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東京建築PLUSは、商業店舗の内装・施工管理をしている会社。
事務所のとなりには、自分たちが運営する本屋があって、定期的にイベントも開いています。
どうして建築に携わる会社が、別の業態である本屋を営んでいるのか。
それは、事務所を開放してみたら面白いのではないか、という理由から。
ほかにも役職に応じてフレックス制を取り入れていたり、スタッフ一人ひとりにクレジットカードを渡して、経費精算はそのカードでできるようにしたり。
既存の運営方法にとらわれず、工夫しながら進んできました。
そんな環境で働く、施工管理スタッフを募集します。未経験の方も歓迎です。
今いるスタッフのほとんどが未経験から始めました。決められた納期のなかで円滑に工事が進むように、設計者や職人とコミュニケーションをとりつつ、空間をつくっていきます。
東京建築PLUSの事務所は文京区にある。
最寄りの駅は都営三田線の白山駅で、近くには小石川植物園や東洋大学。人のにぎわいはありつつも、落ち着いた雰囲気のまち。
駅から3分ほどで、青いタイルが印象的なビルに着いた。
ビルの2階に、東京建築PLUSのオフィスと、彼らが運営する本屋「plateau books」がある。もともと精肉店だった場所を自分たちでリノベーションした空間だ。
基本は土日が営業日。ときおり社員さんが店番をして平日にお店を開けることもある。
光と影のコントラストがはっきりと感じられる空間。窓からたっぷりの光が差し込み、静かで気持ちのいい時間が流れている。
代表の中里さんも、落ち着いた雰囲気を持つ方。
「前回取材いただいたのが、1年半ぐらい前ですかね。2023年はポツポツ案件があって。馴染みのあるお客さんからお声がけしてもらって、ほどよい1年でした」
「ただ、昨年は案件を受注することが少なく、落ち着いた年でしたね」
これまでは、個人の設計事務所に営業することが多かった東京建築PLUS。
近年の建築資材高騰を受けて、施工費もアップ。お互い納得できるような予算に調整するのがむずかしく、昨年からは新たなお客さんの開拓に力を入れ始めている。
「学校法人やクリニック、商業施設のテナントさんとか、出店者さんに直接営業をかけてみようと。営業会社と相談しながらターゲットを決めて、興味を持ってくれたお客さんに対しては、僕らが資料をもって直接説明しに行きました」
鞄やスキンケアのブランドなど、昨年末から案件の受注も増えてきている。
また、社員の新人教育も試行錯誤しながら取り組んできた。
「5年前に未経験で入ってくれた子がいて。それまでは経験者の人たちばかりだったので、教育体制を整えていなかったんです。でもそれだと大変なことも多い」
「いまは現場を動かす施工管理スタッフに、現場で起こったことを毎日社内に共有してもらっていて」
たとえば、搬入予定だった家具が入らなかったとか、急きょドアに鍵をつける必要が出てきたとか。それに対して、中里さんとほかの先輩スタッフがアドバイスをする。
ほかにも、各々現場で経験したことをもっと直接共有できるよう、月に一回勉強会をひらいている。
「私のやり方が全部正解だとも思っていなくて。ゴールが一緒になれば、そのルートは各々違っていていいと思うんです」
事務所のつくり方も、教育も、仕事の進め方も。
カチッと決めすぎず、常に模索して、可能性をひらいている感じがする。
次に話を聞いたのは、入社して5年目の林さん。
ものづくりに興味があって、もともと洋服の生地を売る仕事をしていた。自分の手でものをつくる職人に惹かれ、東京建築PLUSに入社。
施工管理の仕事は、お客さんとの打ち合わせから始まる。
要望をもとに予算を決め、施工図に落とし込み、施工図ができあがったら、電気や水道、左官屋など、各分野の職人を手配。そのあとは現場に入って進行管理を担う。
「東京建築PLUSでは、工事が始まる前の段取りはとくにめっちゃ考えるんです」
「設計者さんにいただいた図面を見て、現場で起こりそうなことを考えます」
事細かに書いてある図面もあれば、少し抽象的な図面もあるという。
たとえば、丸みを帯びた特注家具のテーブルを作成するとき。
角の丸みはどれくらいをイメージしているのか。事前に職人さんにお願いして、角の部分を3パターンほど用意し、設計者さんのイメージとすり合わせることもある。
「いきなり当日の現場で問題が起こると、職人さんの士気が下がりますよね。わたしは電動工具とかも使えないので、職人さんにやってもらうしかない。そのために事前に解決策を用意して伝えるようにしています」
100パーセント予測通りに進めるのはむずかしいけれど、前もって考え、準備しておくことで、大きなトラブルを避けることができる。
一般的には細かいことを決めてから進める施工会社が多いなかで、東京建築PLUSでは、工事のなかで動きながら考えていくことが多い。
あらかじめ考えているからできることもあるし、東京建築PLUSのように臨機応変に動けば、お客さんや設計者の一番新鮮な考えを反映していきやすい。
「ひとりが2〜3つの現場を並行して担当する会社さんが多いなかで、うちの会社は、ひとり1物件が基本なんですね。わたしはそれがすごくいいなと思っていて」
