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神保町にウズをつくる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

本の街、スポーツ用品の街、楽器の街、グルメの街。いろんな表情を持っているのが、東京・神保町。駅から1分のビルにまもなくできるスペースの「コミュニティ・マネージャー」を募集します!

古本屋さんや有名な本屋さんが集まる街として、神保町は日本中、いや世界中に知られている。これほどの規模で本屋が集まった街は、世界を見わたしてもまれなんだそう。

神保町は、本にまつわる仕事の街でもある。

大小の出版社のほか、編集プロダクションやフリーの編集者、ライター、イラストレーターやカメラマン、印刷会社の人たちも行きかう。大学や予備校も近くにあるから、若い人たちも多く歩いている。いろんな世代が混じりあっているアカデミックな雰囲気だ。

だけど、僕はこの街に行く機会が最近は減ってしまった。音楽と同様、新刊本も古本もネットで便利に買えてしまうようになったことが大きいと思う。

そんな寂しさを感じていたとき、この街に新しく「街と人とがつながれる場所」が立ち上がることを知った。

名前は「EDITORY(エディトリー)神保町」(http://www.editory.jp)。

編集(edit)と領域(territory)を掛け合わせた言葉からは、いろんなジャンルの人たちをつなごう!という意図が伝わってくる。駅から徒歩1分という好立地に、そのビルはあった。

現在は、老舗の洋書出版社が引っ越して2階から6階までが空いている。ど真ん中の4階が、新しい場に生まれ変わる。

まずは、EDITORYの企画とプロデュースを担当する、ツクルバの中村真広さんに聞いた。現在28歳。普段のお仕事は?

「いろんな場所で街づくりワークショップを企画運営したり、不動産活用の企画などもやっています。あとは、空間デザインの設計業務などですね。場所が生まれたあとの運営業務まで一貫してやっているのが、僕たちツクルバの仕事です」

ガチガチに場のコンテンツを作り込まず、受け皿を用意したあとに集まる人々や、自然な流れに任せるのがツクルバの運営スタイル。一見アバウトだが、それだけ人と人の出会いから生まれるパワーを信頼しているように思える。

このEDITORYは、どういうスペースになるんでしょう?

「窓際がフリーアドレスの席になります。会員の方たちが自由に使えるオープンスペースですね。家具も移動式にして、イベントのときなどに椅子だけ並べられるように考えてます。奥に少しあるのが固定席。この会員さんには専用棚の設置も考えてます。」

これまでにつくられた模型が、プランの変遷をよくあらわしていた。当初に考えられたのは、ブースや本棚で仕切られたオフィス。その後、ツクルバは開放的で風通しのいいスペースを提案した。

みんなで使えるWi-Fiやプリンターがあり、トイレも男女別で1つずつ。キッチンだってある。セキュリティカードキーで出入りするので、基本は24時間オープン。広いワンルームの仕事場を共同で使うイメージかな。
この空間をまとめるのが、今回の求人「コミュニティ・マネージャー」。初耳の人もいるかもしれない職種だけど、ひらたく言うと「管理人さん」。ただし、マンションのそれとは、ひと味違う。

「EDITORYには、特に受付がありません。コミュニティ・マネージャーという人物が受付なんですよ。常駐スタッフとして入居の契約業務のほか、日常的な場所の運営もやっていただきます。最低限、会員さんの顔と名前が一致して、その人たちの仕事を把握しておくことは必要です。」

優秀な秘書のようなイメージ?

「いいえ。それだけじゃなくて、会員さんに『こういうことで困ってるんだよね』と言われたら『だったら、○○さんに相談したらうまくいくかもしれませんよ』という具合に、中のコミュニティをかき混ぜてもらう役目が求められます。」

昔ながらのコミュニティには、当然のようにあった役割だろう。でも、ハッキリ「職種」として認識されるようになったのは、ごく最近のことだと思う。前職でどんな仕事をしていた人が向いてるんだろう?

「コミュニケーションが好きな方じゃないとつとまりません。『世話好き』というのが重要な性格だったりしますね。ずばり、スナックのママ!」

……なるほど、ピンとくる人もいるかもしれないので、お伝えしておきます。勤務時間は10時から19時ですからね、念のため。
コミュニティをかきまぜるため、魅力的なコンテンツやイベントを用意する必要がある。採用者にはこの役目も求められるけど、頼もしいリーダーがいるのでご安心を。編集者の江口晋太朗さんだ。中村さんと同じく28歳。

江口さんは、都市のコミュニティにおける暮らしや生きかた、働きかたについて実験・発信をしていくプロデュースユニット「TOKYO beta(ベータ)」を立ち上げたばかりだ。

「場づくりのツクルバさんと、メディアをつくっている僕と、2つの両軸がEDITORYにある位置づけです。神保町という街は編集者、出版社、メディアが集まるところですし、東京の西と東のカルチャーの交差点でもある。ただのシェアオフィスではなく、神保町という街がこれからの時代にどうあるべきかを考えていく、そんな場所にできたらと考えています。」

江口さんは、EDITORYでどういった役割をするんですか?

