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リノベーションタウンの
不動産キャラ求む

リノベーションタウンとして知られる、山梨県・韮崎(にらさき)市。

2018年に町のシンボル的存在として親しまれた名物ビル「アメリカヤ」がリノベーションによって復活を遂げてから、空き店舗を活用したショップやカフェのオープンが相次ぎ、その名が知られるようになりました。

今年の1月、その動きをさらに広げていくために、韮崎の経営者たちが手を合わせてまちづくり会社を立ち上げました。

会社の名前は、ニラサキヤ。そこで働くメンバーを募集します。

今年の4月には、地域内外から訪れる人の拠点として、アメリカヤのすぐ近くにガイドホテルをオープン。3年後には、市内にある集合住宅をまるごとリノベーションして「ニラサキヤVILLAGE」をつくる構想もあります。

最初はガイドホテルの企画運営・接客が中心にはなるものの、仕事内容は多岐に渡ります。

地域住民と関係性を築きながら、空き家や空き店舗を活用したり、すでにあるお店と協力して新しいサービスやアクティビティをつくったり。

不動産業界の経験があると働きやすいですが、必須ではありません。

最初の3年は地域おこし協力隊として地域に入り、任期後は正社員として採用され、そのまま働き続けることができます。

自分の経験を、地域活性化に活かしてみたい。そんな想いを抱いたことがある人、新たなチャレンジにワクワクする人なら、きっと楽しめると思います。

 

新宿から特急あずさに乗って1時間半。

八ヶ岳や南アルプスなどの山々に囲まれた登山口だからか、韮崎駅で降りる人たちは山の装い。

雪化粧のかかった山々が連なっていて、雲間から富士山も見える。

迎えてくれたのは、ニラサキヤでマネージャーを務める西田さん。

韮崎駅の駅前にある図書館や子育て支援センターを備えた市民交流センター内で、中高生のための拠点運営をしている。

それ以前も、釣り堀を居酒屋と併設した施設にリニューアルしたり、山梨で採れた野菜を東京へ集出荷配送するサービスを始め、140件ほどの農家と契約したり。韮崎で事業をつくる人として有名なのだとか。

「ぜひ、取材の前に韮崎を知ってもらえたら。ぐるっと一周するだけでも、30分もかからないので」と、車で案内してもらうことに。

市内の真ん中にある台地、七里岩には、NHK大河ドラマ「真田丸」のロケ地にもなった新府城跡が。さらに温泉マニアが選ぶ全国の銭湯で、全国3位に選ばれた韮崎旭温泉など。

「全国的に有名ではないけれど、ちょっと光る。そんな場所が韮崎にはあると思います」

「山梨県のなかでも、韮崎は最近盛り上がっているまちとして紹介していただくことが多くて。移住者も増えていて、この5年で新しいお店が30店舗ほど増えました。観光も暮らしもちょうどよく揃っていて、県外からだけでなく近隣の市からの移住も多いんですよね」

その火付け役となったのが、「アメリカヤ」。

1967年に商業ビルとしてつくられたものの、一度歴史に幕を下ろし廃ビルとなっていた建物。

韮崎の一級建築士事務所、IROHA CRAFT(イロハクラフト)によって2018年にリノベーションされた。

現在は複合施設として、オフィスやアクセサリー、雑貨など9つのテナントが入っている。コミュニティスペースではイベントも開催され、ここを目当てに外からやってくる人が増えた。

さらにアメリカヤの向かいにあった、築70年の長屋も「アメリカヤ横丁」としてリノベーション。

夜には灯りがともり、帰りがけに一杯飲もうと、人が集まってくる。ここもまた、話題を呼ぶことに。

「人が人を呼び、どんどんと新しいお店ができて、“1日楽しめるまち”にはなっている。次は宿泊できる場所をつくって、何度も訪れたい、暮らしたいと思えるまちにしていきたい。その想いから、ニラサキヤが立ち上がりました」

「ニラサキヤに出資したのは、全員が韮崎の人。みなさん年代は違いますが、韮崎高校出身の同窓生なんですよ。だから、韮崎の人たちによる、韮崎のための会社。一丸となって、これからまちづくりをしていく気持ちです」

 

アメリカヤに移動して話を聞いたのが、ニラサキヤの発起人で社長の岩下さん。電子・電気機器の製造会社で代表経験もあり、現在は商工会の会長も務めている。

「発起人と言っても、長くまちとして抱えていた課題を解決するために、最初に手を挙げただけで。ここ1年でさまざまな人に協力を仰いで、西田さんたちが集まってくれました」

ニラサキヤが立ち上がった経緯について、教えてください。

「アメリカヤができてから、韮崎でお店をしたいという方や、移住をしたいという方が増えてきて。商工会として行政と手を組みまして、空き店舗、空き家の大家さんと彼らとをつなぐ、いわば不動産屋のようなことをしていたんですね」

