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「僕らとお客さんが手をとりあってデザインをつくることで、お客さんとその先にいる人も、手をとりあえる。そうして、未来をつくるデザインをしていきたいんです。」初夏の鎌倉で、気持ちのいい人たちと出会いました。
テトルクリエイティブは、Web制作、DTP、映像制作などを手がける広告制作会社です。
創業は2005年。昨年6月に代表が交代。12月に事務所を渋谷から鎌倉に移し、スタッフも全員鎌倉へと引越をしました。
仕事についても現在は社会貢献性の高い、未来をつくるデザインに力を入れているところ。
会社が大きく変わりつつあるいま、デザイナーとして新しいテトルをつくっていく仲間を募集します。
大勢の人でにぎわう鎌倉。小町通を抜けて、鶴岡八幡宮の参道沿いにオフィスが見えてきた。
この建物の3階に、テトルを含めた3社でシェアオフィスをしている。
一緒に入居しているのが、日本仕事百貨でも掲載させていただいたWebサービスを手がける村式、そして手仕事のWebギャラリー&マーケットiichiだ。
エレベーターを降りると、代表の平田さんが迎えてくれた。
「天気もいいし、外に行きましょうか。」
鎌倉に移ってから、毎週月曜の朝にミーティングを行っているというカフェに向かう。
カフェに着くと、平田さんが会社の成り立ちを話してくれた。
「僕は広告代理店を経て、フリーランスで仕事をしていました。デザインってどんなことにも、悪くいえば消費をいたずらに煽ることにも使えるんですよね。それで、自分はどういうデザインをしたいか考えていたときに、前代表の谷岡から連絡が来ました。」
当時谷岡さんは、タイ・チェンマイでHIVに母子感染した孤児たちが暮らす施設“バーンロムサイ”の広報活動に取り組んでいた。
病気を抱えながらも目を輝かせて生活する子どもたち、そして運営資金に苦労しながらも一生懸命活動しているスタッフの姿があった。
「寄付だけにたよらない組織を目指して、色々な取組みをしていました。施設に隣接した宿泊施設を運営したり、服づくりをはじめたり。けれど、そうした活動は日本には全然知られていませんでした。課題を感じていた広報戦略の支援として、僕らはWebを制作します。」
サイトが立ち上がることで多くの人に知られ、お金も集まるようになった。その資金をもとに、よりよい治療が可能となった。
「デザインが社会にいい活動を広めることに役立てるんだ、って気づいたんです。子どもたちの生活環境が整っていく姿を目の当たりにして、自分たちだけでなく、先の世代にもよいことをしていける。僕らは、未来をつくるデザインをしていきたいと思いました。」
こうしてテトルクリエイティブが創業した。
はじめは関心がなかったけれど、目の前の人と向き合うことで意識が変わったという平田さん。
「特別なことじゃないと思うんですよ。一生懸命活動している人たちの思いを伝えることで、社会にいい活動への取り組みが、もっと当たり前になっていけばと思います。」
ここでデザイナーの東﨑さんに話を聞いてみる。
入社2年目の東﨑さんは、ゲーム会社の特設ページの制作管理をしつつ、非営利組織のデザインも手がけている。
社名の由来となるのが「手をとるクリエイティブ」という言葉。そのもとには、非営利組織との仕事があるという。
「非営利組織のみなさんは、社会に必要な活動に熱意を持って取り組んでいます。ただ、広報的な視点では、組織の魅力がよく見えていないことも多いです。そこで、いまどんな課題があって、将来どのようになっていきたいのかということから、一緒になって考えていきます。」
打ち合わせにはじまり、納品までをデザイナーが一貫して担当する。多く対話していくなかで自然と深く関わり、思いも共有することになる。
もちろん同じ姿勢で営利企業にも関わるから、結果として「親身になってくれる」とリピーターになるお客さんも多いという。
実は、非営利に特化しようと考えた時期もあったそうだ。けれど、非営利と営利が両輪となり、いい循環が生まれていることに気づいたという。
「単にいいことを掲載しているサイトでは、活動に興味を持っていただけない場合が多いです。営利企業の方々とのお付き合いのなかで、見せ方や切り口など、非営利組織では活用されていないナレッジもまだまだ多くあります。ときにはそういった提案もさせていただきます。」
今回テトルが募集しているのはWebデザイナー。
働く上で、どんなことが大事になるんだろう。
「つくりたい、という気持ちですね。」
そう話すのは、デザイナーの菊池さん。
前職では中国家具の販売をしていた。
「学生時代には舞台美術をしたり、絵を描いたり。手を動かしてつくることが好きでした。空間づくりに興味があったんですが、家具のデザインができるわけでもなく、販売の仕事に就いたんです。でも、働くなかで、やっぱりつくりたい!という気持ちが湧いてきました。」
