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東屋という仕事

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「丁寧につくられたお碗は祖母から母へ、母から息子へ。何代にもわたり、受け継がれることがあります。そこには思い出や時間が宿ります。その時間や経験に見合う工芸を届けるのが、東屋の仕事だと思っています。」

株式会社東屋(あづまや)の創業は1997年。代表の熊田(くまた)さんはアメリカ留学、商社勤務と海外生活を経て、その魅力を再認識しました。

職人、デザイナー、売る人、そしてつかう人。さまざまな人たちの間を行き来し、商品を開発することで、日本の工芸を伝えてきました。

image001 今回は、営業の方を募集します。

工芸に関する専門性は、働きながら身につけてほしいとのこと。

商品提案から予算管理まで任せていける、社会人経験のある方を募集します。

「工芸を生きた文化として発展させていきたい。扱う商品に関心があることも大切ですが、きちんと稼ぎ、ご飯を食べていく。その意識や覚悟は必要だと思います。」

最寄り駅は、東京・山手線の目黒駅。

池田山という住宅街に見える白壁の一軒家が、東屋の事務所です。

image002 案内されたのは3階の応接間。
ショールームも兼ねたスペースには、机から箸置きまで、幅広い商品が並びます。

東屋の商品は、その多くがオリジナル。自社ブランドの商品と、OEMからなる。社名は知らなくても、商品を目にした方は少なくないかもしれません。

この日話をうかがったのは、営業の中澤さんと名越さん。これから入社する人の先輩にあたる方たちです。

採用の窓口である女性の杉岡さんにも、同席いただきました。

image003 左から、中澤さん、名越さん、杉岡さん

営業の名越さんは、愛媛県の出身。前職はインテリアの仕事でした。

知人の紹介により東屋を知り、ものづくりの姿勢に共鳴。2003年に入社しました。

波佐見焼のジューサーを例に、東屋の商品を紹介してくれました。

image004 「ジューサーって、注ぎ口から汁が垂れませんか?これは型物(型でつくった磁器)をさいごに手で削り、仕上げています。」

化学塗料による処理もできるそうですが、東屋には「素材と技術に嘘をつかない」という考え方があります。

「長い時間の裏付けにより『安全ですよ』と言える素材を用いています。また確かな腕の職人さんであれば、技術による解決ができます。」

東屋は、代表の熊田さんが日本全国の職人を訪ね、出会うことからはじまりました。

長くつかう商品においては、デザインも大切な要素。

パートナーとなるデザイナーの一人が猿山修さん。元麻布で古物商を営みつつ、プロダクトデザインを手がけている方。

「器であれば縄文土器までさかのぼり、そこから連綿と続いてきた延長線上にデザインを見い出していく。そうした方たちと仕事をしています。」

試作ができると、東屋のスタッフが職場や家で使い、商品に手直しを加えていく。その繰り返しだという。

たとえば、鉄のすきやき鍋。

image005 鐶(かん)と呼ばれる持ち手の金具は、茶釜を模したもの。

「鐶を通す穴は、この幅でよいんだろうか?太すぎず、細すぎず、スッと入るところを模索して、ミリ単位の調整を重ねたんです。」

商品になるラインは厳しいもの。

「一つの商品が世に出るまでに、数年かかることも珍しくありません。これから入社する人は、現場を見て『そこまでやるの?』と思うかもしれません。僕らも正直言って辛い、苦しいときもある(笑)。でも、使い続けていく中で、小さな違和感は、大きな差として表れてくるんです。」

名越さんは、家で東屋の商品を数多く使っているそうだ。

「生活の中で、ふと、腑に落ちる瞬間があるんですね。」

image006 東屋の一番のお客さんは、働く人自身かもしれません。

いっぽうで、営業として働く上で、大切なことがあります。

「東屋は、工芸を生きた文化として発展させていきたい。素材や技術に妥協しない工芸を20、30代の若い人にも手にとってほしい。そう思うから、手ごろな価格で届けるように心がけています。けれど、けっして簡単なことではありません。」

「扱う商品に関心があることは大切です。加えてきちんと稼ぎ、ご飯を食べていく意識や覚悟も欠かせません。」

今回は、社会人経験のある方を募集します。

主な仕事は予算の作成・管理、商品提案、在庫や仕入れのスケジュール管理など。職歴は問いませんが、数字に明るい方がよいと思います。

東屋に入社すると、勉強することは山ほどあります。

「卸先の担当者さんは道具好きで、知識の豊かな方ばかり。こちらも目を養った上で、はじめて提案ができます。」

主な卸先はTIME&STYLE、UNITED ARROWS、scope、日本橋木屋、スパイラルマーケットにCLASKA(クラスカ)など。WEBと実店舗を問わず、雑貨店やライフスタイルショップが中心です。
「はじめの一年は修業だと思って、どんなことも惜しまずやってみる。それぐらいの気持ちでよいかもしれません。新商品の入荷時には、検品を手伝わせてもらう。出荷する商品の梱包もやらせてもらう。ものに触れて、自分で使ってみてはどうでしょう。」

営業にもルートや飛び込みなど、さまざまなスタイルがあるもの。東屋のみなさんは、基本的に事務所で仕事をする日が多いという。

image007 「このお店は、どうしたら売上げが伸びるだろう。卸先の人になったつもりで客層をイメージしつつ、売り場提案を行います。お客様の売上げが伸びることが、営業として一番うれしいですね。」

どんな提案をするんですか?

