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やりたいことを仕事にする。そんな人たちと出会いました。給与はけっして高くないし、休みが多いわけでもない。それでも、自分の言葉を持って働いているように感じました。
株式会社たまやは、三重県四日市市でサブカルチャーを軸に事業展開する会社です。
創業は1993年。現在はスノーボード・アウトドア・ファッションのショップを運営しています。
東海地区では他に類を見ない品揃え。そしてスタッフのキャラクターに魅せられて、県外からも人が集まっています。
ここで、店舗運営を担う人を募集します。
経験は問いません。条件は能動的に働きたい人です。
名古屋から近鉄線に乗り換えて30分。四日市駅からワンマンの内部(うつべ)線に揺られること10分。泊(とまり)駅に着いた。
歩いて5分ほどでたまやは見えてきました。
四日市市は三重県で最も人口の多いまち。
はじめに代表の安保(あぼ)さんに話をうかがう。
出身は三重県。高校卒業後は大手電気機器メーカーに勤務。
10年目にあたる1993年、ドイツへ転勤の話が出たタイミングで、会社を退職した。
そして、趣味のスノーボードをなりわいにしようと、ショップ「A-BONY」(エーボニー)をオープンした。
10坪ほどの小さな店舗からのスタートだった。
サブカルチャーを軸としてアウトドアとファッションにも展開。じわじわとお客さんが増え、1998年に現在の場所へ。
安保さんは、会社への思いをこう話す。
「三重に若い人の居場所をつくりたいんです。名古屋・大阪に行かなくても、ここでほしいものが手に入れられる。これまで東海地区で取り扱いのなかったものを販売することでたまや、そして地域を盛り上げていきたいと思いました。」
A-BONY(エーボニー)ではBURTONをはじめ、全国でも珍しいNIKEのスノーボードブーツなどを取り揃える。
アウトドアショップ「moderato」(モデラート)では、ARC’TRYX(アークテリクス)、Patagonia、THE NORTH FACE。名の知れたブランドも、量販店では手に入らない珍しいラインを揃えていった。
東海地区にあらたなマーケットを築く過程では、メーカーと協力する場面も多々あった。
メーカーの方が講師になって、お客さんを招待してマラソンシューズを履き試す会なども行ったそうだ。
特化した商品を扱うことで、現在では逆に名古屋・大阪からもお客さんが訪れるようになった。
今後は、会社としてあらたな事業展開も考えているところ。
その一つは伝統工芸品とサブカルチャーを融合させる事業「ミミエ」。
「ものへのこだわりを追求していくと、伝統工芸に行き当たります。アプローチを変えることで、販路は開拓できる。そして三重県はもっと注目されると思うんです。」
BURTONのボードに伊勢型紙のグラフィックを取り込む。NEW ERAのキャップを松阪木綿でつくる。
安保さんはすでにメーカーへ提案を行っている。今後は事業化に向けて進んでいくという。
さらに、1998年に現在の社屋を建てる際に描いた構想がある。
「四日市は、名古屋から50km、大阪から150kmの距離があります。現在は3つの建物ができることで、わざわざ外から訪れる人も増えました。今後は飲食や美容など、若者にフォーカスしたカルチャーをエリアで展開していきたい。そうすることで、より多くの人がこのまちを訪れ、盛り上げていきたいんです。」
「これまでは、すべて自前で店舗を展開してきました。スピード感を持って実現するために、外の人を巻き込むことも考えています。ショップをはじめたい人を誘致してプロデュースを行う。あるいは、独立したいスタッフにショップを譲ることも出てくるかもしれません。」
そんな安保さんのもとには、エリアを越えて若いスタッフたちが集まってきます。
その理由は、サブカルチャーやファッションが好き、ということに留まらないようです。
ここからはスタッフのみなさんに話をうかがっていきます。
最初に話を聞いたのは、アパレルのショップ「cocorozashi」(ココロザシ)を運営する八尾(やお)さん。
入社して2年半を迎えます。
「高校生の頃から古着が好きでした。けれど古着屋で飯を食べていくのはどうやら難しい。それでも服の仕事を続けたくて、まずはアパレルの大手SPAで働きはじめたんです。25歳で店長になり、30歳を手前にして考えます。いずれは独立して、自分の好きな服に関わっていきたい。そのためにはどうしたらよいのだろう?色々調べる中で、安保社長に出会ったんです。」
きっかけは、安保さんが商品を紹介するブログだった。
「たまやには、アウトドアもファッションもおもちゃもあって。安保さんは趣味に生きている人だと思ったんです。」
実際に会うと、印象は変わったという。
「夢のある大きな話だけでなく、現実を見ている人でした。僕がいずれは独立したいと話しても、厳しい言葉で返してくる。結局、2度3度の面談を経て採用が決まります。妻子もいるなかで、わざわざ大阪から三重へやってきた。いま思えば、そんな自分にきちんと考える機会をくれたんです。」
働いてまず感じたのは、自由度の高さ。
八尾さんは入社直後に、自分で取り扱いたいブランドの展示会に出向き、買い付けから手がけたという。