「お店を出すって、個人のお客さんだと人生の一大イベント。それを忙しなく進めて片手間になるのはイヤだなって。だから一つずつ集中してできるのはいい環境だと思います」
工事期間は小さな現場でおよそひと月。大きな現場であれば、2〜3ヶ月ほど。さまざまな人と長く付き合って仕事を進めていくので、関係性を丁寧に築きながら働きたい人には面白いと思う。
入社して2年目の長谷川さんも、関わる人のつながりに魅力を感じて働いている。
印象に残っている現場について聞いてみると、ある飲食店の話をしてくれた。
「オーナーさんが『自分で壁を塗装したい』っておっしゃって。なので、その間だけお客さんに現場をお渡ししたんです」
直接やりとりするなかで、どんな塗料がいいか相談を受けた長谷川さん。
「いつもは業者さんに依頼しているので、聞かれてもわからなくて。自分で調べたり、塗装屋さんに聞いたり。どういう塗料だとイメージに近い塗装になるのか、知るきっかけにもなりました」
「オーナーさん自身も、自分で塗る大変さとか、壁ってこうやって出来上がっていくんだとか、つくる過程を楽しんでいて。お客さんとひとつの空間をつくりあげた一体感が強くて、印象に残ってるんです」
前職では繊維系の会社で、スカーフや日傘などの女性向けファッション雑貨の企画・デザインを担当していた長谷川さん。ほかにも個人で依頼を受けてカーテンもつくっていた。
会社員として、もうすこし違う分野のことも経験してみたい。
個人の制作活動でも活きるような空間の仕事に興味を持ち、見つけたのが東京建築PLUSだった。
「やっぱり決まっていないことが多いので、いまだに悩む場面も多いですね」
「社内に相談してフィードバックを待っている最中に、職人さんたちから急かされることもあって。自分で判断できることがまだ少ないので、大変だなと感じることもあります」
また、商業施設に入っているお店などの現場では、営業時間外に施工するため、夜勤もある。そのため、体力も必要になってくる。
「ちょっと心配性ぐらいの人が、いいのかなって。それで休みのときは忘れて切り替える。それが私の理想でもあるし、今の目標ですね (笑)」
長谷川さんは、どんなところにやりがいを感じていますか?
「たくさんの人が関わって1つのものをつくるって、普通に生きていたらあんまりないと思うんです。設計者さん、電気屋さん、塗装屋さん。みんなを自分が順番につないで、つないで、やっと完成する。はじめから終わりまで関われるのは自分だけ」
「それは施工管理だからこそのやりがいだと思います。関わる人の喜ぶ顔を見ると、頑張ってやってよかったなって思えるんです」
最後に話を聞いたのは、2024年の4月に新卒で入社した矢作さん。大学では都市計画を専攻していた。
「都市計画では、街をどういう空間にデザインするかを主に考えていて。でも実際に手がけるのは構想している人ではなく、別の人たち。もうすこし小さいスケールで、一から空間づくりを考えて完成まで見てみたい。そう思って、施工管理の会社を探していました」
たまたま日本仕事百貨で東京建築PLUSの記事を見つけて応募した。
「選考の途中で、林さんと長谷川さんが進めていた現場を見させていただく機会をもらって。見るのと見ないのとでは全然違うなって。どんな人と働くのかも知れたので、そこは安心して入社できました」
入社後は、先輩の現場に同行して職人さんとのコミュニケーションや施工過程を学んだり、見積書のつくりかたなど、事務的な仕事を覚えたり。
この日は工事中に壊れてしまったドアの部品があったそうで、長さなどを測りながら、新たな部品を発注していた。
「これからは独り立ちに向けて現場に出ていくことも増えるので、不安はあります。でも、出来上がるところを見た経験がまだないので、完成に立ち会えるのが楽しみですね」
取材終わり、中里さんに今気になっていることを聞いてみると、ひとつは働き方だと教えてくれた。
「商業施設での工事は夜の9時からとか、夜間の作業になるんですね。今は1割ほどだけど、今後は3割程度になる予定で。そうなるとスタッフの負担にもつながりやすいので、もっといい働き方を考えていきたいです」
「あとは、会社の将来像ですかね。いまの形を続けていくと、こんな会社になる。ある程度想像がつくけれど、そのままでいいのかなとか」
長期的なビジョンをもって経営したほうが、違う方向に進めるかもしれない。
ほかのメンバーにも、会社のこれからについて聞いてみた。
となりで聞いていた林さん。
「そうですね。将来の話は普段から聞いていて。時々冗談で中里さんと話すのは、海外でも現場管理の仕事ができたら面白いよね、とか。一つひとつの目標がちょっとずつ形になっていったらいいのかなって」
続けて矢作さん。
「会社としてのビジョンをもつ必要性はまだ判断できないですけど、お客さんに対してのあり方のほうが大事というか。どうやったらいい空間だと思ってもらえるか。そこを大切にしたいですね」
東京建築PLUS のみなさんに取材をするのは、今回で3回目。
どの方も落ち着いた雰囲気で、何かを知ったり発見したりするのが好きな印象を受ける。
だからこそ、常に工夫していて、他人の言葉にもしっかり耳を傾けることができるのかもしれない。
この場所で、一つずつ考えて納得し、いい空間をつくっていきませんか。
(2025/01/07 取材 杉本丞)