「新商品のご紹介。それから季節に合わせた提案もします。たとえば夏は蚊取り線香を置く蚊遣り。秋は、土鍋ですね。」

「お客様の発注方法を見直すこともあります。卸先が、売り切れのまま発注を忘れることもあります。かといって、僕らが毎日うかがうわけにもいきません。限られた時間の中で、無理なく発注できる仕組みを考えていきます。」

image008 続けて話をうかがったのが、入社9年目の中澤さん。新潟県の出身。前職は時計の小売りでした。

最近では飲食店、洋服屋さん、旅館さんなど。これまでに取引のなかった業態からの問い合わせも増えているそうです。

「ありがたいことですが、卸先をやみくもに増やすことは考えていません。問い合わせをいただくと、まずはお互いを知ることからはじまります。場合によっては、取引にいたらないこともあります。」

「商品を手にとる生活者の方に、東屋の姿勢を伝えてもらえるかどうか、です。そもそも東屋が工芸を扱うようになったのは、日本にある魅力にもっと誇りを持ってよいのでは?という思いからでした。」

はじめは、ビアグラスを手にとってみる。やがて急須、箸置きと身の回りを揃えていく。そんな付き合いをしてほしいという。

それから、と中澤さん。

「東屋では長くつかえる商品を、時間をかけて開発します。卸先の方とも、長いお付き合いをしていけたらと思います。」

関係性は、数字にも表れるという。

「東屋のものづくりに共感して、お客さんに伝えてくださるお店は、売上げも伴ってきます。お互いに伸ばし合えるんですね。」

卸先との関係性を詳しく知りたい方は、scopeのWEBサイトを訪ねてみてほしいです。東屋の紹介ページから伝わるものがあると思います。

image009 東屋の商品は、人の手でつくるものがほとんど。原材料の調達が難しく、生産が不安定になることもある。

また生産量が限られるものも。いまは売れ筋の商品の多くが、入荷待ちだという。

たとえば波佐見焼のジューサー。120個という月の生産量に対して、何倍もの入荷待ちがあるそうだ。

在庫管理も大切な仕事になります。

「一番時間を割くのは、欠品時の対応かもしれません。生産が安定せず、すべてのお客さんに行き渡らないこともあります。卸先を訪ねてお詫びをした上で、最短の納期を提案していきます。」

ここで、総務の杉岡さん。

「社内の仕入れ担当とやりとりし、在庫や生産状況を確認してもらうこともあるでしょう。社外はもちろん、社内のスタッフとのやりとりも大切にしてもらえたらと思います。」

「10人程度の小さな会社です。一人ひとりが幅広い仕事に、限られた時間の中で取り組んでいます。これから入社する人は、自分で考えて動けるとよいと思います。『こうしたほうがよいのでは?』と思うことは、提案してほしいです。」

image010 それから、と杉岡さん。

「長く働いて、見えることの多い仕事かもしれません。」

前回の取材で、代表の熊田さんの印象的な言葉がありました。

東屋をはじめた経緯をうかがったときのことです。

「自分が好きで、ただしいと思うことを本気でやり続ける。僕自身がそういう仕事に打ち込まないと、この先何十年も働き続けられないと思ったんです。」

「たとえば、自分が使いたくない商品を売りつづけると、良心をとがめてしまう。それに報酬ありきの仕事では、そこそこの仕事しかできないと思う。白いご飯をみんなで食べて生きていこう。そう話しています。純粋に社会正義を追求した結果、報酬を得ていけたら。」

可能性は色々と考えられるようです。

一つは、数字を極めていくこと。たとえば新商品の発売時に、どう値段を決めるか。他社の動向や、世間の相場も把握しつつ、考えていくプロフェッショナル。

あるいは、写真や文章といった表現を磨き、取扱説明書などの作成にも取り組んでいく。

長い目で見れば、職人さんやデザイナーの方とやりとりをしていくことも考えられるかもしれません。

いずれにしても、たしかな腕が求められます。

熊田さんも仕事を通して、自分を養ってきたようです。

「目利きは、才能ではないと思います。ものに興味を持ち、よく見ると『あれ?』と思うことに出くわす。それを一つひとつ読み解くことの繰り返しです。一人前になるには、数年かかると思います。でも、好きこそ物の上手なれ、ですね。」

image011 ときに世代を越えて受け継がれる東屋の商品。長い時間をかけて開発していく。そして、長い付き合いのできる卸先に届けていく。

工芸の営業という、奥深い仕事がありました。
(2015/4/22 大越元)
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