アパレルのショップは、一人で一店舗を任されていく。
仕事内容は、売上げの管理、バイヤーから仕入れ、店内の内装・ディスプレイ、店頭での接客、そしてオンラインショップまで幅広い。
これから入社する人にも、やりたいことには手を挙げてほしい。むしろ、そうした声が求められる会社だという。
「会社の利益につながれば、やりたいことをやらせてもらえます。同時に、任されることの重みも感じました。」
店舗運営に関わる一通りのことを、自分でやりたい。そんな人にはよい環境だと思います。
働きはじめてみると、色々と変わったこともあるそうだ。
「前職から比べると、給与が下がり、休みも少なくなりました。でも、あるとき妻に言われたんです。『顔がいきいきするようになったね』って。」
家賃をはじめとする生活費も下がったため、暮らしは以前と変わらないという。
むしろ、周囲にほどよくまちも自然もある環境は、慣れると楽しいそうだ。
「それから、近々では独立を考えなくなりました。たまやという会社はまだまだ若い。ここにいながら、できることがあると思ったんです。一人ひとりの存在が大きいんですね。」
続けて話をうかがったのは、アウトドア用品を扱うmoderato(モデラート)のみなさん。
moderatoの特徴は、スタッフがスポーツのプレイヤーでもあること。
3年目の小泉さんは、埼玉の出身。
口数は多くないけれど、丁寧に話してくださる方だ。
自然が好きで、学生時代は山岳部で活動をしてきたという。
大学を卒業後は、家電メーカーに就職する。
「一時期山から離れていたんですが、クライミングを再開すると、やはり仕事にしたいと思いました。もともとの道具好きもあり、販売を通してお客さんに楽しさを伝えていけたらと思いました。」
アウトドア用品を扱う店は首都圏にもあるけれど、どうして三重に来たのでしょうか。
「ブログがきっかけで安保社長を知ったんです。面白さと誠実感が感じられて、この人のもとで働きたいと思いました。」
人に魅力を感じて、人が集まってくる。
同じことがお客さんとの関係にも言えるという。
店舗運営におけるもう一つの役割は、ブログやオンラインショップを通して伝える仕事。
「お客さんの半数程度がリピーターです。発信する人の魅力に、お客さんが集まってくるのだと思います。」
オンラインショップについてうかがう。
お客さんが商品を実際に手にとることができない分、写真と言葉で商品を正確に伝えることが大切になる。
写真は、自然光での撮影を心がけている。納品が続くタイミングでは、一日中撮影が続くことも。地道な作業も多い。
通販で購入したお客さんが、遠路はるばる東京、浜松、四国から訪れてくることもあるそうだ。
また、moderatoではブログでの商品紹介に加え、「フィールドレポート」を日々更新している。
これはスタッフが大会に参加したり、フィールドで実際に商品を使用した生の声を紹介するもの。
小泉さんは、クライミングをより広めていきたいと話す。
「発信力は、スタッフ自身がどれだけ遊び、その楽しさを伝えていけるかにかかっていると思います。いまはmoderatoの中でもマイナーなクライミングですが、取り扱いも広げていきたいです。」
最後に話をうかがったのは、moderato店長の飯田さん。入社14年目のベテランだ。
自身もトレイルランのプレイヤーである。
近くには鈴鹿山脈系の御在所岳(ございしょだけ)もあるという。また、伊勢や津の海も近い。
飯田さんは、対面の接客について話してくれた。
アウトドア用品の特徴は、ファッション性に加え機能性が求められる点にある。
「主力ブランドの一つに、ARC’TERYX(アークテリクス)があります。ブランドに惹かれて、手にとるお客さんもいるんです。うかがうと『トレッキング中に、ウェアが汗で濡れて寒かった』ということでした。」
「さらに話を聞くと、似た機能性のPatagoniaの商品をすでに持っていたんです。ウェアを変えても、根本的な問題は解決できないかもしれませんね。」
そこで、「普段の食生活を変えると改善できますよ」「歩き方のフォームを見直しましょう」と生活面のアドバイスをすることもあるという。
その根本には、こんな思いがありました。
「僕らの仕事は、人の時間を預かる仕事だと思っています。」
時間を預かる?
「その場でモノを売って終わり、ではないんです。何年かして振り返ったときに『あのとき、たまやでいい服が買えたな』『いいスノボができたな』。そんな風に思っていただく仕事だと思います。だから、安易な接客はできないんです。」
人の時間を預かることは、スタッフに対しても同じだという。
「僕が気持ちよく仕事をすることは、周りの人にもよい影響があると思っています。そうやって会社の文化が、次に受け継がれていくんですね。人とのつながりがとても大きい会社だと思います。」
今回は紹介しきれませんでしたが、たまやには多様なスタッフがいます。
どうしてもスポーツを仕事にしたいと、大学院を中退して働きはじめた人。アパレルで取り扱いブランドのファンが増えていき、あらたに自分の店舗を立ち上げた人。
やりたいことを仕事にする。みなさんに共通して感じたのは、いきいきとした表情でした。
(2014/9/23 大越はじめ)