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人に向き合う

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多くの人にとって、障害者はあまり身近な存在ではないかもしれない。けれど、いざ関わってみたら同じ人間だし、考えていることは一緒なのかもしれない。

今回は、知的障害や身体障害を抱える人たちの雇用について、地域のなかで考えていく人を募集します。

資格や専門知識は必要ないのだけれど、過去に障害者と関わったことのある人は、より仕事が想像しやすいかもしれない。でも、今まで全く接点がなかった人にも知ってほしいと思います。

「知らなかった!」という話を聞いてきたけれど、驚きよりもむしろ、共感する部分が沢山ありました。

世田谷サービス公社は、東京都世田谷区の茶沢通りと淡島通りの交差点からすぐ近く、太子堂にある。

この会社の珍しいところは、世田谷区が90%以上出資しているということ。

主には、区立施設のビルメンテナンスを行っている。それから「世田谷くみん手帖」「エフエム世田谷」といったポータルサイトやラジオ局を持ち、インターネット事業も手がける。さらに、太陽エネルギーを利用するプロジェクトや、レストランの運営も行っている。

行政と民間のあいだに立って、世田谷区をより良くするためのサービスを直接届けていくのがこの会社の役割になる。

そのなかで、障害者雇用推進課では障害者の雇用をサポートしている。

この仕事に就いてもうすぐ25年になるという藤田さんに、どんな仕事なのか伺った。

「世田谷区内の施設での清掃業務に携わる障害者たち、そして現場の指導員や、業務をサポートする『援助者』と呼ばれるスタッフたちの日々のトラブルや相談に対応していくのが、わたしたちの役割になります。」

世田谷区では、『保護的就労』という独自に取り組みをしている。これは、障害者を雇用して給料を支払いながら、研修などを通じて職業生活上の支援も行うというもの。そして、『保護的就労』に関わる障害者やスタッフをサポートするのが、藤田さんたちの仕事になる。

「障害を抱える彼らは、今までの人生のなかで失敗体験がとても多いので、注意されると落ち込んでしまうのです。ただ、そのぶん褒められると、すごくやる気が出て仕事を頑張れたりします。そういうことを援助者の方に伝えて、理解してもらうことが大事です。」

現場では、日々さまざまな問題が起こるそうだ。

「清掃の現場で、援助者の方が『この机を綺麗に拭いてください』と言ったとします。上から順番にきちっと拭いていく人もいれば、ジグザグになってしまう人もいるんですね。そういうとき、頭ごなしに『まっすぐ拭いてください』と注意するとトラブルになる。そこで、『逆からもう一度拭いてもらえますか』と言ったらいいんじゃないかな。ジグザグでも、往復することで綺麗に全面が拭けますから。そんなふうに工夫していってほしいんです。」

基本的には「相手の立場に立って考える」ことが必要だと伝える。それは、ふだん人と接するときには自然に気をつけていることかもしれない。でも、相手が障害者だというだけで意識が変わってしまうこともあるそうだ。

そういうとき藤田さんは、何度でもこの基本へ戻って、理解してもらえるまで説明していく。

現場とのやりとりで、なにか印象的だったことはありますか?

「障害があっても人間ですから。当たり前の話なのですが、やっぱり男女の問題というのがあるんですね。職場で長いあいだ一緒にいれば、情も移れば好きにもなる。すると彼らの行動パターンは、ほとんど自宅と職場の往復ですから、デートしようとすると自然と職場のそばになってしまうんですね。ただ、職場は公共施設なので、それを見た区民の方から報告があったりするんです。」

「そういうときに、『障害があったとしてもちゃんとしなきゃ駄目じゃない!』というような注意の仕方になってしまうんです。でも、本当にそれでいいのかな。もしかしたら付き合い方が分からないだけかもしれないし、結婚だって考えているかもしれない。彼らなりに真剣だと思うんです。だから、なにがしたいか、どういう気持ちなのかを、本人にひとつひとつ聞きながら、同じ目線で解決策を探していくべきだと思うんです。」

もちろん、雇用して給料を支払っているわけだから、最低限社会人として守ってもらいたいルールはある。挨拶をしっかりすること。奇声をあげたり騒いだりしないこと。そういう部分は、研修などで機会を設けてしっかり伝えていく。

ほかにも、清掃のスキルアップのために検定制度をつくったり、あえて援助者が出勤しない日をつくったりなど、自立を促進するためのさまざまな施策に取り組んでいる。

人と対する仕事だから繊細だし、こうすればOKというマニュアルなんてない。問題が起こったらその都度考えていく。

どんな人に来てほしいですか?