「ただ、役場も商工会も本職があり、手が回り切らない。業務を本格的に担うプレイヤーを置くべきだと考えたんです」

2024年当初から、民間と韮崎市、商工会の3者が連携をとりながらまちづくり会社設立の話し合いを進め、岩下さんを中心とした民間メンバーでできたのがニラサキヤだ。

ニラサキヤの事業は、ハードもソフトも行うローカルディベロップメント。メインとなるのは不動産と宿泊の大きく2つ。

岩下さんを含む立ち上げメンバーの多くは、経営側としてサポートに回っている。新しく入る人はプレイヤーとして、西田さん含むスタッフ2名と一緒に仕事を進めてほしい。

「日々まちの人から、空き家、空き店舗、公共空地など、ここを活用してほしいという声が届くんです。その情報からアイデアを膨らませて、自分たちで事業を生み出したり、活用してくれそうな人を誘ってきたりしたいですね」

近隣のお店やまちの人との関係性づくりも、大切な仕事のひとつ。

ガイドホテルとなる「ニラサキヤSTAY」は、暮らす人も、訪れる人も、誰もが気軽に立ち寄り、滞在ができる拠点。今年の4月にオープンしたばかりで、まちを楽しむための企画をこれから整えていく。

たとえば、まちを散歩しながらガイドしたり、宿を中心に食べ飲み歩きができるローカルチケットを発行したり。農業や登山の体験をセットで楽しめるプランをつくったり。

韮崎に来た人がまず立ち寄る場所にしつつ、さまざまな取り組みから、まちをガイドする役割を担えるようにしたい。

すでに開始が決まっている宿泊業を軌道に乗せていく最初の段階では、受付対応、清掃、予約管理など、現場の運営も担う。とはいえ不動産業がメインなので、型ができたら専属のスタッフを雇うそう。

並行して進めていくのが、3年後の完成を目指しているニラサキヤVILLAGE。

地域課題でもある老朽化した集合住宅を、住居やテナントが集う場所として一新し、新たなにぎわいをつくるエリアリノベーションを予定している。

建物のデザインや内装といったハード面だけでなく、どんな人が暮らし、その周りには何があるのかといったソフト面まで。一からつくっていく。

ニラサキヤVILLAGEができれば、住人として暮らすこともできるし、挑戦したい気持ちがあれば、ひとつテナントを借りてお店を開くこともできるんだそう。

「不動産とまちの窓口を組み合わせた事業なので、具体的な業務内容はまだ決まっていなくて。日々やることが変わると思っています。なんでも考えるのが好き、形にしていくのが好きな人だといいですね」

「大きな規模でまちづくりを手がけて、ダイレクトに自分の暮らしが豊かになっていく。構想から実装まで、行政や商工会とも手を取り合えるから、理想論で終わらず、現実に形にできる。これから加わる人も、安心して韮崎に来てほしいと思っています」

 

最後に話を聞いたのが、イロハクラフト代表の千葉さん。アメリカヤ復活の仕掛け人だ。

「アメリカヤは僕らにとって、高校時代からずっと目にしていた建物で。まちのシンボルなんです。空き家の状態をどうにかしたいと思ってリノベーションをしましたが、想像以上の反響をいただき、メディアに何度も取り上げていただきました」

千葉さんは、ニラサキヤ立ち上げの際の出資者のひとりで、不動産事業で主にサポートしてくれる存在。

「アメリカヤも、向かいにある横丁も、最初は不動産の情報にはまったく出ていなかったんです。ただなんとか大家さんを見つけて話をしてみたら、実はとても困っていた。韮崎にはそんな物件がたくさん眠っているはずなんです」

空いている物件を見つけても、買う人や借りる人がいないと成り立たない。千葉さんが発起人として誘致のために定期的に開催しているのが、商店街の空き店舗ツアー。

空き物件を巡ると同時に、すでに韮崎に移住・起業をして、事業を行っているリノベーション店舗を紹介している。

毎回、募集開始後すぐに40名ほどの定員が埋まる人気ぶり。他県の商工会職員も見学に訪れている。

「去年、2回目を開催して。ツアーに参加してくれた方4組が、宿から30メートルほどの範囲内でお店を開くことが決まりました。今、工事を進めている最中なんです」

「韮崎市は、移住や起業を支援する補助金などのサポートが充実していて。ツアーも、行政や商工会みなさんが企画をサポートしてくれます。市役所と商工会、そして民間企業が連携してウェルカムな姿勢であることが、安心してもらえる要因だったのかなと」

空き店舗ツアーは、これからも継続していく予定。これから入る人も、ときどきサポートとして参加することもある。

「兼ねてから、韮崎には不動産キャラがいないなって思っていたんです」

「まちづくりが賑わっている場所って、建築や不動産といえばこの人、とか、情報を発信するメディアみたいな存在があるんだけれど、ここにはいない」

これから来る人がそのキャラを担うことができれば、まちの活性化は2倍3倍と進んでいくはず。

「韮崎に暮らす人も訪れる人もチャレンジする人も。みんなが喜び合えるまちになってほしい。数年後に、韮崎がリノベーションタウンとして全国から注目を集めて、それがまた新たな人を呼ぶきっかけになっていたら、本当にうれしいです」

 

話を聞いたあと、実際の工事現場を巡るべくまちを散策。

宿から5分も歩かない距離に、工事中のお店が6件も。

イラストレーターさんのグッズショップに、東京の経堂から出店してくるというドーナツ屋さんなど。

韮崎は、暮らす人それぞれが想い描く暮らしを自らの手でつくっている。

その波に乗って、韮崎をおもしろくしてみたい人の挑戦を待っています。

(2025/01/17 取材、2025/06/04 更新 田辺宏太)

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