをやり続ける仕組みをつくろうと、売上ノルマを撤廃。さらに営業時間を1時間短縮して、朝晩30分間、チームのみんなとお互いの仕事に対して感謝をし合う時間を設けた。

日々の積み重ねで組織が変わり、10年間で離職者は0人。売り上げも以前の10倍ほどに。

「目に見えない大きなことをしたいという人よりも、家族や一緒に働く仲間、そして目の前のお客さま。手が届く範囲の人間関係を大事にしたいと思っている人と一緒に働けたらうれしいです」

 

お店を一通り見て、3階の事務室へ。入社10年目になる田代さんから話を聞く。

事務室の一角には、大量の料理道具がずらり。スタッフで集まって販売している道具を試したり、家に持ち帰って使ったりしているんだそう。

「最初から料理道具に興味があったわけではなくて。仕事を探しているときに、社長の『喜ばせ業』という言葉を知って、まさにそれがやりたいことだ! って思ったんです」

車が好きで、ガソリンスタンドなどで働いていた田代さん。日々の仕事は面白かったけれど、新しいことに挑戦したいと思っているタイミングで飯田屋を知り、入社した。

「本当に喜ばせ業だなと思いますね。目の前のお客さまが喜ぶためなら、何時間もかけて調べごとをしたり、取り寄せをしたりできる。一人のお客さまが求めている商品を見つけるために、半年かけたこともあるんですよ」

半年も!

「以前、ホールケーキを一度にカットする道具がほしいと相談をいただいて。いろんなメーカーを探したんですけど、いいものが見つけられず、半年かけて商品を開発しました」

「もちろん、お客さまが求めているものをいつも提供できるわけではないんです。でも目の前のお客さまのために、気兼ねなく時間をかけられるのは幸せなことだなと思います」

そんな田代さんが最近力を入れているのは、オリジナル商品の開発。

今は、竹の素材でつくった菜箸を手がけている最中。メーカーがある熊本まで出張に行き現場の職人さんと話したり、パッケージを考えたり。ゼロから商品開発に携わっている。

「今ある木製の菜箸って、ちょっと太くて女性には持ちづらいんです。なので、もう少しだけ細くできたらと思っています。あとは、ツルツル滑る食材も掴めるように加工したり。手に取ってくれる人が心地よく使えるように工夫を詰め込んでいます」

販売にとどまらず、ものづくりにまで携われるのも飯田屋で働く魅力。

「バイヤーもするので、メーカーの方との交流も多いです。商品への想いやこだわりを直接聞いて、日々の接客でお客さまに伝えたり、お客さまの反応をメーカーの方に伝えたり。どちらからも喜んでもらえるのはうれしいですね」

田代さんはほかにも、お店のオリジナルTシャツをつくったり、「旅する料理道具屋」という移動式の販売店を企画したりするなど、アイディアを活かしていろんなことに挑戦している。

新しく働く人も、自分の得意なことや独自の視点を活かして活躍してほしい。

「社長は、やってみたいことはどんどんやってみなって言ってくれる。みんなが自分の興味や得意なことを活かして挑戦しているから、失敗しても大丈夫だっていう安心感があります」

「ちなみに、うちには『2万回ルール』っていうものがあって。同じ質問は2万回までしていいんです。だから新しく入る人も、遠慮なくなんでも聞いてほしいなって思います」

業務の幅が広いぶん、覚えることも多い。でも田代さんのように優しく教えてくれる人がたくさんいるから、安心して仕事を覚えていけると思う。

 

「料理道具を買いにくるお客さまって、あんまりわるい人がいないような気がするんです。誰かのために料理をつくってあげたいっていう人が多いからなのかな」

そう話してくれたのは、12年目の薮本(やぶもと)さん。

柔らかな物腰と豊富な知識で、「薮本さんから商品を買いたい!」というファンも多いそう。

「お客さまと話していると、こんな道具の使い方もできるんだって、発見が多くて楽しいですね」

「最近だと、薬味専用のおろし器を大根おろしに使うといいと教えてもらいました。水っぽくなっちゃうので、大根おろしには向かないなと思っていたんです。けど、汁を飲みたい人にはそれがちょうど良いらしくて。なるほどなあと」

サンプル品を家に持ち帰り、実際に試すことも多いという薮本さん。お客さんの声を聞いたり、自分で使ってみたりすることで、お客さんへの提案の幅も広がっているんだな。

「ポップを考えるのも好きなんです。自由に書かせてもらえるので、遊んでいますよ」

イラストや、映画のパロディー、謎めいた言葉など。なんだろうと足を止め、思わずクスッと笑ってしまうものが多い。

「売り場で接客をしながら、ポップを見ているお客さまの近くで聞き耳を立てています(笑)。最近は『商品と一緒にポップをください』って言ってくれる方もいて。反応を間近でみられるのはやっぱりうれしいですね」

10年以上、飯田屋で働き続けてきた薮本さん。どんな人と一緒に働きたいですか。

「うちはテレビに取り上げてもらうことも多くて、華やかなイメージを持たれることも多いんです。でも、基本は立ちっぱなしだし、寒い日に外で作業をすることもある。日々の接客やお店づくりなど、小さいことを積み重ねていく仕事だと思っていて」

「そういうことが好きで、ちょっとした発見や目の前の人のうれしそうな姿を見て喜べる人だったら、すごく楽しいと思います」

 

バイヤーも、商品開発も、品出しも、接客も。

飯田屋での仕事は、すべて誰かを喜ばせることにつながっている。

それってすごく、気持ちのいい働き方だと思います。

(2024/12/19 取材 高井瞳 )



2/14(金)には、飯田屋6代目飯田結太さんをゲストに迎え、しごとバーを開催します。

飯田さんのこれまでの歩みから、働く人を大切にする職場づくりの考え方など、飯田屋を深く理解するためのお話しを伺います。

よろしければぜひ、ご参加ください。

「離職率0。活き活きと働ける 料理道具専門店の組織論」

(2024/12/19 取材 高井瞳 )

 
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