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人に向き合う

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「自分ならこうするのに」と考える若い人たちは増えているように思う。習慣やルールに委ねるのではなく、自分に素直に考える人たち。

ビューポイントコミュニケーションズのみなさんにも同じことを感じました。この会社では、発達障がい特性を持つ方やうつの方を受け入れて、自己理解や能力開発の場をつくり、就労支援をしています。

でも事前にイメージしていたものとは違って、とても風通しのいい職場でした。それぞれが疑問に思っていることをそのままにせず、フランクに共有した積み重ねが今の働き方につながっているのかもしれない。

名古屋駅から電車に揺られて少しばかり。千種駅から歩いてすぐの場所に、ビューポイントコミュニケーションズのオフィスがある。

ビルの2階に入ると、代表の柴山さんが温かく迎えてくれた。

この会社の具体的な事業内容は、うつ病や発達障がい特性をオープンにした方々の就労支援。面接トレーニングやグループワークなどを通して、自己理解促進や気づきを得てもらうような機会を提供している。

今回募集する支援者も、グループワークなどを企画したりファシリテーションする人。精神保健福祉士・臨床心理士等の資格をもっていたら、なお良いのだけれど、今後そういった資格取得を目指している方やまずやってみたいという意思のある方なら応募は大丈夫だそう。求められているものはグループワークのファシリテーションを通じて、利用されている方同士に対して、黒子になって『気づき』を与えることができること。

まずは奥の会議室で、柴山さんになぜ今の仕事をはじめたのか聞いてみた。

「高校のときも、大学のときも、世の中にはこうなったらいいのに、と常々思っていました。でも僕なんかには無理だよね、と素通りしてばかり。」

なんとなく入社したのが、ITの人材紹介会社だった。そこで出会ったのは、多くのうつ病の方たちだった。

「うつ病だと企業さん採ってくれないんですね。でも働きたい人たちなんです。働きたいけど働けない。一方で健常な人たちもいて。彼らはそれほど支援がいらないけれど、採用には至りやすい。」

採用が決まればお金が入るという商売。となると、決まりにくい人たちよりも、決まりやすい人たちを相手にしたほうがいい、ということになる。

はじめは柴山さんも、うつ病の人たちの就労支援は難しいだろうとあきらめていた。でも「素通り」できなかった。

「もうだめだ、ここでは僕は働けないと思って、転職したんですよ。」

次に入社したのが、障がい者の就労支援を行うところだった。けれども、ここでも働いているうちに課題があることを実感した。

「身体も、知的も、そして精神障がいを持つ方も、みんな同じ場所でトレーニングをしていること。たとえばうつ病の方は社会人経験やスキルがあったりするけど、知的障がいの方は職歴がない方が多い。そういった方々が同じ場所でトレーニングをするというのは、どちらかが合わせなきゃいけない。どちらが優秀だとかそういう話ではなくて、対象をもっと絞らないと質の高いサービスやより良い気づきを、利用されている方には提供できないのではないかと考えました。」

たしかに、うつの方たちも、もともとは普通に働いていた人たちだ。理解する力はあるし、それぞれに合わせた適切な方法があるはずだ。

また世の中に障がい者の就職支援をする法人は多いけれど、ほとんどは「身体障がい者」と「知的障がい者」が対象のところ。身体障がいの方は身体の自由こそきかないけれど私たちと同様に仕事はできるし、知的障害の方もトレーニング方法や職域開発がすすんでいる。また、身体・知的障がい者のうち、どちらも4割前後の方は就労できている。

うつ病の方や発達障害特性を持つ方は、まだまだ就労支援の方法は確立されていないため、就労できるのは数%ほど。

事情が異なるし、同じようなやり方ではうまくいかない。

たとえば発達障がい特性を持つ方は、「適当にやっておいて」と言われても、適当がどの程度のものかわからない。「日の丸を描いてください」と言っても、絵を描くのか、漢字を描くのかどちらかわからないこともあるそうだ。

つまり、コミュニケーションのときに、自分と相手のルールが違ったりするケースがある。

「ぼくは現実の現場にいたから、それぞれに合わせたサービスを提供したかったんです。ぼくの思いはここの法人では実現できないと感じて、退職することにしました。目の前に問題があるのに放置するなんてできないじゃないですか。」

自分で仲間を集めて独立してやることでしか、目の前の現実を素通りしない方法が浮かばなかった。

はじめこそ試行錯誤している時期もあったけれど、やりながら軸が固まっていく。やはり一人ひとりにあわせてトレーニングしてこそ、自信を持って社会に送り出すことができることを実感した。

たとえば、発達障がい特性のある方々には、こんなことをしているそうだ。

「主にやっているのが2つあります。まずは自己肯定感もなければ自信もない方が多いので、コミュニケーションがこわくてとれない。今まで失敗ばかりだからしゃべらない。だからいう方たちの自己肯定感向上させる独自のグループワークを行う。」

