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泊まりたいホテルが
日本中に増えていく
調達ってどんな仕事?

先日、旅行でホテルに宿泊しました。

宿泊部屋にはベッドやテレビ、グラスやコーヒーカップ。広いレストランには数百もの椅子とテーブル。

一体この空間に、どれだけの人の想いと、どれくらいの時間が詰まっているのだろう?

そんなふうに考えてしまうのは、クロスリンクのみなさんの話を聞いたから。

クロスリンク株式会社は、ホテルづくりで「PA」と呼ばれる調達業務を担う会社。

オーダーメイドの家具や什器、アート、細々とした備品の一つひとつまで。ときには1万点を超えるインテリアアイテムを調達し、ホテル空間を形にしていきます。

今回は、「家具・什器」「備品」「アート」の各チームでスタッフを募集します。ホテルのオーナーやデザイナー、仕入れ先、開業後のホテル運営会社のあいだに立ち、プロジェクトが円滑に進むようにマネジメントする仕事です。 

数年かけてプロジェクトに取り組み、ホテルが完成したときの達成感はひとしお。熱意があれば、経験は問いません。

インテリアや空間づくりに興味がある人なら、「こんな仕事があるんだ!」と新鮮に感じられると思います。

 

クロスリンクのオフィスがあるのは、青山一丁目駅と乃木坂駅の真ん中あたり。

乃木神社の裏手にある、洗練された住宅街にあるビルの一室へ。

日当たりが良く、明るいオフィスおじゃまして、まず話を聞くのは、代表の紙透(かみすき)さん。

熱量を持って、どんな話もわかりやすく伝えてくれる。

アメリカ・フロリダのディズニーワールドで働き、本場のホスピタリティを経験した紙透さん。その後、熱海でホテルの立ち上げに関わる。

ホテルに宿泊に来た知人の紹介で、大手インテリアデザイン会社に就職したことから

PAの世界へ。

「そこで外資系のラグジュアリーホテルの案件を多数経験しました。今後日本では都市部だけでなく、地方にもラグジュアリーホテルが展開されていくと確信を持ったんです」

「自分でチームをつくって、日本の観光業の活性化に寄与したいという思いを持ちました」

独立し、クロスリンクを立ち上げたのは2013年。現在メンバーは、業務委託も含めて30人ほど。

スピード感のあるフレキシブルな対応が強みで、口コミから依頼が増え、手がける案件は徐々に大きくなっていった。

客室が100〜200室の大規模な案件を中心に、「ザ・リッツ・カールトン」や「パークハイアット」「エースホテル」など、誰もが知るようなホテルを多数手がけている。

そもそも、クロスリンクが担うPAとは、どんな仕事なんだろう?

たとえば私たちが新しい暮らしをはじめるとき、家具や家電、食器など一つひとつ選んで購入していく。

ホテルをつくるときも、必要なものを揃えるのは同じ。ただあまりに大規模なので、デザイン性、品質とコスト、納期、すべてを満たすにはプロの力が必要になる。

これがProcurement Agent、略してPAの仕事。

日本語に訳すと「調達代行」。ホテルのオーナーに代わり、最適なアイテムの調達に取り組んでいる。

「プロジェクトが立ち上がるのは、開業の3〜5年前。まずは図面などの資料をもとに、施設構成や規模、ホテルグレードに合わせて、概算予算を出すところからはじまります」

たとえば20億円の予算で合意した場合、その内訳を決め、備品一つあたりの数量や単価まで設定するという。

「その後1年ほどかけてモックアップとよばれる実寸の模型をつくります。倉庫のような場所に、パース通りに客室を再現するんです」

そんな工程があるんですね。

「布団まで揃えてベッドで寝てみたり、導線を確認して、照明やスイッチの位置に問題がないか考えたり。この段階で100以上の指摘事項が出てくるので、調整を重ねていきます」

PAが調達するものの種類は大きく2つに分かれる。

家具や照明、ラグやカーテンなどのインテリアまわりが「FF & E」、客室備品や食器類、ユニフォームなどのホテル運営に必要な備品全般が「OS & E」と呼ばれている。今回は、この2つのチームと、アート関連の調達を担当するチームのメンバーをそれぞれ募集する。

「FF & E」はほとんどが特注品で、案件ごとに一からつくっていく。

担当者は、モックアップが固まったあとは、実際に生産してくれるサプライヤーを選定。その後は大量の製品を、指定のコストと納期におさめるためのやりとりが開業まで続いていく。

一方、「OS & E」は、グラスやティッシュボックスなどの客室備品、家電や寝具類、レストランの食器類や調理器具、バックヤードで使用する清掃用品などを担当。

開業後の運営責任を担うホテルのゼネラルマネージャーとともに、表から裏まで、膨大な数の備品一つひとつを選定・発注していく。

どちらも、最後には計画的に搬入し、開業を見届けるまでが仕事。

「あくまでもオーナーさんの予算のなかで、最適なコストでつくることがポイントです。作品ではなく商業施設なので、『予算を超えてもいいものをつくりたい』という観点で仕事をすることは、うちのスタイルではありません」

「途中の変更はざらにあるし、納期と予算の調整は本当に大変です。でもオープンした後は、エンドユーザーとしてそのホテルを使う側の立場になる。実際に家族や友人を連れて泊まりに行くのは、大きなやりがいのひとつですね」