「募集をかけるコミュニティ・マネージャーと、この場所をどうつくるかを一緒に考える役ですね。いろんな文化やコミュニティをうまくつないで、そこから新しいものをつくり出すという『リアルの編集』を要求されているのが、この場所だと思います。」

EDITORYでは「運営ディレクター」の肩書きとなる江口さん。コミュニティ・マネージャーと違って常駐はしないが、どのようなコンテンツを用意し、イベントを起こしていくかを考え、集まってくる人たちとコミュニケーションをとりながら、採用者と二人三脚で実施していく。

これらには江口さんが持っているノウハウや人脈が使われる。応募者はそのような経験やネットワークに触れられるメリットがありそうだ。

「フリーの人だけでなく、出版社で早く仕事が上がった人が、外の人とつながりながら一緒に知識を共有する『夜ゼミ』のようなものはやってみたいですね。また、キッチンがあるからカレーづくりのワークショップなんかもやると楽しいかも。」

面白そう!コミュニティ・マネージャーはどんな人に来てほしいですか?

「情報に対する感度があって、新しいものをつくっていきたい人が来てくれると、この場がより面白くなるんじゃないかなと期待しています。」

コミュニティ・マネージャー自身も、いろんな人を巻き込んで企画やイベントの準備ができる能力、企画能力の高さが求められると思う。
最後に紹介するのは、事業主である株式会社安富代表の安富太郎さん。

今回の求人は、不動産業を営んでいる同社の契約社員(正社員登用制度あり)だ。オフィスは同じビルの7階。中村さん、江口さんよりも11歳上で、頼れるお兄さんという印象を受けた。

こちらから投げた1つ1つの質問に、じっくり考えながら返してくれる。どうして今の仕事についたんですか?

「ここは祖父がつくった会社で、元は畳屋さんでした。畳の卸ろしでは東京で3本の指に入っていたようですよ。畳は昭和の後期に下火にはなっていますので、不動産投資もするようになったんですね。3代目の僕は、もともと不動産業を会社員でやっていました。将来、自分でも事業をやろうという意思があって、6年ほど前に代表になり、このビルの運用もしています。」

神保町の界隈は商業に便利なエリアということもあり、実はそれほど空きビルが多くないという。

「ただ単純にテナントさんに入ってもらっても、ちょっと時流とは合わないのかな、と。中村さんや江口さんがおっしゃるように、人々の働き方が変わってきているというのは、僕も不動産業を通じて感じてはいました。でも、外観やデザインといった表面的なことだけでなく、働く場所である建物を本質的に変えていくとなれば、なかなか難しいんです。」

そんな疑問を抱えていたとき、共通の知人を介して、ツクルバが渋谷で運営する「co-ba(コーバ)」と「co-ba library」を視察した。
「そこで仕事をしていた人たちはクールでカッコいいんだけど、士気が非常に高く、心の芯も熱い、そんなエネルギーがバシバシ伝わってきて。こう言ってはなんですが・・・僕が漠然と持っていた、ひと回り下の世代に持っていたイメージが180度、覆されました。スグにでも彼らと仕事がしたい、神保町周辺でもどんどん何か仕掛けてくれて、この街や人のポテンシャルと化学反応が起これば、面白いことになると思ったんです。」

神保町でも、書店街があるエリアと反対の静かなエリアに安富ビルがある。ここに「人のウズをつくりたい!」というのがメンバーたちの共通した願い。最初に打つのは小さい点でも、そこから波紋のように街へ賑わいが広がっていくのが夢だ。

「このプロジェクトがより進化していけば、建物を時代に対応させていく運用方法のモデルにもしていけるかもしれません」と安富さんは語る。

今回、どんな方に来てほしいですか?

「これといってないんですよ。なんなら、おじいさんもいいな。」

エッ!?と驚いたが、中村さんは、なるほどという顔で続けた。

「確かに。僕らのco-baには、下は19歳から上は60代までの会員がいらっしゃるから、意外とアリかもしれません。」

これは極端な例だけど、他にユニークな答えは「1時間や2時間だと困りますけど、15分くらい遅れて出社しても『へへっ』と頭を下げてゆるされる感じの人」というイメージだった。安富さん、どうしてですか?

「野球でも、サッカーでも、バレーボールでも、チームプレイのスポーツにはそういうムードメーカーって、必ず出てくるじゃないですか。フィールドに立つプレイヤー以外の人が、実際はチームをつくることもありますよね。来てほしいのは、そんな『日々を楽しくすごせる場をつくれる人』かな。」

遅刻してもいいんだ!というわけじゃなく、これはきっと、天性のコミュニケーション力といった高い資質を求める話。オープンしたEDITORYは、今回の採用者が「顔」となるから、責任重大です。

我こそは!という自信とやる気にあふれたかたは、ぜひご応募ください。オープン後、採用者にはきっと会いに行きますから。(2012/3/27 カンキup)