「人が好きな人がいいです。障害者たちは、人を見る目が鋭いんです。この人はどんな人なんだろうって、よく観察します。気を遣われることにも敏感になっているし、デリケートな問題も多い。そんな人たちとどんな風に向き合い、彼らが自立できるようにするかを考える。それには、答えなんてないんですよ。だから、わたしたちと一緒になって考えてくれる人に来てほしいです。」

ここでは、考えることが日々山ほどあるのだろうな。今目の前のことに対処しながら、未来のことも想像していかなければならないと思う。

それがとても面白いんですよ、そう教えてくれたのは、課長の山本さん。

「地域の未来を考える仕事ですから、面白いんです。地域という変わらずずっとそこにあるもののなかで、これからの障害者の働き方を考えていく。常に前向きで、どんどん色々結びついていくので、ワクワクします。」

今、障害者雇用推進課では、保護的就労のサポートだけではなく、雇用を開拓していく事業にも取り組んでいる。

「フェルト細工でキーホルダーなどの小物をつくってもらって、イベントで販売するという事業を試験的にはじめました。あとは、今度池尻に健康をテーマにした新しい施設ができるのですが、そこでレストラン事業をはじめようと考えています。皿洗いなどからスタートして、ゆくゆくはパンやお菓子づくりをしていけたらいいなと。」

「その施設の隣には、食糧学院という飲食の専門学校があるから共同でなにかできそうだな、とか、美味しいパン屋さんとタイアップしてランチメニューを考えたいな、とか、今は色々な人に会いにいって考えていく作業をしています。」

地域の施設や人をつなげていき、事業を形にしていく。そういう意味では、地域ビジネスという側面もあるのかもしれない。

「だから、地域のことを面白がってくれる人が来てくれたらいいですね。昨年の震災以降、地域に興味を持つ人は増えてきていますよね。逆に福祉ばかりではなく、色々なネットワークを持っている人の方がいいかもしれない。自分こういうことやってきました!という話があれば聞きたいし、広く門戸は開きたいなと思っています。」

もちろん、株式会社だから、しっかりビジネスとして考えられるような視点は必要だと思う。それさえ頭に置いておけば、世田谷区のまちと人と政治とともに、色々な面白いことをつなげていけるのではないかな。

最後にもうひとり、紹介したい人がいます。4月から障害者雇用推進課に異動してきた、齋藤さんです。

入るまではまったく障害について知識がなかったという齋藤さん。前は、施設の維持・管理をする課で事務の仕事をしていた。会社に障害者がいるということは知っていたけれど、あまり関わることはなかったそうだ。

「最初入ったときは、まず障害にかかわる用語の内容が分かりませんでした。自閉症ってなんだ?障害特性ってなんだ?というところからのスタートだったんです。」

入ってからは、教わったり自分で勉強したりもしたけれど、やっぱり、実際に本人たちと接していくなかで掴めてきた部分がいちばん大きいそうだ。

「だんだん、障害のある人とはこういう人たちなんだ、ということが分かってきたんです。明るくて、一生懸命仕事をやろう!という気持ちの方が多いのですが、それでも障害特性によっては出来ないこともある。それをしっかり見ていれば、その人がどういう性格で、どのような行動をする人なのか、ということが感じられるんですね。そしたら次は、ただ指示をするのではなく、どういう風に説明したら伝わるかを考えられるようになる。そんなふうに、少しずつ理解していきました。」

「現場に顔を出すうちに顔を覚えてもらえるようになって、むこうから挨拶してくれたり、にこにこしてくれたりするようになりました。そういう彼らを見ると、こちらまで素直な気持ちで接することができて、だんだん楽しくなってきたんです。ここに来てから自分自身の考え方も変わったような気がします。仕事は大変ですが、とても充実しています。」

働いていて、楽しいことを聞いてみた。

「フェルトの小物をつくっている様子を見にいくのですが、最初は、これ売れるのかな?と思っていたものが、行くたびに上手になっていくんです。なにこれ!かわいい!って、どんどん綺麗になってレベルが上がっていく。そんな風に、自分が関わった仕事で成長してくれているのを見ると嬉しいです。」

齋藤さんの半年間の話を聞いていて、なんだかすごくナチュラルだと感じた。まずは受け入れてみて、それから考えるというような。まったく頭でっかちな感じじゃない。

齋藤さんが、こんな話をしてくれた。

「もしかして、こういうことなんですかね…。わたし、もともと子どもを子ども扱いしたりしないんです。人の家の子でも、駄目なものは駄目と注意するし、初対面のときはしっかり挨拶したりします。子どもだってひとりの人間で人格を持っているから、対等に接したい、という考えが前からあるような気がします。」

子どもだから、障害者だから、という接し方ではなく、まずはその人自身に向き合う。そんな姿勢が、齋藤さんにはあるのかな。それはきっと、藤田さん、山本さんにも共通していると思う。

「障害者だから、健常者だから、ということをすべて取っ払って、ひとりの人間として接することができる人がいいと思う。人として、地域の仲間として、一緒に考えていける人に来て欲しいですね。」

それに、そういう人だったら地域にもすっと馴染んでいけると思うし、面白いことをつなげていけるのではないかな。4人目の仲間として、ここで働く人をお待ちしています。(2013/1/30 ナナコup)