自分の作品づくりと、お客さんありきのデザインという仕事には違いもあると思う。
いまはどんな思いで仕事に取り組んでいるのだろう。
「お客さんの『こうしたい、こうなりたい』という思いをカタチにすることには、いまでもプレッシャーを感じます。同時に『それなら、こうしたらいいんじゃないか』とつくっていくのが楽しいです。できあがったカタチを見て、お客さんに喜んでもらえるとすごくうれしいです。」
「辛いと感じるときがあっても、もっともっといいものをつくりたいと思っているから、つくり続ける。それは嫌々やっているんじゃなくて、そうしたいから、つくることが好きだから続けているのだと思います。」
通勤途中に鎌倉の自然を見ながら「あの仕事にいかせそう」とアイデアが浮かんでくる。休日に出かけた展示からインスピレーションを受けてラフを描いてみる。
そうして生活のなかからもデザインは生まれてくるのだと思う。
テトルにとって、鎌倉に拠点を移したことは大きかったという。
「17時くらいから飲食店が閉まっていき、20時にはだいたいのお店が終わってしまう。移転当初、渋谷から移ってきた僕らからすると、これからじゃん!って(笑)。最初は仕方なく、先に夜ご飯を食べちゃおうとなったんです。でも食べると、『今日はもう帰って、朝やった方がいいんじゃない?』となって。」
観光地のイメージが強い鎌倉も、一歩路地に入ると民家が建ち並ぶ生活のまち。
「どんどん生活が変わっていきました。鎌倉には夜があるんですね。静かな時間が、クリエイティブにもよい影響をくれるように思います。」
「こうやって話すと、ゆっくりした印象を受けるかもしれませんね。でも、周りにも同じ気持ちを持った人たちがいて、自然とつながってくるので。歩みは都内より早いかもしれないですよ。」
現在は鎌倉をITの力で盛り上げようとする“カマコンバレー”に参加している。これまで経験したことのないようなプロジェクトを通して、様々な刺激を受けているそうだ。
またシェアオフィスでもコラボレーションが生まれているそう。村式とiichiに所属する重松さんはこう話してくれた。
「たとえば、iichiのデザインはテトルさんと一緒に制作しています。その他にも、村式のスタッフがiichi、テトルで研修させてもらうこともありました。3社はそれぞれ得意としていることが違うので、これから来る人は3倍楽しめるんじゃないかな。」
重松さんは、テトルには仕事というよりもライフスタイル感があるとも言う。
たしかに話を聞いていると、テトルのみんなは仕事以上に大きい何かを共有している、そんな印象を受ける。
「鎌倉に来たことはすごくよかったです。自分の生活をより考えるようになったかな。一人一人が変化して、会社も変わってきている。いまは会社をもう一度つくっている感じがありますね。」
テトルはこれからどこに向かっていくのだろう。
「非営利組織や教育… 未来をつくろうとしている人たちと歩んでいきたい。そう思っています。やっぱり、ちゃんとやろうとしているのにうまく伝わっていないというのはもったいないし、僕らも悔しいんですよ。」
まずは非営利組織の広報支援に力を入れてきたいという。
「ほとんどの非営利組織は広報に十分な予算を割くことが難しいです。そういう組織でも、ある程度はWebを自分たちで管理更新していけるようなサービスも提供しようと思っているんですよ。」
それって、自分たちの仕事をなくしていくことになりませんか?
「その通りです(笑)。けれど非営利組織の発信力強化のためには必要だと考えています。一方、個々のお客さんに合わせたクリエイティブの部分は、僕らがプロとして届けていきたいんです。」
その先には何を見ているんだろう。
「多くの非営利組織の方とお付き合いしていくなかで、私たちが感じたのは、広報をもっとうまく活用していってほしい、ということです。ほんとうに大事なことをしているんだから、もっと伝わっていいいと思います。」
伝え上手になることで、いい循環が生まれてくると平田さんは話す。
「賛同する人が増えることで、活動の輪が広がり、活動資金も集まりやすくなる。それにともなってNPOやNGOで働く人が増えてくると思います。未来をつくる仕事が一つのスタンダードになるよう、僕らはデザインでお手伝いをしていきたいです。」
社会の役に立ちたいけれど、どんな選択肢があるかわからない人がいる一方で、人手不足にあえいでいる組織は少なくないと思う。
テトルは、デザインを通して橋渡しをしようと試みている。
最後に平田さんは、これから一緒に働く人に伝えたいことがあるという。
「会社のあり方が決まっていて、そこに人をあてはめるのではなく、あなたが加わることで新しいテトルになっていけたら。デザインで、一緒に未来をつくっていきたいです。」
働き方を変えていきたい、デザインをいまとは違うことに役立てていきたい。そうした思いがあれば、一度テトルクリエイティブを訪ねてみてください。
そこにはきっと、あなたの仕事があると思います。(2013/7/5 大越はじめup)