「さらに、それができるようになったら、自分と相手のルールがどう違うのか、検討していく時間をつくっていきます。何が違うのか、1つひとつ確認していく。」

実際にグループワークなどの様子を見せてもらった。

第1印象としては、まず支援者の方と障がい者の方の区別がつかなかった。笑顔にあふれているし、注意深く見ていないとどの方が支援者なのかわからない。

こんな職場に来てからまだ1週間なのが村上さんだ。彼女もまた、ここの「違い」を感じた。それはホームページを見ただけでも直感でわかったそうだ。

「なんというか、障がいの方をしっかりと理解した上で、この先、この方たちとどう生活していこうかという、姿勢が感じられたんです。支援者と支援される側という優劣ではなく、割と目線が近い感じ。」

そして、村上さんは、言葉を慎重に選びながら「いわゆる福祉とは違う。」と話してくれた。

「福祉」とはどういうものだろう。なんとなく分かる気もするけど。

そこに柴山さん。

「僕のイメージですと、福祉というと支援者側のスタンスが『してあげている』という感じがあるんじゃないかと。もちろんそういう人ばかりじゃないけれど、助けてあげている、というスタンスの方が多くて。でも僕たちが学ぶこともたくさんあるんです。」

仕事を通して気づきも多い。それに障がいを持った方に対して、一方的にサポートするだけじゃない。あくまで対等な関係がある。

だから、できることは自分たちでしてもらうし、できないことがあればできるように支援していく。

こういった姿勢が、この場所の環境を育み、結果として成果が出ているのかもしれない。

村上さんによれば、そういうものはホームページや文章ひとつとってみても感じられるそうだ。だからここで働くことにしたそうだし、実際に働いてみても想像したとおりだった。

「面接もはじめての感覚でした。普通は年齢と結婚していることがネックになっていて、すぐ辞めちゃうんじゃないですかって聞かれることとかあるんですけど一切聞かれなかった。それよりわたしを見てくれた気がしたんです。」

村上さんは、もともとデザイン系の学校に通っていた。そこで今のご主人と出会ったことが大きな転機となる。

「今年で付き合いは10年目になるんですけども。芸大だし、変わっている人は多いだろうなー、って何も違和感はなかったんです。でも途中から深く接していると、人当たりはいいんですけども、何かがおかしいと思って。」

ご主人が就職したときに、いよいよおかしいぞ、ということになり、病院に行ったら広汎性発達障がいと強迫性障がいだった。

「今まで自分がしてきたことを活かして支援できることはないかと考えていて。震災後、転職のタイミングがあったときに、この会社に出会ったんです。」

村上さんは、ご主人以外にも家族に障がいを抱えている方がいる。だからこそ求められることが分かるのかもしれない。

「この仕事には、目に見えない、けれども困っていることを拾い上げられる、寛容さみたいなのも必要です。フレームを外してどこまでニュートラルにその人のことを見られるかどうか。それがこの仕事の肝になるんじゃないかな。」

もう一人紹介したいのが木村さん。

木村さんもまた、何事もそのまま受け入れるタイプの人ではないように思う。ときには斜に構えるような感じもあって、震災のあとに、みんなが支援をしなければ!と言っていたときに、自分はなにもしない!と宣言した方。

「なにか狂気な雪崩が起きるように感じたんです。それでも結局は巻き込まれてしまったのですが。」

そこに柴山さん。

「震災が起きたときに、なにもしない宣言っていうのは、就労支援にも近い部分もあるのかなと思っています。被災地に対して、過度な介入をしていくことは地域の自立を阻害することもある。障がいをもっている人の支援でも、過度な支援は自立を阻害することもあります。」

スタッフ同士の人間関係も、障がいのある方たちとも、なんだか人間らしい関わりがあるように思う。それはお節介すぎるものではなくて、なんだかバランスがいい。

ここで働く人は、それぞれの話に耳を傾けることができ、何かおかしいときはおかしいと言える人だと思う。

あとはちゃんと仕事ができる人。残業も1時間しか認められないから、ダラダラやってしまう人には向いていない。パートタイムで働くことで、ほかの仕事と掛け持ちしている人もいるそうだ。

とても意義深い仕事をしているけれど、それに熱狂的に溺れずに、あくまで一人ひとりを大切にしている会社だと思う。なんだかスヌーピーのマンガを読んでいるような、ちょっと現実的なようで愛があるような感じ。

最後に柴山さん。

「社会起業家と呼ばれる方々の活動をみていて、すごいなと思います。同時に、課題を解決しても、そこからまた新たな課題が見えてくるものなんだなと、この事業を開始するときに感じました。」

まず自分たちがどうしたいか、ということを大切にしているように感じる。

まずは職場を訪ねてみてください。そして働いている人と話してみたり、雰囲気を感じてもらいたいです。すると印象は変わると思いますよ。たぶん、いいほうに。(2012/8/20up ケンタ)