 

ここからは、具体的な案件の話を聞いていく。

家具まわりのFF & Eを担当しているのが、蛯原さん。

建築設計事務所の出身で、設計とは違う目線で空間づくりに携わりたいと、約5年前に入社した。

「デザインをしていたときと、あまり感覚は変わりません。当時も9割は与件整理やリサーチなどの情報整理だったので。今は、より扱う情報が増えて、納期という向かうべきゴールが明確になった感じですかね」

蛯原さんが担当し、2024年に開業したのが「バンヤンツリー・東山 京都」。

自然豊かな風景が際立つように、限りなくシンプルにデザインされた、全52室のホテルだ。

「うちが手がけるなかでは比較的小規模なホテルです。ただ、建物の形状が複雑で、ほとんどのルームタイプがバラバラだったんです」

デザイナーの設計図と、それをコスト内で実現するための材料と手順、その後のメンテナンスのしやすさなど。さまざまな視点から調整を重ねて形にしていくFF & Eチーム。

ルームタイプが異なると、各部屋の寸法に合わせて家具の仕上がりも変わる。現場に問題なく納められるよう、建築の設計者や施工者、デザイナー、サプライヤーなどの関係者と調整していく大変さがあった。

「ひとつの客室を決めるだけでも、しっかり議論が交わされて、深く考えられている。ちゃんと空間づくりをやっている人たちと、一緒に働けている実感があります」

「長い時間をかけて長く残るものを生み出していく。ホテルがひとつできることで、まちの景観は変わってしまうから、しっかり熱量を注ぎ込んで、責任を持って形にしていきたいと思っています」

仕事をするうえで心がけているところはありますか?

「真摯に向き合って、プロジェクト関係者といい関係性をつくることですね。自分たちのために汗かいてくれたなってわかる瞬間ってあるじゃないですか。資料を丁寧につくるとか、お願いのメールを送った後に電話も入れるとか。ちょっとした気遣いを日々意識しています」

「これだけの規模だから、どうしても小さなミスは出てきてしまう。そんなときでも、信頼関係を築けているかどうかで相手の反応は変わってくる。あとは、OS & Eが後から関わってくることが多いので、社内のためにもちゃんと関係性をつくっておくことは大切です」

 

製造の調整がずっと続くFF & Eに対して、開業1年前から本格的に動き出すのが、備品まわりの「OS & E」。

担当しているのは、3年前に入社した岡田さん。

先週は調理器具の選定のため、新潟の燕三条に出張に行ってきたばかりだという。

新卒ではPR会社に入社、その後Web制作会社でディレクターとして働き、クロスリンクへ。

「もともとインテリアに興味があって、仕事にしてみたかったんです。クロスリンクで働いている大学の先輩にスタッフ募集のことを聞いて、まったく経験のないところから入社しました」

「前職もずっとクライアントワークだったので、オーナーのために動いて、各所との調整を行うPAの仕事は、経験が生きているように感じています」

最初は、先輩と一緒に案件を進めるところから。指示をもとにリサーチしたり、見積もりを作成したり。何件か案件を経験し、段々と裁量を持つように。

最近主担当として進めたのが、今年オープンした「パティーナ大阪」。大阪城の目の前に立つ、ラグジュアリー・ライフスタイルホテルだ。

日本初上陸ということもあり、施設のオペレーター側は、小物ひとつにも強いこだわりを持っていたそう。

「大阪城にまつわる小物を取り入れたいなど、さまざまなリクエストがありました。価格や納期の面で制約もあったのですが、できるだけイメージにあうものを探して、取り入れていきました」

オペレーターの希望を元に、ホテル全体のデザインを鑑みながら、備品の候補を提案。アイテムによっては、オーナーやデザイナーにも確認を取りつつ最適な落としどころを見つけていくのがPAの役割。

「中立的な立場で、関係するみなさんが納得するものを、適正な価格で入れていきます。ユーザー目線で使いにくそうだと感じたものがあれば、こちらからも意見を伝えていきます」

備品と聞くと既存のアイテムを仕入れる印象もあるけれど、空間を彩るアイテムは、一から形にしていくことも多い。

地域のものを取り入れることが多く、その土地の窯元をシェフたちと回って食器を選定したり、客室のティッシュボックスやメモパッドなどは、インテリアデザインを元にオリジナルで提案したり。

地域の作家さんやメーカーのものづくりをサポートしていくのも、この仕事の醍醐味。

「最後に完成した空間を見に行って、泊まったり体験したりできるのが、この仕事のいいところだと思います。自分が提案したものも含めて、何千個ものアイテムが集合してひとつのホテルになっている。そう思うと、すごくやりがいを感じられます」

 

この仕事にはどんな人が合うだろう?

そんな問いに対して、代表の紙透さんはこんなふうに話していました。

「話すことが得意で、対外的なコミュニケーションに長けている人はもちろん合う。でもそれが苦手でも、資料の細かいところまでフォローできるような人もいいと思います。その2人が組むと最強なんですよ」

「うちはすべてチームワークでプロジェクトに向かうので、みんなでバランスを取っていけたらと思っています」

華やかなホテルの背景にある、地道な調整や丁寧なコミュニケーション。

一つひとつの仕事に真摯に向き合っていった先、日本中に思い入れのある場所が増えていくのだと思います。

(2025/10/06 取材 増田早紀)

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